「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

2050

チャイコフスキー 交響的バラード「地方長官」、 幻想曲「運命」
Tchaikovsky: Symphonic Ballad "Voyevoda" "Fate"


インバル フランクフルト放送交響楽団 1989年
Eliahu Inbal
Radio Sinfonie-orchester Frankfurt
(Frankfurt Radio Symphony Orchestra)

まっ こんなモン

録音状態はまずまず。少し音量をあげて聴きたい。前半の描き方は詳細なのだが、中間部の甘い歌謡風フレーズが、ちょっと甘さが足らないかな〜と思う。

カップリング:
← 上のCD チャイコフスキー 交響曲第4番(89年)、交響的バラード「地方長官」(91年)

← 下のCDは、チャイコフスキー 交響詩集2枚組BOXで、ここに収められているのは74年の演奏である。地方長官は、勢いのあるテンポの良いスピード感あふれる演奏で、速いっ。録音状態は残響が少し多めだが、ピストルを撃つシーンは結構これもインパクトあり。上下2枚のCDを、同時には聞き比べていないが、基本的にはあまり変わらないのではないだろうか。
交響的バラード「地方長官」

最初は、遠いところから、パッパカ パッパカ パッパカ・・・ 馬が駆けてくるようなフレーズから始まる。
オペラの序曲のように、遠くから馬車が走ってきて〜
鮮やかに、馬が走っているシーンが、しっかり描かれており、全速力で馬車が目の前を通過していくような、迫力がある。
弦の重なり方とか、違うリズムの重なり方が、段々と増えていくので、まるでボレロみたい〜で面白い。
で、唐突な感じで、金管を入れてくるのが、稲妻のようで・・・ 結構、レアな感じで、最初は面白い。
ただ、ワタシ的には、録音がイマイチで、クリアーに聞こえず、低音の金管は、音色がくすんでいる。
特に、低音の金管が、どうも、ぼわ〜っとした音の像で、音が、ずぼっと落ち込んで行く感じがする。

で、中間部の甘いフレーズは、さほど、甘さが感じられず、総体的に音が、くすんでおり〜 その点、ちょっと残念だ。
ハープやチェレスタの音が、イマイチで、明瞭に響いて届いてこない。
録音状態が、総体的に、ぼんやり〜 ピントが合っていないような、オブラートに包まれたような、もわっとした感じ。
ところどころ、各楽器がクローズアップされているのだが、ワタシ的には、どうも・・・ 耳に馴染まない。
星が瞬く夜空をみあげて〜 ロマンチックな雰囲気が楽しめる楽曲だが、光化学スモッグのようで〜(← 古い表現)、いや、中国大陸から、PM2.5 大気汚染物質が飛んできた〜って感じだ。

で、最後の結末は、いきなり、バンっ! ちょっと驚かされる。
すっと、唐突に終わる。ん? 終わったの?
最初に聴いたら、えっ? 変な曲・・・ で、終わってしまいそうである。まあ、こんな曲なんですけどね。(笑)
インバル盤は、劇的な効果を目的にした演奏でもないし、地味である。
カップリングされている4番の演奏は、好きですが、録音状態が、ワタシ的には、ちょっと・・・ でした。
で、前半のシーンの描き方は、さすが。詳細に、綿密に描かれているように思うんだけど、なにせ、中間部の甘いフレーズが、キモなのに〜 ちょっとなあ。ムードが足らないように思う。
最後のびっくり、驚愕の音は、ハイ、しっかり驚かされましたが・・・。


アバド シカゴ交響楽団 1985年
Claudio Abbado
Chicago Symphony Orchestra

まっ こんなモン

録音状態は良いもののイマイチ抜けは良くない。演奏にパワーがあり、ワクワク感も十分に感じられる。躍動感あり。
カップリング:チャイコフスキー 交響曲第5番、交響的バラード「地方長官」
交響的バラード「地方長官」

このバラード「地方長官」は、あまり、というか、めったに演奏されることがない。
知名度は低いが、チャイコフスキーの管弦楽は、総じて、とても楽しいし、派手な劇的な楽曲が詰まっている。
個人的には、管弦楽曲やバレエ音楽に、チャイコフスキーの曲は大好きだ。管弦楽曲にチャイコの曲がなければ、どれほど寂しいことになるやら・・・。

