「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

ラロ スペイン交響曲
Lalo: Symphonie Espagnole (Violin ConcertoNo.2)


ジョシュア・ベル デュトワ モントリオール交響楽団 1988年
Joshua Bell  Charles Dutoit
Orchestre Symphonique de Montreal
(Montreal Symphony Orchestra)



録音状態は良い。線が細めで爽やか。アクやコクが欲しい人には向かないが、朝の爽快さを残した色彩感がある。
カップリング サン=サーンス ヴァイオリン協奏曲第3番、ラロ スペイン交響曲
1楽章
「どどっそぉ〜 どどどそぉ〜 みっ みみ みっみみ みみしっらっ」
「っしっし ふぁ っしし ふぁぁ〜っ」
「れふぁ れふぁ〜 れ〜〜 み〜ふぁらぁ〜 そぉ〜 らそふぁぁ〜」
ラロのスペイン交響曲って、冒頭のインパクの強烈さに、思わずのけぞって引いてしまうのだが、それ以降に続く、スペインの香りというか匂い。スパイシーな部分が魅力的でもある。
まあ。言ってみれば、タバスコやサルサのような刺激的な、重い〜辛い〜 刺激的なメキシカンな料理を
食べたみたいな気分になるのだが・・・。

ベルさんのヴァイオリン、デュトワさんのオケは、どちらかと言えば、そのスパイスの部分が、少しまろやかだ。
まっ、さほど強烈にクサクなっていない。
ひとくちで言ってしまうと、綺麗さっぱりに仕上がっていると言うことになるだろうか。
でも、丁寧なんだと思う。
線は細めだけど〜 綺麗なことは綺麗で、ヴァイオリンの優美な曲線を描いてくれる。
ワタシが以前に聴いたヴェンゲーロフさんのヴァイオリンのように、気迫や勢い、強烈な匂いのあるド迫力で押してくるパワーはないのだが、品が良いというか、しなやかさが勝っている。
高音域へ昇っていく、昇っていくパワーは、ごつさより、やっぱ柔軟性で、しゅる〜っと優美な身のこなしで、すり抜けていく感じだ。
デュトワさんのオケと共に、フランス系と言う例えで良いのかどうかは、わからないが、流麗なのだ。
ホント、瑞々しく〜 水しぶきが掛かってくるような感じで、ラロっと言えば、重いなあ。という、しかめっ面させられるような重さは、みごとに華麗に、軽妙さに変えているし、繊細な音楽になっている。
これは、これで、やっぱ〜 みごとだと思う。
自分を生かす心得でしょうかねえ。テクニックだって、みごとだと思うし〜 感心しちゃった。

2楽章
平安なフレーズで、囁きさえ聞こえて来そうな繊細なフレーズになってて、
「そど〜しら そぉ〜 みふぁ〜み れれ〜 れみふぁそらし どれみ そっそ〜」
恐ろしいほど、優美で、午睡のまどろみ風になっている。
う〜ん。やっぱデュトワさん。流麗すぎるほど流麗で、品があるなあ。
線の細いヴァイオリンの音色が、清潔で清楚に奏でられてて、すごぶる美しい。
天上の音楽のように〜 ひえぇ〜 ラロって、こんな優美で、柔らかく、優しかったっけ・・・。と、驚いてしまった。
もののみごとに、優しいフレーズに歌われている。この楽章が、優美な歌謡風になっているんですねえ。
ワタシ、スペイン風の民謡フレーズだと、癖のあるモノだと思っていたんですけど。
しかし、これで良いのかどうか? 
う〜ん。熱気のある演奏ではなく、スパイスの抜けた優美さなんですけど。
アクの抜けた感じで、アクセントが、さほど強調されず、スペインの民族性というか、スペインのくささがぬけてるんですけど。オケの木管 ピッコロなのだろうか、恐ろしく優美な旋律で、まいっちゃった。

3楽章
この楽章は、スペインまるだし〜というフレーズの多い楽章だ。
「ど ふぁ〜 そらどふぁ れどふぁ〜 そらどふぁ〜 ど〜ふぁらどふぁ〜」
↑ (音が重なって出てくるのと、コブシ回しのあるフレーズ。音は、メチャ怪しい。)
まっ ピチカートもあるし、技巧的に難しそうだが、メチャ格好の良い、男前の楽章である。
で、ワタシ的には、大好きな楽章なのだが、ふふふ。男前というより、優男風になっている。
でも、なかなか魅力的で、魅惑的、母性本能をくすぐられちゃう感じがする。

オケ全体の低音が重くなく、空気感は薄め。ヴェンゲーロフさんのヴァイオリンが、まるで闘牛場のマタドールだったのと、えらい違いだ。
ベルさんのヴァイオリンは、女性的だし、オケも流麗で華麗。
あまり激しく踊らないフラメンコを見ているようで〜
足を、ドンドンっとシコを踏んだ踊りではなく、衣装も軽めで、可愛いレースが付いたドレスを翻しながら踊っている感じがする。まあ。これが良いのかどうか、やっぱりスパイスは、あまり効いていないんだけど。
綺麗さと言う点は、点数高いんですけどね。アクのない、綺麗さってところなんですけど〜 
う〜ん。アクの強い演奏が好きな方には、どうも、軽すぎるでしょうか。

