「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

チャイコフスキー 序曲「1812年」
Tchaikovsky: 1812 Overture


マルケビッチ コンセルトヘボウ 1964年
Igor Markevitch
Royal Concertgebouw Orchestra
(Amsterdam Concertgebouw Orchestra)

録音状態は、さすがに古めかしい。この派手な序曲には、録音状態の良いことが条件みたいなモノなのだが、その点は、さっぱりダメで、他盤の足元にも及ばない。しかし、冒頭より、ゴリゴリと枯れた、悲痛なチェロが鳴り始め〜血の気が引きそうなほどだ。カップリングは下記のとおり。

チャイコフスキー 交響詩集 
1.幻想曲「運命」 インバル/フランクフルト放送響 1974年
2.幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」 マルケビッチ/ニュー・フィルハーモニー 1967年
3.幻想序曲「ハムレット」 マルケビッチ/ニュー・フィルハーモニー 1967年
4.序曲「嵐」 インバル/フランクフルト放送響 1974年
5.幻想曲「テンペスト」 インバル/フランクフルト放送響 1974年
6.交響的バラード「地方長官」 インバル/フランクフルト放送響 1974年
7.幻想序曲「ロメオとジュリエット」 ハイティンク/コンセルトヘボウ 1964年
8.序曲「1812年」 マルケビッチ/コンセルトヘボウ 1964年

マルケビッチさんの振る序曲1812年は、チャイコフスキーの幻想序曲集を集めた、交響詩集というタイトルの2枚組CDに収録されている。
チャイコフスキーの幻想序曲や序曲、いわゆる交響詩的な楽曲を集めたCDは、あまり市販されておらず、たまたま見つけた2枚組を買った。そこに、オマケ的についてきた序曲「1812年」 ・・・である。

冒頭に、ロシア正教の讃美歌のフレーズが聞こえてくる。
「ふぁふぁそそ ら〜 ふぁふぁそら ししし〜 らららら ら〜ら〜ららそ」
このフレーズが、恐ろしく枯れて、荒野に佇む雰囲気というほど、悲しく、悲痛なのだ。 チェロが甘いどころか、おっそろしく枯れている。チェロだけではない、木管もそうだ。 もう既に戦争に負けてしまったかのような、死者を弔うようなフレーズになっているのだ。

で、「れ〜ドンっ!」 「しぃ〜ら そらしら そふぁれ・・・・ どぉ〜しらしれどら れ〜」
「み〜れそっ ふぁ〜みそっ そ〜ふぁどっ」「し〜らふぁみれ「み〜れ しらそ ふぁっみっどっ」
こっから、どどどどど〜っと落ちてきて、おっそろしほどのスピードに変わる。
ホント、畳みかけてくる鋭さは、空前絶後的。
音が悪いのに〜 金管だって、擦れててイマイチなのだ。「たらら ららら ラッタッタ〜」
しかし、スピードと、鋭い弦の擦れた響きに、のけぞってしまう。
ここの弦のボーイングは、どうなっているんでしょ。 金管が大活躍するシーンでも、弦が、嵐のように、怒濤のように弾きまくっている。開放的で、まろやかな響きのする盤とは、うってかわって、文字通り戦争なんですねえ〜。
(妙に感心させられる)
それだけに、その後、牧歌的なフレーズが始まると、心底、しみじみ〜
「れぇ〜れぇ どしら れぇ〜 れ〜れぇ〜 どしら れぇ〜」と、歌う。

このマルケビッチさんの演奏だと、大砲なんて要らない。気迫で勝負ってところだろうか。
金管の歯切れの良い音、破裂音が、シンバルのシャンシャンする音。
これらが狂気じみてくるほど、恐ろしいド迫力のパワーなのだ。音が悪いだけに、なんか薄気味悪いしタイトな響きが、なんとも言えない悲愴感が漂う。

カリオンが鳴り響くところまで、音が落ちてくるところは遅めだが〜 それでも、低弦の響きが、これ、ホントにコンセルトヘボウかい? あの木質的で、柔らかい響きが美しいオケかぁ?
このカリオンも、勝利を祝うわけでも、平和への賛美でもなく、なんとなく狂気じみてて〜
最終、大太鼓が入ってくるところは、音が硬く、ダダダダ ダダダダ ダダダダ・・・と、重いこと重いこと。
がーん がーん がーーーーーんっ。

