「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

ストラヴィンスキー バレエ音楽「ペトルーシュカ」
Stravinsky: Petrushka


モントゥー ボストン響 1959年
Pierre Monteux
Boston Symphony Orchestra



録音状態は良い。リマスタリング盤で、みごとに甦った感じで、鮮やか音が流れ出てくる。 ところどころ、アンサンブルは危なく、崩壊してて、縦糸が揃っていないが〜 これもご愛敬か。
カップリング:ストラヴィンスキー 春の祭典(1951年モノ)、ペトルーシュカ 1959年

モントゥーさんは、とっくに亡くなった指揮者だけど、ストラヴィンスキーのハルサイ(春の祭典)と、ペトルーシュカの初演を指揮した方である。
へえ〜っ と驚いてしまうが、ストラヴィンスキーと同時代の方なのである。
で調べてみたところ、ペトルーシュカの初演は、1911年パリである。
ディアギレフのロシア・バレエ団で、モントゥーさんが指揮を担当していたとのことで、ストラヴィンスキーだけでなく、ラヴェルやドビュッシーなんかも初演しているらしい。

この盤は、ボストン響との録音で、綺麗にリマスタリングされており、1959年って50年以上前の録音とは思えないほどに甦っている。
煌びやかな色彩感で、むせかえるように、鮮やかさにあふれかえっている。

初演者の録音ということで、その価値は高いとは思うのだが〜 演奏自体は、はれまっ。
変拍子たっぷりのフレーズの縦線が、あってないところがあって、うぷっ。音に酔ってしまいそうだ。
「タタぁ〜タタ タタタタタ」 「らら れれ らら れれ・・・」というペトルーシュカ特有の楽しげなフレーズが、ちょっと、リズムの音型が、ひしゃげてしまっているのである。
「っタタぁ〜タタ」の部分って、素人が聞いているだけでも、難しそうだもの。金管の短い咆吼の「ふぁふぁ れれ ふぁふぁ〜れれっ」というところも、ずれてしまてしまっているが、まあ〜これは、ご愛敬だと思う。

「ペトルーシュカの部屋」のピアノは、バッチリ〜 綺麗なグリッサンドが聞こえてくる。
ぴたっと、精緻に振られたCDばかりを聞いていると、あらら〜 ピアノとオケがあっていないよな〜とか、結構、穴を感じてしまうんだけど、それが、妙にリアル感があったりして。面白い。
ピアノのソロなんぞ、普段、聞き逃しそうなフレーズが、オケから浮かび上がってきたり。
えっ このテンポ遅めだな〜とか、アナログ的で面白い。

指揮者もオケも、ピアノも、ハイ、人間が演奏しているモノですから、たまには、合わないんですよぉ。
でも、このピアノが前面に出てくるので、ピアノ協奏曲ぽく、新鮮に聞こえる。
(あっ そういえば、ピアノ版「ペトルーシュカからの3楽章」って作品が、ありますもんねぇ〜)
特に4幕の「謝肉祭の市 夕方」以降は、いっそう鮮やかで、唸ってしまうほど。

ところどころ、アンサンブルはアヤシイし、危なっかしいけれど、かえってスリリングで〜 まっ 目くじら立てずに、ほのぼのした気分で聴きたいCDである。
機械的でサイボーグのような、ドライな演奏よりも、人が演奏しているって感じが、よりリアルに感じられて、生演奏会で聞いているような、ワクワク感、楽しさが味わえるように思う。
それにしても、初演の1911年から随分経ってからの1959年の演奏なんですけどね。約50年経過してても、やっぱり、アンサンブルが合わないところがあるんですよねぇ〜。
はあ〜 初演の演奏って、いったいどんな感じだったんでしょ。想像すると、ちょっと恐いかも。(笑)


マゼール イスラエル・フィル 1961年
Lorin Maazel
Israel Philharmonic Orchestra

 

(1911年版)
カップリング:春の祭典 ウィーン・フィル
録音状態は良い。リマスターされているようで、極めてクリアー。
かなり、エキセントリックで、超刺激的な演奏である。
98年にウィーン・フィルと再録音している。

