「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

チャイコフスキー 幻想序曲「テンペスト」、「ハムレット」
Tchaikovsky: Symphonic Fantasy "The Tempest" "Hamlet"


さて、このページでは、シェークスピアの戯曲を元に作曲された、幻想序曲2曲をご紹介しましょう。

ウィキペディア(Wikipedia)を元に記述すると、
幻想序曲「テンペスト」作品18は、ロメオとジュリエットに続いて、1873年に作曲されています。同年2月には、交響曲第2番が初演されたという時期です。なお、本人はこの曲を気に入らなかったそうですが、フォン・メック夫人が、この曲の初演を聴いて大感激し、支援を申し出られたそうです。
テンペストは、フルートやホルンなどがヘ短調の主和音を奏して始まり、弦と金管によって海が描写され、やがて激しい嵐となります。プロスペロー公爵が魔法で嵐を起こし、宿敵の息子ファーディナンドの船を難破させようとする場面です。
嵐が次第に収まると、チェロが「愛の動機」を奏して、公爵の娘ミランダとファーディナンドの愛を描き、再び、海の描写に戻って、海の静けさを描いて曲を閉じるというもの。演奏時間は約25分です。

幻想序曲「ハムレット」作品67aは、1888年に作曲され、交響曲5番と同年初演されています。
シェイクスピアを題材とする作品は、「ロメオとジュリエット」「テンペスト」と、この「ハムレット」がありますが、当曲は上演のための劇付随音楽も作られています。
ハムレットには、いろんな動機が出てきますが、冒頭のハムレットの主題と、3分の1進んでから出てくるオーボエによるロシア民謡風によるオフィーリアの主題、そして、木管が表情豊かに描く愛の主題と、合計3つの主題があります。
最後には、fffff のクライマックスを経て感動的に終わります。わずか約18分の楽曲です。

いずれも、スケールが大きく、チャイコフスキーならではの甘い旋律が詰まった、ドラマ性の高い楽曲となっています。
コンサートの1曲めに、取り上げられると、ちょっぴり女性としては嬉しいかもしれません。

ドラティ ワシントン・ナショナル交響楽団 1973年
Antal Dorati
The National Symphony Orchestra



録音状態は、まずまず。ちょっと古いので、ヌケは良くないが、それを補ってあまりある演奏。なんといっても、キレがあり、畳みかける勢いあり、シャープで緊張感のあるリアルな演奏である。
カップリング:チャイコフスキーの管弦楽曲集として2枚組BOXとなっている。イタリア奇想曲、1812年、スラヴ行進曲は、オケがデトロイト響である。リマスタリング盤

チャイコフスキー 管弦楽曲集 ドラティ 2枚組BOX
1 イタリア奇想曲 デトロイト響(1978年)
2 幻想序曲「ハムレット」 ワシントン・ナショナル響(1973年)
3 交響的バラード「地方長官」 ワシントン・ナショナル響(1973年)
4 幻想曲「運命」 ワシントン・ナショナル響(1974年)
5 序曲「1812年」 デトロイト響(1978年)
6 幻想序曲「ロメオとジュリエット」 ワシントン・ナショナル響(1974年)
7 幻想曲「テンペスト」 ワシントン・ナショナル響(1974年)
8 幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」 ワシントン・ナショナル響(1973年)
9 スラヴ行進曲 デトロイト響(1978年)