なんという序曲なんだろ、ホント、今まで娯楽的に聴いてしまっていたけど、こりゃ クソマジメな演奏で、カッシカシに厳格で、お遊びモードゼロの演奏でございます。
特段、奇をてらった演奏をしているわけでもなく、大砲付きでもないのだけど〜 大音量の爽快さは無く、音の悪さも、手伝って、この演奏の凄みには、ちょっと血が引いてしまう。

カラヤン ベルリン・フィル 1966年
Herbert von Karajan  Berliner Philharmoniker
(Berlin Philharmonic Orchestra)

はぁ?    倒れました。

録音状態は、あまりよろしくない。冒頭、ドン・コサック合唱団の合唱付きなのだが、こりゃ〜 とんでもない。最後まで聴けるか?
カップリング:チャイコフスキー 交響曲第5番、ムラヴィンスキー レニングラード・フィル(60年)、序曲1812年 カラヤン ベルリン・フィル(66年)
発売日が95年となっているので、20年ほど前に購入したCDだと思うのだが・・・リマスタリング盤だとは思うのだが、録音状態はイマイチだ。(ブックレットを紛失してしまっており、データ不明)

冒頭に、ロシア正教会の賛美歌「神よ汝の民を守れ」から引用されているとのことで、このカラヤン盤には、合唱団の歌声が入っている。とても珍しい盤ではあるが、ちょっと、何を歌っているのか?
これで音程が正しいのか? うねっとしてて〜 ヒスノイズがあるのか、ちょっと・・・。引いてしまった。
う〜 まさか音を外しているわけないよねぇ〜っと思いつつ、どうも、プロが歌っているようには聞こえない、気持ちの悪〜い声なんです。
これで録音OKしているわけだから、下手ってことないよね? えっ 妥協したの? ってなわけないよね。(笑)

演奏自体は、すごい切れがあり、スピーディで、超格好の良さがある。
録音状態はイマイチながら、金管のパッパら パパっ パァ〜っと、短いパッセージが続くところや、弦の強奏も、なだらかな曲線を優美に描き、それも、超快速で一気に駆け抜けていく、そのすごさ。やっぱ凄いっ。
やっぱり、ベルリン・フィルって格好良いやん。と、改めて感じるほど。
弦の風を切るような音や、力強い金管のフレーズ 「しぃ〜ら ふぁみれっ  しぃ〜ら ふぁみれっ ・・・ みぃ〜れ しらふぁっ・・・ ふぁっみど そっ」と、切れも抜群で、伸びやかで格好が良い。

まあ、かなり録音年の古いモノなので、今更、お薦めできないが、小太鼓の音もしっかり入っているし、演奏自体は、さすが〜っ。やっぱり巧い。と思う。
ただ、序曲1812年の特徴、最大の見せ場である大砲の鳴りっぷりは、大型の筒から空気が漏れた〜って感じで、なんとも、違和感の感じるものとなっている。最初は、連続して続けて、立て続けに速く鳴っているのだが、爆発音って感じではない。ぼむっ!と、何かが前に飛び出したというのではなく、金属音的で、何かが、真横を通過していったというような感じなのだ。
後半の大砲は、ちょっとリアルな音が出たが、それでも、横を何かが通過しているような感じで〜。雑音のザーって感覚の方が近いかもしれない。マイクの位置が、ちょっと、変なのかもしれないです。

それよりも〜カラヤン盤は、この大砲の音よりも、鳴りっぱなしのカリヨンの方が、すごい。強烈。
ぐわんぐわんぐわん〜っ、共鳴音の強烈な音圧があって、甲高い演奏の音と、重なって〜
鐘の音が共鳴しあってて、がしゃん ぐしゃん ぶわん、ぼわん ちゃらん きらん・・・
金属の中でクラッシュしているかのようで、ホント、ずーっと鳴りっぱなしで、目眩しそうなほど。こりゃー 大砲よりカリヨンの方が強烈で、地獄で鐘が鳴り響く・・・ まるで、拷問を受けているって感じで、長い時間苦痛でございます。
もう〜ヤメテぇ〜 このカラヤン盤は、とんでもト盤です。こりゃ〜ひどい企画でございます。よくぞ発売されました。


