ブラームス ピアノ協奏曲第1番 Brahms: Piano Concerto No.1


 ブラームス ピアノ協奏曲第1番
Brahms: Piano Concerto No.1
マウリツィオ・ポリーニ ティーレマン シュターツカペレ・ドレスデン 2011年
Maurizio Pollini 
Christian Thielemann Sächsische Staatskapelle Dresden(Staatskapelle Dresden)

2011年、ゼンパーオーパーでのライブ盤で、ポリーニさんの3枚目の録音にあたる。冒頭、 ティンパニーの1発と、ゴロゴロゴロォォ~っと唸るような音から始まる。オケは大上段に構え、オペラの序曲のような雰囲気だ。フレーズのうねりが大きく劇的な効果を狙った演奏となっている。やっぱり、あまりにも大袈裟だ。しかし、ポリーニのピアノは、そんなことは意に介していないようで、さらっと綺麗な粒立ちで表れる。大きな身振りのオケと情感に流されないピアノ。性格の異なるモノの融合、分離、相乗効果など、どんな化学反応が起こるのか期待したが、実のところ、あまり共感を感じなかった。
第2楽章は、厳つく大層な前楽章とは、うってかわって、牧歌的とも宗教的とも言える楽章だ。内省的で、しみじみ染み渡ってくるようなフレーズが続くが、期待しているほどには膨らみ感が少なめ。強奏するところは派手に鳴って勢いがあるが、緩楽章になった途端、寝てしまいそう~ 第3楽章は、粘らない、さっぱりとした演奏だ。巻き舌風に、ん たーったっとノリ感が欲しいところだが、若い頃から基本的に変わらず淡々と進むスタイルだ。現状報告って感じがしないでもない演奏で、当盤を拝聴する限りでは、いつまでもお元気だ。よく指がまわって硬質感は健在。誠に喜ばしい限り。


 ブラームス ピアノ協奏曲第1番
Brahms: Piano Concerto No.1
ルドルフ・ブッフビンダー アーノンクール コンセルトヘボウ 1999年
Rudolf Buchbinder
Nikolaus Harnoncourt Royal Concertgebouw Orchestra

ブッフビンダーの演奏は、ぶ厚い響きの暑苦しいブラームスとは異なり、クールな感じがする。冒頭の出だしこそティンパニーのロールが、どろどろどろと響くが、端正で、すっきりしている。どこかカビ臭いじめっとした湿気を感じる空気感だ。録音のせいかもしれないが、アーノンクールさんの振るコンセルトヘボウも色彩的に沈み込んで、モノトーンに終始しているようだ。語り口は堂々としているが怒濤のような激しさなく、うねり感が少ない。切れ切れになったフレーズで、波のように押し寄せてくるようなパワーが継続されないのが悲しい。大柄で歌いっぷりの大きな演奏ではない。きまじめなのか、大見得を切らず抑揚も少なめ。聞き込むと繊細で抒情的、崩れない冷徹さを持ち合わせている。

第2楽章は、しんみりとした語り口で、木訥とした雰囲気を持っている。しんみり鬱々として、かったるくなってしまった。どうも、ワタシとは相性が悪いらしい。異色の2楽章という感じがする。やる気が出ないくらい虚脱し、抜け殻的な音だ。ギレリス盤でも、死に絶えてしまったような感じがしたので同じようなアプローチだが。ただ、ギレリス盤とは、ちょっと違ってて、1楽章からおとなしめだったので、虚脱している。(ギレリスの演奏は、神の怒りに触れたようなキワキワの恐ろしい演奏だった。)和音の美しさは感じられるものの、神々しいまでには輝かず、なんだか惜しい感じがする。上昇指向的な生きる意欲的なフレーズには聞こえないため、活力ある演奏ではない。沈む音色だけが耳に残ってしまう。第3楽章も元気がなく、ノリ感が少ない。ストンと沈殿し、素っ気ない。 歌わないのねえ。やっぱり・・・。人を巻き込む要素が少なく、ヒンヤリした感覚のなかのじっとり感。湿気だけが残る。じれったい。テンポが落ちると沈むのは何故なんだ。ネクラなのかしらん。ラストは、めちゃくちゃ速い。アーノンクールさんの鋭い拍感覚で、どうも切れちゃったらしい。じれったさから晴れやかに歓びに変わっていく楽想だが、後味が悪く、モコモコとしたところが長く、スカッとした感覚に至らず、一歩手前で終わってしまった。


