「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

チャイコフスキー 幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」
Tchaikovsky: "Francesca Da Rimini" fantasia


チャイコフスキーの幻想序曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」(作品32)は、ダンテの「神曲」中にある詩を題材にしています。
ウィキペディア(Wikipedia)を元に記述すると
「神曲」中の絶唱とされる「地獄篇」の第5歌「フランチェスカ・ダ・リミニ」を読んだチャイコフスキーは、「宿命に逆らいながらも真実の愛を求め続ける」という理想を見出しして、これを題材にした交響詩を作曲したいと考えるようになったそうです。 で、1876年10月に着手して、あっという間に書きあげ、翌年3月には初演されています。

導入部に続いて、3つの部分が展開される形式となっています。
導入部は、減七の和音を駆使した重苦しい雰囲気で、4/4拍子、銅鑼と金管楽器が重用され、不安定な世界が繰り広げられます。
第1部は、ホ短調で、8/6拍子となり、地獄で苦しむ罪人達の姿、フランチェスカたちを待ち受ける過酷な運命が描かれています。木管楽器は、トリル風の動機を出し、ホルンは主要主題の断片を奏でます。
緊張を高め、クライマックスに達すると、シンバル、ティンパニが激しく打たれ、トランペットが主題を強奏します。
この主題は、繰り返され、一旦静まると、クラリネットに印象的なレチタティーヴォが現れ、第2部に移ります。

第2部は、4/4拍子 レチタティーヴォの主題によって、弦楽器により、甘く幻想的な雰囲気で、フランチェスカとパオロの恋を描いています。しかし、ホルンの信号風の動機によって曲調は一転し、調性感が不安定となり、 レチタティーヴォ主題が、全楽器の強烈な咆哮によって打ち砕かれ、破滅が描かれます。

第3部は、第1部の主題が再現され、地獄に落ちた2人が描かれるというもの。
激しいリズムに乗った、強烈な和音が奏された後、大きく膨れ上がり、ホ短調の長い和音で終わります。

約24分程度の楽曲ですが、ティンパニー3台、大太鼓にシンバル、ハープなどという大編成で、題材が題材だけに、金管の咆吼は凄まじいものがあり、度肝を抜かれるほどドラマティックです。
甘さを強調すると、 ロメオとジュリエットと同様になってしまう嫌いがあり、かといって、心理描写を真正面に取り組むと、どうなるのか・・・ ワタシにとっては、青ざめて終わりという感じになりそうですが、いやいや、そんな大層に考えなくても〜という考えもあるかもしれません。

ドラティ ワシントン・ナショナル交響楽団 1974年
Antal Dorati
The National Symphony Orchestra

ふむふむ。


録音状態は、まずまず。ちょっと古いので、ヌケは良くないが、ドラマテックな要素は感じられる。
カップリング:チャイコフスキーの管弦楽曲集として2枚組BOXとなっている。
下記のとおり。リマスタリング盤
チャイコフスキー 管弦楽曲集 ドラティ 2枚組BOX

1 イタリア奇想曲  デトロイト響(1978年)
2 幻想序曲「ハムレット」  ワシントン・ナショナル響(1973年)
3 交響的バラード「地方長官」  ワシントン・ナショナル響(1973年)
4 幻想曲「運命」  ワシントン・ナショナル響(1974年)
5 序曲「1812年」  デトロイト響(1978年)
6 幻想序曲「ロメオとジュリエット」  ワシントン・ナショナル響(1974年)
7 幻想曲「テンペスト」  ワシントン・ナショナル響(1974年)
8 幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」  ワシントン・ナショナル響(1973年)
9 スラヴ行進曲  デトロイト響(1978年)

この2枚組のCDは、1973年・74年のワシントン・ナショナル響との録音はイマイチなのだが、78年のデトロイト響との録音は、すこぶる良い。録音した年は、わずか5年なのだが、全く違うと言っていいほど、録音状態が異なっている。
ここで紹介するフランチェスカ・ダ・リミニは、録音がイマイチ冴えない。
続いて流れてきたスラブ行進曲は、嬉しくて泣きたくなるほどの極上の録音だ。すごっ・・・その差、あまりにも歴然としており、ワタシは、口をあんぐり開けて、唖然・・・。