エリック・カンゼル シンシナティ交響楽団 1978年
Erich Kunzel
Cincinnati Symphony Orchestra

録音状態は良い。奥行きがあり残響多め。大砲の実音入りとのことで、かつては有名な盤だった。1999年再録音されているらしい。
カップリング:チャイコフスキー 序曲1812年、イタリア奇想曲、歌劇「マゼッパ」〜コサックの踊り〜

録音状態は、まろやかで、チェロとヴィオラで奏でられるロシア正教会の讃美歌が甘く流れてくる。
「ふぁそ〜そら〜 ふぁふぁそらししし〜 ららららら〜 ら〜そ」
甘いのだが、フレーズが細かく刻まれている。
悲しげな溜息混じりというよりは、暖かみのある音色で、フルートも柔らかい。腰が無いっていう感じもするが、線も細め。
ティンパニーの1発後、主題が変わるため、激動の嵐かと思ったのだが、低弦がうごめかず、演奏自体は、かなり薄味となっている。立ち上がりの勢いが少なく、戦闘態勢という感じからは、ほど遠い。

ナポレオンのフランス軍のラ・マルセイエーズが、「たらら〜ららら〜らったたぁ〜」と鳴るのだが、う〜ん。
こりゃ〜 戦争という雰囲気が無いねえ。
ホルンの音色のまろやかなこと。自然感たっぷりで、まろやかに、まどろみの世界に入ってしまいそうだ。
う〜ん。楽曲とは違うだろう。って文句を言いそうになる。
フレーズに膨らみが少なく、のびやかさというよりは素朴感がある。

中間部の牧歌的な雰囲気は、ホント素朴で、ショルティ盤の攻撃的で、エキサイトぶりとは別世界だ。
「しーしられ〜 ・・・ それ〜 どしられれ〜 られ〜れ〜 どしられれ〜」
思わず苦笑いしそうなほど、純朴で、血なまぐささがない。どうやら和平を望んでいるらしい。
この歌謡風のフレーズの後、戦闘が再開され、「タタタ タータタン〜」 大砲が5発。
録音レベルは低めだったため、当初はボリュームを上げて聴いていたのだが、砲弾の音がリアルで、デカイく、大砲が発火した途端、椅子から転がり落ちそうになった。演奏よりも、やっぱ、この大砲の音が凄い。大砲の音の広がり方が、これがみごと。おそらく、大砲の近く、筒の近くにマイクがあるのだろう。
ドーンと鳴るのではなく、ぶばっ!と、筒から吹き出してくる、噴き出し圧力がリアルだ。
大砲が放物線を描いて落ちるっていうのではなく、筒から出てくる破壊エネルギーが、音圧になっている。
で、噴き出した途端、すかさず周囲に音圧が飛び散っている。
スピーカーからは、黒い玉の砲弾と共に、火薬臭い噴煙が漂ってきそうである。

まあ。演奏自体は、たいしたことはない。と言っちゃ〜まずいかもしれないが。そこそこ。
で、演奏は、この大砲の音以降、極端にテンポが落ちていく。
くだりきってから、カリヨン(鐘)が鳴るのだが、これが、また〜 広がりの凄いこと。残響がすごすぎ〜
同時に、鐘が何個鳴っているのやら想像ができない。それも鳴り響くテンポが速いのだ。
ひえ〜 これこそ乱れ打ち。まるで頭のうえに、鐘をかぶせられたようで。
グワングワン〜キンキン〜カンカン〜シャンシャン〜カシャカシャ〜 
で、また再度、大きくてリアルな大砲が鳴り出す。

げっ〜 鐘と大砲の音に完全にノックアウト。これはダメだ〜やめてくれ〜まるで罰ゲームだよぉ。
演奏にメリハリがなく、リアルな戦争を描いていないくせに、やたら鐘と大砲だけがリアルで・・・
このちぐはぐさに思わず苦笑してしまった。本体よりオプションが売りである。

ムーティ フィラデルフィア管弦楽団 1981年
Riccardo Muti
Philadelphia Orchestra

  

所有している盤は、リマスタリングしていないので、録音状態はあまり良くない。
アクセル、ブレーキの効きが抜群で〜 メチャクチャ熱い演奏だ。
カップリング:ストラヴィンスキー「火の鳥」、ムソルグスキー(ラヴェル編)組曲「展覧会の絵」