「謝肉祭の市」
他の盤を聴いてこのマゼール盤を聴くと、独特な節回しだなーと感じる。
序奏のフルートは、そうでもないのだが、低弦のジャンジャンジャン・・・とリズムを刻むフレーズが、二巡目に入ってくると、このフルートは、せっかちなほど、前につんのめった感じで吹き出す。
「んたたーたたた たたーたたた」
4回目あたりで、休止を忘れたんじゃーないのかい。と思ったのだが、そこは変拍子なのだろう。
突撃隊が走り出したようなモノで、誰にも止められない。鋭い。なんたって鋭い。
そして、アクセントが強い。

短いトランペットのパッセージがあり、同じリズムを繰り返して強奏するのだが、普通アクセントが付くだろうと思う、その反対側の方にアクセントが付いている。
へえ〜。不可思議な感じがするのは、このためかぁ。他の盤も、そうだったので楽譜どおりなのだと思うが、これが、また他の盤に比べて、メチャ強烈 で強引な感じがする。

そして、リズムだけでなく、音色のカラフルなこと。
原色系統というか、いや蛍光色っぽくチカチカしている。メチャ刺激的なのだ。
んぱぁーぱぱぱっ んぱーぱぱぱ 
各フレーズで、妙に伸び縮みしてて面白いのだが、それにしても、このアクセント。
金管なんぞ、鋭く吐き散らすというか、吹き飛ばすというか。パッ! ぱぱぱぁっ! チャチャチャ・・・  ギャヒーンという感じ。
う〜ん。うまく表現できないなあ。

普段、唾が飛ぶほど口をとんがらかして、鋭く、強く発することがない日本人なので、この発声、いや、楽器の吹き方というか。弾き方というか。音の出てくる勢いに、たじろいてしまう のだ。
まるで、唾が、そこらあたりに飛ぶような、金管をはじめとした楽器群のキツイ「パッ」なのである。
そうだなあ。中国語や韓国語を小耳に挟んで、たいしたことを喋っているわけでもないのに、まるで怒っているように聞こえる場合があるでしょ。まあ〜 そんな感じ。( いい例えじゃーないけど)

「ペトルーシュカの部屋」
嫉妬に狂って暴れまくりというペトルーシュカで、手がつけられない。
嫉妬って怖いよなあ。と思いながら聴いていたのだが、落ち込んだり、テンション絶頂という、天と地の間を行き来しており、この演奏も、かなりキレテいる。
落差の激しいこと。エキセントリックそのもので、なにせ金管が鋭い。

「ムーア人の部屋」
中音域の弦の響きなんぞ、まろやかでいいな〜って思う。アンサンブルもみごとだし。
ノリノリのリズムで、よく乱れないなあ。って感心してしまう。
遊園地地に行ったワクワク感や、手品や魔術師、非日常の世界が広がっている。

「謝肉祭の市 夕方」
ハープの音色で、ちょっと楽しい気持ちにさせられる。
「子守女たちの踊り」
可愛い歌謡風なフレーズ 「れーどしらそ れーれし みーみー れれーしら」 口ずさんで歌えるフレーズが登場する。劇が寸断され、突然不気味な場面に突入。
ころころ拍子が変わって、フレーズが交錯する。
単純なシンコペーションも難しいのに、この変拍子には、到底ついていけない。
音色は、「謝肉祭の日」の音色とは、うってかわって・・・ 鋭さは、適当な鋭さに変わっている。
ちょっと角が、ほんの少し取れたっていうか。摩耗したというか。ペトルーシュカが死んでしまって静かに終わる。

ペトルーシュカの劇のストーリーについては、知ってはいるが、ストーリーや情景をイメージするというより、演奏のリズムやテンポに、気がいって、耳がそばだってしまっているのが正直なところ。
ボリュームを落としぎみで聴いても、マゼールの演奏は、かなり刺激的。きわどいしスリリングすぎて・・・超疲れてしまった。


アンチェル チェコ・フィル 1962年
Karel Ancerl
Česká filharmonie
(Czech Philharmonic Orchestra)