4楽章
荘厳なコラール風のフレーズが、オケによって奏でられる。
「しぃ〜み みれど し〜どし〜  しらそ ふぁそみ みぃ〜れ み〜」
「れみ〜れ れみ〜れ れそらし らそふぁ みふぁそ みぃ〜れ〜」
金管の柔らかい二重奏のコラールで、明るめの音質で、しかし、恭しく鳴っている。
哀愁の漂いと、息づかいの長さが特徴だろうか。で、ヴァイオリンよりオケが前半な主体となっている。
ヴァイオリンの「しぃ〜 み〜 れらっし〜 し〜らしどれみ れらっし〜」
ハイ、女性が教会前で、泣き崩れているような・・・。よよよ〜って感じなんですけど。
緊張感はあるものの、かなり、長いフレージングで、たっぷり気味。しかし、柔らかさと、明るさを保っており、聞き入ってしまう。

5楽章
これは、また軽やかで華麗、軽妙さがあって、ノー天気風に聞こえてしまうが、いやいや色彩的で、開放的で、のびやか〜 これは、気持ちが良い。
オケの色彩が、キラキラしてて、木管と弦の明るさが、一気に花開いている。
「ふぁそっそ らら しっし〜 どれみっみ れどれ どっし〜」
柔らかい陽射しのなかで、ラテン的というよりは、木漏れ日あふれる草原のような、爽やかさ。
光と影というよりは、中庸的で、優しい陽射しなのだ。
コントラストの強さよりは、しなやかさ勝負だろうか。軽やかだが、艶があり、のびやかで、清々しいっ。
もう 楽しげで、楽しげで〜 カラダイッパイに表現されている。
ヴェンゲーロフさんのヴァイオリンが、豪快で繊細という二面性を持っているのと比べると、あまりにも流麗で、咳き込んでしまうほど、軽やかだ。(いやいや、良い意味で〜)

スペインというよりは、やはり南欧ではあるが、光と影というコントラストの強さではなく、柔らかい陽射しがたっぷり注がれた草原地帯のような爽快さがある。
色彩的ではあるが、煌めき感よりも、陽射しは柔らかく、朝露が残っている朝のような光の強さだ。
この影の部分が欲しいという方には、ちょいと違っているとは思うが、流麗さはピカイチだし、これはこれで主張の強い演奏ではないだろうか。 
ヴェンゲーロフ パッパーノ フィルハーモニア管弦楽団 2003年
Maxim Vengerov  Antonio Pappano
Philharmonia Orchestra of London

録音状態は極めて良い。力強く、しなやかで、エキゾチックな演奏。男の匂いもプンプンしている。カップリング:サン=サーンス ヴァイオリン協奏曲第3番、ラヴェル「ツィガーヌ 演奏会用狂詩曲」
1楽章
「どどっそ〜 どどどそぉ〜 みっ みみ みっみみ みみし〜」
パッパーノさんの振るオケの「バンバンばーん バババ バーン」 この迫力に、まず度肝を抜かれる。
こんな、ごつくて〜 しなやかで〜 強烈な音量で、厚くるし〜っ。
でも、みごとにやられてしまった。その直後に出てくる、ヴェンゲーロフさんのヴァイオリンの音。
「ししふぁ〜 し〜ししふぁーっ」 いきなり高音にあがっていくのだが、この音がすげ〜っ。
ハイ、完全に冒頭数秒でやられました。
メチャ メリハリのついた厚みのあるオケで、ティンパニーの響きが充分に入っている。
節回しが独特なので、何度聴いても飽きないのだが、このパッパーノの振るオケでは、低弦とティンパニーの低い音域と、ヴァイオリンの高音域の線と、ブラス部分のド迫力 このバランスが凄い。
余韻も適度にあって、響きが充分。録音も良いんで〜 文句がつけられない。
で、ヴェンゲーロフさんのヴァイオリンの力強いこと。
太く響くくせに甘いっ。歯切れも良いし、小股が切れ上がって、男臭いことこのうえなし。
躍動感というか跳躍感というか、それが抜群で、音型が、びよ〜んっ と、飛んでいくところなど、鳥肌が立ってくるほど。これ、肌に染みこんだリズムだと思うんだが。
「れみふぁ〜みれど〜 れみふぁ〜みれみど〜」
「そっそふぁ そっそふぁ・・・」ハバネラ風のところも、踊りまくり。

2楽章
スペイン風の民謡のフレーズなのだが、う〜ん。音色の艶やかさ、明るいのと、軽さ、瑞々しさ。
リズムと共に、この音色にまいった。この激しく動く歌い回しには、なかなか付いていけないのが実情なんだよねえ。だって、猛烈に速いんだもん。しかし、3連符のパッセージを聴いているうちに、異国情緒に誘われ、熱気が自然に湧き起こってくる。
この旋律の独特さは、私的にはDNAが入っていないので〜 なんとも言えないのだが、もの凄いぶっ飛びなのだ。「れ〜れ れどれみ〜 みみ〜し しらしど み〜っしどしふぁ〜」
この小節まわしには、ついていけないーっ。でも、快感っ。

