「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

グリエール ハープ協奏曲
Gliere: Concerto for Harp & Orchestra


グリエール(Reinhold Glière)は、1875年生まれの現在のウクライナ出身の作曲家です。
モスクワ音楽院で、タネーエフ、アレンスキー、イッポリトフ=イワノフなどに作曲を師事し、モスクワ音楽院で、1920年から41年まで教鞭を執り、プロコフィエフやハチャトゥリアンなどを育てています。

グリエールは、スクリャービンやラフマニノフと同世代で、チャイコフスキーと国民楽派の両方から影響を受けており、初期作品の室内楽や2つの交響曲は、ドイツ後期ロマン派音楽、たとえばブラームスやワーグナーの影響を受けています。
ここでご紹介するハープ協奏曲も、初期のロマン派音楽の様式に戻って作られた作品で、スターリン治下のソ連においては、社会主義リアリズムの模範的作曲家と見なされ続けたようです。

この曲は、ラフマニノフの甘さ、カリンニコフのような爽やかさを持っており、とても親しみやすい曲なので、もっと知られても良いのではないかと思います。

オシアン・エリス リチャード・ボニング ロンドン交響楽団 1968年
Osian Elli
Richard Bonynge
London Symphony Orchestra

録音状態は良い。古い録音だが、まずまず。繊細なハープの音色が聴ける。
ハープ協奏曲をまとめて収録している盤が極めて少ないので、お薦め。

カップリングは次のとおり。6曲収録されている。ちなみに、ロドリーゴのアランフェス協奏曲は、ハープ版となっている。
ここでご紹介するCDは、ハープ協奏曲集の2枚組BOXである。
結構、珍しい曲も収録されており、初めて耳にした作曲家もいる。で、調べてみたら、ペンギンガイドにおいて、3星を取ったCDだった。多彩な曲を集めたアンソロジー的なCDなのだ。
このグレエールのハープ協奏曲は、そのなかでも、録音されたのが68年なので、結構古いが、アナログからデジタルにする際に、リマスタリングされているようで、ワタシの持っているCDは、西ドイツ製の輸入盤である。

オシアン・エリスさんは、ウェールズ出身の男性ハープ奏者で、1961年より、ロンドン交響楽団の首席ハープ奏者だった方である。で、このグリーエルのハープは、1楽章のソロになったら、多少音が濁り気味に聞こえる部分もあるのだが、総体的には綺麗に収録されて、聴く分には問題ないように思う。
それに、もともとが、優しい、柔らかくデリケートな旋律が主となっている楽曲で、ふわーっと歌謡風フレーズを聴くことができるように思う。2楽章は、しっとりと〜 3楽章は快活な細かいパッセージと、掻き鳴らす奏法も多彩に入ってきており、リズミカルで、耳にすぐに馴染む楽曲だ。

それにしても、 ハープの音って低音になればなるほど柔らかく豊かに響くが、生演奏でオケと一緒じゃー 音が埋もれてしまわないのだろうか。また、高音域の速いパッセージなら、明瞭に聞こえるものの、輪郭が曖昧になりやすいように思うが、どうなんだろう。素人のくせして、心配しちゃったりする。
また ハープ協奏曲って、モーツァルトのハープとフルートのための協奏曲のCDが多く、次いでヘンデルの協奏曲があるが〜
もっと、CDにして欲しいな〜って思う。だって、ハープの音って、ものすご〜く、落ち着くように思うのだ。
ワタシ的には、ヴァァイオリンより、ずーっと穏やかな響きを持っていると思う。(笑)

まあ、このCDは、珍しい協奏曲も収録されているので、楽しめるのではないだろうか。
もっとも、入手が多少困難であるかもしれないが・・・。


ハープ協奏曲集

1〜3 ヘンデル ハープ協奏曲 1980年
George Frideric Handel (1685 - 1759)
Concerto for Harp in B flat major, Op. 4 no 6/HWV 294
ハープ:マリサ・ロブレス Marisa Robles
マリナー Neville Marriner
アカデミー室内管弦楽団
Academy of St. Martin in the Fields