(1947年版)
録音状態は、リマスターされており、ヌケが良く高音域がよく通る。カップリング:「春の祭典」

「謝肉祭の市」
テンポは、さほど強烈に速いと感じたわけじゃないのだが。全体的には速めだと思う。
音は、ブーレーズ盤のように光り輝く〜というほどではなく、ちょっと渋め。
音の重さは、ブーレーズ盤に比べると、少し軽めで、いささか細身に感じる。
冒頭から、通奏低音のように、ずーっと弦が(チェロだと思う)リズムを刻みつづける。
その上に、たたーたたた たたーたたた と鳴ってくるのだが、いろんな楽器の変拍子が聞こえてきて、なんか、思っている以上に、相当、リズムが複雑であることがわかってきた。
演奏は、きっちり丁寧に弾いているという感じ。
録音状態が良いため、かなり見通しのよい、透明感のある響きだ。
で、いろんな音色が、いろんな楽器のフレーズが、いろんな楽器のリズムも。それぞれバラバラに聞こえるわけでもなく、どこかのパートが強調されているわけでもない。
荒々しいリズムで、勢いで行ってしまうタイプでもなく。う〜ん。ほど良いという感じ。
不思議なほど、まったり聞こえてきて、ホント良いのだ。
丁寧だからと、音を置きにきているというわけでは決してなく、明快に、爽やかに鳴っている。
でも、なんか他の盤とちがって、いろんな音が聞こえるんだよねえ。

「ロシアの踊り」なんぞ、痛快なほど跳ねて踊っている。
このピアノ、巧いと思う。可愛いし、プチプチしているし。テンポは速くて、ノリノリだし。歌うし。
すごい多彩な「ロシアの踊り」で、とても楽しい。そんな、強烈な個性でもなく、超めだつわけでもないんだが・・・ この楽章はホント楽しい。木琴のパートも、う〜ん 軽妙だ。スネアもピアノも、よく響いて〜
すごい変拍子で、頭が混乱しそうになるようなフレーズなのだが、くっきりスマートで精緻だ。

各パートが、バラバラにならず、いろんな角度で見えてくるという盤は、まあ。そんなに多くないように思う。
他の盤を何度か聴いたのち、このアンチェル盤を聴いたのだが・・・
ホント、アンチェル盤を聴いて、こんなに、いろんなリズムが絡んでいるんだなあ。と改めて驚かされた。
各楽章によって、テンポはかなり変えている。
ティンパニーのロールが厳しいところもあって、なかなかに楽しめる。

決して大見得を切るタイプでも、大袈裟な劇的効果を狙っているわけでもなさそう。
音色は優しい。でもエッジは鋭いし、野暮ったいような気がするが、精緻だし。
う〜ん。丁寧で几帳面さを感じるが、ダイナミックでもあるし。キラキラしているし。しなやかだし。
硬いのかとおもったら、柔らかいしなあ。なんだ、両方を持っているような気がする。
あまり良い聴き手ではないので、分析できないんだが。

特に、「子守女たちの踊り」 では、背景にいろんな木管が鳴っているところに、ホルンの「れーどしらそ れーれし みーみー れれーしら」が、奏でられる。歌謡風に旋律を大事に奏でてくれて、歌う。
裏のブンチャカもあるし、鐘のような音もあるし、ちょうど頃合いでバランスがとられている。
う〜ん これは、何度も聴かないと・・・ 多彩で気持ちが良くって・・・ いいっ。私的には楽しい一枚。


ブーレーズ ニューヨーク・フィル 1971年
Pierre Boulez
New York Philharmonic

(1911年版)
録音状態は、リマスターされているので、メチャ明晰で、ヌケも抜群。すごい。
のちに、91年にクリーヴランド管弦楽団と録音している。
カップリング:春の祭典 クリーヴランド管弦楽団1969年

「謝肉祭の市」
テンポは、ゆっくりめで出てくるが、フルートのパッセージに、チェロの渋くて甘い響きがあわさる。
弦がテンポを刻んでいくところから、んたーたたた んたーたたた のところから、変拍子になっていくが、金管があわさってくると、なんて華やかな光景になるのか。驚くばかり。
タンバリンの音の広がりや、スマートな金管な鳴りっぷり、ダンっというティンパニーの響きも。う〜ん。
こりゃ。20年後のクリーヴランド管より、相当いいんじゃーないだろうか。ちょっと人工臭いけどね。

