「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番「皇帝」
Beethoven: Piano Concerto No.5


バックハウス ハンス=シュミット・イッセルシュテット  ウィーン・フィル 1959年
Wilhelm Backhaus Hans Schmidt-Isserstedt
Wiener Philharmoniker
(Vienna Philharmonic Orchestra)

録音状態は良い。リマスタリング盤 往年の大名盤で、聞きしにまさる恰幅の良さ。堂々としてて文句のつけようがない〜と言いたいが、ホントに、これ名盤なの?
イッセルシュテットさんのオケに、かなり驚かされる。
カップリング:ベートーヴェンピアノ協奏曲第3番、5番「皇帝」
1楽章
冒頭、ドスンっという音で、「どぉぁ ふぁぁーぁーー」という響きで、そのなかから、ぱらぱらとピアノが出てくるのだが、ほんとに、パラパラ〜としている。
「らそふぁみ れ〜ぇぇーーー」 さすがに高音域は綺麗だが、1音の粒立ちはあまりよくない。
録音状態が悪いのではなく、勢いでやられちゃうタイプで、テンポが揺れており、はしょっちゃうところは、はしょっちゃいましょう。という感じで、フレーズがまとまっている。
「らっそ ふぁみれど〜」は、「らぁそぉっ〜」と、ためて、「ふぁみれどっ」はクッキリ速めに区分されている。
はあ。なるほど。勢いがあるっていうのは、こういうことか。 ウィーン・フィルなのだが、オケの音は艶があるというよりは、渋めに聞こえる。
「ふぁ〜 ふぁみふぁそ らふぁれどっ どっど ふぁ〜」
1音目の「ふぁ」に、ピアノの「ど」が被さって低音が良く入っており、ごつい響きだ。
また、低弦の響きがすごく重い。これが効いている。
「どっどふぁ〜 どっどみ〜」 金管が、どどど・・・と響き、ティンパニーが、どどど・・・ ハイ、圧迫感まで伴って、どどどど・・・と、強烈に押してくる。 「どっどふぁ〜」なんて、冒頭の1音目より、2音、3音目が強いもん。
「どっど らふぁれど〜」なんて、最後の「らふぁれどぉ〜」が、最後のどぉ〜を目指して、尻上がりに強くなっていくような感じだ。 なにせ、フレーズ最後には、全開って感じのパターンなのだ。
で、同じフレーズが登場するたびに、段々と強烈になってきて、「らふぁれどぉー!」と叫ぶ。

オケの強烈な音に耳を奪われてしまって、肝心のピアノは、すっかり忘れていたが、まあ。バックハウスさんにしては、う〜ん。繊細な感じがする。
「たぁらら らったた〜 たぁらら らったた〜」とフレーズは、まあ。転がっているが、このフレーズ後ろについている、「タタッ タタタ・・・」は硬いが、まあ綺麗だ。
それにしても、シュミットさんのオケが強烈で、パワー炸裂気味っ。爆演に近い。
木管、弦が、う〜 綺麗にまとまっているというより、強烈に吹いているし、金管なんて、パア〜 と全開で吹いてる。はあ? これウィーン・フィルだよねえ。シンジラレンよ。
で、すっかりオケが、バックハウスさんのピアノを、食っちゃう勢いで迫っている。
「み〜みみみっ どどどっ み〜みみみっ どっどどっ」
金管とピアノのセッションの部分も、金管が派手に鳴っていて声が割れているし、ウィーン・フィルのわりには下品っぽい。
1音目に、強烈なアクセントがついているには、仕方ないとも思うんだけど。う〜ん。
「どっどれ どっどれ どっどれ ・・・ どふぁ〜 らふぁふぁ〜」と、ピアノが続くが、次第に熱くなってはいるし、速めに回転しているが。
う〜ん。あまり乗らないなあ。オケがピアノを挑発しているようにも思うが。
う〜ん どうなんだろう。とりあえず、ピアノ協奏曲って感じは、なってないような気もする。
ピアノが主人公だと思うんだけど、タフなオケに、タフなピアノって感じがして、多少荒くたい。
オケはオケ、ピアノはピアノか。オケの音がキツイし派手なんだなあ。
なんしか、冒頭のフレーズが、ゴツン、ドスンっ。ですわ。これじゃーなあ。これホンマに往年の名盤?

2楽章
「み〜れ〜み どふぁ〜れ〜 そ〜そ〜らしどみれ〜」
「そふぁ〜みどそ そ〜ふぁ〜みどそ そ〜らら〜 らしど〜 ど〜れみ らど どしど〜」
1楽章とはうって変わって、穏やかな合奏のあと、バックハウスが出てくる。
へえ。こりゃ良いやん。「そそ〜 ふぁみれどしれどらそふぁみれどしどそふぁみれど しふぁぁ〜ふぁみれど・・・」 
私的には、ミケランジェリ盤が好きなのだが、ここは、バックハウスの情感こもった演奏が美しい。
テンポが揺れているのが、ほほぉ〜っと引きこまれるところだ。響きも充分。
ちなみに、ミケランジェリは、ここはメトロノーム的だもん。全く違うアプローチなのだ。
ふふっ。「そぉふぁれぇ みどそぉ〜 そ そふぁれみどそぉ〜 そ そら らしどぉ〜 どれみぃ〜」と弾かれたら、うっとりしてよろけちゃう。う〜ん。ここは痺れる。
イッセルシュテットさんが、強引に出てこないところが、良かったりしちゃって・・・。

3楽章
「ど ふぁらふぁら らどふぁふぁ〜」 ピアノの出だしは、あまり強烈なアクセントはついてないが、力強い。
で、イッセルシュテットさんのオケがあわさってくると、もー やっぱり強烈なのだ。
ひぃ〜っと言いたくなるほど、やっぱすごい。はやくもオケ全開である。
リマスタリング盤だからなのか、弦がキツイ・・・ 弦がキツイ音なのだ。きっとそうなのだ。
「ど ふぁらふぁら らどふぁふぁ〜 ふぁらそっみそふぁっど〜しどっ」 「どししっそ らそふぁふぁ・・・」
「そらっふぁふぁ〜そら しどっそ そら〜」 う〜ん。やっぱ音がキツイ。

ふぁっ しっ と、吃音的に聞こえる。甲高いなあ。 確かにオケの切れ味は、抜群だとは思うが・・・。
う〜 バックハウスさんのピアノが、柔らかく聞こえるのに、ぶちこわしにしちゃうようなオケの音だなあ。
ピアノの低音「らっ れ〜れふぁふぁ〜ららら〜 らら〜」
低音の音は、ホント美音で、これが、ベーゼンドルファーなのだろうなあ。深い音色だ。
バックハウスさんの指が、小回りが利かず、ちょっと危なっかしいフレーズもあるが、まずまず。
(この頃、バックハウスさんは、70歳中盤だと思う)