 ブラームス ピアノ協奏曲第1番
Brahms: Piano Concerto No.1
スティーヴン・コヴァセヴィッチ サヴァリッシュ ロンドン・フィル 1991年
Stephen Kovacevich Wolfgang Sawallisch London Philharmonic Orchestra

Stephen Kovacevichさんは、コワセヴィッチ、コバセビッチ、コワセヴィッチ、コヴァセヴィチなど、いろんな表記になって紹介されている。それに、昔は、Stephen Bishop Kovacevich ビショップさんでもある。古いCDを探す時には、なんともややこしいお名前だが、アルゲリッチさんの元彼で娘もいるのだ。(まっ、そんなことは、どうでもよいけど~ )
冒頭、強烈なロールが入ってくる。サヴァリッシュさんの振るロンドン・フィルの熱い演奏が始まり、いきなり序奏部分で、ぐいっと引き込まれる。イントロ当てクイズだと、オルフの「カルミナ・ブラーナ」と間違えて、おてつきしちゃうかも~ それぐらいのパワーがある。ヴァイオリンも木管も、声を震わせながら悶え、オペラの幕開け風壮大なスケールで演奏される。サヴァリッシュさんの演奏で、やられたと思うのは珍しい。コヴァセビィッチさんのピアノは野武士だ。端正で、じんわり渋い。男気質たっぷりの演奏だ。渋くてハードボイルド系。あえて言うなら映画「カサブランカ」のハンフリー・ボガートみたい。ルービンシュタインおじいちゃんのような華やかな色香もないし、色のある役者じゃない。でも、存在感あり。

第2楽章は、しみじみ語るピアノ。寂しさというより、ちょっぴり諦念の入った演奏。さほど息が長い旋律を奏でるわけでもないし、牧歌風でも天上的でもない。コヴァセビィッチさんのピアノは、現代的にクールさも入った速めのテンポで、さらりとしている。でも、内省的に弾かれ、加えてオーボエが、鬱っとした雰囲気を醸し出す。素っ気ない演奏だ。それに美しいわけでも、深い内面をえぐるかのような演奏でもない。でも、しみじみ~ 感慨に耽るだけの音は広がっている。
第3楽章は、ペダルがちょっと長め。「しっみ~ ふぁ そしっみ~み れみふぁそ れ~ れみふぁそ れ~ (れどれ)みっら~しっ~」舌がもつれるほど、たらら らった~た の「たらら」が、巻き舌みたいに巻いている。「タララ ラタッタ ター」で、左手が強くて音が濁って聞こえてしまう。でも、これがラテン的に開放的で陽気に聞こえる。エネルギッシュでトリルが快速、回転率が高くて熱い。情熱的で鬱々としたブラームスではない。語尾が短い。フレーズが膨らまず、すっと語尾が消える。サヴァリッシュさんも、イメチェンかと思うほどに燃えている。飛んでる~って感じ。山なりにならずストレート気味でノビやタメはない。カンタービレ調、おなみだ頂戴系でない。筋が通って筋肉質で、男気のある演奏。なかなか男前の武士である。ラテン系のノリノリ感と、武士のような硬いフレーズが、どうして一体として生まれているのか、とても不思議だが・・・。細部にこだわって言うと、もっと~もっと~と欲が出てくるが、3楽章の協奏曲。楽章によってアプローチを変えて、オケと一心同体に演奏し、鬱々とし、ラテン風にも変貌する。この器用さ、そして、オケとピアノが一心同体に燃えて、聴かせてくれる演奏だと思う。