録音も71年とは、とーっても思えないほどで、音場も深く、ホールトーンもあり、残響も頃合いで、これは誰でも絶句すると思う。断然、ぶっちぎり〜 良いっ!
で、このリズムの変化は、ホントに難しくて、何度聴いても分析しきれず咀嚼できていないんだが。
しっかり分かった気分にさせてくれる演奏である。ホントにありがたい。(笑)
リアルタイムで聴いていないから、71年当時のことなんぞ、私はワカラナイのだが、こりゃ〜 当時の方は相当、度肝を抜かれたことでありましょう。
各パートが、1音1音 しっかりしており、抜け落ちたところが無いように感じる。
なんて精緻に組み合わされた楽曲なんだろ。それに、万華鏡を覗いているみたいに、キラキラしている。
ころころ変わるリズムに、入れ替わる楽器の音色・・・いろんな要素が、満杯状態に詰まっている。
そのくせ、見通しが良いなんて〜 なんて不思議なんだろう。う〜ん この曲に、はまってしまう。

「ロシアの踊り」なんて〜 これに勝るもの無いんじゃーないかというほど、ぶっちぎりの絶品!
なにせ速いテンポが、一気呵成に奏でられる。
そのくせ、悲哀が籠もっている。ピアノは、ちょっと渋い音なのだが、木琴が跳ねているし、金管パッセージも鋭い。木管のフレーズの間合いもいいんだよなあ。

「ムーア人の部屋」
私的には、このムーア人の部屋が、凄いって思った。メジャーなロシアの踊りより、ずーっと良い。
春の祭典によく似てて、かなり不気味さが出てる。
ぞーっとさせるし、蛇がずずずーっと音を立てて、滑るようにうねうねと走っているようだ。
変温動物的な動きがあって、リアルだし、太鼓が入っていたし、ファゴットの不気味な音が、たまらんです。
「ワルツ」については、もちっとトランペットに、ムードを出して欲しいんだが。ムードは皆無。
このトランペットは、デイヴィス盤が抜群だったが、まあ。ナイモノネダリかなあ。
その代わりに、奥でうごめく太鼓とシンバルっぽい金属音が、相当に怖い。
こんな低音が入っていたとは、この盤を聴くまで知らなかった。版の違いかなあ。

「謝肉祭の市 夕方」
この太くて、しなやかで、多彩な音・・・はあ。凄いっ。「子守女たちの踊り」も充分歌ってくれているし、背景の重低音に参ってしまった。
モワモワしたふわーっとした音と、短いパッセージで、めろめろになった。この太鼓の音は、すごいねえ。
「熊を連れた農夫の踊り」は、他の盤でも感じたことなのだが、熊じゃーなくて、これ「象」の間違いでしょう。熊は、こんな、決まったテンポで、ゆったりとは歩かんぞ〜
「行商人とジプシーたち」ヴァイオリンのフレーズが、ふむふむ。ジプシーですなあ。
「馭者と馬丁たちの踊り」の  んぱ んぱ んぱ リズム テンポは遅めなんだけどねえ。
ぱらら〜のトランペットは、えっ〜 ちょっと変だ。
重低音の太鼓 ティンパニーかな。この響きが、アハハ・・・ これ「春の祭典」なみに面白い。
まあ。他の盤でも強烈なんだが。若い時のブーレーズはスゴイ。というのを再確認した1枚である。


C・デイヴィス コンセルトヘボウ 1977年
Colin Davis
Royal Concertgebouw Orchestra
(Amsterdam Concertgebouw Orchestra)

(1947年版)
カップリング:春の祭典 録音状態は良い。残響ちょっと多め。穏やかでマイルドな演奏で、刺激的でもなくスリリングでもないが、じっくりと全体的に聞き込みたい場合や、響きを楽しむのには、うってつけ。