幻想序曲「テンペスト」

「そっそ れぇ〜 れらど どっどぉ〜 どしぃ〜 ししっ〜 そそっみぃ〜 みし れ〜 れれっ〜」
73年の録音だが、リマスタリングされており、まずまず良い音で聴ける。
なんたって、冒頭のホルンが綺麗に鳴ってこないと、ブーイングものなのだが、透る音ではないものの、まっ こんなモノかな。
奥の方で高いヴァイオリンの音色が、シャワシャワシャワと鳴っており、波間の煌めきが感じられる。
で、こっそりと、、、音になるか、ならないような音圧があり、、、ん?
きっと、大太鼓なんだろうと思う。
微妙な音の圧迫感を感じるのだ。ホント、かすかな音だが・・・。
これが、スパイスのように効いてて、暗闇のなかの航海なんだな〜と、雲行きの怪しさとか、底知れぬ怖さや凄み、悲劇を暗示するかのように、じわじわ〜っと、ボディーブローのようにきいてくる。
スヴェトラーノフさんの盤でも、きっと鳴っていたんだろうが、気がつかなかった。
なかなかに、見通しの良い演奏である。結構、耳がそばだってしまった。音質は、さほど褒められないのだが、フレーズや各楽器の分離の良さを感じる。

「そそそ〜 そそそ〜 そそそ〜っ」と、ホルンのフレーズがずーっと続くなか、「ふぁ〜れみ ふぁそれっ ふぁ〜れみ ふぁそれっ」と、金管が鳴り出して、 執拗な感じで、「みそしら みそしら みそしらっ・・・」と、畳みかけてくるところも、なかなかにスピード感がある。
いやいやスピードは、遅いのだが、なーんていうか、同じテンポでやっているものの、ぐっと一瞬にして、圧縮するのである。で、緩急の差が大きい感じがする。
金管のキレというか、ティンパニーの連打は、なかなかに迫力あり。
大太鼓の音も大きいし、ゴボゴボっと音を立てているような感覚に襲われ、海の底に引きずり込まれそうなパワーが感じられる。
いや、迫力というか、凄みというか、ぐっと差し込み、キレの鋭さがある。
スヴェトラーノフ盤は、重量感も躍動感もあるが、どっちかというと鷹揚とした感じだ。ドラティ盤は、そこは、畳みかける強さ、勢いがあって、磨かれた鋭い感覚がする。
その感覚は、やっぱ鋭敏だし〜 忍者のようなすばしっこさがあり、跳躍感が凄い。う〜ん。やっぱ巧いっ。と、舌を巻いてしまった。
もっと、もっと重低音がクリアーに入っていたら、のけぞっていたに違いない。
序曲「1812年」も、凄いが〜 いやいや、なかなか「テンペスト」も凄いぜ。ってなっていたでしょうね。

「れぇ〜し れし そ〜ふぁ ふぁみ〜れ ら〜しどれ〜」というフレーズは、ちょっと音質が、枯れ気味だが、首がクネクネと動いて、歌いたくなってしまう。
「そぉ〜み そみ ら〜そ」という甘いフレーズは、速いのだ、速いっ、クネクネ〜っとシナをつくって、切迫感を与えながらの甘さがある。
う〜ん。音がイマイチだが、鷹揚なスヴェトラーノフ盤よりも、もっと切なくなってくるなあ。
フレーズの畳み方が巧いというか、押してくるのだ。押して押して、波を造っていく感じで、押されて〜 くいっと、顎があがる感じがする。巧いなあ。やっぱっ。オンナ心を、しっかり解っていらっしゃる。

チャイコフスキーの男性ならではの堂々としたフレーズと、女性らしい胸を詰まらせるフレーズの両方を兼ね備えてて、ふふふっ。これは、やられるわ。
緊張感が、ぴ〜んと張ってくる感覚が、たまりません。ねじ込まれてくる、押しの強さ。
ビリビリする、雷が落ちるかのような電撃性というか、バリバリしている勢いのあるパワー。切なくって、身を悶えさせてしまうような色気。
それと、ドラマティックという言葉ではおさまらないような、リアル感。

