ブラームス 二重協奏曲(ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲)


 ブラームス 二重協奏曲(ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲)
Brahms: Double Concerto (Doppelkonzert)
ギドン・クレーメル クレメンス・ハーゲン 
アーノンクール コンセルトヘボウ 1997年
Gidon Kremer Clemens Hagen
Nikolaus Harnoncourt Royal Concertgebouw Orchestra

渋くて甘くて大人の演奏で、重量感も歯ごたえもある演奏だ。ヴァイオリンがクレーメルさん、チェロがハーゲンさん、アーノンクールとコンセルトヘボウという1997年のライブ演奏である。ティンパニーのおどろおどろしいロール、重々しい弦のフレーズの後、チェロが「みふぁそ ふぁ しれふぁ しれふぁ し らそ どふぁぁ~」という主題を奏でていく。一気に、渋みと甘みがブレンドされた大人の演奏に引きこまれていく。クレーメルさんのことだから、素っ気ない即物的な演奏だろうと思っていたが、オケの豊かで流麗な響きに包まれて、正直ほっとした。ところどころ、ソリストたちの鋭い斬り込みがあり、スッパ、ザッっと鳴ってドキッとすることも。やっぱり油断できないですね。ソリストたちのチェロもヴァイオリンは、コンセルトヘボウの音のなかで、軋み感のある渋い音で奏でられてる。

第2楽章は、幾分、ささくれだった演奏だが、ホルンやフルートなど穏やかな音が加わり、豊かさを感じられる楽章となっている。確かに、厚みのある和音は美しい。柔らかくて厚みのあるコンセルトヘボウだからこそ、まったり感ある響きが生まれる。ソリストたちのヴァイオリンとチェロは、オケのなかで、渋みがやわらいでいく。例えは悪いが、スイカに少し塩を振った感じで良い塩梅(あんばい)になったみたい。
第3楽章は、舞曲風の個性的リズムの楽章だ。ちょっと重くて弾みづらく、大きな熊が踊っているかのような重量感がある。微笑ましくもあるが、オケと一緒になって、渋くて甘いという風合いは前楽章と同じ。優美で流れるような旋律美を希望される方には、ちょっとお薦めしないが、渋くて重めで歯ごたえある演奏を求められる方には、お薦めできる演奏だと思う。
カップリング:ブラームス ヴァイオリン協奏曲 1996年、ヴァイオリンとチェロのための協奏曲 1997年


 ブラームス 二重協奏曲 (ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲)
Brahms: Double Concerto (Doppelkonzert)
パールマン ヨーヨー・マ バレンボイム シカゴ交響楽団 1996年
Itzhak Perlman Yo-Yo Ma
Daniel Barenboim Chicago Symphony Orchestra

ヴァイオリンがパールマンさん、チェロがヨーヨーマさん、バレンボイムとシカゴ響のライブ盤である。マさんのチェロは、カシカシとしたボーイングで渋いが、裏声が甘く綺麗に高い音へ、す~っと移行する。まるで昭和の美空ひばりさん風。ヴァイオリンの音色は軽やかで、愛想が良くチャーミングだ。ソリストが、ギンギンに目立たず、かといって、オケのなかに埋没するわけでもなく、微妙なバランスを保つのが難しそうな楽曲。でも、オケとの相性がとても良いみたい。録音状態は、スカッとしたヌケの良いものではないが、自然体で、のびのび~ ソリストたちは気持ち良く演奏しているようだ。聴いてても嬉しくなる気持ち良さ。

第2楽章は、柔らかなフレージングで牧歌的な歌が聞こえてくる。これぞ、ブラームスの和音の響きというもの。「しみぃ~ ふぁしぃ~ そみどぉ~どぉ し~ しみふぁそみ どそふぁしぃ~」と歌われていく。ブラームスのヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲のなかで、この2楽章が好きという方も多いのではないだろうか。良いよねえ~ この第2楽章の主題は、とても優しく、ほのぼのとしてて。楽しさが満喫した演奏だ。マさんのテンポも良いし、オケと一緒になって流麗に奏でていく。慎ましやかに楚々としており、歌いすぎない控えめさが好ましい。この楽章は、ソリストの考えや持ち味が、表出してくる。ソリストとオケが一緒になって、豊かな響きで、自然に歩みを進めていく。和音が美しいので、それを大切にしながら歌われているのが伝わってくる。パールマンさんのヴァイオリンも、香りづけのように乗っかっているところが、とても好ましい。また、この楽章の最後の語り口は、特に巧い~ ひやぁ~巧いと叫んでしまった。