「謝肉祭の日」「ペトルーシュカの部屋」
フルートの柔らかなフレーズと、コロコロしたフレーズが続く。
低弦のジャンジャンジャン・・・とリズムを刻むフレーズも、まろやかな響き。
変拍子が続くのだが、まろやかさに変わりはなく、拍子が変わったとはわかるが、ギクシャクしていない。
パペット(操り人形)が、関節をギクっとしながらも、手足をブラブラさせて踊っている雰囲気が出ている。
ティンパニーの音は強打ではあるが、音が広がって響くし、金管も同様。
特に、木管の響きに、穏やかではあるが、煌めきを感じて聞き惚れてしまう。チェレスタの音も、芝居小屋らしく、大変可愛い。
場面展開に使われているティンパニーのロール(連打)は、大きく響き残響を残して渡る。
チェレスタの音色とか、ピアノの音とか、小道具たちの音色がよく聞こえる。
でも、「ロシアの踊り」でのピアノは、ちょぴり重いかなあ。くすんでいる音色は好きなのだが・・・もう少し明るめで、ピンピン跳ねている感じがいいかも。
スネアの響きも、力強く広がっていくのだが、残響が多いためか、硬質感 には欠けぎみだが、とても耳障りが良く、おとなしいが大人向けのペトルーシュカという感じがする。

「ムーア人の部屋」
ムーア人のグロテスクな踊りで、テンポは遅め。打楽器が柔らかく、大きく響く。あまりアクセントは強くない。ワルツでは、トランペットのミュートをつけた音が柔らかいく、しなやか。すごい、
あ〜トランペットのリズムの良さと響き。木管とのセッションなど、う〜ん。こりゃ絶品だ。

「謝肉祭の夕方」
いろんなフレーズが、多彩に繰り広げられて飽きない。
特に、「子守女たちの踊り」では、オーボエで歌謡のフレーズの触りを吹いたあと、ブンチャチャ・・・ と小さな動きをバックにして、ホルンが哀調を持ったフレーズを吹く。
「れーれし みみー れー   れれしーどしらそー」
弦があわさってきて「れれーし みみー れーれれしら らしら そふぁみれー そそらられー れーしら」が流れる。鐘のような響きと、各パートの演奏が心地よくホールに広がっていく。う〜ん のびやか。
このフレーズは、まったりとした歌謡風に演奏している。歌うようにね。

かなり上質なペトルーシュカで、何度も繰り返して聴くのに適している。
ブーレーズのクリーヴランド管のような見通しが良い、すっきりクールな演奏を好むのであれば、う〜ん。
このデイヴィスの盤の残響の多さ、まろやかさは、いささか厚ぼったく感じるだろう。
まあ〜好みが分かれるが。
なおこの盤は、LP時代、カップリングの「春の祭典」が、録音状態が超優秀ということで有名だった。


インバル フィルハーモニア管弦楽団 1990年
Eliahu Inbal  Philharmonia Orchestra of London

(1911年版) 録音状態は良い。幾分、低音はクリアーに響いていない感じがする。硬くてジケジケした陰湿で暗い演奏で、確かに悲しい物語ではあるんだけど、これほど暗いと、どん引きしちゃう。
カップリング:2枚組BOX
1〜10 ペトルーシュカ1911年版(90年)
11 花火(90年)
12〜25 春の祭典1947年版(89年)
1〜19 火の鳥(89年)
20 幻想的スケルツォ(89年) 

第1場 謝肉祭の日 手品師の芸 ロシアの踊り
第2場 ペトルーシュカの部屋
第3場 ムーア人の部屋 バレリーナの踊り バレリーナとムーア人のワルツ ペトルーシュカ
第4場 謝肉祭の日の夕方 乳母の踊り 熊を連れた農夫 陽気な行商人とジプシー女 馭者との踊り 仮面 ムーア人とペトルーシュカの喧嘩

