バッハ チェンバロ(ピアノ)協奏曲第1番 J.S. Bach: Keyboard Concert BWV1052

 バッハ チェンバロ(ピアノ)協奏曲第1番 BWV1052
カール・リヒター 1971年~72年 ミュンヘン・バッハ管弦楽団
Karl Richter Münchener Bach-Orchester

アルヒーフ創立50周年(1997年当時)の記念企画として発売されたもので、バッハ チェンバロ協奏曲第1巻、第2巻がある。久しぶりに拝聴したが、さすがに几帳面でカッチカチの堅牢さ。だが、バッハの生まれ変わりとも称されるほどの方の演奏が、きっちりと収められているのは、大変ありがたいこと。第3巻として、2台のチェンバロのための協奏曲第1番~第3番、3台のチェンバロのための協奏曲第1番~第2番、4台のチェンバロのための協奏曲が収録されている。
また、チェンバロ協奏曲全集として3枚組BOXも発売されている。このBOXには、チェンバロ協奏曲14曲中、断片のBWV1059を省く13曲と、1963年に収録された2台の~第1番(BWV1060)が収録されている。決して愉悦性の楽しいものではなく、演奏者の人柄が滲み出ているというか、ちょっと厳粛すぎて近寄りがたい。この世界に到達するには、修業が足らないような気がする。三顧の礼を尽くして、迎える必要があるように思う。録音状態は良いし、つつがなく拝聴できましたが~、現時点では、バロックの知識が不足しており、恐れ多くて~ 演奏の評価、感想は現時点で述べられない。これは断捨離することよりも、聴く機会を増やすことの方が重要だろう。

 バッハ チェンバロ(ピアノ)協奏曲第1番 BWV1052
トレヴァー・ピノック イングリッシュ・コンサート 1979年
Trevor Pinnock English Concert

録音状態は極めて良いし、躍動感がありスピーディでスマート。シャキシャキして軽快で痛快。ビートが効いていてノリノリ。バッハって、こんなに面白かったの? ピノックの演奏は、重くて暗い筈の冒頭から、唖然とするほど快活で、シャキシャキと演奏される。すごいスピード感覚で、まるでF1レーサーみたいな機敏さで、躍動感あふれる演奏である。すごいっ!面白いモノは面白い。繰り返して何度聴いても飽きない。音符がコロコロと回転していく様が面白い。2音ずつ同じ音がくっついているが、繰り返すため3音連続に聞こえてきたりする。リズム感覚が、とっても現代的で痛快。 なんてビートの効いたチェンバロなんだろ。ヴァイオリンを初めとしたオケの部分が、巧く噛み合ってて、ロックのように聞こえてくる。パンチがある。ガッツがある。自然と首を振りながらリズムを追っているという有様で、バッハって、こんなに面白かったの?

チェンバロが添え物的に聞こえ、低音のビートが効いて、その音ばかりを追いかけてしまう我が耳。高音のフレーズも綺麗なのだが、やっぱりリズムだ。ウッパウッパ ウッパウッパ パララ パララ チャカチャカ チャカチャカ・・・ んたーっ たっ。
ノリの良い感覚で、ンチャラ ンチャラと聴かせてくれる貴重な盤だ。ヴァイオリンもノリノリ、軽快でテンション高い。
エネルギー放射って感じで、メチャ楽しくなる第1楽章。 ちょっと気怠い第2楽章。重音のような響きがあり、オケがノリノリで、ちょっと過激っぽいところが笑える第3楽章。快活、軽快で、痛快。のめり込んで聴けてしまう。ジメジメしていると思っていたバロックが、こんなにもドライでニヒルで、熱いとは。極端な言い方をしちゃうと、ジプシー音楽のノリというか、血の気の多いオジチャンの酔っぱらい音楽みたいだ。格調は高くない。邪道だと怒られるかもしれない。でも面白い。


 バッハ チェンバロ(ピアノ)協奏曲第1番 BWV1052
シプリアン・カツァリス ヤーノシュ・ローラ フランツ・リスト室内管弦楽団 1985年
Cyprien Katsaris Janos Rolla Liszt Ferenc Kamarazenekar