それにつけても、オケが派手で邪魔っけでした。まっ これが格好良いという方もおられるかもしれないけれど、う〜ん。ワタシ的には、唸ってしまった1枚である。
この往年の名盤によって、皇帝がイメージづくられた。って気がするが、ゴッツイ、巌のように硬くてイカツイ びくともしない、強烈なパワーで有無を言わせず、押さえ込むというパターン。っていうのは、実はオケなんだと思った次第。
イッセルシュテットさんのウィーン・フィルは、パワー炸裂して爆演である。
この盤を聞き込んだ人は、これを聴かれて、おおっ。これでなくちゃーと思われるのかもしれないけど。
今のワタシ的な素直感想としては、う〜ん・・・。ちょっと困ってしまった。名盤なんだよねぇ〜

ルービンシュタイン バレンボイム ロンドン・フィル 1975年
Arthur Rubinstein  Daniel Barenboim
London Philharmonic Orchestra

まっ こんなモン

録音状態は良い。リマスタリング盤、ご高齢にもかかわらず、これだけ弾けるなんて、信じられませんよ。もちろん、さすがにテンポは遅めですが〜
アナタ88歳でこれが弾けますか?って感じ。あやかりたいっものです。
カップリング:ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番「皇帝」、第4番
1楽章
録音状態は良い。1987年生まれだから、録音された時点では、13+75で、えっ 単純計算して88歳?
さすがにテンポは遅めだが、ところどころ、カ〜んっ!っという鋭い響きの打音がある。
スタインウェイのピアノを愛用されているとのことで、さすがに煌めき度の高い音で、始終、恰幅のよい堂々とした演奏である。で、華やかな演奏だ。ひとつの時代を創り上げた方だし、さすがに時代を背負ってこられただけあって、さすがに立派だと思う。なんといっても、この音の響き、音の持つ瑞々しさだと思う。
バレンボイムさんのオケが、音が、途切れ途切れになっているところもあり、えっと驚く場面もあるが、総体的に遅めなので致し方なしという感じだろうか。しかし88歳とは、やはり凄い方なのだ。 

2楽章
ゆったり、噛みしめるかのようなテンポで、ひとつひとつの音が、くっきりと描かれている。
うわっ 遅っ。と驚いてしまうが、まあ、年齢を考えると、聴かせていただくだけでもありがたいと思う。
とてもテンポが怪しく、ヨチヨチ的に弾かれている場面もあり、音の響きが残らず、途切れそうに、持続音が続かない〜っと悲鳴をあげそうになる。オケは、ちょっと大変だろうが・・・。

3楽章
2楽章からの引き継がれて、音が走り出していくところ、トリル部分はやっぱり可愛いっ。
テンポはちょっと遅めだけど、これを88歳で弾ける? ひゃ〜すごい。
音の煌めき度の高いこと、さすがにリズム感は、はあぁ〜 ダメですけど、いくらピアノが良くたって、これだけのキラキラした音って、出ないよねえ〜 ピアノの伴奏部分や、いささか、もわっとして、もたつくところもあるけど、総じてやっぱ強いタッチだと思う。

やっぱ80歳後半になって、まだ現役でおられたことのすごさを、ひしひし〜と感じます。また、世間も受け入れる度量の深さがあったんだと思う。 また、何十年も経ってから、今もって聴かせていただけることのシアワセを感じます。
認知症にもならず、暗譜で弾いておられることだろうし〜 う〜ん やっぱ、天才演奏家の、生涯現役を絵に描いたような存在のCD1枚なんだろうな〜と思います。技術だけなら、若い方の他の演奏CDが何枚でもありますし・・・
もちろん演奏の技術とか、そんなの度外視したモノでしょう。
ご長寿であられたことに、あやかりたいっ〜。そう思います。

ミケランジェリ ジュリーニ ウィーン交響楽団 1979年
Arturo Benedetti Michelangeli    Carlo Maria Giulini  
Wiener Symphoniker
(Vienna Symphony Orchestra)

録音状態は良い。ライブ盤(拍手入り) 
粒立ちの良い、繊細で、優美に歌う皇帝で、多彩なフレーズを知ることができる。
オケもピアノも、優美で繊細な感じのする華麗なるエンペラーで、しみじみ〜っ。美音を噛みしめて〜カップリング:ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番、5番「皇帝」
1楽章
まず拍手がある。冒頭 「ふぁ〜 ふぁらど ふぁらど ふぁらど ふぁ〜・・・ どしどし」
「れどしら らそふぁみ  れ〜 ふぁらど ふぁらど ふぁらど〜」
う〜ん 高い音域の綺麗さが、まず耳に止まる。
へえ〜 細かい音がイッパイで煌めいている。「らそふぁ そみど〜 どれみふぁそら・・・ららら らそふぁ」
こりゃ綺麗だっ。高いところに駆け上っていく華麗なフレーズ。おっ すごい。
パラパラパラ・・・
「ふぁ〜 ふぁみふぁそ らふぁれど どどふぁ〜」
「ふぁみふぁそ らふぁれど みふぁそ ら〜しそふぁっ」
重くないっ。いつもなら、もっと硬くてゴツゴツした音なのだが、ミケランジェリ+ジュリーニ盤だと、すごく優美で、しなやかである。柔らかい。ふわっとした「どっどっふぁ〜」なのだ。
のびのびとした「皇帝」である。オケの木管も、ぎゅっと締まった音ではなく、優美そのもの。
弦も繊細で、線は細めだが、絹糸のように艶やかだ。

「ふぁ〜 ふぁみふぁそ らふぁれど〜」 金管の音色もふわっ。ティンパニーの音は少し遠いが、木管が前にでてきており、よく通る声で歌っている。文字通り、木管が「ふぁふぁふぁ・・・」と吹かれている。
弦と木管の絡みも大変美しい。ぶつ切りフレーズではなく、やっぱジュリーニさんなのでよく歌い、滑らかなフレーズになっている。
ゴツゴツした、イワユル巌のような、ドイツっぽい演奏ではない。でも〜 こりゃ良い。耳のご馳走だ。
「ど〜 ららそふぁ ららそ ららそららそ ららし どしど〜」とホルンの音色の美しいこと。ひぃ〜っ。
木管の音が、若干、前で強めに、「しそふぁ〜」と鳴っているが、邪魔にならない。
まるでリコーダー風の音色だねえ。と微笑ましいぐらい。
ミケランジェリさんのピアノも、このオケのまろやかな響きに、そっと乗っており、デリケートに寄り添って、このタッチの優しく美しい音色を響かせている。
端的に言えば、端正で優美な美音である。かなりの美音なのだ。 それで、つい聞き逃してしまうようなフレーズも、新鮮に聴けてしまう。
「み〜 ふぁっ〜ふぁみれ どしらそ そふぁみれどしら〜」 
他の盤で聴いていると、ついつい、強いフレーズしか耳に止まらず、他の繊細な音が、まるっきり、聴けていないような気がする。
オケとピアノの強いフレーズの谷間に合間に埋もれてしまっているのか、私が聞き取れないだけなのか。
しかし、他の間合いのフレーズも、こんなにイッパイ詰まっているんだ〜と、この楽曲の多彩さに聞き惚れてしまった。
この盤を聴いて、まるで耳が洗われたよう〜。う〜ん。すっかり感心して聞き入ってしまった。
楽章最後は、かなりの強いタッチで迫ってきており、音量が最初とはまるで違う。タメも充分あり、パラララ・・・ ど〜ん。パラララ・・・ ど〜ん。津波のように迫力がある。でも、ふふっ・・・断然優美なのだ。
特に、ホルンをバックにして、ころころと、「そふぁみれどしらそ〜」と駆け下りてくるところなんぞ、絶品。
背筋が寒くなるほど、美しいっ。