カップリング:ブラームス「アルトのための2つの歌(鎮められたあこがれ、聖なる子守歌)」 P協1番・2番のカップリングCDもあるし、サヴァリッシュ、ブラームス交響曲、協奏曲全集7枚組BOXにも収録されている。1979年 コリン・デイヴィス、ロンドン響と共演した盤もある。


 ブラームス ピアノ協奏曲第1番
Brahms: Piano Concerto No.1
アルフレート・ブレンデル クラウディオ・アバド ベルリン・フィル 1986年
Alfred Brendel
Claudio Abbado Berliner Philharmoniker(Berlin Philharmonic Orchestra)

ブレンデルさんにとって2回目の録音で、1973年、ハンス・シュミット=イッセルシュテット、コンセルトヘボウとの録音がある。
アバドとの演奏は、低音の響きが、ごごご~っと響くなか、ピアノは繊細で可愛いという、オケとピアノの対比が凄い。特に2楽章は聴かせてくれる。第1楽章は、強烈なティンパニーのロールから始まる。このフレーズを奏でた後は、一気に静まり、胸キュンになるぐらい切々にオケが歌う。ゴリゴリとした低弦とティンパニーの硬い音が鳴り響き、そろっとピアノのソロが始まる。ごごごぉ~っという地響き、天地がひっくり返ったかのような轟音が響くというインパクトの強い出だしである。ピアノの音は、クリアーにとらえ、抒情的でチャーミング。厚みのあるオケに対し、軽く、いなすという風に感じる。透明度の高い音で風のように、たなびくように奏でられている。オーボエも、チェロも、個性を発揮して歌い始める。ピアノが入ってくることにより、オケの音質が、入れ替わったかのように雰囲気が柔らかくなる。ホルンの音色も、かなり美しい。この曲は、当初、2台のピアノのためのソナタを作っていたが、それを交響曲に改作しはじめたもの。管弦楽になっていた1楽章を、ピアノ協奏曲に書き直したと言われている。そのため重厚だというのだが、はあ確かに。
ピアノが、「れそ~ れっそぉ しれそしそみれそ・・・・」と落ちていくと、怖い主題のオケが蘇る。ピアノが1番目の主題をオケに代わって演奏するが、再現部に入るのが提示されたものと似ている。メラメラと炎を立てて、怒りを爆発しているようなオケに対し、ブレンデルのピアノは軽やかでチャーミング、中音域の弦とのハーモニーが美しい。ほのぼのとさせてくれるホルンに呼応して、ピアノもやわらぎを与え、柔らかな日射しを与えてくれる。ホントに一筋の光のようだ。

第2楽章は、宗教的とも言える心穏やかな旋律だ。ファゴットと弦の主題と、ピアノが同じようなフレーズを奏でていく。心温まるフレーズで、祈りを捧げる人のよう。カトリックのミサから着想されたというが、草稿には、ベネディクトの一節が記されているという。木管フレーズに耳を傾けながら、ブレンデルさんの囁きに近い繊細な音が聞こえてくる。今まで、緩く気怠い、眠い、つまんない楽章だと思っていたが、木管とピアノのフレーズは、小さな教会で、日常のシアワセを願う人のように感じられた。一粒、一粒、慈しむかのように祈りのように聞こえてくる。これまで、なんだか、とってつけたような楽章だと思っていたが、強烈な第1楽章でノックアウトをくらっただけに、やわらぎを必要とする意味が解った感じに。神妙な気持ちにさせられ、小さなシアワセが、これからも続きますようにと手を合わせたい気持ちになった。

