バッハ ヴァイオリン協奏曲第1番・第2番 J.S. Bach: Violin Concerto BWV1041・1042

 バッハ ヴァイオリン協奏曲第1番
Bach: Violin Concerto BWV1041
シギスヴァルト・クイケン ラ・プティット・バンド 1981年
La Petite Bande Sigiswald Kuijken

透き通る録音状態のなか艶やかな音で楽しげに奏でられている。適度にアクセントがついており、推進力もある。なによりも伸びやか。ヴァイオリンの音色に艶っぽさがあり、軽やかだが品が良く、ピュアな音を空間に余韻を残している。宮廷音楽のサロン的な雰囲気がたっぷり。響きが良いので満足感が高い。オリジナル楽器を使用している。柔らかいチェロを聴いていると、うたた寝したくなるほど。ヴァイオリンの高音域の甘いフレーズには、耳を奪われる。第3楽章の快活な楽章では、スキップしたくなる。大きな身振りで、これみよがしには演出しておらず、転ぶ装飾音も演出過剰には陥らない。奥ゆかしく清楚。これぐらいが、腹八分目のようで良いのかもしれない。ピノック盤と比べると太めの艶ある音で、オケとヴァイオリンがバランス良く併走している。


 バッハ ヴァイオリン協奏曲第1番
Bach: Violin Concerto BWV1041
サイモン・スタンデイジ トレバー・ピノック イングリッシュ・コンサート 1983年
Simon Standage Elizabeth Wilcock Trevor Pinnock, and English Concert

繊細で清潔で、爽かな演奏で、軽さが命とばかりに、ふわ~っと奏でられていく。ヴァイオリンに羽根が生えているような感じで、天上的に響く。繊細で優美。まるで高貴な美しい細身の女性って感じのヴァイオリンを中心に、その音色を壊さないようにバランス良く演奏されている。このヴァイオリンの音にやられる。
主旋律がヴァイオリンからオケに移る際も、そのスマートさうっとり。ヴァイオリン協奏曲というよりチェンバロ協奏曲だろうと思って聴いていたが、やはり、後にチェンバロ協奏曲第7番になっているらしい。そう編曲されているのだ。第2楽章は、音の重量感の移動するところが面白い。1音目が引きずっている感があり、物悲しくうちひしがれている天使のようだ。第3楽章は、拍感覚が楽しめる。各声部が、軽快に鳴っており、歯車が永遠に続くような気分にさせられる。合わせ鏡のなかに立っているような気分でもあり、フレーズに大きなうねりが出てくるのは、とても愉快だ。クイケン盤は、艶のある太めのタッチで豪華な感じがするが、ピノック盤は繊細で軽妙。ほのぼのとした感覚で、清涼感も漂っている。弾力性の高さと伸びやかさ。素晴らしい音色でうっとり。録音状態も極上で申し分ない。


 バッハ ヴァイオリン協奏曲第1番
Bach: Violin Concerto in A minor BWV1041
ギドン・クレーメル アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ 1982年
Gidon Kremer Academy of St. Martin-in-the-Fields   

なにせ速いっ。あっという間に終わってしまう演奏だ。何故これほどまでに速いのか、泣きそうになるほど速い。美音に浸る暇もないほど音が繰り出され、優美で典雅な演奏も多いなか、スピード勝負というとこだろうか。クレーメルの演奏は、硬くてハードボイルドタッチだ、野球で例えるなら、打者に対してバンバン投げ込んでくるストレート主体のピッチャーという感じだろうか。充分な呼吸、間合いを与えることがない。声部が太くなったり細くなったり、その妙を楽しむ楽曲だと思うのだが、拍の合間の息継ぎ的な空間を楽しむことができず、単調なくせに、のびやかで~ 音が弾んでくる感覚を楽しむこともできず。
空間が少なく、音が詰まっている。呼応する間合いが短く、楽しめるほどの空間になっていないので窮屈だ。呼吸間隔が短すぎて、畳みかけてくる。小さな振幅運動のようだ。天の邪鬼のようで変な人だ。音色は明るいし爽やかだし、回転率は高い。効率良すぎで愛想のなさが気になる。聴く方も、ビジネスライクなんでしょうか。最後には腹立たしく感じてしまうほど。