2楽章
「み〜れ〜み どふぁ〜れ〜 そ〜そ〜らしどみれ〜」
「そふぁ〜みどそ そ〜ふぁ〜みどそ そ〜らら〜 らしど〜 ど〜れみ らど どしど〜」
溜息のでるような弦の合奏のあと、ミケランジェリのピアノが、精巧なガラス細工のように出てくる。
「そそ〜 ふぁみれどしれどらそふぁみれどしどそふぁみれど しふぁぁ〜ふぁみれど・・・」
決して嫌みなタッチではない。幾分、メトロノームのようには弾いているけど、ポリーニ盤のようには、硬く冷たい響きではないのだ。
「しし〜 らそふぁみれふぁ・・・」 ここは、前よりは強めのタッチ。硬めに凍るように響く。
でも、すぐに柔らかくなるのだ。機械的に弾いてはいるが、なんとも優しい。
「ぱっぱ〜ん」と響き渡ったあとの残響。そして、その後の「そっ らしどれみふぁそらしらそふぁ・・・」と強めに弾くフレーズと、かなり対照的なイメージを与える。
優しく聞こえるのは、ピアノだけではなく、伴奏の響きがソフトだからかもしれない。
聞こえるかどうかの響きを感じるんだよなあ。ふわ〜っとした空気感というか。う〜ん。なんだろう。
「みぃ〜みぃ れみ〜 ど〜れどしそ ふぁみ〜みれ そっそ らしど〜みれ」
「そ〜ふぁみどそ そふぁれみどそ そ〜らし らしど」 装飾音を交えての3連の和音付きのフレーズのやっさしいこと。柔らかくも、シッカリしてて、芯の強いフレーズが心地良い。 う〜ん。みごとに、1音の大切さを、しみじみ〜。
これだけ弾いている方も大事にされているのだから、受取手もなあ。しっかり聴かなきゃ。って感じがする。

3楽章
「どふぁ ふぁら らど どふぁふぁ〜」
このフレーズは、ガシガシではなく、しなやか。
もちろん、オケも優美にあわさってくる。
「ど ふぁらふぁら らどふぁらら〜」 1音目の「ど」より、ふぁら〜の「ら」の音に重量とノビがあって、文字通り語尾が、「ふぁっふぁ〜」っと伸びている。う〜ん。ガシガシにならない筈だな。
ピアノの「ふぁみれどしらそ」のフレーズだって、山なりなんだもん。こりゃ優美な筈じゃ。
慌てず騒がず、よいテンポで歌っている。
「み〜みみふぁ そらっふぁふぁ〜 ふぁ み〜みみふぁ そらっふぁふぁ〜」 
奥の木管が、ずーっと鳴っているのが気になったが、この口調も柔らかい。
そらっふぁふぁ〜を、区切って紋切り調に、パンパンっと奏でる盤もあるのだが、このジュリーニのオケは、そんな荒いことはしない。カンタービレとまでは言わないが、しっかり歌ってますよぉ。

「ふぁ〜らら らどど どふぁふぁ〜 ふぁみれどしら〜」
あ〜 こんなフレーズまで、しっかり粒立ちよく聞こえてくる演奏って、あったかしらん。そう思わせるミケランジェリのピアノ。
決して力づくではなく、ぐぐぐ〜っと熱い、瞬間湯沸かし器のような音楽じゃない。
いつまでも、優美で華麗で、そして繊細。平常心を失わない。でも、格調高く、1音もゆるがせにしない完璧な音のように聞こえちゃう、その緊張感と、ソフトな歌い方。
体温はあがらず、平温のまま。でも、やられちゃうんです。
ハハハ〜 う〜ん。完全にやられちゃたな。これは。メチャ感動しちゃった。
かなり食傷気味になっている楽曲だったが、ハイ、これは、メチャ新鮮に聞こえる。
完全ライブのくせに、完璧美音です。傷なんか、なかったんじゃーないでしょうか。絶品 拍手〜っ♪

ルドルフ・ゼルキン 小澤征爾 ボストン交響楽団 1981年
Rudolf Serkin   Seiji  Ozawa Boston Symphony Orchestra



録音状態は良い。丁寧で控えめ、それでいて、内からフツフツと湧いてくる瑞々しさや喜びがあって、自然に気持ちも、暖かくなってしまう。
カップリング:
ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」、ピアノ協奏曲第5番「皇帝」
1楽章
冒頭から、煌めき度もたっぷりあるピアノが流れてきて、とても丁寧に弾かれている。
録音状態も良いし、懇切丁寧に、楷書体でありながら、肩をいからした、硬い響きではない。
なんて言うんだろ〜 適度な硬さ、きめの細かさを感じる。
密やかさも持ち合わせてて、弱音がことのほか美しい。格調の高さも感じられるが、強くありながら、どこか柔らかく優しい音だな〜って思う。芯があって、打つ音がしっかりと入ってて、ぐいっと押してくる感じもするし、不思議な感じがする。
この録音当時、すでに70半ばだと思うんだが〜 几帳面なタッチ。超マジメって感じの弾き方で、リズムが正確というか、乱れがないって感じなんである。これは、これで凄いよなあ。 で、ガッシリと楔を打ち込むように音階を引き上げていく。
でも〜 ところどころ、ふわっと、緩やかに息を抜き、間合いを取っているので、ガチガチではないのだ。
とーっても、ワタシには、良い意味で、微妙な感じがする。
オケの方は、あまり前に出てこないのだが、丁寧にカッシリとした響きで、木管のすーっとした響きと、適度な刻み感が、ふんわりとしつつも、カッチリと描かれている感じがする。

2楽章
弱音で、ふわーっと「みぃ〜れぇ〜みぃ どぉ〜ふぁ〜れぇ〜」と歌い出す。ホントに控えめで、主張しないオケであるが、これが、客観的でもあるのだが、そこはかとない空気感を醸し出す。
う〜ん バックに徹してます状態だが、これが微笑ましい。
で、そこに、ためらいがちなピアノが入ってきて、夢幻の世界が広がっていく。
心情を抑制しながら、う〜ん。ウチに込めて、込めて〜
しかし、ぽつり、ぽつりと、夢のなかで泳いでいくような浮遊感がある。それでいて、喜びが発芽して、段々と膨らんで行くような、春を待ちかねたような感じがする。
どことなく、外の空気は冷たいが、陽射しの暖かさを感じ始める、そんな時期を迎えているかのような。
ふむ、丁寧だが愛情が籠もった音で、微笑みを浮かべながら、ピアノを弾いておられるように感じちゃいますねえ〜 そろっと、もう良いかな〜って感じで、そろっと、テンポをあげていって、じわじわ〜っと、喜びが広がっていく。この2楽章は、この、じわじわ〜っと滲みていく、その感覚が気持ちよいです。