カツァリスのピアノ版演奏は、スッキリした感覚で爽やか。端正で端麗辛口系だが、粒立ちの良い音でさっぱりと彩られている。チェンバロのための協奏曲だがが、ピアノ版を聴くことが多い。余計な響きが無く、粒の揃った音が、アクセントをつけて出てくる。
飛び跳ねるように弾いている演奏もあるようだが、カツァリスは、淡々としているが、音が繊細で可愛い。シフは、芯は硬めだが柔らかい音でフワフワした感覚、カツァリスは、粒が硬くしっかりしている。身振りの大きな演奏ではないが、大きなフレーズのなかで、身を縮めたり伸びやかに演奏してみたり。フレーズの捉まえ方が大きいのか、大きな曲線のなかで可愛く流れる。
淡々とした水彩画のような風合いだが、細かい音が微粒子状のように詰まっている。スパスパと気持ちよく流れていく清流のようだ。テンポは速いがイヤミがない。喉ごしの良い切り口の優しい演奏だ。
和音の響きより横の流れ、特段に速いわけではないが、こまわりの効いた速めの演奏だ。透明感があり、パステルカラーのような色彩感で、品の良い香りのよい出汁のよう。自由自在にスピードをあげたり、テンポをぐぐっと落としたり。パワーアップして快速で飛ばす。現代風で、これなら今世紀も聴けるぜっ。ロックバンドのパワー、ジャズのような即興的なスウィング、クラシックという範疇から出てるかもしれないが、楽しく聴ける演奏だ。


 バッハ チェンバロ(ピアノ)協奏曲第1番 BWV1052
トン・コープマン アムステルダム・バロック管弦楽団 1988年~90年
Ton Koopman Amsterdam Baroque Orchestra

勢いがあり野生的、挑戦的で荒々しくアグレッシィブな演奏。スピードがあってシャカシャカ、チャカチャカと進んで行く。イケイケドンドンというか凄く速い。スピードに乗ることが出来れば、ある意味爽快かもしれないが、どうだろう。最初に聴いた時は、ひやぁ~速いと驚きつつ、爽快感を感じて飽きる前に終わっていたように思う。聴き手の勝手だろうが、ゆっくり聴きたい時は、これでは振り落とされてしまう。響きを楽しむ以前に扇動的にも聞こえてくるところが、相性が悪いのかもしれない。直線的に進んでいくので、野性的、機械的、暴力的という印象を受けるだろうか。超個性的な演奏だと思う。


 バッハ チェンバロ(ピアノ)協奏曲第1番 BWV1052
アンドラーシュ・シフ ヨーロッパ室内管弦楽団 1989年
András Schiff Chamber Orchestra of Europe

バッハの時代には、ピアノは存在していなかった。産業革命以降、裕福な庶民が音楽を聴きだした。そんな時、ピアノの原型が出来てきたらしい。宮廷社会から一般庶民に音楽が広がり始めた時代。今の時代、チェンバロは身近な存在とは言い難い。現物を一度も見たことがないワタシにとっては、縁遠い楽器。風鈴みたいな音で、せわしなくチャカチャカ、妙に甲高い音で響く。立派な石造りの王宮大広間で聴くには良いのかもしれないが、木造のわずか10畳程度の部屋で聴くのは、ふふっ無理かも。
シフのピアノ版で聴くと、グルグル渦巻いた世界が目の前に広がって、もがきながら外に飛び出たい意思が湧いてくる。数秒の序奏部分で、いきなり混沌とした世界に放り込まれ、どろどろとした液体に浸かる。柔らかいけれど芯が硬く、ちょぴり速めのテンポで進むので、音にの開放感がある。鬱々していないところが救い。丁寧で誠実そう。勝手に盛り上がって勝手に終わらせない。 同じ音が繰り返されても、ガンガンに突き刺さる感じもないし、凶暴でもない。人肌の暖かさが感じられる。あー これなら聴ける。そう思う。
結構怖い楽曲だ。アニメーション「のだめ」のなかで、千秋先輩が弾き振りでバッハを演奏していなければ、CDは買っていなかったかもしれない。ある意味、戦慄しそうなほど底知れぬ怖い楽曲である。確かグレン・グールドが、バーンスタインと競演していたと思うが、あれは怖いだろう。氷の世界、万年雪に閉じこめられるに違いないと空想している。一応、コープマン、リヒター、レオンハルト、ピノックと揃えて、お小遣いが空っぽ。なんだ、怖いって言ってたわりには、すっぽりはまった。リヒターは、堅牢すぎて近寄れそうにもなく、コープマンは、羽根が生えててどっか飛んで行ってしまっている。ピノックは、華麗すぎて元気だがなんだか違う世界だ。レオンハルトは、一番しっくりするが学究肌で落第しないか心配だ。シフのピアノは、優しげで身近に感じられる。


 バッハ チェンバロ(ピアノ)協奏曲第1番 BWV1052
マレイ・ペライア アカデミー・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ 2000年
Murray Perahia Academy of St Martin in the Fields