まっ 気を取り直して、フランチェスカ・ダ・リミニを聴く。
録音状態は、イマイチで冴えないって言っているが、一応、73年にしては良い方だと思う。

冒頭、ゴツンっという引き締まった弦と、金管の「そぉ〜ふぁ そぉ〜 そぉ〜ふぁそっ しぃ〜らしぃ〜っ」と、悲痛な音が出てくる。低弦のアクセントのある粘っこいフレージングで、「れぇぇ〜どぉ れぇ〜 れれぇ〜」という、タタンっという、頭出しのガシっとした音だ。弦は、弓が、切れるんじゃーというほど、きーっ ひぃーと引っ張ってくる音を出している。
まあ、頭出しから、ドラマティックな演奏だと思う。
木管は鋭く、嵐のような雰囲気で、吹き荒れているし〜 奥まった、距離感を感じるところで吹かれている感じがする。
ブラスは力強いし、勢いが凄まじいっ。シャンシャンっ ドンドンっ。
爆発的で、鋭い閃光を放つかのような、鳴り物だ。
一瞬、ふっとした間をあけて、打ち込まれてくる鳴り物、特に、ブラスと、大太鼓の打ち込みは、ドスンっ シャンシャン! ひぇ〜 漆黒の闇のなかの、音の嵐、洪水状態である。

しかし、甘いフレーズのところは、やっぱりドラマティックに盛りあげてくるので、歌として、しっかりと聞こえてくる。
弦のフレージングも、木管との絡みも美しいハーモニーとなっている。
クラリネットもフルートも巧いし、アンサンブルが、わりとタイトなので、緩くならない。
厚みのある弦のフレーズが覆い被さるかのように歌い始め、畳みかけてつつ、粘りながら、うねりを生んで、大きく、大きく膨らんでいく。
しかし〜 23分54秒というクレジットなのだが、わりと長い楽曲のわりには、 あまり悲痛さがなく、劇的な要素は多くあるのだが、冗長的に聞こえてしまうのは、何故なんだろう。
たっぷりとした、一幕の劇を観ているかのような感覚で聴くことができたのだが、どこか長いと思って、 ちょっぴり退屈してしまったのだ。う〜ん。ドラマテックに演奏しても、間合いの悪さが感じられるのかもしれない。


デュトワ モントリオール交響楽団 1988年
Charles Dutoit
Orchestre Symphonique de Montreal
(Montreal Symphony Orchestra)

ばっちグー!


録音状態は良い。魂の救済不可能って世界を描いていると思うのだが、ちょっと綺麗すぎて、地獄の道行きという感じがしない。しかし、録音状態の良い盤が少ないので〜 貴重かも。
カップリング:チャイコフスキー 交響曲第4番、幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」
チャイコフスキーの幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」は、ダンテの神曲の第5編地獄編がモチーフになっている。
「神曲」っていうだけで、腰が引け歯が立たないのだが、 ここでのモチーフは、ひとことで言っちゃうと、男女の愛欲がテーマになっているようだ。

日頃、漫然と生きているので、書棚に「神曲」はあるのだが、全編を読破したわけでもなく〜
軟弱なワタシが、単純にストーリーを読んで感じたことなのだが、なんでー 地獄に堕ちないとダメなのか、ワタシ的には、イマイチ納得がいかない。
なぜなら、家の政略結婚で、好きでもない男性に嫁ぐ羽目になり、それも父親に騙されて、ダンナだと思った相手は醜い男だった。結婚を断ったら、まずいってことで、初めに美男の弟を引き合わせていた。
で、当然好きになった相手はダンナの弟でした・・・ってわけである。(そんなのアタリマじゃん)
親にも、ダンナにも、ハメラレタわけである。

