ブルッフ スコットランド幻想曲 Bruch: Scottish Fantasy, for violin & orchestra

 ブルッフ スコットランド幻想曲
Bruch: Scottish Fantasy, for violin & orchestra
サルヴァトーレ・アッカルド マズア ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 1977年Salvatore Accardo
Kurt Masur Gewandhausorchester Leipzig

ブルッフの楽曲としては、ヴァイオリン協奏曲の第1番が筆頭にくるだろうか。で、このスコットランド幻想曲は、タイトルは良く耳にしていたが、あまり聴いたことがなかった。正式には「スコットランド民謡の旋律を自由に用いた、管弦楽とハープを伴ったヴァイオリンのための幻想曲」という。スコットランド幻想曲は、4楽章に分かれており、そして、序奏部分が設けられている。

序章 グラーヴェ
「ふぁ~ふぁ~ふぁ~ ふぁ~そら~そられ~ ふぁ~みれど どぉ~らし~ し~み~」ホルンと弦、ハープ付きで流れてくるのだが、メチャ暗くて、新月の夜海岸の縁に立っているような悲しさがある。アッカルドのソロヴァイオリンが入ってくる。「し~ そら しぃ~み みふぁそそしみ~ しそみ れ~みど~らし~」ティンパニーの打音と共に、悲劇的、悲哀の籠もったフレーズが詰まって出てくる。テンポはゆったりと沈み込んでいく。このスコットランド幻想曲は、スコットランド民謡をベースにした旋律なのだそうで、スコットランドの詩人ロバート・バーンズ(Robert Burns)やジェームズ・ジョンソン(James Johnson)が編纂したスコットランド民謡集から採られたものらしい。
第1楽章は、柔らかく牧歌的なフレーズが、ハープとフルートと弦楽で奏でられる。序奏から続けて演奏されており、物思いに耽っているようなフレーズだ。ハープがクリアーに入ってくれたら、もう少しメリハリがついていたかもしれない。
続いて、ヴァイオリンのソロで歌われる。ヴァイオリンの二重奏のように奏でられ、抒情的で懐かしい古い民謡だ。シンプルなフレーズだが、ノビのある小学校唱歌を聴いている気分になる。古いスコットランド民謡からアレンジされ取り入れられているとのことだが、原曲は、よく解らない。「Auld Rob Morris」年老いたロブ・モリス という曲か、「Through the Wood Laddie」スルー・ザ・ウッド、ラディーという曲かと言われているそうである。物悲しくも美しいメロディーだから親しみやすい。

第2楽章は、3拍子の舞曲で、これも、ソロ・ヴァイオリンが旋律を歌う。「ふぁっそ らぁ~ ふぁっそ らぁ~」「ふぁ~そ らっふぁっみれみ~」と、低弦の強い勇壮なフレーズが流れ、舞曲で、「どぉ~れ みっどしら みっらっら しっどっら~」この曲は、「Dusty Miller」 「粉まみれの粉屋」という曲を元にしているらしい。

第3楽章は、「I'm a Doun for Lack O'Johnnie」「ジョニーがいなくて、がっかり」を元にしているらしい。「らぁ~みふぁ~ら し~らしどぉ~  れぇ~ら しぃ~れ み~れみふぁ~」大変親しみやすいフレーズで可愛い。ハープが入っておりニクイ演出で乙女チックに歌う。執拗なぐらいフレーズを繰り返すが、切々と歌われて涙を誘う。
第4楽章は、「Hey Tuttie Tattie」は、 ロバート・バーンズの「Scots wha hae Wallace bled」(ウォレスとともに血を流したスコットランドの民よ)という曲が元になっているらしい。その後、変奏曲のように走っていくのだが、主となるフレーズは、執拗なぐらい、しゃがれたこえで、切々と歌いきる。ホント、スコッチウィスキーを飲み過ぎて、声をつぶしたような、しゃがれた男の歌ですねえ~聴きようによっては、バーボンウィスキーのようにも聞こえちゃうが(笑) アイリッシュ いや、スコットか。女性の歌も聞こえてくるものの、底辺で歌われているのは、力強い、騎士道精神みたいなモノかも。

子どもの頃に読んだウォルター・スコットの「アイバンホー」に出てくる格好良い、黒騎士を思い浮かべてしまった。分厚く力強いフレーズなのだが、アッカルドさんのヴァイオリンは、女性に焦点があたっているようだ。ヴァイオリンの音が、とっても繊細だけに、この力強い勇士を励まし、また、思い出しては懐かしむ。そんな気分になってしまった。スコットランドの民謡は、ここでご紹介しているスコットランド幻想曲だけではなく、ベルリオーズの序曲「ロブ・ロイ」にも影響を与えているらしい。