第3楽章は、爽やかな、たららら~っと巻き舌のようなトリルで、よく転び、よく歌う。オケもノリ感の良い巻き舌風の演奏で、速くて力強い舞曲となっている。主題がくせ者で、再度のピアノの雪崩れ落ちがあり、落ちたら、また最初の主題に戻っていく。歌謡風フレーズと軽快な舞曲風主題との組み合わせでできているが、チェロの甘い囁き、ピアノの繊細な響きは、とても聴き応えがある。ピアノソロで、超テクニックを見せつける場面は、設定されていないと言っても過言ではないが、舞曲のなかを、粉雪が舞うように繊細に奏でていくピアノが、この演奏では聴き所となる。雄大なピアノ協奏曲で、相当にパワフル。威圧的に演奏するオケのなか、軽やかに繊細に、華奢に駆け巡るピアノが、守ってあげなきゃ~という気分にさせられる演奏である。


■ ブラームス ピアノ協奏曲第1番
Brahms: Piano Concerto No.1
ウラディーミル・アシュケナージ ハイティンク コンセルトヘボウ 1981年
Vladimir Ashkenazy Bernard Haitink Royal Concertgebouw Orchestra

アシュケナージの演奏は、煌めきもあり、まったり感もあるし、暖かい叙情性もあるし、ノリ感もあり迫力もある。それにしても大袈裟で苦笑い。これは曲のせいもあるのだけど。なははぁ~ 第1楽章の冒頭、「タタンっ どぉ~そ~み みっそっ そらら~らそれっど~」ティンパニーのロールが派手に鳴り重々しい幕開けとなる。ピアノ協奏曲というよりは、ピアノ付き交響曲と言われるような楽曲だけど、これが、またロマンティック。ヴァイオリンも木管も声を震わせながら、悶えているような雰囲気がする。序奏部が終わると、弦の甘いフレーズが、つらつらと流れてくる。「らそふぁ~れどぉ~ しらそ~しそぉ~ ふぁ~み~」「そふぁ~ らそ~ れふぁれ~」という、ふんわりした響きが、どことなくエロティック。渋いが華もあり、豊穣感たっぷりの響きが伝わってくる。さすがコンセルトヘボウって感じの響きで、アルト系のくすぐったい、ちょっぴり甘めの声質がたまりません。ピアノは可愛く柔らかく奏でられている。ピアノのフレーズは、オケに寄り添う女性的な変わり身で、いろんな姿を現す。いや、ピアノだけではなく楽曲そのものが、女性っぽい抒情的な部分と厳つく激しい部分が絡み合って、一筋縄でいなかいところが、まっ、ブラームスなのだろう。アシュケナージ盤は、どちらかと言えば女性的で甘さを持って歌う。まどろっこしく迷いがちな、悪く言えば思わせぶりな軟弱さ。ちょっぴり青臭さが残り青春してる感じが出ている。鬱々としていないところが、アシュケナージさんの個性だ。

第2楽章は、気怠さが漂う緩楽章だ。弦部だけで奏でられ、単純なフレーズで、一音ずつ、あがりくだりしてるだけじゃんと、思わず、笑えるほどの緩やかさ。ピアノも、協奏曲というよりは、ピアノの小品という趣きで、ほのぼの感を漂わせる。このあたり、アシュケナージさんの持っている雰囲気が、ぴったりハマッテいる。

第3楽章は、舞曲風のような軽やかがあるものの、妙に重い。毛色の違う主題を入れすぎかな~と思いつつ聴き進む。ホント、入れ替わり立ち替わりにテーマが出てくるので、気分が安定しない。ピアニスト泣かせで、腕っぷしが強くないと埋もれちゃう。派手で泥臭い舞曲風「どれふぁそれっ! どれふぁそれっ!」このテーマが、オケでガンガンに鳴らされてしまうと、ピアノなんて要らないやんと思う。カデンツァも、相当にガンガンに叩きつけないと、オケに迫力で負ける。ホント大袈裟で長い大曲である。
アシュケナージさんのピアノは綺麗。伸びやかで明るい。暖かい。オケも明るく派手で、ねちこく、シアワセ感もあって充実しているように思う。 楽曲自体が持つ複層的なところを弾き分け、また聞き分ける方が、難しいとの印象を受けた。