確かに、結婚したのに、弟と不倫関係が続いていたのは、とっても悪いことだけれど、ある夜、嫉妬に狂った夫に殺されてしまう。う〜ん、地獄に堕ちないといけないのは、ダンナじゃーないの?
悪いのは、どっちなのよぉ〜 パパだって悪いじゃん。
(いや、そんな簡単なモノでは無いはずだが・・・)
改めて幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」について、ウィキペディア(Wikipedia)で調べてみたら・・・

「フランチェスカ・ダ・リミニ」は、ダンテの「神曲」中の絶唱とされている詩である。その内容は、概ね次の通り。

13世紀ラヴェンナにあるボレンタ家の美しい姫フランチェスカは、父の命令で、宿敵マラテスタ家との和解のため、同家の長男ジョヴァンニのもとへ嫁ぐことになる。
しかし、 フランチェスカを迎えに来たのは、ジョヴァンニの弟である美青年パオロだった。

2人は恋に落ち、嫁ぐ相手であった醜いジョヴァンニとフランチェスカが結婚してからも、彼らは密会を続ける。ところがある夜、フランチェスカとパオロが密会しているところをジョヴァンニに見つかり、嫉妬に狂ったジョヴァンニによって、2人は殺されてしまう。
2人は色欲の罪を犯した者として、地獄の嵐に吹き流される。
・・・となっていた。

右の挿絵は、ギュスターヴ・ドレの挿絵である。
ドレの挿絵は、すごくドラマティックで壮大だ。

モノクロだが、描き方は繊細だし、光のあてかたが明瞭で、コントラストが大きいので迫力がある。Gustave Doré, Francesca da Rimini
(illustration to Dante's Inferno, 1857).

おびただしい男女が、互いに抱きつつ、空に浮かんでおり、それが龍のように帯状になって、グルグルと宙を廻っている。
初め見たときは、背景は洞窟なのだと錯覚したのだが、壁に見えたのは、これ全て抱き合った男女なのだ。
「Paolo and Francesca」関連の挿絵は都合5枚あるみたいである。

まあ、不倫は御法度なんでしょうけど。運命に逆らってもなお、愛情を貫くって姿勢も大変である。う〜ん。ワタシには、そんなパワーも覚悟もないなあ〜って思う。
気が萎える。ドレの挿絵を見ているうちに、気が滅入っちゃって疲れてしまった。

さて、肝心のチャイコフスキーの楽曲なのだが、まだまだ、これから聞き込まないとダメである。
嵐のような、劇的なドラマトゥルギー的なフレーズというか、インパクトのあるフレーズは、確かに登場するのだが、道行きしている主人公なのか、それとも、フランチェスカとパオロの生涯に焦点があたっているのか、ワタシにはわからなかった。
場面場面によって変わるのだろうか。

構成は3つに分かれている。最初は、道行き風で〜 中間が甘い恋場面 最後、再び主題が戻ってきて、地獄状態って感じなのだ。

中間の甘いフレーズは、チャイコフスキーの旋律美が奏でられ、ロメオとジュリエットのような甘さがあるが、しかし、ちょっと暗めで終始し、最後、やっぱり殺人現場って感じのフレーズが入ってくる。
時間が逆戻りしており、リアルタイムで劇が進んでいないためか、ふわっとした宙に浮かんだ感じが全体にただよう。
で、最後、劇の幕が下りるわけではないので〜 永遠に魂は救われない。
だから、まだ永遠にこの状態が続く。
という、なんだか報われず、救われない・・・結末のないドラマのようなのだ。

で、音としては、ダメだし審判なのだが、永遠に繰り返される輪のなかに、閉じこめられたまま、流れていくようで〜
果てがない気味の悪さがあり、後味が、とっても悪いのだ。
やっぱり、何度となく聴いてみたが、最後が、とても据わりが悪い感じだ。これは終結しないのだろうか。
それが言いたいのだろうか。

デュトワ盤は、録音状態は良い。あまり録音状態の良い盤が少ないので、とても貴重かも。
しかし、聴きどころはサンドウィッチになった構成と、中間部の甘さ、そして悲劇的要素なのだろうが、最後が、ワタシ的には、よくつかみきれず釈然としていない。
ワタシの頭のなかも、ぐるぐる〜うねうね〜しちゃっているのだ。メビウスの輪のなかに、離れない輪のなかに、入り込んでしまったような気味の悪さ・・・が、残ってしまった。でも、これで良いのかもしれない・・・。