さらっと弾かれているが、柔らかすぎず硬すぎず、さりげない愉悦性がある。バッハのピアノ協奏曲(キーボード 鍵盤楽器)協奏曲第1番を久々に聴くと、ピアニスト各人によって音質もスピードも異なり、奥の深い演奏が多い。1番の1楽章と3楽章は、快活で、愉悦性も高いが、2楽章は、闇に包まれているような閉塞感が漂う楽章だ。ツラく暗く、わびしく、貧乏のどん底に突き落とされたかのような悲惨な感じがする。ペライアさんは1990年代に指を怪我し、ピアニスト生命が危ぶまれた時期があったそうだ。その頃に、バッハを研究することで慰め得たという。ピアニストがもう弾くことができないかも~となった時に、バッハの研究をすることで慰めを得るということに、感慨深いものを感じる。怪我からの復帰後である90年代後半から、ゴルドベルク変奏変奏曲、パルティータ、イギリス組曲など、多くの演奏機会が生まれたという。ペライアさんの怪我からの復帰の経緯を知ったからか、慎み深い演奏を好ましく受け止めている。じわっと楽しくなる控えめな演奏だが、煌めきよりも、少しくすんだ穏やかに沈む感じで弾かれている。オケとピアノの色彩感、質感が同じだと感じるのも意図されたものだろう。オケとの音色との調和、オケの音のなかにピアノが入り込んでいる。第3楽章の弱音の響きとかスピード感が、みごと。ペライアさんの弾き振りで、オケと一体となったアンサンブルで、一気に聴かせてくれる。


 バッハ 2台のチェンバロのための協奏曲第1番 BWV1060
J.S. Bach: Concertos for two harpsichords
クリストファー・ホグウッド エンシェント室内管弦楽団 1987年
Christopher Hogwood Academy of Ancient Music

バッハ 2台のチェンバロのための協奏曲第1番は、チェンバロ2台、ヴァイオリン2台、ヴィオラ、通奏低音の構成である。バッハは、チェンバロをソロとした協奏曲を14曲残しているが、第1番は、ヴァイオリンとオーボエのための協奏曲からの編曲らしい。ブックレットを読むと、第1楽章はリトルネロ形式による躍動感あふれる楽章、第2楽章は、2台のチェンバロが抒情的なメロディーを模倣しながら進むアダージョの楽章。第3楽章は、リトルネロ形式で、ソロとトゥッティが緊密に結びつき明快な音楽を展開すると書いてあった。で、リトルネッロ形式(Ritornèllo)って何? ってことなのだが、バロック時代の協奏曲に多く見られた形式で、主題を全合奏で、それ以外をソロが奏で、主題を全合奏しながら繰り返すというものらしい。ロンドは、主題が同じ調で奏でられるが、この場合は、最初と最後以外は、主調以外の調で奏でるものなんだって。
「そどっ みぃ~れ そっど みれみれ どっれみ ふぁそ らっらぁ~」というようなフレーズを続ける。いやがうえでも耳に馴染むが、次楽章には忘れてしまうという情けない結果。確かに、チェンバロの響きは美しいし、弦をつま弾く響きがアクセントになる。全部でも、約13分の曲なので、ぼけっとしていると、あっという間に終了する。ちなみに、バッハが作曲したチェンバロ協奏曲は、1台用から4台用まで作曲されている。1台用の楽曲は8曲(うち1曲は断片)、2台用の楽曲が3曲、3台用の楽曲が2曲、4台用の楽曲が1曲と、全部で14曲もあるそうです。ウィキペディア(Wikipedia)で調べてみたら、バッハは1729年~41年まで、ライプツィヒのコレギウム・ムジクムの指揮をしており、演奏会のために作曲されたものらしい。


バッハ チェンバロ(ピアノ)協奏曲第1番
1972年 リヒター ミュンヘン・バッハ Ar ★★★★
1979年 ピノック イングリッシュ・コンサート Ar★★★★★
1981年 レオンハルト レオンハルト合奏団 Se 未聴
1985年 カツァリス フランツ・リスト室内管 Teldec ★★★★★
1989年 コープマン アムステルダム・バロック E ★★★
1989年 シフ ヨーロッパ室内管弦楽団 Dec ★★★
2000年 ペライア アカデミー室内管弦楽団 SC ★★★★

バッハ 2台のチェンバロのための協奏曲第1番 ハ短調 BWV1060
1987年 ホグウッド エンシェント室内管弦楽団 OL★★★★



 

YouTubeでの視聴


J.S. Bach: Concerto For Harpsichord, Strings, And Continuo No.1 In D Minor, BWV 1052
Trevor Pinnock
トレヴァー・ピノック 第1番1楽章
https://www.youtube.com/watch?v=DWTUvqY1-vM
87本の動画がまとまって掲載されているページをご紹介しておきます。https://www.youtube.com/playlist?list=PLr0MsaDpKsY-RFfo3Jt21wP0TYsZTX6NJ

J.S. Bach: Concerto for 2 Harpsichords, Strings, and Continuo in C minor, BWV1060
クリストファー・ホグウッド - トピック Christopher Hogwood - Topic
第1楽章
https://www.youtube.com/watch?v=sgJQYkwdEHw

Piano Concerto No. 1 in D Minor, BWV 1052
フランツ・リスト室内管弦楽団 - トピック カツァリス
Franz Liszt Chamber Orchestra - Topic
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=G4DdAQT0cPw
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=EVZkFIZwSWU
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=zMQzlmgWDHU


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