これは、古い録音だからって馬鹿にできないですねえ。
やっぱ、指揮者で、こうも違うんだぁ〜
スヴェトラさんの、タメにタメた横綱相撲とは違って、ホント、ドラティさんの匠の技ですよねえ。こりゃ、まいった。一気に行っちゃいますね。
テンペストって名前負けしちゃうかと思いましたけどね。
おっそろしい音の洪水で〜 コントラバスの大きな音が入ってて、弦の上を弓が踊って、わっ。わっ。飛んでるやんっ。「っん パパっ っん パパっ」 金管の咆吼、シンバルのシャンシャン音、「んーパパっパっ」
弦の勢いと回転力、フレージングの頂点の描き方が、やっぱ巧いです。頂点を目指した音の昇り方の素早さ、頂点一歩前の間合い、音の終息感、余韻まで。
う〜ん。やっぱ巧いっ。無駄がないですね〜そう思います。
現在の指揮者で、このドラティさんのような指揮をしてくれる人で、誰がいるのかなあ。う〜ん。

インバル フランクフルト放送響 1974年
Eliahu Inbal
Radio Sinfonie-orchester Frankfurt
(Frankfurt Radio Symphony Orchestra)



録音状態は、 まずまず。もっとクリアーだと良いのだが、しかし、迫力もあるし、木管も綺麗だし、いつもは素っ気ない感じのインバルさんだが、甘美で、分厚さも、熱っぽさもあり、なかなかの熱演だ。
カップリングは下記のとおり。

チャイコフスキー 交響詩集 2枚組
1 幻想曲「運命」            インバル フランクフルト放送響    1974年
2 幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」  マルケビッチ ニュー・フィルハーモニー 1967年
3 幻想序曲「ハムレット」        マルケビッチ ニュー・フィルハーモニー 1967年
4 序曲「嵐」               インバル フランクフルト放送響    1974年
5 幻想曲「テンペスト」          インバル フランクフルト放送響    1974年
6 交響的バラード「地方長官」     インバル フランクフルト放送響    1974年
7 幻想序曲「ロメオとジュリエット」    ハイティンク コンセルトヘボウ     1964年
8 序曲「1812年」           マルケビッチ コンセルトヘボウ     1964年

幻想序曲「テンペスト」

シェークスピアの戯曲には、いろんな世界へと広がる魅力があるのか、チャイコフスキーも触発されて、3曲つくっている。有名な「ロメオとジュリエット」「ハムレット」、そして、このページで紹介する「テンペスト」である。
ストーリーを知っていないと、音楽だけ聴いても、ちょっとイマイチ、イメージが膨らまないと思うが〜
甘くて、切なさもあり、なんといっても歌謡風の旋律美が美しいっ。
作品番号18という初期の作品なのだが、さすが、チャイコ先生〜 フレーズの甘さと歌謡性は、この当時から既に確立されているようで〜 ドラマティックな場面もあるし、とっても親しみやすいのである。

交響曲も協奏曲も有名な作品が目白押しだし、交響詩と呼ばれるようなジャンルでも、「ロメオとジュリエット」が、ダントツに有名なので〜 なかなか、テンペストやハムレットまでには至らず、日の目を見ないのだが、まあ、女性には人気はあるかもしれないが、男性には、ねえ〜 甘ったるい曲だな〜と敬遠されるかも。てなわけで、交響詩してまとめられたCDも、あまり売られていない。
ここで紹介するのは、インバル盤だが、少し靄がかかっているようで、さほど良い録音とは言えないが、まずまずの迫力はある。

ホルンが冒頭に、海の情景を描く。「らぁ〜 れぇれぇ〜〜れぇ〜」 
「そそぉ れぇ〜  れふぁ どぉ〜 どっ どぉぉ〜 どし〜」
「そっそ みぃ〜 みし れぇ れっれ〜 れどぉ〜」
帆船が航海しているって感じの広がり感、勇壮さが出ており、静かな海である。
そこに、波のように「ふぁ〜れみ ふぁそれっ ふぁ〜れみ ふぁそれっ」と、さざ波を描く弦が登場する。
まあ、冒頭のホルンが命って感じで、冒険家のようなワクワクした感じがある。