■ ブラームス ピアノ協奏曲第1番
Brahms: Piano Concerto No.1
アルトゥール・ルービンシュタイン メータ イスラエル・フィル 1976年
Arthur Rubinstein Zubin Mehta Israel Philharmonic Orchestra

ルービンシュタインさん、90歳近くの年齢の時の演奏で、マッチョで力強く、ロマンティックなフレーズで、音の大津波に呑み込まれる演奏である。ただただ圧倒されて聴かされる。すごい方だったんですね。スケールの大きな演奏である。
第1楽章は、どろどろどろ~という重低音の響きが、ものすごく分厚く、いかついティンパニーのロールが、ヴァイオリンの旋律、木管のフレーズの底辺で鳴り続ける。およそ55秒。タラリと汗が出そうなほどの音量だ。メータさんのことだから、分厚い勢いのあるマッチョな響きを出すだろうとは思っていたが、さすがにボリューム満点。地響きが、これだけ続くと、たらり~と汗ばんできて、思わず顔を引きつらせながら苦笑いしちゃう。のっけから一発かまされた気分だ。
ティンパニーのロールの音も凄いが、低弦の音が入ってくると、建物を揺るがすようなギシギシ感があり、震えさせるような響きと音圧で迫ってくる。大地震並み。たっぷりとなる金管といい、全てマッチョで、ぶっとい二の腕でスタミナ抜群、ファイトいっぱ~つ型のオケ。肉感的で野性的で、分厚いブラームスの協奏曲である。で、ようよう出てくるピアノ。さすがにテンポはゆったりしているが、音は華やかで若々しい。マッチョなオケに、枯れたピアノと想像していたが恐れ入りました。若々しいっ。鮮明で鮮烈。ロマンティックで明るく、ほんのり優しく、シアワセイッパイ的に広がっていく。とにかく、他盤では聴けないほどの大きなスケール感がある。オケもピアノも美音ではないが、強い意思と大きな自信で、疑うことも迷うこともなく、俺についてこい型で、鬱々としたブラームスではない。ここまで自信たっぷりに演奏されると、あっぱれ。
第2楽章は、穏やかに変貌する。美音ではないが、艶や広がり、フレーズの豊かさや膨らませ方、息の深さと長さは、みごとだと思う。 ひと昔前の演奏スタイルかとは思うが、ゆったりとした時間や、たっぷりとした重さ。そのオケのなかを、幾分、ひんやりとした質感を持つピアノの音が、1粒1粒が並んでいく。球体なかを、ピアノの粒が並んで、つーんと1本の糸が通っていくよう。で、低弦、低音の木管の響きがすごい。9分30秒あたりから聞こえてくるコントラバスの弦の響き、低木管、ごぉ~っと響き渡っているのが良く聞こえる。
第3楽章は、想像以上に早いテンポで飛ばしていく。肉質感のあるグラマーな音でオケが鳴るなか、ピアノも負けてない。力強さと同時に、飛翔感と繊細さでオケをかわしていく。長大な1楽章で、すでに脱帽しちゃった。アルトゥール・ルービンシュタインさんは、1887年生まれなのだ。で、この演奏は1976年の録音である。90歳近くになって現役だとは。また、普通の人だと、こんな強いタッチでピアノを弾けない。指を骨折しちゃうと思いますね~。やっぱ超人です。


■ バーブラームス ピアノ協奏曲第1番
Brahms: Piano Concerto No.1
エミール・ギレリス ヨッフム ベルリン・フィル 1972年
Emil Gilels Eugen Jochum
Berliner Philharmoniker(Berlin Philharmonic Orchestra)