それなのに、巷には、チャイコフスキーの管弦楽曲全集、なーんて銘打ったCDは、あまり発売されていないのである。
クラシック音楽の入門編として、 最初のとっかかりには、チャイコフスキーの楽曲は、とても聴きやすく、覚えやすく、うってつけの入門編だと思う。なんたって楽しいのだ。
序曲「1812年」や「ロメジュリ」は、基本中の基本だろうに・・・。って、ワタシの個人的意見だが〜。
それでも、多くのクラシックファンにも賛同いただけると思う。

さて、そんなぼやきは横に置いておいて〜 交響曲第5番の余白に収められたCDで、アバドさんの若い頃の演奏で、シカゴ響とのセッションである。
いやー こんなことを言うと怒られるが、5番の演奏より格段に面白い。
劇的に演奏されており、とてもワクワク感がある。まるで、オペラの序曲みたいに、ダイナミックだ。

スヴェトラーノフ盤でも書いたが、 地方長官、最初は、威勢の良いフレーズで、遠くから、パッパカ パッパカ パッパカ・・・ 馬が駆けてくるようなフレーズから始まる。
ティンパニーが、「ッタッタラ ッタッタラ ッタッタラ」、弦が、「みっれどっ みっれどっ そっふぁれ そっふぁれ・・・」
金管が、「みっれどぉ〜し らそ ふぁ〜そらっ みっれどぉ〜し らそ ふぁ〜そらっ」と、ぶっ放す。
その機動力というか、重厚な響きのなかの切れの良さ。
付点のリズム処理が綺麗というか、刻みも鋭いし深いし、弦楽器の弦のうえで弓が弾むというか。弓が踊るというか。
うまいこと跳ねてるんでしょうね。
それに、金管の音色も華やかだと思う。オケの音の幅が、やっぱ広くて、スケールが大きいのだ。

中間部は、大変美しく、女性的な主題となる。
「どら そぉ〜ふぁ〜 みど しぃ〜ら〜 そふぁ みぃ〜どしら」
「どら そぉ〜ふぁ〜 みど しぃ〜ら〜 そふぁ れぇ〜ど そふぁみ〜れ みれそぉ〜」
歌謡風の旋律美のなかで、チェスタやハープが可憐に添えられている。
色彩の鮮やかさ、きらりと光る輝き、胸キュンになるような旋律が、どうして、おじさんチャイコに書けたのか。
う〜 謎である。

で、結末は、まずまず・・・だが。最後が、ちょっと・・・ ん? 終わったの?って感じだ。
弦の強い響き、金管やティンパニーで、悲痛に終わっているし、馬力、迫力も申し分ないはないが、楽曲自体、ちょっと中途半端な終わり方とはいえ、アバド盤も、相当に中途半端かなと思う。
スヴェトラーノフ盤の方が、やっぱり大仰で、役者が一枚うえだったかも〜しれません。


2050

スヴェトラーノフ ロシア国立交響楽団 1996年
Evgeny Svetlanov
Svetlanov State Academic Orchestra
(Russian State Symphony Orchestra)

ひぇーぇぇ〜


録音状態は良い。劇的で、とても可視的。馬の駆けているようなシーンとか、甘美なとろけるフレーズ、そして、最後のピストル音は超リアル。
カップリング:チャイコフスキー 幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」、交響的バラード「地方長官」、幻想曲「運命」
交響的バラード「地方長官」

チャイコフスキーの序曲「1812年」が、大砲が登場することで有名なら、この交響的バラード「地方長官」は、ピストルが登場する。 タイトルの「地方長官」っていうのが、とっても地味な印象を与えてしまうのだが、日本でいうなら、そうだなあ〜 さしずめ「悪代官さま」だろうか。 まっ これは冗談ですけど。

ウィキペディア(Wikipedia)で調べてみたら、
・・・地方長官が夜に戦場から戻ってくると、若い妻の昔の恋人が妻に迫っているのを目撃する。長官は下男に男を殺せと命ずるが、下男の銃弾は長官の額に跳ね返って来る。
・・・と、いたってシンプルなストーリーが記されていた。

で、「地方長官」ではなく、「ヴォイェヴォーダ(Voyevoda)」というタイトルで表記される場合もあるが、その意味 としては、
・・・日本の音楽界では「地方長官」とする訳語が定着しているが、本来はスラヴ語圏において、地方の知事を兼務して権勢を振るった軍司令官のことを指す。このため一部に「ヴォイヴォーダ」もしくは「軍司令官」と訳する場合も見受けられる・・・とあった。

