ブリテン ヴァイオリン協奏曲 Britten: Violin Concerto


 ブリテン ヴァイオリン協奏曲
Britten: Violin Concerto
マクシム・ヴェンゲーロフ ロストロポーヴィッチ ロンドン交響楽団 2002年
Maxim Vengerov Mstislav Rostropovich London Symphony Orchestra

ヴェンゲーロフの演奏は、歌い回しにちょっと癖があるのかもしれないが、親しみやすさを感じさせてくれた。冒頭、静かに、ティンパニーから始まり、弦が幻想的に入ってくる。意表を突くような入り方だが、幻想的風景が広がるなか、ヴァイオリンの高音域の澄み切ったフレーズが気持ちの良く響く。ペルトのフラトレスのような、環境音楽のような静かで内省的な楽曲だ。オケの方は、よく似た音型を繰り返して進み、冬の澄み切った空のもと、教会の鐘が鳴っているような気がする。自由なフレーズが軽やかに舞ながら歌っており、ゲンダイオンガクの晦渋さは、ここにはない。主題が変わると、弦を掻き鳴らす感じで、鋭く細かく舞いはじめる。小鳥が無邪気に小さく跳ねている感じがする。金管と弦の掛け合いは雄壮さがあるが、どこか場面がぶっ飛んでしまって、まるで、アメリカ風の世俗的な風合いが出てくる。あは? 場面展開の唐突さについていけないが、どーなってるのか疑問に思いつつも悪い気はしない。多くの場面展開が待ち受けている楽曲だが、ヴェンゲーロフさんのヴァイオリンは、表情が豊かで活き活きとしているので、足の無い幽霊が漂うような気持ちの悪さはない。主題が戻ってくると、静謐さをとり戻して雪が降り積もる光景を描く。ヴァイオリンは、ささくれ立ちそうな気持ちを、ぐっと抑え、悲しみを堪えて、静かに弦を掻いている。楽章の最後のフェードアウトするところは、鳥肌モノ。祈りの心中に近いものを、ちょっと感じてしまった。

第2楽章は、艶っぽく跳躍を繰り返すもので、超絶技巧の演奏を楽しむ楽章だ。力強さに引きこまれ、荒々しく盛んに攻め立ててくるオケに翻弄される。金管の荒々しさに驚かされ、通俗的な風合いに馴染み、粉雪のように吹き上がっていくピッコロの音に耳を傾ける。オケの熱っぽいエネルギーを感じつつ、客観的なヴァイオリンの音に、クールな怒りが籠もっているように聞こえる。のたうちまわるような大きなうねり、エキゾチックさ、あでやかさに驚かされる。ヴェンゲーロフさんもロストロさんも、歌いまわしに濃厚な癖があるかもしれない。

第3楽章は、前楽章に続いて演奏されるが、トロンボーンが入ってくるので切れ目は、わかりやすくなっている。フーガのように吹かれる金管は、木管と共に単調で、もう少し丁寧な深みが欲しいかも。抑揚があれば、もう少し盛りあがるかもしれません。で、この楽章には変奏がある。パッサカリア アンダンテ・レント (ウン・ポーコ・メノ・モッソ) ~ ラルガメンテ (レント) ~ レント・エ・ソレンネ という風に分かれている。オケは、開放的に光があたってくるかのように響き、ヴァイオリンは、高音域で忙しそうに、細かな音を奏でる。
ラストにかけて、単調で平板な感じを与えるオケの演奏で、まるで投げ出すかのような金管の吹き方には、少しげんなりした。1楽章は、静謐で綺麗だと思ったのに、世俗的な色彩が入り込んで、モッタイナイ感じがする。感覚的に聴いて良いかもしれないし、聴かざるを得ない気もするが、多様性に富んでおり流行る要素を持っている楽曲だと思う。それにしても、25歳頃でこれを作る?ブリテンの早熟さに驚いた。演奏される機会は少ないように思うが、今後より一層、聴かれる楽曲のように思う。
カップリング:ブリテン ヴァイオリン協奏曲(改訂版)、ウォルトン ヴィオラ協奏曲1961年版



ブリテン ヴァイオリン協奏曲
2002年 ヴェンゲーロフ ロストロポーヴィチ ロンドン交響楽団 EMI★★★★
2004年 F・P・ツィンマーマン ホーネック スウェーデン放送響 SC
2009年 ヤンセン P・ヤルヴィ ドイツ・カンマーフィル Dec
2017年 シュタインバッハー ユロフスキ ベルリン放送響 Pentatone

ブリテンは、1913年生まれのイギリスの作曲家です。ここでご紹介するヴァイオリン協奏曲(作品15 1950年改訂)は、ウィキペディア(Wikipedia)を元に記述すると、第二次世界大戦が勃発したため、1939年にアメリカに渡り、20歳半ばの1939年に作曲されています。3楽章から構成されており、演奏間は約32分です。

第1楽章
ティンパニの音型による短い導入部、ソロヴァイオリンの長い抒情的なフレーズが続きます。内省的な旋律で奏でられ、短いカデンツァの後で、管弦楽がその旋律を反復します。弱音器を付けたホルンのコラール風の伴奏をバックに、ヴァイオリンの奏する第2主題が登場します。再現部は、高い音域の弦による第1主題の回想です。ソロヴァイオリンが、導入部の音型を繰り返しながら合流して、静かなコーダとなって終結します。

第2楽章 スケルツォの楽章です。強烈なリズムの音型が、ソロヴァイオリン、ファゴットに、男性的な主題として現れます。ソロヴァイオリンには、技巧が要求され、グリッサンド、ハーモニックス、3度・6度・オクターヴ・10度と、音階的なパッセージが要求されるもの。オケも創意豊かで、再現部では、弦楽の高音域のトレモロ、2つのピッコロとソロ・テューバのデュエットなどがあります。再び、冒頭の荒々しい舞曲調のフレーズが戻って、長大なカデンツァが、次の楽章へと繋ぎます。

第3楽章
パッサカリアで、ソロヴァイオリンが第1楽章の第1主題を演奏しているとき、トロンボーンが、荘重な美しさで、パッサカリア主題を導入します。フーガ風の冒頭部分の後、9つの変奏が続きます。ソロヴァイオリンは、主題に対して装飾する部分と、第6変奏の積極的に参加する場合があります。徐々に、半音階手法を捨て去って、最後の2つの変奏では、透明な全音階的和音となって静謐感を与えます。祈りに似た叫びとともに、最後の「レント・エ・ソレンネ」の部分によって、消え去るように終結します。


 

YouTubeでの視聴

ブリテン ヴァイオリン協奏曲
Britten Violin Concerto Op.15
マキシム・ヴェンゲーロフ - トピック
Provided to YouTube by Warner Classics
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=_8CYwccHbu0
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=V7_FnSBPPV0
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=Fjc1-xuvxzs


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