ブラームス ピアノ協奏曲第2番 Brahms: Piano Concerto No.2


 ブブラームス ピアノ協奏曲第2番
Brahms: Piano Concerto No.2
ルドルフ・ブッフビンダー アーノンクール コンセルトヘボウ 1999年
Rudolf Buchbinder
Nikolaus Harnoncourt Royal Concertgebouw Orchestra

ブッフビンダーさんのブラームスのピアノ協奏曲は、アーノンクール指揮のコンセルトヘボウ盤と、メータ指揮のウィーン・フィル盤がある。どちらもライブ盤で、アーノンクールとの2番の演奏は、スッキリとしたスマートで見通しの良いもの。1番を聴いたときには、あまりにスッキリしていたためブラームスらしくないなあと、いささか面食らってしまったが、鬱々としているようにも聞こえた。2番も、ロマンティックな面は少ないが、オケのフレージングは、短めで素速く変化し、細やかでハッキリしたピアノの音は粒立ちよく立ってくる。第2楽章は、あまり弾力性は感じないし、しなやかでも優美でもなく、また、厳つさやゴツサ、ざっくりした感覚でもない。どう言えば良いのだろうか、歯切れのよいうフレージングだが、感情を排した雰囲気がする。親しみ感の少ない肌寒い、寂しい雰囲気が漂い、うすら寒いモノトーン系の演奏のような気がする。

第3楽章は、美しいチェロの旋律が聞こえてくるが、音量は控えめ。寂しさがあり、豊かな実りの秋、豊穣感、胸いっぱいに膨らませた甘いフレーズとは、ちょっと違う。静かで内省的、ひとり静かに何をしているのだろう。1番のように鬱々とした感じはしないのだが、厭世観みたいなモノまで感じてしまう。ピアノの繊細なフレージングに心を揺すぶられ、美しいと感じる方も多いだろう。
第4楽章は、とてもチャーミングな主題である。しかし、ブッフビンダーのピアノは、楽しそうに聞こえてこない。メランコリックな主題に変わってしまう。ピアノもオケも身振りの大きい、大づかみような大柄な演奏ではなく、細やかに緻密に描かれている。場面ごとに、彩りよく複雑に変化していく。これは、聞き込めば、とても楽しいのではないだろうか。

いっけん地味が、意外と耳がそばだつ。しかし、ど素人のワタシには、う~ん、やっぱり聴いていて楽しく感じない。実は、何度も繰り返して聞いてみたのだが、サッパリ感情が動かない。楽しく感じないのである。困ってしまった。何故なだろう。音が流れ、弾み、なだらかに流れる演奏ではない。しかし、ブラームスとしては軽量級だと言われるかもしれないが、淡泊ですっきりした演奏だが、どこか訛りを感じてしまう演奏でもある。もしかしたら、初めて聴く人より、この楽曲を何度も繰り返して聞いた人向きかもしれない。また、演奏家が聴くと良いのかもしれない。フレージングの重く流れる、どろっとした風合いではないが、香草の入ったアジア飯のような~ スパイス癖があるのが好きな人に、好まれる演奏かもしれない。


 ブラームス ピアノ協奏曲第2番
Brahms: Piano Concerto No.2
エマニュエル・アックス ハイティンク ボストン交響楽団 1997年
Emanuel Ax Bernard Haitink Boston Symphony Orchestra

アックスの演奏は、繊細だが、ちょっと硬めでノビが足らず、色気が少ない気がする。1997年録音のわりには、録音もクリアではなく、ボリュームをあげると硬めの繊細な音が流れてくる。冒頭、ホルンとピアノが分散和音を奏でる。ホルンに寄り添うピアノは、硬めの引き締まった粒立ちの良い音。さほど雄弁なピアノではないが、さっぱり硬めの響きでオケに埋没しそうになりながらも厳しいタッチで頑張っている。全体的にテンポがゆったりなので、フレーズ自体が重めで、時折くどさを感じてしまう。ガツンとオケが入ってくるため硬い。第2楽章は、太いタッチで一筆書き風の演奏である。バックハウスさんの演奏では熱い情熱を感じた。ポリーニさんの演奏では氷の世界のように感じた。しかし、アックス+ハイティンクさんたちの演奏は、ストイックなのか、素のままという感じがする。第3楽章は、チェロを主体とする弦楽のフレーズが詰まった楽章だが、オケは、弱音で繊細。甘くて切ない女性のようなフレーズが詰まっているのに、なんだか無骨な演奏に聞こえ、音にタメ感やノビ感が少ない気がする。遅いところは表情豊かに演奏しているが、ワタシ的には間が持たず、音がスコンと抜けちゃう気がする。几帳面すぎるんだ。きっと~(と、素人考えで決めつけてしまった。)第4楽章は、ピアノは可愛く変貌しているがオケは無骨なまま。怖い頑固オヤジ風なオケで歌わない。揺れるワルツのようなフレーズが、しゃちこばってて運動音痴状態だった。