ギレリスの演奏は、冒頭で雷に打たれるというメチャ怖い演奏である。おいそれとは聴けない。冒頭のティンパニーの1発。まるで、オルフのカルミナ・ブラーナのような始まりだ。この1発で雷に打たれてしまった感覚でになってしまう。どろどろどろどろ~っという激しくて長いティンパニーのロール。乾いた音で震えるティンパニーは、ホント怖い。神々がお怒りになっているかのような激しさで、津波が怒濤のように押し寄せてくる。ヴァイオリンを初めとした弦の硬く厳しいフレージングは、目玉が飛び出しそうだ。冒頭から疲れる。 ただでさえこの楽曲は疲れるのに、ギレリスとヨッフムの演奏は、その頂点をなす、峻厳で硬くて涙が出そうなほど怖い。西ベルリンのイエス・キリスト教会での録音だというが、残響の良さより、屹立した峻厳な峰に立たされているかのような恐れで、真っ青になってしまう。まるでゼウスの神が、お怒りになっているみたい。
ギレリスのピアノも、硬くて強烈な打音。オケと一体となるうちに、火がついて、めらめらと舞い上がる。中間部では甘い。じわ~っと、心の底を洗うかのようなフレージングに変貌する。カミソリみたいに鋭く、粒立ちの綺麗で、オケとは異なる叙情性を持って、優しく繊細な弱音で歌おうとしている。でも~でも~ そんな部分はごくわずか。情け容赦なく、バババ バン バババ バンっと弦が機関銃のように繰り出してくるオケ。ギレリスさんのピアノも、オケに挑発されたのか、バンバン。
冒頭の部分に再度戻ってきたら、すっかり熱くなってて~ 鳥肌モード。1楽章が終わったころには、すっかり丸焼き状態に。面を殴られているみたいで、ぼこぼこになっちゃった。ヨッフムさんって、こんな峻厳な音を出してたっけ? 熱すぎない?
いやいや、ブラームスだって、天の邪鬼なのだ。腹8分目、いや7分目ぐらいで切り上げてしまう陶酔しきらせない嫌らしい性格。 これだけ厳しく、硬く、ガンガン バンバン ゴンゴンと打ってこないと演奏できない楽曲なんでしょうか? ワタシには強靱すぎるっ。すでに1楽章で憔悴しきってしまいました。

第2楽章は、前楽章とうってかわり、穏やかな楽章だが、死に絶えてしまったような感じがする。 フレーズが長めにとられていないし、途切れ途切れで、鬱々と音を置きに行って、生きた心地がしない。草も生えてないって感じに感じちゃう。まあ。神のお怒りに触れ、いや、上司でも奥さんでもなんでも良い。とにかく、逆鱗に触れて、追放処分になっちゃったような気分だもん。うちひしがれても仕方ない。しかし、そこから立ち上がろうとする生命力が生まれてくる。その気配が、じわじわ~っと、楽章の中盤に聞こえてくるのだ。オーボエの音色が、「そそそ そ~ら ふぁれ~れ~れ そそ ふぁ~み」ちょっぴり、ほんのちょっぴり明るい陽射しが、射し込んでくる。楽章最後、ピアノが、崖を登り始める。ご~っという低弦のもとで、不可思議な和音と伴って、1歩1歩噛みしめてのぼっていく。木管が優しく見守っているかのような音で、バックを務めている。
もしかしたら、落ち込んでいる時に、この2楽章だけ聴くと癒されるかもしれない。崖下から這い上がってくるようなパワーが、めげない強靱な精神力が、音となって描かれている。