第3楽章は、チェロが主題を奏でた後、ヴァイオリンが軽やかに合わせていく。個性的な舞曲風なリズムだが、アクの強さや土俗性は感じず、 さらっとしたスタイリッシュな爽やかさ。ドスコイ調でゴリゴリに演奏するかと思いきや、意外と身のこなしが軽やか。オケが、ティンパニーを伴って演奏すると重めの音になるが、ある程度、重量級でなければ面白くならないわけで、小節回しを効かせた演奏の方が、きっと面白いのだろうと思う。いわゆるドイツ臭さはないし軽めという気がしないでもないが、爽やかに綺麗にまとまった演奏だと思う。


 ブラームス 二重協奏曲(ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲)
Brahms: Double Concerto (Doppelkonzert)
アイザック・スターン ヨーヨー・マ アバド シカゴ交響楽団 1986年
Isaac Stern Yo-Yo Ma
Claudio Abbado Chicago Symphony Orchestra

録音状態は、ちょっと古めかしいが、朗々と歌う演奏で、特に2楽章は、ロマンティックだ。ワタシが所有しているのは、ブラームスのピアノ四重奏曲がカップリングされたもので、東京サントリーホールでのライブ盤である。二重協奏曲の当曲と、ベルクのピアノとヴァイオリン、13管楽器のための室内協奏曲とが、カップリングされているCDもある。スターンさんは60歳半ば、マさんが30代はじめ、アバドは50代後半という年齢だと思う。若いマさんのチェロを引き立てるかのような演奏という感じだろうか。まだ、マさんのチェロには、ブラームスの渋みは出てないように思うが、艶っぽく爽やかにブラームスを奏でたという余裕を感じる。冒頭、ティンパニーのロールをバックに、弦がガツンっと一斉に奏でるが、優しいソフトな出だしだった。チェロのソロも翳りはあるが若いフレージングだ。縦割りのカッチリした演奏とは異にして、流麗に流れていく。渋みの抜けきったソフトなタッチで、甘めで、柔らかく、まるで鼻歌を歌っているかのようなブラームスである。

第2楽章は、馥郁とした香りの高い演奏で、厚みのある弦の和音が美しく、さらっとした立ち姿だ。 スターンさんのヴァイオリンが、マさんのチェロの引き立てエスコートしている感じがする。年上の女性がサロンに誘い、青年が恥じらっている感じがする。チェロの若々しく初々しい姿に、むふふっ。第3楽章は、ワクワクする弾むリズムが欲しいが、ハンガリー民謡から題材を得たようなコミカルで力強い、粘りのあるロマ風の舞曲の楽章だ。独特の血気盛んなリズムだと思うのだが、かなり落ち着いた演奏で、血湧き肉躍る風情からは遠い、あまりに遠いので、うーん。自分たちのフレーズで3人が歌っており、なんともペタンとした平板なリズムに終始していた。ワタシとてロマの風味と言っても、DNAとして持ちあわせていないので偉そうなことは言えないが、コブシの効いていないアクの抜けた、つまんない終わり方になっていた。残念。


 ブラームス 二重協奏曲(ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲)
Brahms: Double Concerto (Doppelkonzert)
クレーメル マイスキー バーンスタイン ウィーン・フィル 1982年
Gidon Kremer Mischa Maisky
Leonard Bernstein Wiener Philharmoniker (Vienna Philharmonic Orchestra)

個性派3人組のライブでの演奏である。冒頭、ティンパニーのロールをバックに、弦が一斉に「ふぁぁ~ みど れぇぇ~ どふぁ そらし らしど しどれ みふぁそ・・・」と奏でる。これを引き継いだ形で、チェロが主題を綴っていく。元気よく管弦楽が奏でた直後に、チェロの渋い声が登場し、カデンツァのように登場という、一気に引き込まれる楽曲である。
木管が、さら~っと爽やかに登場したと思ったら、ヴァイオリンがやってきて、チェロとコラボする。しばらく2人でカデンツァ風のフレーズを奏でているが、唐突に管弦楽が再登場し、2つの主題を力強く雄壮に奏でていく構成になっている。おいおい、いきなり、カデンツァから始まるか~という意表を突いた構成で、とりまとめ役がオケである。バーンスタインさんの振るオケが大音量で、主役をそっちのけで目立っている。まるで間を割って入るかのようなオケの存在だ。個性的な主役が3名もおられるので、バトルするような鼎談って感じ。3つも柱があれば、たいてい安定するが、お互いに間合いも違うし、タメるところも違うし、チェロなんか、もう少し歌いたいらしいのだが、ヴァイオリンが追いかけ、覆い被さってくるって感じで演奏されている。ちょっとマイスキーさんが気の毒な感じ。これは完全にお尻を叩かれてます。もう少し待ってよぉ~と、涙目になって演奏しているように思う。その2人を、包むオケがいるのに、アハハ~ 想定どおり、個性派3人、バラバラって感じがする。