4〜6 フランソワ=アドリアン・ボワエルデュー
ハープ協奏曲 1980年
Francois Boieldieu (1775 - 1834)
Concerto for Harp in C major
ハープ:マリサ・ロブレス Marisa Robles
マリナー Neville Marriner
アカデミー室内管弦楽団
Academy of St. Martin in the Fields

7〜9 モーツァルト ハープ協奏曲 1962年
Wolfgang Amadeus Mozart (1756 - 1791)
Concerto for Flute and Harp in C major, K 299 (297c)
ハープ:フーベルト・イェリネク Hubert Jellinek
フルート:ヴェルナー・トリップ Werner Tripp
カール・ミュンヒンガー  Karl Munchinger
ウィーン・フィル Vienna Philharmonic Orchestra

1〜3 カール・ディタースドルフ ハープ協奏曲 1980年
Karl Ditters Dittersdorf (1739 - 1799)
Concerto for Harp in A major
(カール・ディッタース・フォン・ディッタースドルフ)
ハープ:マリサ・ロブレス Marisa Robles
マリナー Neville Marriner
アカデミー室内管弦楽団
Academy of St. Martin in the Fields

4〜6 グリエール ハープ協奏曲 1968年
Reinhold Gliere (1875 - 1956)
Concerto for Harp, Op. 74
ハープ:オシアン・エリス Osian Elli
リチャード・ボニング Richard Bonynge
ロンドン交響楽団 London Symphony Orchestra

7〜9 ロドリーゴ アランフェス協奏曲(ハープ版)
1983年
Joaquin Rodrigo (1901 - 1999)
Concierto de Aranjuez for Guitar
ハープ:マリサ・ロブレス Marisa Robles
デュトワ
フィルハーモニー管弦楽団 Philharmonia Orchestra



ヒコックス シティ・オブ・ロンドン・シンフォニア 1992年
Richard Hickox  City of London Sinfonia
ハープ:レイチェル・マスターズ Rachel Masters

録音状態は良い。ハープの音も良く入っており、聴きやすく、木管の甘さも充分に感じることができる。

カップリング:
1〜3 グリエール ハープ協奏曲
4〜5 グリエール ココラトゥーラ・ソプラノのための協奏曲
6〜8 ヒナステラ ハープ協奏曲
1楽章
ハープの協奏曲って、とても珍しいように思うが、これが調べてみたら〜 結構、何種類かあるのだ。
てっきりワタシは、一番有名なのはヘンデルでしょ。さては、モーツァルトか、バロック時代かな〜 と思っていたのだが、さにあらず、ウィキペディア(Wikipedia)で調べてみたら、なんと20世紀以降に多いのだ。

主だった作曲家を記載してみると〜

ヘンデル ハープ協奏曲
モーツァルト フルートとハープのための協奏曲
ライネッケ ハープ協奏曲
ドビュッシー 神聖な舞曲と世俗的な舞曲
ラヴェル 序奏とアレグロ
グリエール ハープ協奏曲
ヴィラ=ロボス ハープ協奏曲
ミヨー ハープ協奏曲
ジョリヴェ ハープと室内管弦楽のための協奏曲
ヒナステラ ハープ協奏曲
ラウタヴァーラ ハープと弦楽合奏のためのバラード、ハープと管弦楽のための協奏曲 など

で、ここでご紹介するグリエールのハープ協奏曲ホ短調は、近代に分類されるのだろうが、歌謡風フレーズで、とっても優しい。
「(らぁ〜)  らぁ〜ふぁどれらど れふぁみれ〜ら しどれ しぃ〜それみられ れそふぁみ〜れ みふぁそ」
ハープの分散和音で、弦の伴奏付きで奏でられる。
少しリズミカルになって、弾む感じになり、今度は、入れ替わって、ヴァイオリンの方が主題の主旋律を奏でて、ハープが伴奏にまわる。
まるで、映画音楽さながらではあるが、とても平明でわかりやすく、完全な歌謡風フレーズの主題である。
この主題は、ラフマニノフも、負けそうなくらいクラリネットの甘いフレーズが入ってくる。
「しらぁ〜し どれしそ どしぃ〜ど れみどそ ふぁみ〜ふぁ そらふぁれ しぃぃ〜」
「そらしど らど みふぁそら ふぁど どれみ〜 ど〜 れみれ ど」
なかなかに甘くて、センチメンタルなフレーズが奏でられる。