←EMI原盤のブリリアント(Brilliant Classics)レーベル盤
廉価版で、ムーティの交響曲全集(7枚組)が出ており、そのなかにも、カップリングされている。
70年代の交響曲全集で、オケは、フィルハーモニア管弦楽団。
マンフレット交響曲も含んでいるし、管弦楽曲である1812年、弦楽セレナード、白鳥の湖、フランチェスカ・ダ・リミニ、ロメオとジュリエットも含まれているというお買い得盤で、交響曲を除いた楽曲は、フィラデルフィア管弦楽団との録音である。
音質は、さほど変わらない印象を持った。リマスタリングはされていないと思う
。再度聴いてみても、やっぱ、ど派手〜っ。メリハリが、バリバリについてて、結構面白い。うはは〜っと笑えてしまった。

録音がイマイチ。擦れてて艶がなく、響かない、EMI81年って、こんなレベルだっけ?
で、この状態で、序曲「1812年」を聴くのは、正直ツライ。 しかし、この演奏は、メチャ熱いっ。

1812年の冒頭は、ロシア正教の讃美歌である。この序奏部分は、確かに、静かだし宗教心溢れているように思う。
ただし、録音がよろしくないので、深々〜とは鳴らない。
で、主題が変わり、オーボエが切ないフレーズを吹いた後、妙に渋くて泣きが入ってくる。弦が、カシカシ鳴り出す。
チェロが、「どーしらしどしそみ〜」というフレーズを弾いている間に、ヴァイオリンが、抑えきれず階段を上り初め、金管が咆吼を始める。この音の割れ具合に悲哀が含まれて〜 妙に目頭が熱くて(笑)
どうやら、戦争を始めるギリギリの線だったんだろうねえ。段々熱くなってくる。
で、フランス軍が攻めてくる。フランス国歌が流れてくると、フランスに攻めてこられた途端、激怒しちゃたんだろう。
弦が、ブチ切れって感じで、一気にチェンジがトップに入り、加速していく。

ムーティさんのチェンジの切り替えって速い。
アクセルを、ばんっと踏んづけて、ぐい〜っ!
げぼっ。後ろにはりつくほど、ホント一気だ。で、ブレーキって言ったら、これまた、前につんのめるような感じで、フロントガラスに、頭をぶち当てるほど。
まっ メリハリがあるってことなんだが、ここの弦、メリハリどころか、すごい熱いっ。メチャ速いっ。
大砲は、リマスタリングされていたら、申し分ないんだろうけど。音圧は、すごい感じる。
カリヨン(鐘)も、超ド派手だし。まあ、速い、熱い、派手と、三拍子揃っていることは確かなようだ。

車で例えると、イタリアの超高級スポーツカー「フェラーリ」 (乗ったことないけど〜)
まあ録音状態がイマイチなので、国産に格下げするとしても、日産「フェアレディZ」のような超スポーツカータイプである。
当該CDは、展覧会の絵、火の鳥が、メインディッシュなので、「1812年」は、おまけ。
このカップリングで、マスタリングされた録音が良いものがあれば、う〜ん。ちょっと色気を出して、購入検討してもよいかな。と思っているが、悪趣味だろうなあ。
メリハリがあって、ここまでやるか〜というような熱いのが好きな方は良いが、なにせ、この曲、 録音状態が良くないと〜嬉しさが半減しちゃうしな〜と、ちょっとお薦めするには戸惑ってしまう盤である。


デュトワ モントリオール交響楽団 1985年
Charles Dutoit
Orchestre Symphonique de Montreal
(Montreal Symphony Orchestra)

録音状態は良い。カップリング:チャイコフスキー「スラヴ行進曲」、ムソルグスキー「展覧会の絵」、交響詩「はげ山の一夜」
発売時期によって、カップリングが異なり、「ロシアの謝肉祭」が入っているものがあるので、購入時には気をつけたい。