 ブラームス ピアノ協奏曲第2番
Brahms: Piano Concerto No.2
マウリツィオ・ポリーニ アバド ベルリン・フィル 1995年
Maurizio Pollini Claudio Abbado
Berliner Philharmoniker(Berlin Philharmonic Orchestra)

録音状態はライブ盤のためか籠もりがち。楽章によっては八頭身のスマートさがあるが、別の楽章では気怠感じるという難しい演奏だった。総体的には、硬質なピアノが前に出て、バックのオケは流麗である。第1楽章の冒頭、美しいホルンの音色から始まり、それに寄り添うようにピアノが分散和音を奏でる。ホルンのふわ~っとしたニクイほど美しいフレーズで一気に引きこまれてしまう。ほどよい、ふわっとした空気感で、そこに、クリアーなピアノが絡むので、さっそくやられてしまった。なんと魅力的な音なのだろう。ポリーニさんのピアノは、八頭身美人で、ミケランジェロ風彫刻のように綺麗だ。畳みかける和音の重厚な響き。単に重くならないところが凄い。ペダリングは短めだけど豪快な響き。のびやかで、しなやかで快活。カンタービレ風なうねりがある。あっ、そうだった、イタリア人なんだ。ポリーニさんもアバドさんも。
ゆったりしているが、重厚な和音を心地良い響きとして、オケが雄大に奏でている。ライブ盤なので、かならずしも録音状態は良いとは言いがたいが、ブラームスの渋くて厚みある恰幅のよい音が出ている。ピアノは硬質感のある響き、オケはのびやかという異なる性質をブレンドし、艶のある柔らかい弦のフレーズが乗っかってダイナミックに構築していく。気持ちの良いフィット感、タイト感がある。ヒンヤリしたピアノの音が混じらず、巧く乗っている。ポリーニさんのピアノは、オケに呑み込まれず、1つのパーツとして確実に存在している。

第2楽章は、ダイナミックなフレーズで、切迫感を持たせて間髪入れずにフレーズが流れてくる。スケルツォとされているが、ピアノは、止めどもなく流れ出てしまう寂寥感、強ばった表情だ。 オケが客観的に描写しており、低弦の音でピアノを支えているけれど、冷たい風が、ひゅぅと吹き込んでくるような音が出ている。第1楽章は快活なイタリア風だったのに、これではまるでシベリア送り。
ティンパニーが入ってきたら、まるで氷の世界。かと思ったら、一気にバロック風のフレーズに変わって弦が転調するという不可思議な楽章である。ピアノの氷の結晶のような演奏かと思えば甘いフレーズになってくるし。一筋縄ではいかない複雑なフレーズが細かに組み合わさっている。低弦の重厚な響きと氷の結晶のようなピアノ。主題が戻ってきた時には、とどめを刺された気分になってしまう。畳みかけるフレーズで、絶望の淵に立たされていくという、心理的にキツイ演奏になっている。

第3楽章は、甘いチェロのフレーズに変わり、歌曲「わが眼差しはますます浅く」に使ったと言われているフレーズが流れてくる。この楽章はアンダンテで、枯れ葉が舞う秋の風景だ。しんみり情緒的で室内楽風の穏やかなフレーズが続く。交響曲第3番より、もっと切ない気分に。チェロが活躍するのでピアノ協奏曲であることを忘れそうになる。物思いに耽っているかのような幻想的な演奏。
夢見るムードに包まれるが、呟き方が巧く甘ったるくなく、男の浪漫のような切なさ。マーラーのアダージョのように自己陶酔できるような倦怠ムードが漂う。
第4楽章は、ようやく明るめのフレーズとなって蘇る。木管と弦が絡むシーンが多いが、明るめだと言っても暗さを引きずっており、弦とピアノ、木管と弦の二重奏的なフレーズとなっている。無理して陽気に振る舞っているような心の翳りが見えちゃう。明るく色彩的でも良いような気がするが、ため息をつき、眉に立てジワの入っているかのような雰囲気だ。壮大な楽曲だけに、疲れも尋常ではないが、長い小説を読んでいるかのような時空間だった。