3楽章
「ふぁふぁふぁ ふぁっ ふぁっ ふぁっふぁっ」
「ふぁふぁどっみれ どっれし  しっれ ふぁそふぁみっれ みっみっ」 (フルート)
「ふぁふぁどっみれ どっれし  しっれ ふぁらふぁみっれ みっみっ」 (フルート)
「しっしふぁらそ ふぁっそふぁみふぁ そふぁみふぁ どみれどし・・・」
ここは闘牛場か。闘牛士でも出てくるのかと思うほどの、厳めしいフレーズでありながら、ファンファーレのように流れてくる。う〜 これじゃ、まるで、牛と睨み合っている感じがする。
華麗なるマタドールが、ポーズを決めて立って、マントを振りかざしているようだ。この火花が散った光景というか、殺気立っているというか、情熱という言葉にはまらないほど、対峙したパワーを感じる。
和風的に言うと、ギリギリ〜っと引き絞った弓のようだ。
しかし、この楽章 3連符の独特のリズムで、ぎくしゃくしており、このリズムに、体が、なかなか反応してくれないのが実情である。
演奏的にどうなのか、このリズムが体に染みつかないと、これじゃー オケがどうの、ヴァイオリンがどうのと、言える筈もないだろうに〜と、自分でも思う。でも、何でも聴いてみないと、身に付かないことも確かだ。
ホント、私的には、ヴェンゲーロフさんのヴァイオリンは、マタドールが牛を対峙して振りかざす剣のようであったり、翻すマントのように思える。この空気感には、憧れるんだけどねえ。
キリキリするような緊張感を、反面覚悟しておかなければならない。
4楽章
「しし〜み〜み れ〜どし〜 どし〜 しらそふぁそみ み〜れみ〜」
この楽章冒頭は、荘厳なコラールになっている。まるで私的には葬式に聞こえるんだけど・・・。
悲痛な面持ちで、葬儀に参列しているようだ。
オケの後、このフレーズをヴァイオリンで奏でていく。
オケとヴァイオリンの荘厳な和音が展開する。ここは、う〜ん聴きどころになっているし、ソロになると、哀愁が漂い、思い出の美しさに浸りきるフレーズに揺られる。
頂点に達してから、ヴァイオリンが転がり落ちてくるのだが、ここは悲しいっ。
こんな力一杯の緊張感で、張りつめてこられるフレーズは、う〜 辛くなってくる。涙なしでは聴けないんだが、ヴェンゲーロフさんのヴァイオリンは、こてこてにならずクールに泣かせてくれる。
理性が勝っているのかなあ。でも、ギリギリの線だと思う。

5楽章
この楽章は、先の楽章とうってかわって開放感にあふれている。
鐘が遠くで響き、「ふぁらど しそふぁらど ふぁらど しそふぁらど」を、繰り返して展開してくる。
フルートの明るさが、ちょっぴり影を落としながらも陽気になってくる。
「ふぁそっそ らら しっし〜 どれみっみ れどれ どっし〜」
「ふぁそっそ らら しっし〜 どれみっみ れどれ どっし〜」
「しそ どれみみふぁそ〜 みみふぁそそらし〜っ」
その後、ソロが、飛び跳ねて、すごい〜 どんな風に指と弓が動いているのか想像がつかないほど。
音型が、びよ〜んと、飛んでいるのだが、メチャ華麗で、すっと移動しており、高音のすごーい綺麗なフレーズが続いている。陽気でいながら、豪快でもあり、陰影がついている。
最後、フレーズが、アクロバット的に華麗にさばかれて、華やかなコーダを形成して終わる。

う〜ん。このラロの「スペイン交響曲」 光と影の陰影が深く彫り込まれているのと、豪快であり、繊細であり、華麗でもあり。表裏一体化した二次元的な世界が広がっている。
う〜ん。ひとくちで言うには難しいのだが、ヴェンゲーロフ盤では、メリハリがついており、華やかで、エキゾチックで、男臭い。聞き及ぶところでは、ヴェンゲーロフさんは引退するんだとか。う〜 もっと聴きたかったなあ。惜しいっ。
1963年 グリュミオー ロザンタール ラムルー管弦楽団 Ph  
1980年 チョン・キョンファ デュトワ モントリオール交響楽団 Dec  
1980年 パールマン バレンボイム パリ管弦楽団  
1984年 ムター 小澤征爾 フランス国立管弦楽団 EMI
1988年 ベル デュトワ モントリオール交響楽団 Dec ★★★★
1989年 デュメイ プラッソン トゥールーズ・カピトール国立管 EMI  
2003年 ヴェンゲーロフ パッパーノ フィルハーモニア管弦楽団 EMI ★★★★★
所有盤を整理中です。

「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

Copyright (c) mamama All rights reserved