第1場「謝肉祭の日」
冒頭、細く、ふわ〜っと夢遊病者のように出てくる。えっ もう幽霊になっちまったの? と思うほど、まるで、足のない幽霊のごとく。
まっ 主人公はパペットなので、足が地に、しっかり着いていないのだが・・・ ← 洒落にならん。
良く言っても、フランス音楽のようで、テンポはゆったり〜 まろやか〜 
う〜ん。ドビュッシーの曲のように幻想的に聞こえる。変拍子のところも、ふわーっと漂っている。
ブーレーズ盤とは対照的で、明晰さがなく、これじゃー あまり満足できない。
打楽器類、タンバリンとかシンバル(だと思う)が、響いてきて、ようやくペトルーシュカらしくなってくる。
ティンパニーの「ダンっ」と、硬い音と、弦の金管の短い変拍子のパッセージで、ああ〜ストラヴィンスキーだっ。と思う始末で、う〜ん。これまた異色な不可思議な盤である。

シンコペーションが、金管がえらく頑張ってみたり、強調されているフレーズがあったり、他の盤とはまたちがった音のバランス感覚のようだ。 良いのか悪いのか。う〜ん。一概には言えないような変わり種のように聞こえる。
で、カラフルさが足らないので、白黒映像を見ているかのようで、暗くてジケジケしている。

「ロシアの踊り」は、あまり楽しくない。
素人判断だが、変拍子が、あまりうまく処理されていないような気がする。跳ねる跳躍力が、完全に不足しており、うまくジャンプできず、どてっと墜落している。
録音もドンシャリ気味だし。おまけに暗いのだ。う〜 なんとも暗い。暗すぎ。ジケジケ、ジメジメしてて、聞いてられないよぉ。

それに、ピアノが活躍してくれる筈なのだが、めだたない。めだって欲しいんじゃー。れに、なんや このピアノ ペダル踏んどるんや ないか? はあ?うぎゃー うそぉ〜 
「第3場のワルツ」では、トランペットの美しいフレーズがあるのだが、う〜ん。これもイマイチ。
私的に好きな「子守女たちの踊り」のフレーズも、ちょい暗めで乗れない。主旋律が埋もれてしまうほど、他の旋律が出てきているし、う〜ん。どうなっとるんじゃ。

テンポは、総じて揺らす傾向にあり。
ところどころ、びっくりするようなティンパニーの大音響があったり。よくわかりませんねえ。諧謔的、風刺的などの面をクローズアップしたと言えば、まあ。そうなんだろうが・・・ なにせ暗いのだ。まあ。とにかく、一応聴いたんだが。暗くてめげた。
何度か繰り返して聴いてみたのだが、やっぱ挫折しちゃうなあ。
確かに悲しい、怖い物語なのだから、この解釈と表現が正しいのかもしれないんだが。う〜ん。リアルすぎて困っちゃった。


ブーレーズ クリーヴランド管弦楽団 1991年
Pierre Boulez
Cleveland Orchestra



(1911年版)
録音状態は極めて良い。すっきり〜見通しの良い演奏である。
カップリング:
1〜 4 ストラヴィンスキー ペトルーシュカ
5〜17 ストラヴィンスキー 春の祭典
「謝肉祭の市」
テンポはゆったりめ。71年の旧盤と比べて、かなり落ち着いている。
出だしから、気味の悪い、ぎくしゃくした変拍子が、ホントにギクシャクしてて〜 
まさしく、チョウツガイの外れた人形が、ぶらさがって踊っているよう。
ある意味グロテスク。
音が太くなく、細身で、残響も少なめで、クリアーに響いており、いかにも、明晰、理知的、端正という言葉が並ぶ。ちょっぴり硬めで、いかにもクリーヴランド管の音色だ。
指揮者は、セルじゃーないのか。と思うほど。
テンポはゆったりめだが、音色がキラキラしており、アンサンブルは透けているように美しい。
すっきり〜スリムで、付点のついたリズムに、変なアクセントがついていない。

「ロシアの踊り」は、こりゃ〜リズムが良く、跳ねて、ツブツブの泡が立っている。
いや、ステンレスの上で、小さな、カラフルな金平糖たちが、落ちて跳ね返っているような。
う〜 現実あり得ないんだが、金平糖が自分で弾んでいるような・・・ そんなイメージがする。
ピアノの音もクリアーに聞こえるし、ヴァイオリンの音色や、打楽器の音や鉄琴など、う〜ん。何度も、繰り返して聴きたくなる。特に、ピアノの音がよかった。