「ふぁふぁそ〜そら〜 ふぁふぁそらししし〜 ららららら〜 らーららそ」  
冒頭は、ヴィオラの音色が良く、渋い室内楽を聴いているようで、悲しげで祈りの心境が表れていると思う。いつもの色彩感豊かなモントリオール響とは、ちょっと思えない。
その後、テンポをゆったりめに、木管の響きが抑えめに吹かれ、弦の響きが、一音一音メリハリをつけて、重なっていく。この後、ぐぐ〜っとした金管の音色があわさってくると、馬力が出てくる。
この金管パワーは、やっぱり迫力もあるし、小太鼓が入って、「ラ・マルセイエーズ」のフレーズが、のびやかに、まろやかに響き渡る。う〜ん。こりゃ〜フランス軍びいきか。と思ってしまうほど。

ブラスバンド風になりがちだが、なかなか弦のフレーズが小気味よく聞こえるし、主力の金管が、これまたストレートでありながら、まろやかに響く。
馬力だけでなく、ショルティ盤より、スマートに響いてくる。もちろんヴァイオリンの音色も美しい。
「それ〜 どしられれ〜 られ〜れ〜 どしられれ〜」甘く美しい。色彩感が豊かで、鳴りっぷりもみごと。
金管、弦、木管の響きが、濁っていないので、かなりバランスが良いな〜と感じる。
フレーズを短めに、スピーディにスマートに演奏しているので、泥臭さはないが、ストーリー展開がよく見えてくる。
「それ〜 どしられれ〜 られ〜れ〜 どしられれ〜」歌謡風のフレーズも、よく歌っていて〜
パーカッションの鈴の音色や、小太鼓もはっきり聞こえるし、奥行きもホールトーンも良い。
大砲が5発鳴るところは、これは正直言って、ショボイ。
拍子抜けするほど、シンセサイザーの軽い音が入ってくる。実録音された大砲の音とは、雲泥の差である。遠くで花火が打ち上がっているかのような、ボコボコ音なのだ。
「どしらそ しらそふぁ・・・」と下ってきて、テンポを段々遅くなるところの金管は、腰があって粘っている。

続いて、教会の祝祭的は鐘が鳴るのだが・・・ えっ? うっそ〜。
教会の「ご〜ん」と響く鐘なのだ。これ本物らしい。そこに、数多くのカリヨンの鳴り響く音が重なっている。
更に、パイプオルガンの音色(シンセだろう)が重なり、超高音シンセも鳴ってくる。
う〜ん。どーなっとるんじゃ。
編曲バージョンなのだろうか。それにしても、シンセを登場させるとはねえ。
デュトワ盤では、他の盤との違いを、ここで明確に打ち出しているのだろうが・・・
せっかく良い演奏だなあ。と思っていたのに、最後が、一風変わった演出だったので驚いてしまった。

デュトワ盤は、大砲で勝負せず、鐘の音で勝負なのだ。
モントリオールのノートルダム寺院、ケベックの聖アンナ寺院の鐘だそうである。
(寺院・聖堂・教会、いずれと称すれば良いのか、私にはワカラナイ)
それにしても、ぼ〜ん ぼ〜ん、と鳴っており、まるで、遠くの打ち上げ花火か、ビッグベンの時計の音のようで・・・ なんだか違うと思うんだがなあ。
鐘は、やたらリアルなのだが、大砲はシンセサイザーで、う〜ん。これも新手の手法だ。 変わり種である。
まあ。序曲「1812年」自体が、演奏本体もさることながら、オプションを楽しむ。という楽曲になってしまっているので、盤を選択する方も、楽しいっていえば楽しいのだが。 まあ。この盤も相当に異色で・・・はあ。驚かされる。
ただ、誤解のないように、演奏はすこぶる美しく、ホント高級品だと思う。


ショルティ シカゴ交響楽団 1986年
Georg Solti
Chicago Symphony Orchestra

序曲1812年では、本物の大砲が収録されていることで有名な盤。
もちろん迫力満点で、録音状態も極めて良い。
 

 

冒頭、チェロとヴィオラで奏でられるロシア正教会の讃美歌「神よ汝の民を守れ」から引用されたという、和音の美しいフレーズが、厳かに流れる。
「ふぁふぁそ〜そら〜 ふぁふぁそらししし〜 ららららら〜 らーららそ」  
ここは、さすがにショルティ盤でも、深々と悲しげに奏でられている。まるで溜息をつくようなフレーズが続いて、大太鼓の一発。
「し〜ららら れっ し〜られみふぁみれしら〜」
コントラバスの低弦が蠢き、オーボエが悲しげなフレーズを奏で始めて主題が変わる。激動の嵐の様相を見せたあと、チューバを主体とした重々しいフレーズが続き、激しさを増していく。
この立ち上がりは、相当にパワフルで圧倒される。