 ブラームス ピアノ協奏曲第2番
Brahms: Piano Concerto No.2
アルフレート・ブレンデル アバド ベルリン・フィル 1991年
Alfred Brendel Claudio Abbado
Berliner Philharmoniker(Berlin Philharmonic Orchestra)

冒頭の序奏部は、ホルンとピアノのアルプスを思わせるフレーズから始まる。ピアノの分散和音は筆舌に尽くしがたいほど美しい。オケは、雄壮にシンコペーションで畳みかけて繰り出してくる。オケのリズム感は、重すぎて、ご大層な曲だな~と思わず苦笑してしまうものとなっている。ホント、雄渾なピアノ協奏曲で、シンフォニックで、オケがピアノを飲み込んでしまいそうな曲だ。ピアノ協奏曲といいつつ、演奏者にとっては、詐欺にあったようなモンだよね。で、何を語りたいのかわかりづらい楽曲だ。ブレンデルさんのピアノは、オケの「ごごごぉ~っ」という響きに襲われているらしい。混然一体となった演奏というより、何処か、分の悪い勝負をしている感じがする。嶮しい山肌のようなオケ、そこを登ろうとしている人のようなピアノという感じだ。

第2楽章は、低弦とピアノの絡みは鬱々しながら流れていく。ピアノが泣き節を奏でているかのよう。オケの方が、しつこくピアノを追い回しているストーカーのように聞こえちゃう。ブレンデルさんの柔らかいピアノの音が、抒情的に歌いたいのに、それを遮るかのような間合いで、オケが詰めてくるのだ。ちょっと被害妄想が入っているかもしれないが、まあ、やっぱりブラームスは執拗だよね。ピアノのソロの部分は、のびやかに綺麗に歌っているんだけど、オケがねえ~ 情け容赦なく硬く入ってくる。なんだか、暴力的なオケだなと思ってしまうほど。段々と、明るく熱くなって盛りあがる。ピアノのロマンティックなソロは、ウルウルしちゃう演奏なのだが、長くは続かずオケと踊っている風情となる。
多くのモノが詰め込まれた楽章が続き、既に、お腹が満腹状態なのだが、第3楽章は、チェロ協奏曲のように始まる。長いチェロのフレーズが終わって、ようやく語り出すピアノなのだが、ここはブレンデルさんの煌めくような囁きが聴ける。前楽章で、ゴツゴツしてしまった肌合いが、ようやく潤いを取り戻した感がある。あまり繊細とは言い難いオケの伴奏で、またまた鬱陶しい。ピアノとオケは、どうもそりが合ってない気がする。

第4楽章は、チャーミングな楽章だが、既に疲労困憊状態。ピアノ協奏曲とはいえ、4つも楽章もある約50分の大曲だ。オケも沈んだ感じだし、弾むリズム感が悪く、ブレンデルさんのチャーミングさが引き出せていない。なんだか、後味の悪い感じで終わってしまった。聴いた後スカッとしないこの後味の悪さ。なんだかパッとしない曖昧な気分で、終わっちゃいましたね。詩情豊かに演奏するのって、この曲には難しいかもしれません。改めて難しいと思いました。


■ ブラームス ピアノ協奏曲第2番
Brahms: Piano Concerto No.2
シプリアン・カツァリス インバル フィルハーモニア管弦楽団 1989年
Cyprien Katsaris Eliahu Inbal Philharmonia Orchestra

カツァリスの演奏は、ピアノの繊細さと同時に濃厚で熱っぽさも感じられるものだ。ホルンの柔らかいフレーズが聞こえて、ピアノがするっと入ってくる。品の良い安定したフレージングでとても繊細。やっぱり巧い。はやくも、ピアノのソロの部分で鷲づかみにされてしまった。オケの低音部の音は少し籠もり気味だが、弦にキレ味はあるし、ホルンは巧いし、木管のフレーズは、しっかり輪郭線を描いていく。音量の多いオケの方に耳が行くので、派手に鳴るオケに負けないよう、ピアノは頑張らないといけないところ。シンフォニックに響くし、オケのフレーズには聴き所が多い。特に、ホルンのには釘付けとなる。
カツァリスさんのピアノは、ハイ、しっかり頑張ってます。ピアノの音量は、確かにオケに比べると勝負にならないが、繊細なアルペジオは、しっかり聞こえてくるし、ちゃんとオケも隙間を空けている。