3楽章
最初は、もたっとしているかと思うのだが、そのウチ、速めに変わっていく。
指が踊ってしまったのかもしれないが、ハイ、丁寧ですよぉ。途中、ちょっとアブナイと思うところもあるのだが、なんたって70歳超えてて、これだけ弾ければ〜普通、凄いと思うけど。
そんなことより、やっぱ、そこはかとなく、控えめさがあって、ふわーっとした膨らみ感があって、まるで、梅の花のように地味だけど、馥郁としてて、ふくよかだ。
強引すぎず、甘すぎず、強すぎず、控えめってところが良いのかも。ぐいっ〜っと引きこむ、引きこまれる、押し付けられ感もなく、それでいて、意志が強そう。という感じがしてくるんだけど。
最盛期ではないだけに、これだけの味が出るのかなあ。
可愛い音で、ブンチャッチャ チャチャチャ〜と弾かれて、ころころころっと昇って行かれて、ん〜ッチャッチャっと、オケも鳴っているし。個性的すぎないところが、好ましいのかも。

コワモテの皇帝さまではないが、好々爺すぎない瑞々しい感じがして、精神力は若いっ。
なんたって、これだけ、シアワセ感、喜びを、これ見よがしに、外に向けて、ぶわーっと発散させず、むしろ、じわーっと内から湧き上がらせてこられると〜 う〜ん。これは凄い。
丁寧で控えめなのだが、内から、ふわーっと湧き上がってくる蒸気のように、聴いているうちに、ほてり感が感じられるほど。うかっと聴くと、中庸的だな〜って思うだけど、このジワジワ感はすごい。
自然な幸せ感が、さりげなく描かれていて、聴いていると、じわっと〜こっちまで暖かくなってくる。
これが、きっと、ゼルキンさんの、お人柄なんでしょうねぇ。

エゴロフ サヴァリッシュ フィルハーモニア管弦楽団 1982年
Youri Egorov  Wolfgang Sawallisch
Philharmonia Orchestra of London


はぁ?

録音状態は良い。繊細で女性的な演奏で、皇帝というよりも、お姫さま風だ。
ちょっと気持ち悪い皇帝であるが、惚れ惚れするほどに美しいっ。
カップリング:ベートーヴェン ピアノ協奏曲5番「皇帝」(82年)
モーツァルト ピアノ協奏曲第20番(85年)

1楽章
いきなり「ば〜ん」と、オーケストラのトゥッティが鳴ったあとのピアノソロ。
う〜ん。こりゃ、他の盤とは違う。カデンツァは、すごく透明度が高く、辺りに露が飛び散るかのような瑞々しさを持っている。再び、「ば〜ん」・・・。
細い指で奏でられた、スタイリッシュさを感じる。高音へ駆けのぼるところは、なんだろ〜この感覚は。飛翔感があると言えばよいだろうか。う〜ん。これ、ホントに皇帝かねえ。
サヴァリッシュの振るオケの弦の響きは、優しいし、このピアノに寄り添うというか、邪魔しないでサポートしている。無骨に重厚に鳴らさず、かなりスマートだ。弦の歯切れが良いことと、見通しが良いこと。
弦、特に低弦がボコボコ鳴らず、木管も歯切れ良く、さらり〜と高音の響きが耳に残る。
で、ティンパニーの響きを、くっきり入れており、要所を締めている。
ごっつい、イカツイ皇帝ばかり、最近聴いていたので、この様相が相場だと思っていたのだ。
へえ〜 男性的というより、女性的で、まるでショパンかシューマンか、どちらかと言えば、なよっとした楽曲に聞こえてしまう皇帝だ。

昨今、男性も女性化しているからなぁ〜と苦笑気味だが、でも、決して、なよなよと儚げではないのだ。ホント、瑞々しいので耳が洗われるような気がする。エゴロフ盤は、とても新鮮だ。
しっかり硬いタッチで、リズミカルに、適度に深く叩く強さを持っている。スリムだが筋肉質というか、引き締まった演奏だと思う。特に、右手の高音域のタッチが丁寧で、1音1音、くっきり聞こえる。
へえ〜 技巧に走って、慌ただしく、はしょり気味に聞こえるフレーズが、はあ。これほど綺麗だとはなあ。
ベートーヴェンって、豪快、勇壮という言葉が相応しいような気がしていたが・・・。
へえ。こんなに美しかったっけ?
皇帝を聴いて、美しい。煌めいてレースのようだ。なーんて言葉を使うとは、思いもよらなかった。 

2楽章
テンポは相当に遅め。レース越しに、午睡している女性がいるので、そっとしておこう〜という雰囲気だ。まどろみの楽章とまではいかないず、緊張が続かない・・・と、なりかねないほどのテンポの遅さ。
はあ。まるで、ラヴェルかと思うほど。使われる音が違い、フレーズが長くなく、区切りが良すぎるのでイメージには、まったく、そぐわないのだが。
オケは、ほとんど役立たずになっており、ピアノの細い、しっかりした刻みに寄せて、単に拍子を取るだけに使われてしまっている。この楽章は、アダージョだが、その存在の意味が、ちょっと分からない感覚に陥ってしまった。

3楽章
楽章最初も、2楽章からの午睡シーンを引きずっているようだ。
で、鳥が囁き、さあ〜 朝ですよ。目覚めてください。と、でも言われているような気分に陥るほど爽やかだ。
粒立ちの良い、きめのこまやかな音が、たっぷり詰まった皇帝で、ホント、朝のシーンという感じで、柔らかく、細めにしなやかに響く。
少し シナを作った皇帝とも言えなくもないが、まあ。粒立ちが良いので、嫌悪感は抱かない。
ただし、他の盤に比べると、やっぱ皇帝らしくないし、求めるモノが異なるようで違和感は残るのだが〜 今まで、ワタシが聴いてきたこの楽曲が、あまりに厳つく、ガツンガツンとした響きに彩られたものを聴いてきたせいかもしれない。
今後、こんな傾向の演奏ばっかりになると、ちょっとなあ困るよなぁ〜と思いつつも、この優美さに、耳が吸い付けられる。
ホント、他の盤だと、勇壮果敢に鳴っているのだが、エゴロフ盤で聴くと、煌めきとが高い。
それも半端なく、「たら〜ららら らったたら〜」というフレーズは、なんとまあ、煌めいており、可愛く、女性的すぎで〜
おもわず、 げぼっ。なんじゃーこれっ。キモイなあ〜と、最後には叫んでしまった。しっかし、美しいのである。
美しすぎて〜 くらくらしちゃう。
皇帝でもなく、豪傑な女帝でもなく、これじゃー お姫様〜という感じである。 う〜ん。いつもの皇帝とは、ずいぶんと様変わりしており、かなり異色ではあるが、清潔だし、丁寧で、繊細な一面が垣間見られる演奏である。
食傷気味の方は、一度おためしあれ。
キーシン盤も、かなり女性的な演奏という感じがするが、浪漫的で、テンポを揺らし、とろり〜とした演奏なのに比べ、エゴロフ盤は、あくまでも、すっきり系で、1音の区切りが良 く、テンポはあまり揺らしていない。
従前の皇帝というイメージが、すっかり覆されるほどに、女性的で、大変美しいっ。

