ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番 Beethoven: Piano Concerto No.3


 ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番
Beethoven: Piano Concerto No.3
アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ ジュリーニ ウィーン交響楽団 1979年
Arturo Benedetti Michelangeli
Carlo Maria Giulini Wiener Symphoniker(Vienna Symphony Orchestra)

ミケランジェリさんの演奏は、音の粒立ちが人並み外れており、美しいと感じる演奏だ。1979年、TV放送のために収録されたライブ盤だが、リマスタリングされており録音状態はとても良い。オケも伸びやかに演奏され、目の前で生演奏を見ているよう。オーボエの音質がガチョウ風で特徴がある。明確な音の像が見えてくるかのようにピアノが良く聞こえる。豊かさのある硬質感、粒立ちの良い跳躍が感じられる。にやりと思わず頬が緩んでしまうほど。弦も綺麗な筋を描くかのように合いの手を入れ、ため息が出ちゃうほどとっても美しい。硬めの音でダイヤモンドのようにトレースされていく。個人の好みもよるが、ここまで磨かれると、思わず息をのんでしまう。クールに明瞭、音のコロコロ感がでている。内田さんの演奏は粒が生まれ、粒が上下に動くような感じがするが、ミケランジェリさんの演奏は、表面張力が目一杯で、粒は微動だにしない。情感で粒が生まれてきているわけではなく、物理的というか、理知的というか、理論で粒が生まれてくる感じ。
第2楽章は、ロマンティックで女性的な陰鬱さを持つラルゴだ。豊かな低弦の響きを揺らしながら、オケは甘すぎない程度に歌う。ピアノのフレーズは、そろっとオケの上に降りてきて、スケートのように滑っていく。銀盤のうえの静かで華麗なスケーティングを見ているかのようだ。感情の発露というのは感じず、余計な情感は削ぎ落とし抑制されているように思う。音が降りてくるところも均質的でストイックだ。第3楽章、さてこのラストは、どうなのだろう。そろそろ盛り上がって欲しいのだが。繰り返して演奏されるので、自然と音が染みつき、リズミカルな筈だが~ 絶句するほどノリ感が少ない。軍楽隊のように晴れやかで、楽しい楽章なのだが、数字の問題集を解いて楽しんでいる子供のようも、独りアタマのなかで遊んでいる。体育会系のノリ感は皆無。ミケランジェリさんは、きっと数字が好きなんです。数式を解いて、頭のなかでひとり遊ぶのが大好きなんだろうね。
オケとは、ちょっと方向性が違うかも。自由闊達な演奏ではないし、サービス精神は、ちょっと~ 人を巻き込んで乗せる演奏ではないですね。情感的に盛り上がっていくエモーショナルな演奏ではないが、音の純粋さには脱帽でしょう。情感的に共感できるかどうかは違う次元でしょう。硬質感と透明度、抑制感は、唯一無二に近い演奏かも。
カップリング:ベートーヴェン ピアノ協奏曲第1番、第3番 3番、5番「皇帝」のカップリングもあり。


 ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番
Beethoven: Piano Concerto No.3
ペーター・レーゼル クラウス・ペーター・フロール ベルリン交響楽団 1988年
Peter Rösel Claus Peter Flor Berlin Symphony Orchestra