ピアノは、柔らかいが、芯がしっかりあり、磨きあげられた純米酒行きのお米の粒みたい。硬質感のある音質ではない。カツァリスさんのピアノの音は、あえて言うなら木質的なのかもしれない。適度に歌ってくれ、強弱も大きく、表情づけは、ロマン派の要素を含めんで濃い風味だ。ラストは、負けてないよぉ~と、ごろごろ鳴り響くオケのなか、強いピアノ打音が聞こえる。
第2楽章は、熱いっ! 他の演奏家でも熱くなって、胸を焦がすかのような主題が奏でられていくが、カツァリスさんのピアノは、綺麗に弾んで、のびやかさが感じられる。オケは、ちょっと暗く粘っこい感じがするが、そのうちにスケールを大きくしていく。荘厳な和音を奏でてオケは消えていくが、ピアノは残ってロマンティックに歌う。オケは、悲痛な高音域で、どこかヒステリックなおばさんの声のようになっていく。熱くなっていくのは良いが、そんな金切り声風にならないでぇ~。

第3楽章は、チェロの旋律から始まる白眉的な楽章だ。美しい旋律美が見え、ゆったりとした息づかいでロマンティックに、ためをもってフレージングされている。さほど流麗ではないが、中間部分では、夢見る夢子さん風のフレーズが絡んでくる。チェロが再度登場して室内楽のように演奏される。ブラームス47歳の時の作品なのですよねえ~ オジチャンの作品とは信じられないほど。ピアノも、淡い音色で、チェロと絡んでおり、青春時代のまっただなかという若さ、チャーミングさを醸し出す。ゆったり、まったりしているが、うぶっぽい若さも持ち合わせた、古風な青春時代を描き出す。

第4楽章は、
ここは、ホントに明るくて、チャーミングな女性が登場してくるような、華やぎもある楽章だ。しかし、そこはブラームス。 ちょっと渋めの秋色が漂ってくるのだが、カツァリス盤で聴くと、秋色と言うよりは春めいている感じがする。 「ふぁみ~ふぁ ら~し み~ど し~らぁ」と奏でられて悩殺される盤もあったが、アシュケナージさんの演奏と比べて溶解しておらず、そこまで、とろけていない。繊細なピアノは健在であり、しっかりとした佇まいを保っている。表現は濃厚だが厚化粧ではないし、涼しげにポーカーフェイスしている雰囲気だ。でも、素っ気ないわけではない。適度に甘さがあり素直さがある。オケの方が洗練されて欲しいかったかも。多彩で繊細な表現がなされている。その表現の豊かさが、とても楽しい1枚である。


■ ブラームス ピアノ協奏曲第2番
Brahms: Piano Concerto No.2
ウラディーミル・アシュケナージ ハイティンク ウィーン・フィル 1982年
Vladimir Ashkenazy Bernard Haitink
Wiener Philharmoniker (Vienna Philharmonic Orchestra)

アシュケナージの演奏は、柔らかく、ゆったりとしたブラームスで、味付けは濃厚だ。とろける歌声と煌めきがあり、クネクネした女性がすり寄ってきて、完全ノックアウトされる。美しいホルンから始まる。ウィーン・フィルならではの滑らかさ艶やかな音、まろやかな慈悲深い音色って言えば良いだろうか。優美で柔らかい音色に接してクラクラ。
で、ピアノのタッチも、優美で重厚さを持ち合わせ、質感的には厚めのカーペット、タペストリー的な感じがする。凹凸のはっきりした演奏ではなく、あくまでも柔らかく、優美で耽溺型、ちょっぴり退廃的な香りも漂う。ロマン派を意識したモノだ。渋いブラームスというよりは、あでやかな演奏で、女性的な演奏である。ホント笑えちゃうほど優美なのだ。まったくもって美しすぎる。悲劇を弄んじゃーいかんよと言いつつも、身をよじらせて喜んでしまうような、文学的演奏なのだ。和風に例えてしまうと、はんなりした演奏って言えば良いだろうか。舞妓さんのお化粧の香りがするって感じの美しさですけどね。歌舞伎で言うと女形っぽい。