ブレンデル レヴァイン シカゴ交響楽団 1983年
Alfred Brendel    James Levine
Chicago Symphony Orchestra

録音状態は良い。華麗なるタッチが存分に楽しめる。3回目の全集で、ライブ盤(拍手入り)
カップリング:ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番、ベートーヴェン ピアノ協奏曲5番「皇帝」
1楽章
冒頭「どどふぁ〜っ」と、オーケストラの音が鳴ったあとのピアノソロが、とても華麗で、う〜ん。良いわあ。
録音の透明度も高いし、力強さもあり、線の美しさもあり、粒立ちも高いし。
ゴージャスさは、あまり感じないが、綺麗だ。 オケの「どどふぁ〜 どどみ〜 ふぁしら〜しそふぁ〜」は、明るめ。
合いの手のティンパニーもしっかり聞こえるが、弦の高音域の音色が特徴的。
シカゴ響だから、もっと、ゴリゴリで押してくるのかと思ったのだが、意外と軽めで、軽快さが出ている。
低音の音域ののびもあるのだが、金管が、もう少しメリハリがあれば良いのだが・・・。
まっ 華麗なるブレンデルのピアノが、力強さと、伸びやかさを同時に感じさせてくれる。
やっぱ、煌めきがあるよなあ。
ピアノの豪快さ 特に、左手のフレーズの力強いこと。階段を、ダンダンダン・・・と駆け上ってくるところの、パワフルさ。いいな〜っと聴いているのだが、しかし、なぜだか、オケのフレーズに耳がいってしまって。
ブレンデルのピアノに集中していかない。(苦笑)

レヴァインの振るオケは、しっかりした演奏だとは思うのだが、無性に、軽やかでスピーディだなあ。と感じてしまうのだ。どうしてだろっ。無造作なオケとは思わないのだが。
楽章最後にさしかかるとき、ピアノのソロは、超弱音でテンポを落としている。
「どっどふぁ〜 ふぁみふぁそ らふぁれど〜」 最後に至るまで、このピアノは、オケと一体化して、軽やかに飛翔している。やっぱ〜軽めだなあ。

2楽章
テンポはゆったりしている。弦のアダージョ感があり、まろやかである。妙なフワフワ感が良い。
で、この楽章のなかのブレンデルの煌めく動きが、凄いっ!
「そ そ〜ふぁみれど〜っ。ふぁ ふぁ〜」と溜息をつかれると、よろめいてしまう。 
抑揚のついたフレーズで、甘美で、大人っぽくにも聞こえるし、純情にも聞こえてくる。この高音域は、綺麗だ。ホント。
で、ブレンデルさんの指が、超こまかく動いているっ。なんて表現したら良いんだろ〜
コロコロコロ・・・ (←なんと単純な) オケが主旋律を弾いている時の、「どそみそ らみどみ・・・」なーんて、ピアノの初期練習曲みたいな単調な伴奏フレーズも、綺麗だっ。
「そ〜ら〜みどそ〜 そそら らしど〜 どれみ〜 らどっどしど〜」と、上昇していくところ。
う〜この、コロコロ感がたまらん。

3楽章
引き続いての3楽章 「どふぁ〜 ふぁら〜っ らどふぁっふぁ〜」と華麗なワルツのように奏でてられる。
う〜ん。なんと貴婦人のようではないか。でも、ライブだからか、細かいところは飛んでる。
転がり落ちるようなコロコロ感。まあ。線が細めで、私的には、もう少しごつくても良いんだが。
上品な皇帝なので、厳めしさとか尊大な感じが、ちょっと希薄である。
それにしても、高音域で走る右手・・・ やっぱ綺麗だなあ。瑞々しいというか、新鮮って感じがする。
後年、ラトルとの全集もあり、これが3回目の全集である。
最後、オケが一本調子になりかけているような気がするが、まあ。お気楽な感じのするレヴァインさんのイメージは、ここでは無いし、完全にサポート役に徹してくれている。
派手さや豪快さは、少し欠けているけれど、華麗なるタッチで仕上げており、軽やかにのれる皇帝になっている。私的には、もう少し豪快で、押しの強さが欲しいところだが、これは好みだろうなあ。
ワタシ的には好きである。

エマニュエル・アックス プレヴィン ロイヤル・フィル 1986年
Emanuel Ax   André Previn   Royal Philharmonic Orchestra

ほぉ〜良いヤン

録音状態は良い。欲をいえば、もう少しクリアーであれば嬉しい。さほど個性的ではないのだが、しなやかで繊細、かつ力強く鋭いタッチもある。
穏やかで大らか、平和すぎるかもしれないが、綺麗な演奏である。
カップリング:ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番、5番「皇帝」
とっても失礼なことに、アックスさんは、チェリストのヨー・ヨー・マさんとCDのジャケットに写っておられたイメージが強く〜
その昔は、ついつい、伴奏者の方って感じの存在だと、すっかり思い込んでいた時があった。
しかし、そうではないと知ったのが、このベートーヴェンの一連の協奏曲。
ワタシ的には、プレヴィンさんのベートーヴェンの交響曲が、しなやかで、流麗、リズミカルで、楽しい演奏で好きなので〜 その影響で、ピアノ協奏曲も購入した。
5番の皇帝は、さすがに強力な盤が目白押しで、少し分が悪いが、3番も、4番もナイスな演奏だ。

アックスさんのピアノは、音が柔らかく繊細だ。そのくせ、結構硬めのカツンカツンと打音していく場面もあり、強さもある。
強靱で繊細で、場面ごとに使い分けているかのような、いろんな面をもっている。
いつ弾いても、ああ〜 ○○さんの演奏だ。と解るような強烈な個性を持っている演奏家が、おそらく、主役を張っていくのだと思う。でも、アックスさんの演奏は、たぶん、そんな超個性的な演奏家ではないように思う。
使い分け・・・ 場面ごとに使い分け、演じわけができるのではないかな〜って思う。

プレヴィンさんのオケは、流麗で柔らか、付点のリズムが弾力があり、よく弾むし、しなやかな曲線美があり、良く歌う。
で、ここでのアックスさんのピアノと、オケの一部のように組み込まれていく。
質的に良く似ているというか、質的に馴染んでいるように思う。

競い合い一触即発的に演奏されているのも、協奏曲の醍醐味ではあるが、ここでは、同質感があり、マッチングして相乗効果を生んでいる。
オケでいうと弦のしなりが、やっぱり良いのだ。で、ピアノも、タタタタ・・・ ん〜たら らった たたたたっと、噛みしめるかのような音があって、オケの付点で転がる間合いと、その規則正しい音の運びが、絶妙にマッチングしている。
かと思ったら、弦と同じように曲線美を描いていくが、その間合いや形が、似ているように思う。