レーゼルさんのピアノは、優しく繊細で、乳白色の丸い粒立ちの演奏だ。まるで真珠のよう。冒頭から、とても優しいフレーズで、ふわっとした空気に包まれる。フロールさんの振るオケが奏でる長い序奏の間に、すっと引き込まれていく。なんて柔らかいベートーヴェンなのだろう。序奏部分だけ品の良い香り高い演奏だと期待できる。ピアノも、優しいフレージングでオケの音を邪魔しないように、さりげなく入ってくる。オケとの呼応するピアノのパラパラパラ~っと転がる音。中間色、柔らかいパステルカラー色のベートーヴェンだ。なだらかに転がり落ちてて、尖ったところは皆無だと言ってもいいだろう。春の柔らかい陽射しのなかを、パラソルを広げて歩く貴婦人って感じだろうか。奥行きのある空間のなかで、粒が綺麗に並び、間合いを十分にとって転がっていく。まるで、自分だけがその空間に居て粒を見つめているような、密やかさがあって幸せ感の密度が凝縮される。う~ん、これはすごい。既に、1楽章だけで一幅の絵画を、じっくり拝見した気持ちになって幸せだ。
第2楽章は、レーゼルさんとフロールさんの特質、相性の良さが出ている。ここは白眉でしょう。前楽章に続いて、こんなひとときを過ごすことができるなんて最高だと思ってしまった。時が止まったかのような演奏で、優しい響きに包まれる。じっくりと省的に弾かれており、ゆったりした時間でひとりごちてしまった。あー しあわせ。第3楽章は、弾むリズム感で満ち溢れている。ロンド主題が繰り返し提示され、軽快なリズムのなかでのピアノの跳躍は実に美しい。「ん~タララ ラッタ たぁ~」という節まわしは、ノリノリ感というよりは、品良く、ころころと貴婦人が笑っているかのような雰囲気がある。勇壮で、かっちりした3番が好きな方には、柔らかすぎるかもしれない。好みが分かれるところだが、物腰の柔らかい繊細で、ふくよかな香りの漂う演奏である。


 ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番
Beethoven: Piano Concerto No.3
内田光子 クルト・ザンデルリンク コンセルトヘボウ 1994年
Mitsuko Uchida Kurt Sanderling Royal Concertgebouw Orchestra

内田さんのピアノ協奏曲全集は、1番、2番、5番はバイエルン放送交響楽団、3番、4番はコンセルトヘボウとの共演である。
とても録音状態が良く、清潔で清冽、透明度の高い演奏だ。強調する音をしっかり出してキレがある。適度にスピード感があって爽やか、そして熱い。穏やかで、柔らかい音が詰まっているのに、適度な太さでしなやかなのだ。アクセントが強めなくせに、柔らかい弾力性のある重量感、明るめの色彩感に支えられている。今までにない爽やかで、すーっと風のように通る音が流れてくる。水の流れに例えると、澱みのない清流のような音の流れ。間違っても、とんがった刺々しい音ではない。
主題が終わると、清潔でじわ~っと沈んでいき、オケの柔らかい、ふわ~っとしたところに、幾分ヒンヤリしたピアノが溶解していく。奥行きの深い音で、 透明度の高い音を置いていく。ピンと張った強めのピアノのタッチだが、不思議な空間が広がって優美だ。オケの綺麗な旋律に乗っかって、違う流れを清冽に刻んでいく。1楽章の綺麗さはすごい。右手と左手の音質が違うし、ふわっとした主張の強いフレーズを煌めきでもって流していく。清流が二層式になっているみたい。まるでライブのように驚くほど劇的で、斬新な曲を聴いているような錯覚がする。音が、泉が湧いているかのようで、生まれたての音を、1粒1粒、湧き起こしていくかのような雰囲気がある。ピチピチ、プチプチした泡が、湧き起こっているような世界が広がる。この煌めき感がすごい。プチプチ泡が、1楽章だけで、すごい広がりと奥行きを与えてくる。1粒の泡がわき起こり、それが流れになって、立体的な空間を生み出す。
第2楽章は、しっとり弾かれており、しんみりしている。夢見る雰囲気が漂い、乳白色系の液体が、透明のグラスのなかで沈殿しているように見える。ふわ~っと液体のなかを浮遊しているのだが、そのなかを明瞭に形として見える何かが動いている。そんな感じ。第3楽章では、理屈抜きに楽しいロンド。内田さんのピアノは、飛んでもいないしコミカルでもないし、ワタシ的には、オチャメな楽章だと思っているが、ここでは、丁寧に誠実に演奏される。もう少し開放的であっても良いのだが。これが内田さんらしいところだと思う。


 ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番
Beethoven: Piano Concerto No.3
ウラディーミル・アシュケナージ メータ ウィーン・フィル 1983年
Vladimir Ashkenazy Zubin Mehta Wiener Philharmoniker (Vienna Philharmonic Orchestra)