「そそそ そぉ〜 みみっどぉ〜 どそ しぃ ししっ〜 しらぁ〜」
まっ ちょっと執拗な感じもするが、なかなかに力強く、優美な帆船で、国王所有の帆船っぽくって、お品があるのだ。序奏部分が、ちょっと長いのだが、雲行きが怪しくなって嵐となってくる。

「ふぁ〜れみ ふぁそ れぇ ふぁ〜れみ ふぁそ れぇ〜」
さっき登場した波が、楽器を変えて、力強く描かれてくる。さっすが〜
同じフレーズなのに、がらりと印象が変わる。
ころころの転がっていく木管と、ずーっと、吹き続けられている短いフレーズのホルンが、「みそしら みそしら みそしらっ・・・」と畳みかけて、チューバのぶっといフレーズが被さる。
小刻みなフレーズと、覆い被さる重低音の音となって、波が迫り来るのだ。
大太鼓さんが大忙し。
静から動への移行、リズムの構成が、へへへっ メチャシンプルなのだが変容するところが面白い。
ドンドンっ、ごろごろ〜とした大太鼓の響き、金管の咆吼、トランペットの甲高くつんざく音、雷のような光が、バシっと入ってくる。ホルンも巧いし、ドンドン ドンドン!
「れ〜れれ しっし ふぁ〜 ふぁ〜ふぁふぁ どど ふぁ〜」 「らし らし らし ふぁっ!」
シンプルな音が鳴っているんだけど、単純だけど、メチャド派手、ド迫力です。
シンバルは入ってくるし、トロンボーンも、トランペットも大忙しだ。おおっ、こりゃびっくり。

で、鎮まったあとに、「れぇ〜し れらみ〜れ〜 そどぉ〜し み〜ふぁそ しら」 「みふぁそしら」
「れぇ〜し れしそ〜ふぁ し み〜れ ら〜しど みれ〜」と、チェロとオーボエのあま〜いフレーズが登場する。ぽよよ〜ん。こりゃ とろけるでしょ。
さっきまで、大海原で嵐が巻き起こっていたのに、場面が変わると、いきなり甘美な旋律が登場してくるんだから。
「れぇ〜し れし そ〜ふぁ ふぁみ〜れ ら〜しどれ〜」
「れぇ〜し れし ら〜そ らそ ら〜しど みれ」
うねるような、甘美なヴァイオリンの音色が、「れれみふぁ らそ れれみれ らそっ」と迫ってくると、色気がムンムンしてくる。
いつも素っ気ないインバル盤でさえ、甘いんだから〜 他盤だと、もっとねちっこく奏でてくるのだろうなあ。と、ちょっと、ほくそ笑んでしまう。
さて、場面が展開して、コントラバスの強い引きが入ってくる。
弦のキレのある「タタタタ タタタタ・・・」とリズムが刻まれ、ダダンっ ダダンっ。「タタ〜ん タタ〜ん」
弦の鋭くて長い語尾が、ぐいーっと引っ張られて動きが増してくる。

そこに、また今度は、フルートが甘いフレーズを吹く。
「ふぁ〜れ ふぁど そぉ〜ふぁ ら〜れ どぉ〜そらし ふぁ」
「ふぁ〜れ〜ふぁどぉ〜 ら〜れ〜ど しぃ〜」
まあ、甘い木管群のフレーズが、集まってきて〜 ふふふっ 甘さを誘うのである。メチャメチャ甘くて、濃厚で、綺麗だなあ〜と思う。個人芸の集まりですかね。
この曲は、それぞれの楽器が、きっちりと役割を与えられて、何を表現していくのか決まっている。で、この役割が明瞭なのだ。でも面白い。

フレージングは、甘いし、この甘いフレーズを、どれぐらいタメて歌うか。かなり印象が変わるだろうが、力強いオーケストレーションと、各楽器の活躍ぶりが、目(耳)にとまる。
特に、木管の響きが、彩りを添えていて、これが巧い下手を決めちゃうような気がする。
チャイコフスキーのパトロンと言えば、フォン・メック夫人だが、この大富豪のご婦人が、チャイコフスキーを援助しようとしたのは、この曲を聴いたからだとか・・・。
ハイ、解りますねえ。その気持ちっ。