しかし、そこはハープだ。ヴァイオリンのフレーズと共に、執拗さはなく、爽やかにつま弾かれている。
中間部は、つま弾かれてリズミカルだし、基調となる主題としては、あまり雰囲気は変わらないが、木管が主になってみたり、ホルンの音色も重ねられていくので飽きない。
もちろん、ハープのソロも入ってくる。
テクニック的に難しいのか、どうかは、ちょっとわからないけれど〜 
ソロの部分が終わると、前はクラリネットだったのが、オーボエに変わってハープのサポートに入ってくる。
この絡みが絶妙だし、ヴァイオリンの旋律も、ハイ、甘くて巧いですねえ。

2楽章
低弦で「みぃ〜ふぁ〜しぃ みぃどら〜 れし〜 そそぉ〜みどぉ〜」という調べがある。
そこにハープが、主題を「そみっ どらっ ふぁれっ そみっ そふぁらどし みそ しそ みど らふぁ れし れどみそ・・・」
と、つま弾いていく。
CDジャケットのイラストのように、夕暮れどきの甘い調べのようで、この主題が変化して変奏曲風に展開していく。
凪のように静まったり、さざ波が立って、風が吹き、速まっていったりする。
また、木管のあったり、ホルンの柔らかな響きが入ってきたり、微妙なグラデーションのように色彩が変化する。
オケが主になる場面のあれば、オケが伴奏になる場面もあり、ハープは、ピアノのように、また、オルゴールのように、伴奏にまわていたり、主になってみたり・・・
揺らめく布が、表になったり裏になって、風にそよいでいるようで、なにより、その柔らかな余韻が、とても心地よい。
また、変奏曲かな ティンパニーが入ってくる場面なんぞ、ハイドンのようだ。
このあたりの変化は、なかなかに、見どころ(聴きどころ)となっており、飽きないっ。

3楽章
「どふぁそれ れそらみ れふぁしそ しそ しそ しそ ・・・」
「どっ ふぁっ そっ どぉっ らぁ〜そふぁそど れふぁみれ みふぁそど れぇ〜そどぉ〜」
この楽章は、楽しげな民族舞踏って感じで、軽やかに、スキップをしていくような感じで、草原を駆け巡る。
細やかなハープの音色が、綺麗な装飾音で、速いパッセージで弾かれている。
トリルが、とっても可愛いっ。
オケの方も、同じ歌謡風フレーズをヴァイオリンで奏でて、また、木管が色彩をくわえていく。
この主題の雰囲気は、カリンニコフの交響曲のようでもあり、とっても、清潔で、爽やかで、清々しいっ〜
同じ主題を使い回しているし、木管やホルンや、「どふぁそどぉ〜 どふぁそどぉ〜っ」と、分散和音をアルペジオで奏でていくところは、平明だが、切なくなるような、それでいて暖かみのある、ほっこりしたシアワセ感の残す、クライマックスを描いていく。

ホント、主題は、シンプルで、口笛を吹いているかのような、のびやかがある。
で、ハープの音って、心が癒やされるよなあ〜と、しみじみ感じた。
超絶技巧って感じの、そんな難しい場面があるようには感じなかったけれど、オケのなかで、ハープって、彩りを添える役回りだけだと思っていたが、こうやって、主になりえる舞台を作り、役回りの変化を巧くすると成り立つものなのだ。
まあ、確かに、47本の弦だというから、結構音域は広いと思うが〜
奏法的には、4本×2本の手で、指でつま弾くスタイルと、グリッサンドぐらいなのだろうと思う。
ギターの協奏曲と同じように、音量にも限界はあるだろうし・・・協奏曲って難しいだろうとは思うが、グリエールのハープ協奏曲は、なかなかに楽しめました。
日本人のハープ奏者の方も多いので、もっとコンサートでも取りあげていただければ〜嬉しいと思います。

1968年 オシアン・エリス ボニング  ロンドン交響楽団 Dec ★★★
1992年 レイチェル・マスターズ ヒコックス シティ・オブ・ロンドン・シンフォニア  Chandos ★★★★★
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