第2楽章は、女性的な悲劇っぽい演奏になっている。ティンパニーと低弦の力強さは感じられるが、高音の弦は、鳥肌ものの女性的なあでやかさ。オケの力強さが感じられるのは、低音が入ってくるところで、総体的には、なよなよしている。ううっと呻き、よよよっと、泣き伏したくなるほどの歌謡性。どうも○○ドラマの見過ぎではないのかと思うほど、悲劇的で、喜んで身を滅ぼしてしまうような倒錯的な匂いがするアブナイ演奏とも言える。まあ、素っ気ない演奏を聴いているよりは、ずーっと面白い(苦笑気味で)のだが、この演奏をずーっと聴いていると疲れてしまうかもしれない。

第3楽章は、お口直し的な楽章で、さっぱりとした楽章だ。しかし、とろけるような演奏が続く。胸が詰まるような、ぐぐっとくるフレーズが続き、これでもか~と迫ってくる。(あー くどい。)確かに美しいが柔和すぎて、ポリーニさんのようなクールさが、なんだか懐かしくなってしまった。とろとろのとろける濃厚な味わいで、どっぷり耽溺型。ワタシ的には、息も絶え絶え悶絶しちゃうような演奏である。まあ、しかし、悶えたい人にとっては、完全に昇天できると思うので行っちゃってください。

第4楽章は、可愛い女性に変貌してて、少女じゃんと思うようなピアノが入ってくる。ただし、オケが入ってきてくると悩殺される。ホルンが鳴ると、本能的にクネクネしてしまうようだ。ハイティンクさんの振っているオケなのだが、信じられない。思わず、ハイティンクさんの風采を思い出して、ぷっと吹き出してしまった。どうやら、アシュケナージさんに手玉に取られたオケのようだ。色彩的にも豊かだし、変わり身の速さ、くねくね感、女性心を充分に分かり切った歌舞伎の女形のような感じ。カラダに染みついているような表情の豊かさ。妖艶さ。演技派ですね。聴いているこっちのほうが、この濃厚さに翻弄されヘトヘト。ギブアップ。
ワタシ的には、無骨さが残る情熱的な演奏が好きだが、濃厚な浪漫派としか表現のしようのないアプローチは、個性的な存在であるように思う。多少時代がかった古風な演奏であるとは思うが、片隅に追いやるのは、ちょっとモッタイナイかもしれない。


■ ブラームス ピアノ協奏曲第2番
Brahms: Piano Concerto No.2
エミール・ギレリス ヨッフム ベルリン・フィル 1972年
Emil Gilels Eugen Jochum
Berliner Philharmoniker(Berlin Philharmonic Orchestra)

ギレリスの演奏は、淡々としてて、堂々としている。堅牢でガッチリした構築物のようだ。揺るぎのなさはピカイチで、メチャ立派すぎて驚いてしまった。冒頭、有名な美しい旋律でホルンとピアノがデュエットする。この演奏は1972年と古いが、昔から名盤として有名なもの。美しさと怖いぐらいのタッチで、鋼鉄のピアニストというニックネームのとおりだと再認識する。「どれみ ふぁみれ みそぉ どそふぁ どそふぁ ふぁ~ どれぇ~ れみぃ~ ・・・」と畳みかけておいて、すっと抜けていく。ピアノが、突き刺すように音を立てて歩き始めると迫力がある。叙情性のあるフレーズにさしかかると力が抜けて、風がそよぐように歌う。この力の抜け加減は、陽炎のような風情だ。相反する要素が矛盾なく同居している。ホントすごい。 現代感覚、そうスピード感がないので、ふわっとしすぎて遅いのだが、なかなかに分厚い響きが屹立してくるところは、すごみがある。

第2楽章は、高音のピアノの音が力強い。大きな歩みで堂々と階段をのぼっていく力強さ、そのなかに、しなやかさがある。フレーズのなかでの体重移動が、優美なスタイルだ。次に鳴る音が自然に予測できる雰囲気を持っている。不思議な空気感があり、粒が立って連なっている。鋼鉄の~という代名詞は、ハンマーで叩くみたいに押し込み的な打音かと思っていたが、身のこなしが違う。オケの音は、どこか剥がれ、削がれてしまった感がするが、情熱的なスケルツォの楽章は、顕著に演奏家の個性が出てくるらしい。なので、一度や二度聴いたぐらいでは、もちろん素人には歯が立たないんですけどね。聴き応えがある。