単なる海の描写だけではなく、チェロの甘いフレーズが、愛情を示す動機となってて、見事に構成されている。歌うフレーズが、随所にちりばめられており、まるでオペラの序曲のようだ。
インバル盤、まずまず、うねうね〜として良いです。
もっと、色彩感のあるオケ、色彩感のある演奏の方が確かに嬉しいですけどね。まっ ラフマニノフのように、ちょっと曲自体が冗長的でシツコイんですけどね。この点はご容赦を。

スヴェトラーノフ ロシア国立交響楽団 1996年
Evgeny Svetlanov
Svetlanov State Academic Orchestra
(Russian State Symphony Orchestra)



録音状態は良い。ゆったりとした、甘みたっぷりの濃厚な演奏で、ドラマティック。ちょっと鷹揚だけど〜
カップリング:チャイコフスキー ロメオとジュリエット、戴冠式祝典行進曲、テンペスト、ハムレット

幻想序曲「テンペスト」

スヴェトラーノフさんが、キャニオンへ録音したチャイコフスキーは、交響曲と交響詩のような短い曲を集めて売られているものがある。短い曲の方は、幻想序曲「ロメオとジュリエット」を始めとして、7曲分がCD2枚になって売られている。
(↑ 序曲集でもないし、交響詩でもなく〜 チャイコの場合は、呼び方がバラバラですが)
ここで紹介するCDの他に、もう1枚あるわけ。
まっ ここでは、テンペストをとりあげるワケだが、いずれにしても録音状態が良いし、聞きやすいと思う。

シェークスピアの「テンペスト」を、ウィキペディア(Wikipedia)で調べてみたら、下記のとおり。
ちょっと、かいつまんでストーリーを語ると・・・

ナポリ王とミラノ大公を乗せた船が嵐にあって難破し、孤島に漂着する。
その島には、12年前、大公の地位を追われたプロスペローが、娘と住んでいて、なにやら怪しげな魔法を研究していた。
元大公プロスペローが妖精エアリエルに命じて使った魔法で嵐が起こったため、船が難破したのだった。
孤島で、復讐劇が始まるってワケである。
だが、一緒に乗っていたナポリの王子ファーディナンドは、プロスペローの娘ミランダと恋に落ちる。
難関を突破して恋を勝ち得た王子は、無事にミランダと結婚。
難破した船に乗っていた現在のミラノ大公アントーニオは、王の殺害を計画。また、島に住み着いている怪獣キャリバンを使って、プロスペローの殺害を計画する。でも、妖精アリエルの防御によって、いずれの殺害計画も失敗。
一方、12年の怨念を晴らすため、復讐しようと嵐を起こした主人公プロスペローは、妖精を使って、難破船に乗っていた、昔、自分を追い出した者と会って喋る。
しかし、結局は、復讐を思いとどまり、娘のシアワセを願う。
魔法の服を捨て、妖精も自由の身に解放し、さて、このまま孤島にとどまるか、ナポリに帰るか・・・。

復讐劇であり、恋愛モノでもあり、なかなか面白そうである。登場人物の関係図も、ウィキペディアに掲載されていて、なかなかに気になるところ。
また、妖精エアリエル(Ariel)と、怪獣キャリバンの存在が気になるが〜(笑)
ちなみに、筑摩世界文学大系って本を紐解いてみると、妖精エアリエルは空気の精、キャリバンは野蛮で奇形の奴隷ってなっていた。
一応、さらり〜っと読んでみたが、短い文章のなかに、たまっていた怨念を捨てるという、水に流す〜という行為が、なかなか出来ないなか、う〜ん、妖精の力を借りてはいるものの〜 なかなかに含みがある。