アシュケナージさんの演奏は、緻密さとか明晰さよりは、自由でおおらか、余裕感のある演奏である。オケもメータさんで、主題はシンプルだが、太書きで勇壮に流してくる。柔らかく、滑らかな演奏で、録音状態にもよるのだろうが厚みがある。幾分、ヤワイかと感じられる温かみのあるリズム感だ。つるんとしたモダン演奏なので、粒立ちが丸いのだと思う。転調するところは面白いが、縦の線が、ピッシっと締まった感じを受けない。パリパリに糊の利いた、アイロンの利いたワイシャツではないような感じで、ぼわっと聞こえる。爽やかで、伸びやかだとは言えないし中途半端な気がする。
アシュケナージさんのピアノは、明るく、気持ちよさそうに弾かれているし、ハ短調だけど、暗くもなく、微妙にコロコロと粒立ち良くなめらか。ウィーン・フィルだからだろうか、澱みもなくさらっと嫌みがない。ほんわか小春日和的に、ころころ転がる音を楽しむことができる。第2楽章では、一段とまろやか。ロマンティックに女性的な陰鬱さを持つラルゴだ。和音の持つ美しさを感じるが、理知的というよりも雰囲気で聴いちゃう感じ。木管のフレーズとピアノが絡んでいるところは、冗長的だ。縦糸が、イマイチ緩めだが、反面、自由でのびやかとも言える。第3楽章は、印象的な主題で始まる。「ら~ し どど ど~ みれどれ~ みっみっ ふぁっふぁっ み~」と繰り返して演奏される。結構リズミカルで、飛んで跳ねて、軍楽隊のような「ぱららら~」「ん~タララ ラッタ たぁ~」と、コロコロと転がる節回しが楽しい。陽気なハ短調のロンドで、主題の旋律は変わらないのに、調がころころと変わっていくところが面白い。メータさんの振るオケは、軍楽隊さながらで威勢が良すぎ。オチャメで羽目を外して、粘っこく飛んでいる。ノー天気風の装いだが、むしろこのコンビでは、こうなるのかもしれない。ベートーヴェンらしくない雰囲気だけど、そういえば、モーツァルトのピアノ協奏曲24番(K491)と、よく似ているとも言われている。同じハ短調だからね。最後は、華やかに、タタタ タタタ タタタ~と下りてきて、シャンっと終わって、いたって自由で、おおらかな演奏だ。


 ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番
Beethoven: Piano Concerto No.3
ヴィルヘルム・バックハウス ハンス=シュミット・イッセルシュテット ウィーン・フィル 1958年
Wilhelm BackhausHans Schmidt-Isserstedt Wiener Philharmoniker (Vienna Philharmonic Orchestra)

バックハウスさんの74歳頃の演奏である。1958年の録音だけどマスタリングされており、問題なく聴かせていただける。70代でこれだけ弾けるってことに、まず驚かされ、相当強いタッチで弾かれ、粒立ちもよく本当に恐れ入った。鳥肌が立つというか、畏怖する演奏というか。冒頭からのオケの響きが、弦の柔らくシルキーな響き。艶はあるがテカテカしておらず、すっとさりげない、なだらかで優しい。そうそう、ここのオーボエの音は特徴がある。ちょっぴりひらぺったい音質で、おちゃめなのだ。長いオケの演奏のあと、待たせたねぇ~って感じで、ピアノが「れみふぁそらしどぉ~」と、入ってくる。第2楽章の柔らかいタッチは、夢見心地で、儚くも美しい。人肌の暖かさ懐の大きさを感じ、トリルはとても可愛い。ほっこり語りかけるような雰囲気があって、また、弱音の美しさって、こういうことを言うのかと改めて知ったような感じ。ホント、2楽章は慈愛に満ちた幸せな楽章で、聞き惚れてしまった。第3楽章は、ウィーン・フィルと共に、ん~たらら らったと踊り出す愉悦さがある。軽快な軍楽隊のように聞こえ、さっぱりした躍動感も感じられる。転がるリズムと高音域のピアノの音が颯爽としている。主張の強い演奏でになく、余計なところに力みがない。スタイウェイではなく、ベーゼンドルファーのピアノを愛用されていたということだが、ふむ。何とも優しい音です。無駄な力が入っていないで、さーっと淡泊に演奏されているのだが楽しい。人柄の良さが滲み出てるって感じの演奏です。


 ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番
Beethoven: Piano Concerto No.3
ワレリー・アファナシエフ ユーベル・スダーン ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団 2002年
Valery Afanassiev Hubert Soudant Salzburg Mozarteum Orchestra

録音状態は良いが、テンポ設定が、やっぱり他のピアニストとは違う。第1楽章は良いと思ったが、第2楽章は極端に遅く、第3楽章は乗れない。アファナシェフさんは奇想天外だ。確かにテンポは遅めだが極端に遅いわけでもなく、カッチリとしてて気持ちが良いほどにフィットしている。オケの部分が、すこぶる気持ちが良い。切れは良いし厚い音の響きで鳴らさず、すっきり系。バックの通奏低音風のパパパパ、パパパパ・・・と鳴っている部分が爽やかだ。柑橘系のようなスッキリした香りが漂っている。なかなかに良い。ティンパニーは硬めだが適度に柔らかく、弦はきっぱりしているけど硬めでもない、ほどよい頃合いの響きをもっている。で、ピアノが同じフレーズを弾いていくのだが、想定外の適度なテンポで、思わずほくそ笑んでしまった。でもね天邪鬼なのである。
良いな~と思わせておいて、突然ぐっとブレーキがかかる。えっ、ここで? なんで~? 意表をついて揺さぶりをかけられちゃうのである。この意表を突く意地悪な(?)アコーギク。さすがにツボをおさえている。硬い構成のだが、その枠を完全に取っ払ったわけでもなく、そのくせ、枠を取っ払ってしまいたい衝動を抑えず、自分なりに自由に闊達に、パラパラ パラパラ~と、優美に描き出すところが面白い。ようやったぁ~と拍手したくなるっていうか。自分の代わりに、おもいっきり上司に文句言ってくれたみたいな(えっ?)後半は、熱っぽく、意思の強さを感じさせるもの。第2楽章は、めちゃくちゃテンポが遅い。ジワジワと噛みしめるかのような音の繰り出し。思索的だとも言えると思う。暗い楽曲ではないので、これで聴けると思います。しかし、ハッキリ言ってテンポはかなり遅いです。第3楽章は、普通のテンポ。リズミカルではあるが、粒立ちも良いが、転がる装飾音も綺麗だが~ なんて言うのか、面白みに欠けてしまうのだ。軍楽風の「ん~タララ ラッタ たぁ~」という節まわしが面白くない。恣意的で、限られたマニアックな演奏だと思う。ワタシ的には、やっぱり性格の不一致で、離婚しました。という感じでしょうか。


 ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番
Beethoven: Piano Concerto No.3
マウリツィオ・ポリーニ アバド ベルリン・フィル 1992年
Maurizio Pollini Claudio Abbado
Berliner Philharmoniker(Berlin Philharmonic Orchestra)

ポリーニのピアノは、硬い響きでボコボコした感覚で苦手だ。アバドの最強コンビによるベートーヴェンのピアノ協奏曲だが、ピンっと来ない演奏で、5番の皇帝を聴いた時には、お蔵入り状態。全集のライブ盤で、3番も、完璧すぎる嫌いがあるのか情感の伸びやかさに欠ける演奏だ。冒頭、オケが勇壮に出てくるが硬すぎる。アシュケナージ盤で聞いた時はヤワイと思ったものだが、ポリーニ盤だと硬すぎて居心地が悪い。頃合いってモンがないのかい。ピアノは、文句のつけられない木目の細かい、粒立ちのよいフレーズで、こころころ回転する細かいフレーズが気持ち良い。だが、なにせ硬くて締まった音で残響が少なめ。全体的に弾力が少なく、リズミに面白みがなく楽しくない。92年、93年のライブ盤で、最強コンビだと思っていたが浅い表情付けで、能面的に演奏されてもどうもしっくりこない。音楽の楽しさが伝わってこない。第2楽章はショパン風。山なりの曲線美よりも、音が1粒1粒になってて点として存在している。ピアノの音が続かないので歯が抜けたようだ。女性的で柔らかだが、素っ気ない冷たいオンナみたい。
第3楽章は、1つ1つは綺麗だとは思うが高揚感が少ない。陽気さを含んで、軍楽隊の行進のように鳴ってくる筈が、ポリーニの演奏では、無表情に整列して行進しているだけだ。ライブ盤だからこそ、熱い演奏が聴けるだろうと踏んでいたのに残念だ。


 ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番
Beethoven: Piano Concerto No.3
ルドルフ・ゼルキン 小澤征爾 ボストン交響楽団 1982年
Rudolf Serkin Seiji Ozawa Boston Symphony Orchestra

ゼルキンさんの演奏は、抒情的で丁寧な演奏だ。ちょっぴり遅めだが、ゼルキンさんが79歳頃、小澤さんが40代半ばの演奏である。オケは、雄渾なものではないが、筋肉質的でかっちり。ピアノは、細やかなフレーズで、リズミカルに奏でられており80歳を目前にしたピアニストの演奏とは思えないほど立派だ。現役バリバリとは違うので、もつれそうだと心配するところもあるが、丁寧で息づかいが深く、煌めき感、スマートさを感じられ気持ちが良い。なにごともなく、平気な表情でさらっと弾かれているが、フレージングの抒情性は高い。第2楽章は、呟き、囁くようなピアノの出だしに引き込まれてしまう。オケも、ぴたっと寄り添って穏やかさを保ちつつ奏でていく。特に、低弦のフレーズが優しく、柔らかく、包み込むかのような雰囲気を出してくる。多少もわっとした録音状態だが、ピアノの音はクリアで、ひとつひとつの粒が綺麗に見えてきそう。清潔感と穏やかさに包まれる。ほわっとした人柄が滲み出てきている。いや~良いですね。慎ましやかでニュートラル。
第3楽章は、遅めのテンポで、ギクシャクしそうな感じがしてて、あっ アブナイって感じがしちゃったが大丈夫でした。ティンパニーの音が、多少団子状態でもさっとしているが、中間部の抒情的なフレーズになると、一気に美しくキラキラと輝いている。前後のリズミカルな、「ん~タッタ たぁ~ たらら」という、トルコの軍楽隊が行進しているようなフレーズは、もう少し軽やかに弾むか、勇壮に弾んでいただかないと、リズミカルなベートーヴェンには会えない。この演奏は、しっかり土踏まずまでが、地面に着いちゃっててペタんとしている。楽曲ラストは、ノリノリ感がなければつまらない。抒情的で、微細なところにも神経を細やかに使って演奏されている3番だが、ラストだけは、ちょっとリズムに乗り切れない悲しさが出ましたね。

カップリング:ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番、ピアノ・合唱・管弦楽のための幻想曲ハ短調
ソプラノ:フェイ・ロビンソン,メアリー・バージス アルト:リリ・コーカシアン
テノール:ケネス・リーゲル  バリトン:デヴィッド・ゴードン
バス:ジュリアン・ロビンス  タングルウッド音楽祭合唱団


■ ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番
Beethoven: Piano Concerto No.3
クラウディオ・アラウ C・デイヴィス シュターツカペレ・ドレスデン 1987年
Claudio Arrau
Colin Davis Sächsische Staatskapelle Dresden(Staatskapelle Dresden)

アラウさんは1903年生まれなので、C・デイヴィス盤の収録の際には、既に80歳を超えておられる。80歳を超えてもなお、ベートーヴェンを弾くってすごい。すごいことなのだ。体力・気力共に萎える凡人ではとうていできない。クレンペラー、ハイティンクさんとの収録CDもあるが未聴である。この演奏は録音状態も良いし、オケも立派で、ゆったり歩調を合わせ、恰幅よろしく演奏される。
アラウさんのピアノも、速いパッセージや、均質的に細かい音を続けるところは、さすがに、ちょっと怪しくなっているが、音はクリアだ。特に2楽章は、ゆったり演奏されており、大きく包み込まれるような優しさにあふれている。聴いていると、年配の牧師さんのお話を聞いているかのような気分。ちょっとストレスがたまって、ささくれだった感情が穏やかになって、聴いているだけで、こっちまで、優しくなれる。自分が変われるような気がする。慈愛に充ち満ちている2楽章~ とっても良かった。


ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番
1958年 バックハウス イッセルシュテット ウィーン・フィル Dec ★★★
1971年 グルダ シュタイン ウィーン・フィル Dec
1975年 ルービンシュタイン バレンボイム ロンドン・フィル R
1979年 ミケランジェリ ジュリーニ ウィーン交響楽団 G ★★★★★
1982年 ゼルキン 小澤征爾 ボストン交響楽団 Tel ★★★★
1983年 アシュケナージ メータ ウィーン・フィル Dec ★★★
1983年 ブレンデル レヴァイン シカゴ交響楽団 Ph
1985年 バレンボイム(弾き振り) ベルリン・フィル EMI
1987年 アラウ C・デイヴィス シュターツカペレ・ドレスデン Ph ★★★
1988年 レーゼル フロール ベルリン交響楽団 Berlin Classics ★★★★
1992年 ポリーニ アバド ベルリン・フィル G ★★★
1986年 アックス プレヴィン ロイヤル・フィル R
1989年 ツィマーマン バーンスタイン ウィーン・フィル G
1994年 内田光子 ザンデルリンク コンセルトヘボウ Ph ★★★★★
1994年 ステファン・リトウィン ギーレン 南西ドイツ放送交響楽団
1994年 エマール アーノンクール ヨーロッパ室内管弦楽団 T
2002年 アファナシエフ スダーン ザルツブルク・モーツァルテウム・オーケストラ OEHMS ★★

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番ハ短調作品37は、1800年に作曲されています。ウィキペディア(Wikipedia)を元に記述すると、1803年に作曲者本人により初演されており、弦楽四重奏曲第4番、交響曲第5番、ヴァイオリンソナタ第7番などと同様に、英雄的、悲愴感ある曲想で名高いものです。古典的な協奏曲によくみられる形の3楽章構成で、演奏時間全約35分です。

第1楽章 ハ短調 2/2拍子 協奏的ソナタ形式
弦楽が、C-E♭-G-F-E♭-D-Cの主題を静かに提示し、主和音のオクターブによる単純な第1主題というのは「英雄」と同じで、展開は単純で同じ主題を印象付けるもの。カデンツァは1曲書かれ63小節です。カデンツァがヘ長調の属七の和音で半休止した後、第1主題によるコーダで締めくくられます。コーダでは、第1主題後半部の「C-G、C-G」の音を、ティンパニが演奏するという画期的な手法で、第9交響曲で大胆に使われます。

第2楽章 ホ長調 3/8拍子 複合三部形式
独奏ピアノがハーモニーに富んだ緩い旋律を奏でる。中間部はロ長調。

第3楽章 ハ短調 2/4拍子 ロンド形式
属七の和音で始まるハ短調のロンド主題が繰り返し提示された後、ファンファーレのような管楽器に導かれて変ホ長調の副主題が現れます。ロンド主題の復帰前にはピアノ独奏の走句が見られ、中間部では、変イ長調の穏やかな主題が現れます。ロンド主題の再現の後でハ長調に転じ、副主題の再現が行われた後、変ニ長調でロンド主題が軽く回想され、オーケストラのトゥッティで劇的な盛り上がりを見せます。

独奏ピアノの華麗なパッセージが演奏された後、コーダに入って6/8拍子に転じ、速度もプレストとなって、ハ長調で喜ばしく終わるものです。このコーダは急速なテンポのなかでの分散オクターブなど、至難なテクニックが要求されます。勇壮な楽曲で、英雄に似てて格好の良いモノです。5番「皇帝」よりも3番が好きという方が多いのではないでしょうか。


 

YouTubeでの視聴


Beethoven: Piano Concerto No. 3 in C Minor, Op. 37
アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ - トピック
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=OYsmFDv_KGU
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=Nnz44QNT2qg
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=GRl3qqwd9Jw

Beethoven: Piano Concerto No. 3 in C Minor, Op. 37
クラウス・ペーター・フロール - トピック
Provided to YouTube by Kontor New Media
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=Uo9GPcUCGzk
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=pyBTFiAJGyM
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=qX5rhScV_SI

Beethoven: Piano Concerto No. 3 in C Minor, Op. 37
内田光子 - トピック
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=htqcCjD24Zw
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=KJI36gKUZrQ
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=bFsBDqf11VM


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