第3楽章は、チェロが活躍し、星空を見上げているかのような煌めきや物思いに耽るような雰囲気があるが、ギレリス盤では、感傷的なイメージがない。淡々と弾かれ、音が、ふんわり浮くことも、硬く押されることもなく、慎ましやかに鳴っている。静寂に包まれて、音のない世界のような現実離れした演奏だ。甘みの感じられる楽章だが、陶酔とはほど遠く、ワタシ的には緊張感が途切れてしまった。個人的にはチェロに歌って欲しかった。
第4楽章は、音の響きが活き活きしている。ゆらゆらする主題に入ると、木管やホルンの色彩感が織り込まれ、移ろいやすい心情が発露してくるようだ。もう少しぐらい、よろめいていただけないでしょうかと言いたくなっちゃう。ギレリス盤を聴くと、なんだか淡々としすぎてて、我関せず~というスタイルを貫いているようだ。1楽章は良かったのだけど、楽章が進むにつれ、情感の少ない演奏のように感じてしまった。


■ ブラームス ピアノ協奏曲第2番
Brahms: Piano Concerto No.2
クリスティアン・ツィマーマン バーンスタイン ウィーン・フィル 1984年
Krystian Zimerman
Leonard Bernstein Wiener Philharmoniker (Vienna Philharmonic Orchestra)

ツィマーマンさんの若かりし頃の演奏で、ライブ盤である。ちょっと尖ってて躁鬱の落差を繰り返し、最後、ようやく開放されると思ったのだが開放されず~という感じだ。同じウィーン・フィルでも、バーンスタインさんの振る演奏は、暑苦しい。重厚でとろり感があり、まどろっこしい逡巡を繰り返す。ピアノは、カッシリと弾かれてて硬い限り。1984年当時のツィマーマンさんの熱っぽさが思いっきり表れている。ツンとした輝きがあって硬質的だ。硬い低音のピアノの響きが思考的、思索型に聞こえるが、オケは思いっきり感情が露出しており、うぷぷっ。ピノノは理性的だが、オケは感情的でという真逆の組み合わせ。双方共に交互に逡巡し、オツムとカラダがバラバラになりつつ深く悩める感じがする。 ラフマニノフのようにカラダイッパイに感情を表出してくる楽曲とは違うようで、理屈っぽいが、そうはではいところがより一層悩ましいところ。うつむきがちに深く悩むスタイルに、4楽章まであるという長大な楽曲に付き合うには、うーん、疲れる予想大である。

第2楽章は、ピアノは硬くて挑戦的だ。オケは完全に添え物的に、悲劇的なフレーズで泣き節だ。ピアノが、「どれどれ み そ し み  どれどれ みそし み~ どれどれ・・・」と、沈む 沈む 沈む~ と思ったら、硬めの「みしら~ふぁ みしら~れ どしら~れ どそふぁ~」 と挑戦的に弾かれる。部屋に籠もって、つぶやいていたと思ったら、突然ドアが開いて、ものすごい形相で、飛び出して出て行っちゃったという感じの直情的な感じに。感情をむき出しに、怒りまくったような顔で迫ってくる。 喧嘩を売ってくるみたいに、ツンツンとんがった感じだ。感情の刺々しさ、荒々しさが、躁鬱状態のように落差大きく演奏されている。悶々としているかと思えば、唐突、ハリネズミのようになっている。

第3楽章は、息の長い、とめどもなく続く長いフレーズである。ひとしきりチェロとオケが奏でると、ピアノが登場するが、意外と音の響きが少なめで広がり感に乏しい。意外と客観的だ。しかし、荒々しく挑戦的ですらある。フレーズはロマンチックだが、さほど膨らまず、平板で、素っ気なさを感じてしまう。
第4楽章は、可愛く変貌してくれる・・・筈だったが、さほど変化せず。可愛げのある少女のように振る舞ってくれるかと期待した分、なんだか裏切られたような感じだ。オケも紋切り調で表情が豊かではなく、豊穣感や芳醇さには縁遠い。まるで、カラダが硬直したかのようで、楽しさも少なく、音質に艶がなく、少女のようなロマンも初々しい青春時代も飛び越えて、白髪のオバサンに変化したかのようで、カスカス状態だ。脂が抜けきったかのようで、これがウィーン・フィル? 躁鬱傾向のある疲れる楽曲を、なんとか聴き通したという感じだが、うーん、報われないですね。最後まで我慢した甲斐がなかったようです。