カップリング:ブルッフのヴァイオリン協奏曲全集として、2枚組BOXCD ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番、2番、3番、ヴァイオリンと管弦楽のためのセレナード、スコットランド幻想曲、ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番~3番(1番と2番1977年録音)、スコットランド幻想曲 1977年、セレナード 1978年


 ブルッフ スコットランド幻想曲
Bruch: Scottish Fantasy, for violin & orchestra
チョン・キョンファ ケンペ ロイヤル・フィル 1972年
Kyung-Wha Chung Rudolf Kempe Royal Philharmonic Orchestra

序章 グラーヴェ 出だしの音が、ぱらりと揺れる。まるで、ぱらりと髪がほつれ、うちひしがれているような暗さがある。オケの鋭い咆吼があり、ぽっかり穴が開き深淵を覗いているような鋭さがあって怖い。切れ目のないフレーズに絡みとられてしまう。ケンペさんのオケも、なかなかに鋭くてエッジが効いている。チョン・キョンファさんのヴァイオリンも、デビュー頃の演奏で、感情移入が半端なくキレもあり、切々と演奏している。
第1楽章は、柔らかく牧歌的なフレーズ。ヴァイオリンの歌謡風フレーズが解りやすく演奏される。拍感覚があって、以前アッカルドの演奏で聴いたときよりも馴染む。昭和の時代、いや明治・大正時代まで時代が遡るかもしれないが、DNAに組み込まれた東洋人の心情をくすぐる、感傷的なフレーズでほろりとさせられる。

第2楽章から第3楽章の演奏は、明るくて華やか。歌謡風フレーズから離れて、3拍子の舞曲となる。ヴァイオリンの高音域の強い張り感覚があり、オケの持っている明るい音が、それに寄り添う。ヴァイオリンのフレーズは、ころころと小節がまわっており、喉を鳴らしている。この楽章ではオケが元気だし、木管の音色に耳がそばだつ。しっとりと物悲しく、ロマンティックな演奏だが、どこかに暗さを引きずっており、旋律自体が持つ甘さを控えめに切々と歌われると胸が詰まる。キョンファさんの演奏は、圧迫感を感じるぐらいに、ぐっと胸を捕まれる。オケの方が甘いフレーズを、たっぷり気味にアプローチしてくるが、どうやら、この乙女は底知れぬほどに悲しいらしい。切々の間合いがなんとも言えない。拍感覚が、普通の楽曲とは、ちょっとずれちゃう感じがするが、このど演歌風の歌い方は、ずれ感覚が、なんとも言えない歌謡風フレーズを、ますます悲しいものにする。単なるスコットランドへの郷愁以上に、心情が表れている。

第4楽章は、キョンファさんの演奏は、強靱だと再確認させられる。草原のイメージがするとか、ハイランドの風景が広がっているというような風景の描写にとどまらず、自分を押し込めてしまう精神的な強さと脆さが見えかくれしており、怖いような悲しいような心境に。オケは、甘さを求めているようだが、ヴァイオリンは、内面に押し隠した悲しさが表出している。オケは、勇壮感があり、男性的なダイナミックな広大な風景を見せたいようだが、ヴァイオリンは、内面へと向かっている。ものすごく内省的で、ウチに入った演奏だった。互いにアプローチは違うようだが、聴き手としては微妙なアンバンランスのなかで揺れてしまった。


ブルッフ スコットランド幻想曲
1972年 チョン・キョンファ ケンペ ロイヤル・フィル Dec ★★★★★
1977年 アッカルド マズア ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管 Ph ★★★
整理中です。


 

YouTubeでの視聴

ブルッフ スコットランド幻想曲
Bruch: Scottish Fantasy, Op. 46
サルヴァトーレ・アッカルド - トピック
Provided to YouTube by Universal Music Group
序奏 https://www.youtube.com/watch?v=zD5MDG7A28M
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=AkD9USGjXts
第2楽章 A https://www.youtube.com/watch?v=oI6CyTpcLCo
第2楽章 B https://www.youtube.com/watch?v=1rQ4fOr4sGM
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=xBerSIyex6w
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=D8h2k7e4XGk


Bruch: Scottish Fantasy, Op. 46
Bruch: Violin Concerto No.1; Scottish Fantasia
チョン・キョンファ - トピック
Provided to YouTube by Universal Music Group
序奏~第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=IskVtU8Z-is
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=py4bw6BfDFA
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=zl6qgv3CrsQ
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=Yh1WrW-IcUc


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