万華鏡のなかを覗いているような、キラキラした多彩な音が広がっている。驚きの目で見てしまう。
いや、ホント・・・ 聴いてしまうが正しいのだが、見えるようなのだ。
「子守女たちの踊り」では、「れれーし みみー れーれれしら らしら そふぁみれー そそらられー れーしら」と流れてくるが、多彩な音で装飾されている。
フレーズとしては歌謡風なのだが、打楽器類できらびやかに飾られている。

低音も充分に入っていて、よく響くし、迫力もある。力強く、しなやかさも十二分にあって。
う〜ん。これは良いっ。すごい。シャープで、クールだが、充分に弾力性があって、きらびやかで。
文句が言えない。同じフレーズを繰り返すなかにも、微妙に変えているようで、これは乗れる。
ただ難点をあえて言うなら。あまり、すっきり見通しが良いので、ペトルーシュカの嫉妬など、どろどろした邪悪な傾向の音色にはなっていない。諧謔を交えた風刺などの要素は、あまりないように思う。 かといって、底抜けにノー天気かと言えば違う。 (この点は、マゼール盤は強烈に、インバル盤が鬱的に暗く表現している)

なんどでも繰り返して聴け、そのたびに新しい発見があるような見通しが良く、情報量の多い演奏だと思う。
マゼールの旧盤のように、ものすごく派手でエキセントリックな演奏とは、正反対だし、デイヴィス盤のように、まったり音色の暖かい豊かな演奏とも違う。文字通り、三者三様なのだ。
ブーレーズのこの盤は、見通しがよく、透き通ってて、すかっと爽やかに聴ける。
ホント、 三者三様で、ストラヴィンスキーのペトルーシュカとしては、どんな演奏が良いのか。
聴き手にとっては、 いずれの盤も目指している方向性が異なり、それぞれ、納得いくものでもある。この三者の演奏は、とっても面白いし、聞き比べには事欠かないように思う。

サロネン フィルハーモニア 1991年
Esa-Pekka Salonen
Philharmonia Orchestra of London

(1947年版)
録音状態は良い。高音域の煌めきがあり、さらり〜と爽快な演奏である。
カップリング:ストラヴィンスキー 「春の祭典」「火の鳥」「ペトルーシュカ」「プルチネルラ」1965年改訂版全曲 2枚組BOX
他にも、カップリングを変えて発売されているCDあり。 

ひとことで言うと、瑞々しい、とっても爽やかなペトルーシュカである。
軽めの演奏で、どっぷりとした太書きの演奏とは違う。今風といえば良いだろうか。線が細めで、すっきりしている。
いささか意外なペトルーシュカというか、拍子抜けするような 気もしたが〜 拍子抜け感は、それは初めて聴いた時だけで・・・ 精密機械のように、テンポが速く回転していく。
確かに、豪快でアクの強い演奏を聴いてしまうと、スカみたい〜なほどだが、なんというか〜清潔で、スッキリした都会的な演奏なのだ。
演奏自体は、木管の通る強い吹き方も印象的だし、ティンパニーの音も、はっきりクッキリと叩かれているし・・・。まずまず。

ストラヴィンスキーと言えば、「春の祭典」を筆頭にして、ちょいと原始的なアクの強い、ドンドン バンバンとティンパニーを主体とした勢いのある演奏を聴いてきたが、ペトルーシュカだと、全く違うアプローチでも良いのかも〜と思わせられた。
ペトルーシュカは、操り人形(パペット)が主人公だ。人間になれない、悲しげで、なんとも言えない暗い、痛々しい、あがくような 悶々とした部分があるのだが、サロネン盤は、ことさらに強調するわけではない。
でも、かえって、都会の忙しい時間のなかで、息の詰まりそうな現代を生きている人間=ペトルーシュカのような気がしちゃうのだ。まっ それはワタシ的な感傷かも。