■ ブラームス ピアノ協奏曲第2番
Brahms: Piano Concerto No.2
ヴィルヘルム・バックハウス ベーム ウィーン・フィル 1967年
Wilhelm Backhaus
Karl Böhm Wiener Philharmoniker (Vienna Philharmonic Orchestra)


バックハウスの演奏は、上品で優美、かつ熱くオチャメに楽章ごとにアプローチが違う。古き良き余裕のある大きな演奏で、包まれるような愛情の籠もった暖かい演奏だ。さすがに録音が古いので、ひなびた感じがするが、どこか余裕があって雰囲気に呑まれてしまった。がちっとしてて強烈で、ゴンゴン、ガシガシと弾くのかと思っていたが、意外としなやか。驚くほど優美でエレガント。反対のことを言うようだが、フレーズは流麗ではない。細切れ風で歯切れが良いものだが、そのくせ、優美で上品なのである。ピアノも高い弦のフレーズも、細切れ風なのだが、低弦の響きがオルガンのように響く。 ほぉ~ こんな風に細切れに奏でていても、低弦が響きわたると、和音の綺麗さ、オルガンのように聞こえるのかと驚いてしまった。1つ1つの和音の組み合わせがお披露目されているような感じで鳴っている。こんな風に和音が繋がっているのかと再認識させられた。フレーズの流れより、1つ1つの音がクリアで、横の時間列より、縦の構成美を感じさせるものとなっている。串に刺されたお団子1本1本が、目の前を順番に並んで、通過していくという感じ。(笑)
第2楽章は、迸る熱いモノを感じる演奏で、まるで初恋をしたみたいに胸熱く語ってくる。ロマンティックに純粋に情熱を感じさせるもので、これは悶えちゃう。甘酸っぱい初恋の熱っぽさがある。
第3楽章は、チェロの甘いフレーズをサポートする弦楽が、格調高く優美に歌う。息づかいというか間合いというか。ピアノの呟きが、するり~っと入ってきて心の隙を突かれる。教養豊かな女性的が、エレガントに緑豊かな庭園にてお茶をしているという感じの演奏だ。フランス映画でも見ている感じで、時間的にも精神的にも余裕を持つように促されている感じがする。決して状態の良い録音ではないが、これは侮れない演奏だ。絵画的で、印象派モネの「日傘をさす女」をイメージしてしまった。
第4楽章は、オチャメに弾かれており、陽気さと翳りとを映し出してくるものだ。ベームさんとバックハウスさんの暖かい人柄が滲み出てくるような、自由で爽やか、伸びやかさを感じる。聴いてて楽しい。オケの弦の引きずるようなフレーズが、オチャメで、じゃれているかのように聞こえて楽しい。軽やかに飛ぶんだよねえ。この前に聴いたポリーニの演奏が、厳めしく眉の間に縦じわを立てて、イライラと苦虫をつぶしたかのような雰囲気だったのに、バックハウスの演奏は、なんと柔らかく爽やかに、愛おしそうに演奏されているのだろう。厳めしく重厚な作品と思い込んでいたのが馬鹿らしくなりました。ハイ、良い演奏を聴きました。



ブラームス ピアノ協奏曲第2番
1953年 バックハウス シューリヒト スイス・イタリア語放送管 Dec
1967年 バックハウス ベーム ウィーン・フィル Dec ★★★★★
1972年 ギレリス ヨッフム ベルリン・フィル G ★★★
1982年 アシュケナージ ハイティンク ウィーン・フィル Dec ★★★
1984年 ツイマーマン バーンスタイン ウィーン・フィル G ★★★
1988年 グティエレス プレヴィン ロイヤル・フィル T
1989年 カツァリス インバル フィルハーモニア管 Teldec ★★★★
1991年 ブレンデル アバド ベルリン・フィル Ph ★★★
1993年 オピッツ C・デイヴィス バイエルン放送響 R
1996年 ポリーニ アバド ベルリン・フィル  G ★★★
1997年 アックス ハイティンク ボストン響 SC ★★★
1998年 ブッフビンダー アーノンクール コンセルトヘボウ T ★★★