まあ、いずれにしても、題材は、ピストルで撃ち殺される悪代官さまなのである。
で、登場するピストルの音に、すごく驚かされる楽曲なのだが、実は、チェレスタが使われているのである。
これが、また使い方が巧いんである。
このチャイコフスキーの「地方長官」を聴く前に、バルトークの「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽」を聴いていたのだが、タイトルにチェレスタとあるにも関わらず、あーんまりインパクトのない使われ方をしており、ピアノの方が目立っていたのだ。 で、やっぱ〜チェレスタは、チャイコフスキーだよなあ。と思い、「くるみ割り人形」の金平糖の踊りも有名だけど、そうそう、この「地方長官」を聴いてみよう〜と思い立ったワケである。

地方長官、最初は、威勢の良いフレーズで、遠くから、パッパカ パッパカ パッパカ・・・ 馬が駆けてくるようなフレーズから始まる。

ティンパニーが、「ッタッタラ ッタッタラ ッタッタラ」と叩きながら、弦が嵐のように滑りながらフレーズを重ねる。
「みっれどっ みっれどっ そっふぁれ そっふぁれ そっふぁみ らっそふぁ・・・」と、段々と大きくなってくる。
で、金管が「みっれどぉ〜し らそ ふぁ〜そらっ みっれどぉ〜し らそ ふぁ〜そらっ」と咆吼する。
「ラッし ラッし ラッし ラッし」・・・ 凄い音の刻みだ。頂点を極めると、また、弱音になって、再度、馬が駆けてくるようなフレーズを繰り返す。
またまた、金管の咆吼があり、シャンっという切れるようなシンバルが挟まれる。
「っふぁみれ〜どしら そぉ〜らし ふぁみれ〜どしら そぉ〜らし らそふぁ〜みど しぃ〜どれ」

まあ、悪代官さまが、馬を駆って家にお帰りなのか〜戦場で活躍されているシーンなのか。よくわからないのだが、チャッチャ チャン チャッチャ チャンっと、躍動感のある、とってもリアルな劇的なシーンを描く。
同じようなフレーズを繰り返すことで、インパクトの強いモノになっているし、まるで映画のワンシーンのように、リアルな音で、視覚的効果のあがるモノとなっている。

次に、中間部は、大変美しく、女性的な主題となる。場面展開は、ハープのパラパラパラ〜というグリッサンドである。
一気に、憂鬱で翳りのある甘美なフレーズになって、チャイコならではの美味しいシーンが詰まっている。
この中間部で、チェレスタが使われているのだ。
このチェレスタって、チャイコフスキーの十八番、くるみ割り人形で使われて有名になったが、この時、チェレスタが、まだ出始めた頃なのだ。
で、最初、「地方長官」を聴いた時、あ〜 ここでも使われているんだ。と、大変驚いたのである。
だって〜 くるみ割り人形は、超有名曲だが、地方長官って、全く地味な存在曲なんだもん。

気になって、他のサイトを放浪させていただくと、パリの楽器制作家であるオギュスト・ミュステルが発明して、1886年に特許を得たとのこと。チャイコフスキーが、この楽器を取り入れて、1891年に「地方長官」を、92年に、「くりみ割り人形」を作曲しているのである。
くるみ割り人形で、チェレスタが最初に使われたと思っていたのだが〜
地方長官の方が、1年早いようである。
チャイコフスキーは、その頃、パリでこの楽器を見たんだろうな〜って思うのだが、すごい閃き度なのだ。
う〜ん。やっぱ凄い。先見の明あり。感性高いっ!

で、肝心の楽曲のご紹介だが、中間部分は、ハープも登場するし、地方長官さんの奥さんを主題にした愛情溢れる柔らかい音となっている。
「らぁ〜そふぁ らぁ〜そふぁ らぁ〜」
クラリネットも甘いし、そぉふぁみ そぉ〜ふぁみ パラパラパラ〜 ハープのグリッサンドが柔らかく響く。
「らぁ〜そ〜ふぁみ そ〜ふぁみ ふぁぁ〜みれ みぃ〜れど れ〜どしら どぉ〜しら〜」
まあ、フレーズはシンプル、本当に至ってシンプルで、この上のフレーズが楽器を変えて登場するだけである。歌謡風フレーズにもならない、単純な「ら〜そふぁ らぁ〜そふぁ」というフレーズしか繰り返さない。