第2楽章は、馥郁たる香りのする穏やかな美しい和音の美しい楽章。ホルンが「しぃ~ みぃ~」、フルートなどの木管で「ふぁ~ しぃ~」、弦のフレーズで、「しみぃ~ ふぁしぃ~ そみどぉ~どぉ し~  しみふぁそみ どそふぁしぃ~」とても、穏やかで、のどかで、柔らかい主題となっている。前楽章とは違って、オケの弦の響きのなかで、ふわっとしたヴァイオリンとチェロが、一緒に奏でられる。ダブルコンチェルト(ヴァイオリンとチェロのための協奏曲)以降、ブラームスは管弦楽曲を作曲しておらず、この後は、室内楽の作曲に専念してしまう。もったいない。まあ、この楽章は、室内楽に専念する片鱗が現れているかもしれないですね。とても美しく、胸がキュンキュンする白眉的な楽章である。
第3楽章は、コミカルな舞曲風で、ハンガリー民謡から題材を得たのだろうか、ロマ風の舞曲と言えば良いのだろうか。特徴あるフレーズが奏でられる。ここでは、チャーミングにも振る舞われ、ラストに向けて明るく開放的な雰囲気となる。オケは、雄壮に バタバタとしつつ演奏しているが、チェロとヴァイオリンは、穏やかに美しく演奏している。役回りが微妙だが、ちょっとオーバーアクション気味の演奏で、それなりに楽しめる。


ブラームス 二重協奏曲(ドッペルコンチェルト)
1982年 クレーメル マイスキー バーンスタイン ウィーン・フィル G ★★★★
1986年 スターン マ アバド シカゴ交響楽団 SC ★★★
1996年 パールマン マ バレンボイム シカゴ交響楽団 Teldec ★★★
1997年 クレーメル ハーゲン アーノンクール コンセルトヘボウ Teldec ★★★



ブラームスのヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲(ドッペルコンチェルト 作品102)は、1887年に作曲されています。ウィキペディア(Wikipedia)を元に記述すると、交響曲第4番を1886年に完成させた後、有名なヴァイオリストで、親友でもあったヨーゼフ・ヨアヒムとの間がこじれちゃったため、仲直りしようと、交響曲から協奏曲に変え、ヴァイオリンとチェロの扱いについて、 アドバイスをもらったのが、この曲なんだそうです。ちょっと変な思惑で作られ、初演の時の評価はイマイチだったそうですが~ 完成した楽曲は、とても立派なもの。交響的でありながら、独奏に重音を要求する難曲だそうです。

第1楽章 イ短調 4/4拍子、協奏風ソナタ形式
管弦楽による力強い第1主題の短い断片で始まり、チェロが、カデンツァ風に登場します。ヴァイオリンも加わって、全合奏で正式に2つの主題が提示されます。展開部は、 少し長めで2つの部分があります。再現部を経て、結尾では曲は基調に変わり、第1主題、第2展開風に扱ってから、イ短調で曲を終えます。

第2楽章 ニ長調 4/3拍子 複合3部形式
伸びやかなホルンで始まり、管楽器が、木霊の受け、弦楽の伴奏にのってソロヴァイオリンとチェロが主題を奏します。中間部は木管だけ、展開部は交響曲第3番第3楽章のように、中間部の主題を扱います。

第3楽章 イ短調 4/2拍子 ソナタ形式
ソロのチェロにより主題が提示されます。ヴァイオリンがこれを繰り返し、テンポを落として短い経過的な部分へ。クレッシェンドし、フォルティッシモに達すると、管弦楽が、勇壮に先の主題を反復します。副次主題は、ソロに委ねられ、展開部は短く、再現部が来ます。結尾は、イ長調となって力強く終えるもの。クララ・シューマンは「この協奏曲はある意味で和解の曲です。ヨアヒムとブラームスは長い疎遠のあとで、またお互いに話をするようになった」と日記に書いているのだそうです。ハハハ~ 芸術家ならではの仲直り方法なんですね。きっと、2人して夢中になって作曲に没頭しておられたのでしょう。


 

YouTubeでの視聴

Double Concerto for Violin and Cello in A Minor, Op. 102
ニコラウス・アーノンクール - トピック
Provided to YouTube by Warner Classics
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=kx02vEMRdfU
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=fRO8OKrM-x0
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=luYcc7rkXV4


Double Concerto in A Minor, Op. 102
Daniel Barenboim    パールマン
Provided to YouTube by Warner Classics
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=J3heJD_QUz8
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=08Pi5DADA1Y
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=AwnXkonHcp8


Brahms: Double Concerto in A Minor, Op. 102
ギドン・クレーメル - トピック Gidon Kremer - Topic 1982年
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=yZp2noM-fb4
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=Pe1pg8PaJvI
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=1JVZulZerPk



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