とにかく、なーんとも、さっさ〜っと流れるような、すかっと風が流れていくような、ガムを噛んでいるような気分転換のできる演奏になっている。
徹底して冷たいワケでもないし、3月頃の爽やかな、まだ少し冷たさの残っている春風に運ばれくるような演奏なのだ。
ホント、確かにシャープだし、とろくさい演奏じゃない。
すす〜っと、ささ〜っと流れるような演奏なのだが、きっちりと演奏されているし、適当に流れているワケじゃない。スポーティなんだけど、メータ盤のような、ごっつい演奏ではなくって、陸上の跳躍的な、引き締まった細い躯で、棒高跳び やハードルを跳び越えて行く〜というような、器械体操をしているような演奏である。

縦線だって、きっちり合っているし、線は細めに感じるが、重量級の演奏ではないので、好みが分かれるかもしれない が、何度か聴いているうちに、爽やかという風のような演奏なんだけど、純朴な爽やかさではなく、どこか、草食系のワカモノのように、我関せず的な、客観的な、ふんっ と、すねた感覚に近いかもしれないな〜とも思えるし。なんかつかみどころの無いワカモノ風。
自分の仕事は、速めに仕上げちゃいましたぜ〜 他の人のことは知らないぜ〜という、都会的な、客観的な演奏にも聞こえちゃうんだけどなぁ〜。 

ホント、好みだと思うけど、ワタシ的には、新鮮だし、メリハリがあって良いんだけど。
引きずり込むようなパワーや、人を強烈に巻き込んで、ぐわ〜っと、力づくでねじ伏せるモノではないけど、まあ。こんな演奏も面白いかな。ちょっと変わっている。
生き馬の目を抜くような、鋭さはないんだけど、こんな演奏もありかと。
躯が揺れるような衝撃や、 悲痛な衝撃、ドラマティックさには、欠けているが、器械体操や精密機械的な運動 変拍子のところも、する〜っと行かれてしまって。やっぱ、その点が拍子抜けかなあ。

ブーレーズ盤ほどには、クールさとか冷たさはない。
まだ、ちょっぴり暖かさを感じさせる。煌めき度も少し落ちるかもしれないけど〜 さらり〜と行かれてしまうことには、かわりない。
で、読後感としては、消えちゃうペトルーシュカの存在って、なんだったんだろ。ある日突然、誰にも気づかれないまま消えちゃった〜というのが、可愛そうで・・・。はあ〜ぁ。
リズムの変わり目が解らないような状態で、テクに関しては、ちょっと唖然とするが・・・。録音時代が90年代に入ってくると、こんなモノなのかな。
さらり〜とかわされてしまうペトルーシュカで、ふっと消えちゃう終わり方が、なんともはや。
ペトルーシュカ = 人間 ? えっ うっそ〜 感情が、存在感が、跡形もなく煙のように消えちゃう感覚が、なんとも〜。げっ。ぞっ。(深読みかなあ。)

サロネンとフィルハーモニア管との演奏で、ソニーに録音した6枚組セット(ストラヴィンスキー作品の多くが収録されている)も発売されている。

1959年 モントゥー ボストン交響楽団 ★★
1959年 ドラティ ミネアポリス交響楽団 Mer  
1961年 マゼール イスラエル・フィル ★★★★
1965年 アンチェル チェコ・フィル Sup ★★★★
1967年 メータ ロサンジェルス・フィル  
1971年 ブーレーズ ニューヨーク・フィル SC ★★★★★
1976年 デュトワ ロンドン交響楽団  
1977年 C・デイヴィス コンセルトヘボウ Ph ★★★★
1977年 ドホナーニ ウィーン・フィル Dec  
1980年 アバド ロンドン交響楽団  
1988年 ハイティンク ベルリン・フィル Ph  
1990年 インバル フィルハーモニア管弦楽団 ★★
1991年 ブーレーズ クリーヴランド管弦楽団 ★★★★
1991年 サロネン フィルハーモニア管弦楽団 SC ★★★
1993年 シャイー コンセルトヘボウ Dec  
1993年 ショルティ シカゴ交響楽団  
所有盤を整理中です。

「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

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