「どら そぉ〜ふぁ〜 みど しぃ〜ら〜 そふぁ みぃ〜どしら」
「どら そぉ〜ふぁ〜 みど しぃ〜ら〜 そふぁ れぇ〜ど そふぁみ〜れ みれそぉ〜」

この甘いフレーズを何度となく繰り返すなかで、
「ふぁそらどしれどぉ〜 ど〜ふぁどしらしれどぉ〜 らそふぁどしれどぉ〜」 
そんななかで、チェレスタが、可憐な音を響かせる。
「ふぁそらどしれどぉ〜(パラパラ)」 ← このフレーズって、とっても特徴的で、まるでハリーポッターの小説を見ているかのようで、今でも、映画に、ドラマに、使えそうなフレーズなのだ。
おとぎの国に来たかのようなフレーズだ。そこに使われている可憐なチェレスタ。

この楽曲は、三部形式で〜
中間部では、甘いフレーズとして、ロシア民謡から採られたような歌謡風フレーズが奏でられるが、最後には、ピストルが登場するのである。
まあ、甘美な世界は、お代官さまではなく、お代官さまの奥様の浮気。恋人とのイチャイチャシーンなんだろうけど。
で、下男に撃ち殺せ〜と命じたはずが、自分に向けられてあえなく・・・というシーンで終わる。

特に、スヴェトラーノフ盤のピストルの音はリアルだ。
通常はタンバリンで、ピストル音を作るらしいが、CDの解説書には、本当のピストルが使用されているとのことで、心臓に超悪い炸裂音が入っている。
マーラーの交響曲第6番では、木のハンマーが振り下ろされるが、さすがに、ホンモノのピストル音に勝るモノはない。
それ以上に、凄まじいハジケル音である。大変驚かされる。
そして、最後には、「悲愴」のラストのようにフェードアウト、消え去ってしまう。

はあ。凄い。改めてチャイコさまは、やっぱり凄いと思う。
チェレスタで夢のような世界を作り、パンっというピストルの音を作り。甘い夢の世界と、ドロドロの世俗的な情感とをサンドウィッチにしちゃって、劇的で、まるで見えるかのようなフレーズを作り、歌う。
このスヴェトラーノフ盤は、15分34秒としてクレジットされているが、たっぷり〜両極端の世界を描き分けており、ピストル音と可憐なチェレスタが存分に楽しめる。お薦めである。

幻想曲「運命」

冒頭、チェロで重々しく「しぃ〜れ みぃ(チャン)らっ!  しれみれみれ (チャン)らっ! パンっ」
「しれみれみれ らっ (チャン) ふぁ み ら そ どっ」 
低弦と金管の間で、小さな鐘がチンっ!となる。
ブラスの重々しいフレーズと シャンっ!っとシンバルが入るし、なんとも〜 大げさな感じもするが、タイトルがタイトルだけに〜 なんだか、オペラの序曲でも良いぐらいの大きなスケールで始まる。
で、静まったのち、しばらくしてチェロの甘いフレーズが流れてくる。
「れぇ〜ふぁら れ〜 れれふぁら れ〜 ふぁらしぃ〜そらみらそ そぉ〜ど みふぁみ・・・」
「らそど らそど しど そぉ〜どれ〜」っと、大変美しい歌謡風のフレーズが詰まっているのだ。
う〜ん 青春時代の恋いをイメージするかのようで、とても耳に優しく、とろけるようだ。
 
再度、冒頭の運命の主題が表れますが、シンプルなフレーズながらも力強いもの。
初期の作品らしいのだが、この時期から、メロディーメーカーだったことは、すごいと思う。特に、再三出てくる甘い歌謡風のフレーズは、幸福のシーンを表しているかのようで、朗々と斉唱風に、ゆったりと流麗に歌われている。

最後は、シャーンっと銅鑼が鳴って終わるのだが、ちょっと構成がシンプルすぎるかなあ。主題を何回使い回しているのか数えていないのだが、かなり執拗に出てくるのと、主題が発展していかないのだ。
まあ、しかし、この運命を背負っておられる方は、さぞや器の大きい方なんだろう〜っと思っちゃうほど、重々しくも、とろけるような甘い幸福な時間ももたれており、ゆったりと流麗な演奏です。


1973年 ドラティ ワシントン・ナショナル交響楽団 Dec  
1974年 インバル フランクフルト放送交響楽団 Ph ★★
1985年 アバド シカゴ交響楽団 SC ★★★
1996年 スヴェトラーノフ ロシア国立交響楽団 CANYON ★★★★★
所有盤を整理中です。

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