まず、ナポレオンのフランス軍のラ・マルセイエーズが、「たらら〜ららら〜らったたぁ〜」
次にロシア軍との攻防が始まる。フレーズが散り散りになっているので、フランス軍がダメージを受けているのだろう。このあたりの攻防は、ショルティ盤では、さすがにエキサイトしている。で、どうやら撃退したらしい。ホルンの平和と告げる和音が穏やかに吹かれる。
「それ〜 どしられれ〜 られ〜れ〜 どしられれ〜」静かながらも甘く美しいフレーズが続く。
ここは、のびやかに歌ってシアワセ感が味わえる。地味なフレーズではあるが美しい。
ショルティも、ここでは、ゆったりと牧歌的なフレーズを歌っている。

再度、フランス国歌が流れてくる。また戦争かと身構えるが、再度撃退。
「それ〜 どしられれ〜 られ〜れ〜 どしられれ〜」歌謡風のフレーズを挟んで、また戦闘が続いて、大砲が5発。
その後、全合奏的に「どしらそ しらそふぁ・・・」と下ってきて、テンポを段々遅くしてくる。
くだりきったところで、カリヨンが荘厳に鳴らされる。
全国一斉、ロシア国中のあちこちの教会で、鐘が鳴らされているかのような乱れ打ち。
「どふぁそらそふぁそ らふぁふぁ〜」・・・
「どーれれ どらふぁ ふぁみれどれ しどら・・・」←大砲打ちっ放し。
まあ〜 絢爛豪華 このうえなく壮大に終わる。

聴いた後に、何が残るかって言われても〜 とても困る。(笑) 重量だけでやられたって感じがするが、それでも、まあ、ここまで鳴ると痛快だ。ストーリー性はどうでもよくなってしまうのが実情で、あまりこの楽曲に期待する向きも少ないかも。
カノン砲の音も凄いが、カリヨンの乱れ打ちには、想像を絶するものがあり、スピーカーから流れてくる音だけでも、頭のなかが攪拌されてしまいそう。ヘッドフォンで聴くのは 、避けた方が無難かもしれない。
演出がストレートで、エンターテイメント性が、かなり高い。
ジャケット写真と同じぐらい、サービス精神満載の盤なのだ。

カップリング:チャイコフスキー「ロメオとジュリエット」、「くるみ割り人形」、ジェリー・ダウンズ「がんばれ、シカゴ・ベアーズ」、アメリカ国歌、スーザ「星条旗よ永遠なれ」
※ この盤の他に、チャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」とカップリングされている盤もある。


アバド シカゴ交響楽団 1990年
Claudio Abbado
Chicago Symphony Orchestra

録音状態は、まずまず。スピードがあり、さっぱりスマート系
カップリング:チャイコフスキー交響曲第3番

冒頭、チェロとヴィオラで奏でられるロシア正教会の讃美歌が、静謐に流れてくる。
美しいヴィブラートがかかっており、教会音楽そのものに感じられる。
「ふぁふぁそ〜そら〜 ふぁふぁそらししし〜」  
大太鼓が鳴らされたあとも、スマートに、余分なモノをそぎ落とした感じで、スピーディに流れていく。
テンポは、とても速い。
ショルティ盤と同じシカゴ響なのだが、ブラス部分は、驚くほど分厚い響きを持っているものの、結構、速いテンポで展開するので、びっくり。
主題の変わる際、ホルンには、しっかり和音を吹かせている。また、メリハリがついているので、主題が変わるところがわかりやすい。
「それ〜 どしられれ〜 られ〜れ〜 どしられれ〜」
アバド盤では、しっとり歌わせており、牧歌的・歌謡風フレーズが、大変美しく奏でられている。
郷愁を誘うフレーズで、戦闘シーンの激しいフレーズとの対比が、くっきりしている。
大砲の音の5連発もすごいっ。キャノン砲の本物だと思う。
カリヨンの乱れ打ちも凄いし、オケの音が消えそうなぐらい激しく打ち鳴らされている。
基本的には、ショルティ盤と変わらないが、最後のコーダに至るまでのスピードの落ち具合も、あまり、持たずにタメず、すんなり駆け抜けていく。とにかく、スピーディでスマートって感じ。