 バッハ ヴァイオリン協奏曲第1番
Bach: Violin Concerto in A minor BWV1041
ヴィクトリア・ムローヴァ ムローヴァ・アンサンブル 1995年
Viktoria Mullova Mullova Ensemble 

透き通った美音で思わず息を呑む。チェンバロの音が、少し奥に引っ込んでいて聞きづらいが、ヴァイオリンは透き通る音色で、軽やかに奏でられている。この曲は、チェンバロの音とリズムに乗せられる部分が多分にあるので、バランスが難点かと思った。ムローヴァが果敢に挑戦しているバッハ。しっかり聴かなきゃと思うが、フレーズに抑揚つきすぎて音が揺れる。最後の語尾が消えてしまうところは、う~ん。バッハは、しっかり最後の1音まで、同じ音量でしっかり硬めに弾いて欲しい。音のリズムが、むしろ高揚を生むような気がする。無機質っぽく徹底した方が良いのではないかと思う。


 バッハ ヴァイオリン協奏曲第2番
Bach: Violin Concerto in A minor BWV1042
ラ・プティット・バンド 1981年
La Petite Bande ヴァイオリン:シギスヴァルト・クイケン 第2ヴァイオリン:ルシー・ファン・ダール

ラ・プティット・バンドの演奏は、オリジナル楽器による先駆的録音で決定盤って感じのCDである。この旋律の整った演奏は、惚れ惚れしちゃう。ソロを含めて13人という当時のケーテンの宮廷楽団を踏まえた編成だそうで、忠実に再現しているのだそうだ。するっと弦を滑らせる音が、ところどころ入っているが、リズム感が抜群に安定しており、ゆったりと耳を傾けることができる。美音で均整がとれている演奏だ。これは、ヴァイオリン協奏曲というより弦楽合奏でしょう。ソロヴァイオリンのフレーズを含めオケ全体に艶があり芳醇そのもの。ソロのヴァイオリンが入っているのだが、これは、ヴァイオリン協奏曲というより、弦楽合奏でしょう。もちろん、ソロヴァイオリンのフレーズはあるのだが、全体的に艶があり、極めて美しい録音状態である。第2楽章は、嘆きのアリアで、ソロが入ってくると胸が締めつけられる。低音域が無いところもあり、弦の和音が聞こえるところで、するっと調性が変わる。第3楽章は、舞曲となっており明るいジークのリズムで、明るすぎず元気すぎず、ほどよい品格を保って演奏されている。リズミカルだが、均質感があり、高音のヴァイオリンののびやかな音が綺麗だ。滑るようなトリルが美しい。

この曲は、急~緩~急という3楽章で、両端の楽章は主調で、中間楽章は平行調である。拍子は3楽章とも異なり、両端の楽章は2拍子系、3楽章が3拍子である。独奏ヴァイオリンと弦合奏と通奏低音という楽器の編成も、従来の図式どおりだが、協奏曲の最も重要な表現手段であるソロと、トゥッテイ(総奏)の対比効果も存分に駆使している。ヴィヴァルディは、主題を奏し調性が固定した部分(リトルネッロ)と、ソロで装飾音型を奏し、調性が流動的な部分(エピソード)を交互に登場させているが、バッハは、この性格を一部交換していて、二者の対比効果を弱めているとあった。どこにバッハの独自性があるのか、専門的にはわからないが、イタリアの形式を保ちながら果敢に挑戦している楽曲らしいです。


バッハ ヴァイオリン協奏曲第1番 BWV1041
1981年 シギスヴァルト・クイケン ラ・プティット・バンド HM ★★★★★
1982年 クレーメル アカデミー室内管弦楽団 Ph ★★
1983年 スタンデイジ ピノック イングリッシュ・コンサートAr ★★★★
1995年 ムローヴァ ムローヴァ・アンサンブル Ph ★★★

バッハ ヴァイオリン協奏曲第2番 BWV1042)
1981年 ラ・プティット・バンド HM ★★★★


 

YouTubeでの視聴

バッハ ヴァイオリン協奏曲第1番
J.S. Bach: Violin Concerto No. 1 in A Minor, BWV 1041
サイモン・スタンデイジ  トピック Simon Standage - Topic
トレバー・ピノック イングリッシュ・コンサート
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=Rbe681C6okI
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=fgM8u1UvfDM
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=XlH2EYnQ6y0


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