穏やかで、穏やかすぎて、伸びやかすぎて、なんて楽天的なベートーヴェンなんだ。
こんな楽天的な〜演奏、ダメでしょ。といわれかねないほど、シアワセ感の漂う平和なベートーヴェンだが〜 大らかで、伸び伸びとした余裕のある皇帝も、ワタシ的には好ましいと思う。高音域の柔らかい弱音、煌めき感、オケの柔らかさと大らかさ、音の優美さ、特に音の間合いが絶妙で、ちょっと最後の一音に、ほんのちょっとだけタメた間合いがある。
同じ転がり方でも、最後の2音3音手前で、ちょっとだけスピードを落として、ふわっと落ちていく。技あり的な、間合いの、空間処理、スピード処理という感がある。
最終楽章は、もう少しスピード感と、音の長さを持って走ってくれたら嬉しいのだが、さほどエキサイティングしていかず高揚感がイマイチだった。

なかなか巧く表現できないのだが〜 アックスさんの演奏を聴くと、ベートーヴェンで穏やかで平和的、大らかに演奏しているって感じの演奏に、遭遇してこなかったような気がする。
堂々としてて、堅牢で、雄大で、胸を張って、威勢がいい〜という演奏が、どこか、もてはやされている感じだし〜
そうでなくっちゃ〜っ、皇帝じゃーないよね〜と、聴き手も、最初からイメージしているような気がする。
そうでなくても良いんじゃーないかな、と、ちょっと感じました。

ツィマーマン バーンスタイン ウィーン・フィル 1989年
Krystian Zimerman  Leonard Bernstein
Wiener Philharmoniker
(Vienna Philharmonic Orchestra)



録音状態は、まずまず。オケの低音がボコボコしているが、ピアノは多彩で、綺麗で、表情豊か。ライブ盤  カップリング:3枚組全集より(3〜5番はバーンスタインの指揮で、1、2番は弾き振り)
1楽章
冒頭から立ちのぼってくるピアノの粒立ちに、うへっ。すげ〜っ綺麗。
美音で、キラキラとしてて、透明度が高く、硬めの音だが濁りがない。
「どし どし どし どし・・・どみそらふぁらしれど・・・」と、下ってくるところなんぞ、うへっ。のけぞってしまう。
ピアノが違うんじゃーないかと思うほど、見事な音だと思う。テンポは速め。
しかし、オケの方が、イマイチで、「どっど ふぁ〜 どどっみ〜 ふぁっそら〜しそふぁ〜」
ヤワな音に聞こえてしまう。木管の音色も悪く、ふにゃふにゃっとしていて、芯が無いって言うか。
流麗ではあるんだが、う〜ん。なんでしょ。
「たぁらら らったた〜 たぁらら らったた〜」と言うフレーズは、波に乗れずに転覆しちゃいそうだ。
「そ〜ら らそふぁ ふぁそ らっそ らっそし〜 し〜どしどぉ〜」 う〜 力のないことこの上ない。
「ふぁ〜ふぁそ ふぁられど〜 バカバカバン・・・ らふぁれど〜」 ボコボコしたティンパニーの響き、異様な感じのするドテドテ感。う〜ん。やめてくれぇ。

堅牢さは、ボコボコ鳴るティンパニーの響きで支えられているだけで、ちーっとも面白くない。
それに比べて、ツィマーマンのピアノが光って浮き上がってくる。
バックが酷いんで、このピアノが浮いてくるのか。バックが、ぼやけてダーク色なので、余計に、ピアノにピントが、びっしっと合ってくるのかもしれないが、でも、確かにピアノは綺麗だと思う。
で、単に綺麗なだけでなく、ツィマーマンさんのピアノは、ものすごい強打である。
金管が、「ふぁっふぁっ〜 ふぁっふぁ〜」 汚い音で、吹き散らすように吹いているのだが
ピアノが、「どっどど〜ん どっどど〜ん しっしし〜っ れっれれ〜ん」
あまりの気合いの入れ方に、ごっつ〜ぅ。びっくりするほど。
「気合いだ〜!」の3連発である。
硬さも、しなやかさも、強さも柔らかさもあるし、丸いところと、シャープなところもあるし。
「ら〜ぁ ふぁふぁどどららどどふぁ・・・ れぇ〜 ・・・ らぁ〜ふぁどどら・・・」
ちょっとした間合いを取っているのだが、響きを確かめ、響きを残して叩いているような気がする。

2楽章
ここは良い意味で、とろける音楽になっている。
バーンスタイン+ツィマーマンさんだから、どっぷりと情感の籠もった演奏である。
「そふぁ〜みどそ そ〜ふぁ〜みどそ そ〜らら〜 らしど〜 ど〜れみ らど どしど〜」というフレーズが、ロマンティックに響く。
ベートーヴェンではあるが、「そ〜ら そらそらそらそら ふぁみふぁみふぁみ・・・」 パラパラパラ〜
ツィマーマンさんのピアノは、ポリーニさんと全く違う音色が出てくるなあ。って思う。
オケが、「ど〜れ〜み らど ど〜し そ〜」 ピアノが、「らみどみ しそれそ どらふぁら れしそし・・・」
ふふっ 少女のような可愛い音楽に変貌している。

3楽章
「どぉ どふぁら らどふぁふぁ〜」 ソフトタッチで始まる。
いかつい肩肘はった音で出てくる盤もあるが、ツィマーマンさんのピアノは、出だしの音が、そっ。ふわぁ。
ためらいがちに1音目が出てくるし、余韻を少し残して、実質は、2音目からスタートになっている。
で、強くはないし、アクセントも、たっぷりした付点でもないし、大仰には出てこない。
オケも美音で、華麗なるタッチという感じ。
引きずってもいないし、執拗ではないので、さらり〜 アクが強くない。
ただし、たらん〜 とした風情は残っている。
「ど ふぁらふぁら らどふぁふぁ〜」 このフレーズの後半、らどふぁふぁ〜が強めで、「そらっ ふぁふぁ〜」の「そらっ」が強めで、間に空間が生まれているため、リズミカルに弾んで聞こえる。
この3楽章は、特に面白い。 盤によって、違いが、素人でも、わかりやすく聞こえてくるような気がする。3楽章だけ取り出して聞き比べてみても面白いかも。
って言っても、なかなか言葉に出しては表現しづらいんだけどねっ。
ツィマーマンさんのピアノは、音がいっぱい鳴ってくるような気がする。
強いタッチで攻めてくるところが印象的だし、ピアノの高音域の音色が、多少高めに聞こえて、メチャ綺麗に響いて楽しい。
「どっ ふぁふぁ ふぁらっら らっらっ どしらそふぁみれど〜・・・」 う〜 おみごっと。