スヴェトラーノフ ロシア国立交響楽団 1992年
Evgeny Svetlanov
The State Academic Symphonic Orchestra of Russia
(Svetlanov symphony orchestra)

録音状態は良いが残響が多め。柔らかい音で響く。
カップリング:交響曲第1番「冬の日の幻想」

スヴェトラーノフ盤と言えば、爆演だと思いこんでいたが、相当にイメージが異なる。
残響が少し多めであるため、柔らかいソフトタッチに仕上がっている。
ロシア正教会の讃美歌「神よ汝の民を守れ」から引用されたという、和音の美しいフレーズは、まるでオルガンで奏でられているかのようで、かなり荘厳な空気感が漂っている。
実際には、チェロとヴィオラなのだが・・・ その響きが柔らかく、フルートが雲のように乗っかってくる。
信じられないほど、敬虔な雰囲気だ。
「ふぁふぁそ〜そら〜 ふぁふぁそらししし〜 ららららら〜 らーららそ」  
その後、主題が変わるが、まだ暗鬱とした空気に支配されており、中音域の弦の響きが、かなり豊かに響いている。
金管のフレーズは、ストレート気味だし、細めに聞こえるが、コントラバスの響きが大きく、当時の世情を映し出しているようだ。
ナポレオンのフランス軍のラ・マルセイエーズが、遠くから、「たらら〜ららら〜らったたぁ〜」と奏でられるが、ノー天気には奏でておらず、充分な距離感も感じられる。
木管や弦で、うろたえているような雰囲気を出しているし、シンバルが激しく鳴る。
小太鼓の鳴りっぷりも良い。騎兵隊の雰囲気も出てるし、当時の戦闘の生々しさが、ソフトに描かれている。
ホルンによる主題の変化が、柔らかく告げられている。
「それ〜 どしられれ〜 られ〜れ〜 どしられれ〜」
牧歌的というだけでなく、まるで天上の音楽に聞こえるほどで、これには驚かされた。
ホントは、地味で土臭いフレーズなのだ。
で、また戦闘が起こってきたようで、火だねが耐えていなかったらしい。激しく打ち鳴らされるシンバル、駆けめぐる弦。金管の咆吼が続く・・・。
再度、牧歌的なフレーズが表れ、また戦闘・・・ ダメ押しのように大砲が撃たれる。
ここでは、キャノン砲ではなく、大太鼓が打たれているのだと思う。
全合奏で、山をくだってくるような、テンポを落としてくだってくるようなフレーズがあり、カリヨンが打ち鳴らされる。まるで、カリヨンは蝶々のように舞っている。
最後の一音が、すご〜く長くて、ここだけはいただけないんだけど。まっ。許せるか〜

演奏も良いのだが、録音が絶品だと思う。ホールトーンの豊かさと、距離感が感じられ、バンダ部分の音響も抜群である。想像していたほどには、派手さはないが、力強さもあり、ソフト感もある演奏だ。
う〜ん。かなり聞きやすく心地よい。
1812年で、心地良いとか、微妙なニュアンスがあって〜などと言うと、変な感じがするのだが、大々的に、そして圧倒的に、単純に、勝利を祝うという雰囲気ではない。
祝祭的な雰囲気は残しつつも、品よく仕上がっているような感じで、この点、ショルティ盤とは大きく異なっており、エンターテイメントな演出よりは、自国の楽曲として誇りを持って演奏している印象を受けた。


1964年 マルケヴィッチ コンセルトヘボウ  Ph ★★★
1966年 カラヤン ベルリン・フィル ★★
1978年 カンゼル シンシナティ交響楽団 Telarc ★★★
1981年 ムーティ フィラデルフィア管弦楽団 Brilliant ★★★
1985年 デュトワ モントリオール交響楽団 Dec ★★★★
1986年 ショルティ シカゴ交響楽団 Dec ★★★★★
1988年 マータ ダラス交響楽団 Pro Arte  
1990年 アバド シカゴ交響楽団 SC ★★★
1992年 スヴェトラーノフ  ロシア国立交響楽団 Cn ★★★★★
所有盤を整理中です。

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