ブラームスのピアノ協奏曲第2番(変ロ長調 作品83)は、1881年に作曲されています。ウィキペディア(Wikipedia)を元に記述すると ピアノ協奏曲第1番より、22年後の47歳頃、交響曲第2番やヴァイオリン協奏曲と同じ頃の作品で、2回目のイタリア旅行から帰国後に、一気に書き上げたと言われています。イタリアで受けた印象を基に書かれているためブラームスにしては 明るい基調で貫かれているとのこと。楽曲構成上は、ピアノ・ソロが単独で自由に奏するカデンツァ的な部分がなく、ソリストの超絶技巧を派手に見せるものではないのですが、現実に要求する桁外れの難技巧は、ピアニスト泣かせだそうです。通常、協奏曲は3楽章なのですが、この作品は交響曲のように4つの楽章で構成されています。

1楽章 変ロ長調、ソナタ形式
2楽章 (スケルツォ)、ニ短調、複合三部形式
3楽章 変ロ長調、複合三部形式
4楽章 変ロ長調、ロンド形式

スケルツォ楽章を備えた4楽章からなり、その性格から「ピアノ独奏を伴う交響曲」とも呼ばれるほどで、当時に書かれた協奏曲としては最も長い楽曲です。また、2楽章が、とても情熱的で、その存在は、ちょっと異例なのだそう。スケルツォ入りの協奏曲としては、アンリ・リトルフの5曲の「交響的協奏曲」、フランツ・リストのピアノ協奏曲第1番という先例があります。3楽章では、(ヴァイオリン協奏曲第2楽章のオーボエのように) 主題提示をピアノではなく、チェロ独奏が行うことなども通常のピアノ協奏曲とは異なっています。約50分を要し、ラフマニノフの第3番と並ぶ超難しいピアノ協奏曲として有名です。


 

YouTubeでの視聴

ブラームス ピアノ協奏曲第2番
Piano Concerto No. 2 in B-Flat Major, Op. 83
ルドルフ・ブッフビンダー - トピック Rudolf Buchbinder - Topic
ブッフビンダー アーノンクール コンセルトヘボウ
Provided to YouTube by Warner Classics International
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=hVMLcv00aS0
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=Jn23bYqxVY0
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=Xs3ML0kxvyo
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=8jojsx0B0hw


Brahms: Piano Concerto No. 2 in B-Flat Major, Op. 83
マウリツィオ・ポリーニ - トピック Maurizio Pollini - Topic ポリーニ アバド ベルリン・フィル
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=-8wFW3rI2J0
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=r3GqL3z9wVk
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=f_joe58mWZg
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=IQCLZ8xLMuo


Brahms Piano Concerto No. 2 in B-Flat Major, Op. 83
アルフレート・ブレンデル - トピック Alfred Brendel - Topic
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=p7REg38jtB0
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=S0HnoiFAMs0
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=VUQ-Vj5XLPY
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=14saVGwfecM


Brahms Piano Concerto No. 2 in B-Flat Major, Op. 83
シプリアン・カツァリス - トピック Cyprien Katsaris - Topic カツァリス インバル フィルハーモニア管
Provided to YouTube by Warner Classics International
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=uqABy9k4aKU
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=XmHpCvNQk0s
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=OWepaXwGYlk
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=wbxla010sUE


Brahms: Piano Concerto No.2 in B Flat Major, Op.83
ウラディーミル・アシュケナージ - トピック Vladimir Ashkenazy - Topic
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第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=w6zF2rPpYoE
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=-_fRo8Zw10A
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=9vY_BxBWzso
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=Mn8aqT0x0CA


Brahms: Piano Concerto No. 2 in B-Flat Major, Op. 83
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 - トピック Berlin Philharmonic Orchestra - Topic
エミール・ギレリス ヨッフム ベルリン・フィル
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第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=CfWl_G-UkGw
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=6Akdu6SC8EQ
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=-VAReVXAnYQ
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=5SbtvjvmNis


Brahms: Piano Concerto No.2 In B Flat, Op.83
クリスティアン・ツィマーマン - トピック Krystian Zimerman - Topic
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第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=03k4K1EO3d0
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=0IO6OmTFcsw
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=yTd4FioK_RM
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=TscEXUTKcTw


Brahms: Piano Concerto No. 2 in B-Flat Major, Op. 83
ヴィルヘルム・バックハウス - トピック Wilhelm Backhaus - Topic
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第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=hwAU6_PfkGA
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=dvZWRmYest0
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=GnGue9hdXWA
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=DUlhJmT7ncc



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