まっ ベートーヴェンらしいか。って言われたら、う〜ん、既成概念が出来てしまっていて、なんだか違うような気もするのだが、でも、この概念を壊してもらえる1枚であるような気がする。
って、えらそうなことを言っても、所詮、既成概念って言っても、どんなモノなのか、結局わかってないっていうのが、正直なところ。○○らしい。なんて、ホントは軽々しく言えないのだ。
で、ツィマーマンさんの演奏は、決して、柔い演奏でもないし、女性っぽくて、雰囲気違うで〜という感じでもない。強いところ、優しいところ、合わせて持っていて多彩だし、楽章のなかでも一辺倒には演奏されていない。
いろんな顔、表情を持っているという感じを受けた。フレーズに応じて変えている。そんな気がする。
オケは、イマイチだったけど、ピアノは、う〜ん。良いなあ。綺麗で、流麗でもある皇帝で、なかなかに表情が多彩だ。
ヤワな風に見えていながら、やるときゃやるっ。って感じで、なかなかに歯ごたえのある演奏だ。

ポリーニ アバド ベルリン・フィル 1993年
Maurizio Pollini   Claudio Abbado   Berliner Philharmoniker
(Berlin Philharmonic Orchestra)

録音状態は普通。ライブ盤。
ピアノもオケも、硬い響きで強打されており、圧倒される。ベートーヴェン ピアノ協奏曲全集3枚組BOXより
1楽章
「ふぁ〜〜」という、ちょっとヤワな響きから、ぱらぱらとピアノが出てくるのだが、 このピアノは粒立ちは良い。硬い几帳面な音で、一音一音的に響く。確かに、几帳面に光るツブツブ感あり。
煌めきとか色彩力は、う〜ん。ちょっと感じられないけれど、モノトーン的に白黒ハッキリしている。
テンポは少し速め。
ピアノとオケの合体した「ふぁ〜 ふぁみふぁそらそれど〜」と鳴ってくるところは、力がある。
オケが、硬くて渋くて、じみーっ。という音なので、ヴァイオリンが入ってこないと陰気な感じもするが、これは好みで〜 私的には、くらっ。と感じてしまう。
ポリーニさんのピアノは、どちらかと言えば苦手タイプで、タメがないっていうか。紋切り調に聞こえてしまって、喜怒哀楽が表面に出ず、近寄りがたいタイプに聞こえてしまう。
オケの「たぁらら らったた〜 たぁらら らったた〜」と、フレーズは、これも渋くて硬い。
「らふぁ〜れどっ らふぁ〜れどっ れ〜」というフレーズも、区切りがクッキリついてて、いかにも1音1音的に奏でられており、フルートの音色がはっきり聞こえる。まんなかの「ふぁ〜」にアクセントがついているようで、ダンダカダン・・・と響くし、ゴリゴリしていて歯ごたえはあるが、舌触りが悪い。

う〜ん。オケもピアノも、かったぁ〜 硬すぎて歯が折れそう。
「どっどれ どっどれ どっどれ ・・・ どふぁ〜 らふぁふぁ〜」
「らっらそ〜 ふぁみれど」 「どどっし らそふぁみれど・・・」
全体的に、ドンドンという重みがありゃ〜いいってワケじゃないと思うのだが、響かないのだ。
重量は、そこそこあるし、ドンドンと叩いているのだが、ある意味、広がりの感じない、無表情な杭打ち的な過激さに聞こえてしまう。オケも同じ。なんじゃこりゃ。
う〜ん。これだけ強打しているのに、こっちに伝わってこないのは、何故なんだろう。
なんだか無意味に、力任せ的に感じてしまって、感動しない。小回りの利いた、スピード感のある、丁寧で几帳面な音が聞こえてくるのだが・・・。こりゃ機械的だなあ。

2楽章
「み〜れ〜み どふぁ〜れ〜 そ〜そ〜らしどみれ〜」
「そふぁ〜みどそ そ〜ふぁ〜みどそ そ〜らら〜 らしど〜 ど〜れみ らど どしど〜」
このオケの響きは、う〜ん。良いやん。1楽章とは違う人が振っているように聞こえる。
ただ、余計なモノはありません。というようなスマートさ。深みがなあ。なんか人間臭くないっていうか。
ふふっ 何か足らんねえ。
「そそ〜 ふぁみれどしれどらそふぁみれどしどそふぁみれど しふぁ〜 ふぁみれどしどみれ・・・」
テンポはゆったり。「みみ〜れれどし〜し〜ら らふぁ〜みみれど ど〜し し〜そふぁみれどれみれ〜ど」
このフレーズは綺麗なのだが、余裕がもう少しあれば、ふわ〜っとした気分になれるんだが、律儀すぎて余裕が無いっていうか。間合いが少ないというか、歌わない人ですなあ。この方は。
開放感を与えない堅物の上司のようで、笑いの出ない職場に座っているみたい。
キツイ仕事でも、周りの雰囲気が和やであればマシなんだけどなあ。これじゃ仕事もタイトだし、雰囲気もタイトで、楽しくない。 すごく急峻な山を仰ぎ見ているような気持ちになってしまった。

3楽章
「ど ふぁら ふぁら らどふぁふぁ〜」 ピアノの出だしは、硬いパンチを食らった感じで力強い。
2回目も、「どっ ふぁら ふぁららどふぁふぁ・・・」と来る。まるで響きのない音だ。
「みんっ み ふぁ そそらふぁ」・・・ みんみ〜と来るとは思わなかったぞ。はあ?
オケがあわさってくると、これがまた、語尾のキツイこと。
「ど ふぁらふぁら らどふぁふぁ〜」 最後の声が金切り声風で、「ふぁぁ〜っ!」
これが2回繰り返される。はあ? これは酷い声だなあ。なんつー 声で叫ぶのだ。
切り込みが強い。確かに・・・。硬い木を彫刻し、仏像でも創ろうという感じがする。切磋琢磨されて、ノミを振るっているかのような両者一体となった、皇帝だろう。
特に、この楽章は、そう感じる。
理性があるので殺人鬼のようには感じない。黙々と彫っていく彫刻家のようには聞こえるので、これは恐れ多いとは思うが、近寄りがたいことも否めない。
ポリーニさんのピアノタッチは、硬いけれど綺麗です。確かに文句のつけようがないほど、1音1音聞こえてくる。怖いぐらいに・・・。でもなあ。私的には苦手なんです。
ジャンジャカ〜ジャンカっと鳴ってくるオケも、几帳面に響いてはいるが、これで〜よいんでしょうかねえ。
オケとピアノは同質なのだろうか、異質なのだが寄り添っているのだろうか。でも、ただならぬ気配を感じてしまって、タジタジとなってしまう。

息を潜めて、怖い上司に一喝されるような感じで〜 ワタシ的には息苦しい限りだが、これぞ、芸術家って感じもするのだ。まあ。観客がどーのこーの、言う立場じゃないし、言えないような恐ろしい空気が生まれている 。わたしゃ、これを聴いていると、しんどくなりまして、とっても苦手なのでありますが〜。
さて、みなさまは、どうでしょうか。ワタシ、ライブを聴きに行っていたとしたら、きっと会場で一瞬こわばってしまい、呑み込まれているんでしょうね。
で、一瞬水を打ったように静まりかえった後、猛烈な拍手をしているとは思いますが・・・。
(ハイ、このCDの最後には、凄い拍手が入っています。)

キーシン C・デイヴィス ロンドン交響楽団 2007年
Evgeny Kissin   Colin Davis    London Symphony Orchestra