アシュケナージ ロイヤル・フィル 1988年
Vladimir Ashkenazy
Royal Philharmonic Orchestra

いかさねぇ〜


録音状態は良い。音圧を伴った大太鼓の音には驚いたが、どこか緩いというか、まったりしてて、あまりピンっとこなかった。
カップリング:
チャイコフスキー ロメオとジュリエット、イタリア奇想曲(87年)、幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」、弦楽のためのエレジー(88年)
後年、悲愴とカップリングされた盤がある。(フィルハーモニア管弦楽団2002年)

アシュケナージ盤で聴くと、録音状態としては良いのだが、空気が暖かめに感じられて、神曲の地獄篇をモチーフにしたというイメージからは、少し遠い。

冒頭、金管の「そぉ〜ふぁ そぉ〜 そぉ〜ふぁそっ しぃ〜らしぃ〜っ」と、しっかり聞こえてくる。
で、弦の旋律も、力強く、悲鳴をあげるかのように、上昇を繰り返している。
木管のフレーズも、スピード感があるが、ぼわっとした感じで、ここは、もっと輪郭があった方が良かったかもしれない。

なかなかに爆発感のある演奏で、大太鼓やシンバルなどの響きは、相当に入ってくるし、銅鑼もシャーンっと響いている。
大太鼓の打ち込みは、どきっ! とするような、肝を冷やすような音で入っている。
しかし、音が洪水のように、あふれかえってくるかのような楽曲だが・・・ いったん静まった後は、もっと、凍り付いたような、張り詰めた空気感が欲しいかもしれない。

シンバルの鋭い音や、木管のフレーズに、イマイチ鋭さが足らないような気がするが、圧倒的な音量で行ききってしまう。
クラリネットのソロ部分は、少し甘めの音だし、その後、ロメジュリのような甘いフレーズが奏でられる。
中間部は、確かに綺麗なのだけど〜 弦の長いフレーズが続くなか、フルートやクラリネットが、甘い恋心を表し、飛び交うようなフレーズが奏でられるときには、ついつい、欠伸が出ちゃう。
甘いのは良いが、もうちょっとテンポが欲しいかも。不謹慎ながら・・・ 曲と共に、こっちも緩んでしまった。

第3部は、1部が再現されるのだが、う〜ん。悲劇的な結末を迎えるドラマという、悲痛な感じがあまりしない。
なにがダメっていうわけではないのだが、弦のフレージングが少し甘めで、タイトさがあまり感じられないとか、そんなぐらいだろうか。それとも音質なのだろうか。何度か、繰り返して聴いてみたのだが、どうも、ピンっと来なかった。
おっとりしているという感じがする。それが、楽曲のせいなのか、いや〜 そこそこに迫力はあるのだが、どこか鋭さが無いためなのか、ちょっと、今のところわかりません。もう少し他盤を聴いてみないといけないな〜と、思っています。

ウィリアム・ダイス(William Dyce)
「パオロとフランチェスカ」Paolo and Francesca
1837年
スコットランド国立美術館蔵
National Gallery of Scotland 
ドミニク・アングル (Jean-Auguste-Dominique Ingres)
「パオロとフランチェスカを発見するジャンチョット」1819年
Gianciotto Discovers Paolo and Francesca
アンジェ美術館蔵
Musee des Beaux-Arts, Angers, France
1959年 マルケヴィッチ ラムルー管弦楽団  
1974年 ドラティ ワシントン・ナショナル交響楽団 Dec ★★★
1988年 デュトワ モントリオール交響楽団 Dec ★★★★
1988年 アシュケナージ ロイヤル・フィル Dec ★★★
1991年 ムーティ フィラデルフィア管弦楽団 EMI  
1996年 スヴェトラーノフ ロシア国立管弦楽団 CANYON  
所有盤を整理中です。

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