さて、テンペストは、なんたって、冒頭のホルンが命だ。
「らぁ〜 れぇれぇ〜〜れぇ〜」「そそぉ れぇ〜  れふぁ どぉ〜 どっ どぉぉ〜 どし〜」
「そっそ みぃ〜 みし れぇ れっれ〜 れどぉ〜」
メチャクチャ長い序章部分という感じで、穏やかに帆船が、広い海を航海している感じが出ている。
R=コルサコフのシェエラザードのように、いきなり、波が、ざぶん〜っと、おおいかぶさってくるような迫力がなく、なんとも劇的な効果が少ないのだ。メチャメチャ穏やかな航海なんだけどなあ。いかにも長い。

だって、シェークスピアの戯曲では、のっけから大嵐なのである。
船長と水夫が、帆を下ろそうとやっきになっているところから始まるのだ。
なのに、この曲では、5分ぐらい穏やかに演奏された後でないと、大嵐に遭遇しない。
「ふぁ〜れみ ふぁそれっ ふぁ〜れみ ふぁそれっ」と、金管が鳴り出して、「みそしら みそしら みそしらっ・・・」と畳みかけて、チューバのフレーズが、バシャンっと、船のうえにかぶさってくる。

スヴェトラーノフさんの演奏は、重量感もあり、躍動感もある。それに、濃厚なたっぷり味のロマンティックさがある。濃厚ですよぉ〜 あっさり、さらり〜なんて演奏しません。タメにためて、次のフレーズにかぶさるぐらいにノビがある。
ところで、劇のなかで、妖精エアリエルが歌う場面が2ヶ所ある。

「ここの黄色い砂浜に来て、手と手をおつなぎ。あいさつしあって口づけしたら、海も穏やか、品良く踊れ、あっちこっちと。美しい精霊たちよ、はやしておくれ。お聞き、お聞きよ、
ワンワン番犬どもが吠えている。ワンワン お聞き、お聞きよ。ほらもったいぶっている、にわとりの声を。」
「父は五ひろ、海の底。骨は珊瑚になりかわり、2つの眼は今、真珠。身体はどこも朽ち果てず、海の力で、みな変えられて、不思議な宝となっている。海の乙女から、弔いの鐘鳴らす。」
この1幕の歌の他にもあるが〜 これが、男女のロマンスを呼ぶきっかけに使われている。

へえ〜 シェークスピアと音楽ねえ。繋がるんだっ。と、意外な発見っ。
でも、この劇、ロマンスより、どちらかというと、妖精エアリエルと元大公のプロスペローの掛け合い、台詞が面白いんですけどね。
で、スヴェトラーノフさんの演奏は、チャンバラ劇のように、「れ〜れれ しっし ふぁ〜」 ジャンジャンジャンっと鳴る場面も楽しいが、スヴェトラさんの演奏は、濃厚な甘さが、これでもかぁ〜的に流れてくる。
「れぇ〜し れし そ〜ふぁ ふぁみ〜れ ら〜しどれ〜」というフレーズの甘さ、豊かさが、メチャメチャ際立っており、ねっとり〜と演奏されている。最後には、安息を得る主人公の寛容的な心情を表しているようでもあるし、ロマンスも含められているし、単なる自然描写ではないことは確かだ。
まあ、わずか20分程度 いや、スヴェトラ盤では、26分6秒というクレジットになっているが〜。
シェークスピアの劇の方も、ホント短いモノなので、一度読んでみられてはいかがだろうか。
それにしても、劇のなかで音楽的要素が、効果的に使われ、織り込まれているのは、ちょっとした発見だった。
1973年 ドラティ ワシントン・ナショナル響 Dec ★★★★★
1974年 インバル フランクフルト放送交響楽団 Ph ★★★
1996年 スヴェトラーノフ ロシア国立交響楽団 CANYON ★★★★
所有盤を整理中です。

「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

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