録音状態は良い。最近の録音の割には、ちょっとかさついているような気がするが。それよりも、2楽章のテンポが超遅めで、独創的。細やかで、クリスタルのような輝きはあるのだが、う〜ん。ピアノ協奏曲全集版あり。 また、1997年 レヴァインとフィルハーモニア管弦楽団との皇帝(CBSソニー盤)もある。
1楽章
冒頭のば〜ん。は、重圧感なく、ちょっと弱いかな〜って思ったのだが、その後、さすがに、ピアノは瑞々しい。噴水の前に立って、キラキラした水滴が落ちてくるのを、 まるで、水しぶきに濡れながら見ているようだ。演奏は、細身系で、ガンガンとは弾かない。
重々しい、厳めしいベートーヴェンではなく、大変若々しく、青春時代を楽しむかのような皇帝になっている。とにかく瑞々しさは随一って感じで、柔らかく、弱々しいぐらいに聞こえてくる 。
デイヴィスさんの振るオケは、あまり旋律を膨らませてはいかないし、がっしりした城壁のような堅牢なイメージではない。
特に、デイヴィスさんの振るオケが、さっぱりしているという感じ。
そのくせ、低音のごろごろ〜とした響きは充分にあるし、金管の音にも耳が、他の盤にないところで響き、ぴくっと反応する点が多々あり。木管の分離も良いし、ふ〜ん。ここで音が入ってくるのか。と、ちょっとしたところで、耳が立ってくるところがある。
でも、なーんか、総体的にはピアノの主体性が、イマイチ、ワタシ的には届いてこないんだよなあ。
なーんでしょ。
ミケランジェリとジュリーニ盤も、かなり優美で美しいな〜っと思ったが、キーシン盤は、怒られるかもしれないけど、ちょっぴり、訴えてくる力という点が、気迫が〜 薄いような気がしちゃう。
(↑ あくまでも、ワタシの個人的な印象なのだが〜)
まっ 印象的なフレーズ、「ふぁ〜 ふぁみふぁそ らふぁれど どどふぁ〜」
「ふぁみふぁそ らふぁれど どどみ〜ふぁそ ら〜 し〜そふぁっ」という、肝心のフレーズが弱いのかも。

2楽章
「み〜れ〜み どふぁ〜れ〜 そ〜そ〜らしどみれ〜」
この楽章は、う〜ん。メチャ弱々しく、か細く流れてくる。テンポも遅め。
1楽章が強烈なバックハウスさんの演奏だと、この2楽章に入ると、いっきに静謐の世界に誘われ、引きこまれるような美しい演奏だと感じさせられるのに、どーしてなんだろ。
あまり1楽章との差が感じられないためかしらん。う〜ん。
キーシンさんの演奏だと、うへっ まるで病気みたいだ。と感じてしまった。
フレーズ自体は、恐ろしく綺麗なのだ、綺麗なんだけどなあ。
このテンポで演奏している理由が、イマイチワタシ的にはわからないのだ。そして、なおかつ、とろり感があり、こだわりのある音の響きを醸し出している。
正確にはタイムを測っているワケではないが、超スローだ。
細かい音を、パラパラパラ・・・と続けて鳴らして行きたいという強い主張があるのか、はたまた、また午睡のように、まどろみの世界を描きたいのか・・・。ピアニストのみなさん、この楽章は、遅いんだけど〜 
キーシン盤のように、ここまで遅いと息が詰まる。
エゴロフ盤も、同じように遅くて、超スローだったんだけどなあ。あまりテンポは揺らさないので、さっぱり系に聞こえた。でも、キーシン盤は、どうも陶酔型のように聞こえちゃう。
いずれにしても、個性的ではあるが、聴いているワタシの緊張感が続かないのである。(ごめんなさい)

3楽章
スピードは戻っており、瑞々しさも取り戻すのだが、なんだか、病み上がりのように、いきなり快活になれず。聴いていても、ギャップが大きすぎて、ついていけない。(苦笑)
え〜っ これは、無茶だ、無理だ〜 疲れるな〜と感じてしまった。
それに、付点が飛び跳ねてくるのだが、無理だよん。いきなり・・・。

細部に、随所に、こだわりのある演奏のようだ。
総体的に言うと、2楽章の役割がイマイチ、ワタシには解らない。この2楽章に、どんな意味を持たせているのか、ちょっと解らないのだ。1楽章では、繊細で、クリスタルのような響きだと感じたのだが、2楽章でめげてしまった。で、3楽章。やたら細かい音の右手の高音だけが煌めきを放っており、テンポをためているところが、どうも、ねちっこいな〜っと、妙に嫌らしく聞こえてくる。
これは、ワタシの生理的な部分なんだと思うし、きっとキーシンさんの個性でもあるのだが、妙にこだわって〜キラキラと、させたがっているところが、ワタシ的には、う〜ん。こりゃ〜いらんでしょ。と、受け入れることが難しいんだよなあ。何度も聴いてみたのだけど、やっぱダメでした。
流行遅れなんでしょうが、無骨なベートーヴェンが、ワタシ的には好きなのかも・・・。
(勝手な感想で〜ごめんなさい) まだまだ成長が楽しみな演奏家なので、もちろん期待しています。

1959年 バックハウス イッセルシュテット ウィーン・フィル Dec ★★★
1961年 レオン・フライシャー  セル クリーヴランド管弦楽団 SC
1967年 バレンボイム クレンペラー フィルハーモニア管弦楽団 EMI
1968年 ギレリス セル クリーヴランド管弦楽団 EMI
1970年 グルダ シュタイン ウィーン・フィル Dec
1975年 ルービンシュタイン バレンボイム ロンドン・フィル ★★★
1976年 ブレンデル ハイティンク ロンドン・フィル Ph  
1979年 ミケランジェリ ジュリーニ ウィーン交響楽団 ★★★★★
1981年 R・ゼルキン 小澤征爾 ボストン交響楽団 Tel ★★★★
1982年 エゴロフ サヴァリッシュ フィルハーモニア管弦楽団 EMI ★★★★
1983年 アシュケナージ メータ ウィーン・フィル Dec
1983年 ブレンデル レヴァイン シカゴ交響楽団 Ph ★★★★
1984年 アラウ C・デイヴィス シュターツカペレ・ドレスデン Ph
1985年 バレンボイム 弾き振り ボストン交響楽団 EMI
1986年 アシュケナージ 弾き振り クリーヴランド管弦楽団 Dec
1986年 アックス プレヴィン ロイヤル・フィル ★★★
1989年 ツィマーマン バーンスタイン ウィーン・フィル ★★★★
1993年 ポリーニ アバド ベルリン・フィル ★★★
1998年 ブレンデル ラトル ベルリン・フィル Ph
1999年 内田光子 ザンデルリンク バイエルン放送交響楽団 Ph
2002年 アファナシエフ スダーン ザルツブルク・モーツァルテウム・オーケストラ OEHMS
2002年 エマール アーノンクール  ヨーロッパ室内管弦楽団 
2007年 キーシン C・デイヴィス ロンドン交響楽団 EMI ★★★
所有盤を整理中です。

「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

Copyright (c) mamama All rights reserved