第3楽章は、あまり歌わない演奏だ。舞曲風の楽章だから色気ぐらい欲しいものだが、質実剛健で、ちっとも楽しげではない。最終楽章ぐらい変貌して欲しいが、あいもかわらずコワモテ。ストレート1本で剛速球を投げてて、快速に突き抜けていく。ホルンが吹かれ場面が変わる筈だと思ったが、みごとに雪崩落ち。唖然とするほど、猛烈スピードで、轟音をたてて雪崩を引き起こす。ごぉぉぉぉぉぉ~ 呆気にとられてしまった。確かに抒情的に弾かれ繊細さも持ち合わせたピアノだが、オケが硬くて 泥臭い舞曲 「どれふぁそれっ! どれふぁそれっ!」かたっ。かたっ。ドンドン。オブリガート風に、繰り返されていく。 叩かれ、打たれ、打たれ続けて、ついに快感に変わる。(えっ?)

ホルンのフレーズで、救済されるが、しかし、遙か彼方、手の届かない存在で、神に憧れ、みあげながら力尽きて倒れてしまった感じがする。結局は、崖下に突き落とされ、ナマハンカには聴けない演奏である。叩かれても叩かれても負けない精神力、これを鍛えるために聴くには、もってこいの1枚かもしれないが、ワタシにはちょっと・・・。(ドンビキ状態です)

ブラームス ピアノ協奏曲第1番

1953年 バックハウス ベーム ウィーン・フィル Dec
1961年 カーゾン セル ロンドン交響楽団 Dec
1972年 ギレリス ヨッフム ベルリン・フィル G ★★★★★
1976年 ルービンシュタイン メータ イスラエル・フィル R ★★★
1979年 ポリーニ ベーム ウィーン・フィル G
1981年 アシュケナージ ハイティンク コンセルトヘボウ Dec ★★★
1983年 ツィマーマン バーンスタイン ウィーン・フィル G
1986年 ブレンデル アバド ベルリン・フィル Ph ★★★★
1990年 グティエレス プレヴィン ロイヤル・フィル Telarc
1991年 コヴァセヴィッチ サヴァリッシュ ロンドン・フィル EMI★★★★★
1993年 オピッツ C・デイヴィス バイエルン放送交響楽団 R
1997年 グリモー ザンデルリング シュターツカペレ・ベルリン E
1997年 ポリーニ アバド ベルリン・フィル G
1999年 ブッフビンダー アーノンクール コンセルトヘボウ T ★★★
2011年 ポリーニ ティーレマン シュターツカペレ・ドレスデン G ★★★


 

YouTubeでの視聴

ブラームス ピアノ協奏曲第1番 ポリーニ ティーレマン シュターツカペレ・ドレスデン
Brahms: Piano Concerto No.1 In D Minor, Op.15
マウリツィオ・ポリーニ - トピック Maurizio Pollini - Topic
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=3hz6c2kUnYU
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=VTT-T6ZNDSc
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=BS_2GM8pIYM


Brahms Piano Concerto No. 1 in D Minor, Op. 15
スティーヴン・コヴァセヴィチ - トピック
Provided to YouTube by Warner Classics
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=oRLBFj0EbEc
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=Hw9rsZS_HRk
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=YO46aj1A7gY


Brahms: Piano Concerto No. 1 in D Minor, Op. 15
チャンネル:アルフレート・ブレンデル - トピック Alfred Brendel - Topic
ブレンデル アバド ベルリン・フィル
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=qBSi8WTyqm4
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=cJ2027nGRGs
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=fX3DIlogx0U


Brahms: Piano Concerto No.1 in D Minor, Op.15
ウラディーミル・アシュケナージ - トピック Vladimir Ashkenazy - Topic 
アシュケナージ ハイティンク コンセルトヘボウ
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=4syiKPVK4TI
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=hl4n2grMulo
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=b3c5FavuOVg


Brahms: Piano Concerto No. 1 in D Minor, Op. 15
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 - トピック  ギレリス ヨッフム ベルリン・フィル
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=uKhAt-b80mo
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=7i11ZJ1J3_w
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=jTGHC7xZjfU



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