「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調&ニ短調
Mendelssohn: Violin Concerto in E & D minor


ミルシティン アバド ウィーン・フィル 1972年
Nathan Milstein  Claudio Abbado
Wiener Philharmoniker
(Vienna Philharmonic Orchestra) 



録音状態は、まずまず。古き良き時代のまったり感があり、驚くほど優美で華麗。貴族的な時代を彷彿とさせる。
カップリング:チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲

1楽章
ナタン・ミルシテインさんのヴァイオリンは、かなり甘美で優美。
嫌みなく、温かさも感じられるが、結構、クラシカルという感じがする。歯切れ良く、さらり〜と、幾分冷たい感じで弾かれることが多いんだが、良い意味で古典的。
流れるような息の長い、たらたらたら〜っと、フレーズが続いていく。
はれっ ここで流れるんだ。と驚かされるシーンが多い。
小節が強くマワルという感じでもないし、なーんか、メリハリが足らないなあ。と思う。
活きの良いフレッシュさは皆無というか、上品なのだが、パンチが足らないし。う〜ん。フワフワしすぎてて、どうもワタシの好みじゃない。

「たった た〜 たった た〜」っと、歯切れ良いリズミカルなフレーズも、するする、すべすべと、滑っていく感じだ。まるで、トコロテンのような感覚で、切れ目のない、プワプワした弾力性のある滑らかさだ。
でも、さほど嫌みは感じないんだけどね。
これがヴァイオリンの貴公子と言われる所以か。ちょっと、柔らかすぎて、キザっぽい柔らかい物腰だ。
メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲なので、優美で良いように思う。でも、眉にしわを立てるほど嫌みには感じないが、オケが、なんとも貧弱な感じがする。う〜ん。ウィーン・フィルなんだけどなあ。深さが〜 コクが〜ちょっと薄いし、なんたって緩い。まあ。逆に言えば、バックに黒子に、遠慮がちにしているってことなんだろうか。ゆったり、ヴァイオリンに合わせるような感じで、覇気が感じられない。
ミルシテインさんのヴァイオリンは、小刻みにシャキシャキ、シャコシャコ、カシャカシャと動くフレーズや、ソロ部分は、やっぱり聴き応えあり。特に、高音域の糸の張りつめた、メチャ高い音がみごと。
最後には、段々スピードアップして、音が揺れ踊るようなテンポになってくると、思わず息を呑んでしまった。うむっ。やっぱ、すげっ・・・。
70年代初頭の録音だし、最近のテクニシャンの演奏に、すっかり耳が馴れちゃっているのだが、幾分、昔風な演奏って感じがしないでもないけど、やっぱ、スゴイ演奏家だったんだ。

2楽章
ミルシテインさんのヴァイオリンで、この2楽章を聴くと、メチャゆったり〜優美で、まるで、ヴィスコンティの映画を見ているかのような、貴族的な雰囲気がしてくる。
他の演奏家では、う〜ん。こんな雰囲気は出ないんじゃーないだろうか。まるで別世界だ。
ちょっぴり退廃的なムードがあり、ニヒルで、苦みもある甘さ。
セクシャルな匂いさえ漂ってくる気がする。幻惑的で、蠱惑的で、夢想的。
決して、肉感的でもないし、汗くさくもない。幾分クールさや理知的な雰囲気を持っていながら、人を誘って、とろけさせちゃう。
女性の演奏家じゃないんだけど、う〜ん。このミルシテインさんの持ち味なんでしょうねえ。
情感が籠もりすぎて息苦しいわけでも、思い入れたっぷりでもなく、そのくせ、歌う。
歌いっぷりは優美で、豊かなのだが、さりげなく一歩足を引いた、物腰の柔らかさで、目線はクール。
息がかかるほどの距離感がありながら、相手にあわせたかのような息づかい。
う〜ん。高貴だ。と言えば、ひとくちで言えるのだろうけど・・・。
邸宅の厚いカーテンの後ろで、黙って、深々と座って見ているかのような・・・。
音楽のくせに、時間が止まったかのような演奏で、広い空間のくせに、暗めの部屋の中で、聴いているような感じがする。

3楽章
止まったような時空間から、いきなり、ポンっとはじき出されて3楽章が始まる。
弦をつまびくところは、リズミカルだけど、さほど身振りは変わらず。品がありすぎるほど、あって〜民族調で、小節まわりの激しいフレーズが多いのだが、1楽章同様に、レガートがかかっている。
そのくせ、軽やかさはあるのが、とっても不思議な感じ。
ヴァイオリンのソロは、ゆったりした、穏やかなフレーズに、なればなるほど、この演奏家の良さが出るようで優美な時代を閉じこめた世界で、生きている芳醇さが感じられる。
古き良き時代の優美さ。華麗さ。
最後のオケとヴァイオリンの掛け合いなど、う〜む。なんと優雅で、軽やかで上品なワルツステップのような感じがしてくる。絶句っ。

せわしなく、あくせく働く時代にあって、なんとも〜 優雅なひとときを過ごさせて貰える1枚だ。
時代錯誤だと感じつつも、これもオツなもので、驚きつつ、すっかり昇天させられた。
休日、穏やかな間接照明の部屋で、ゆったり聴くのが良いかも。傍には、ブランディーか、ちょっと甘めのワインでもあったら良いでしょうか。浸りきって〜まどろんで〜
もちろん通勤の車の中で聴いても良いですけど。せせこましい車内では似合わないかもしれません。笑

ミンツ アバド シカゴ交響楽団 1980年
Shlomo Mintz
Claudio Abbado
Chicago Symphony Orchestra

録音状態は良い。たっぷりと歌うわけではなく、さりげなく爽やかな歌い方で、抑制の効いた演奏。
カップリング:ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番

1楽章
メチャ有名な冒頭から、線の細いヴァイオリンの音色が出てくる。
「ししし〜そみみ〜しそふぁみどみし〜 しどしらららみ〜し どしららら〜み」
ミンツさんのヴァイオリンは、透明度が高いというか、線のぴ〜んと張った若いフレッシュな感覚が気持ち良い。古い年代のこの楽曲は、どっしりしているのだが。
「そしれふぁ そしれふぁ そし〜 (しっし そ〜) そしれふぁ そしれふぁ〜 そし〜」
この時20歳前半だったと思うのだが、妙に落ち着いており、線が細めなくせに、安定感がある。
穏やかな弾き方で、特に高い音域でののびが気持ちよく、妙にジメジメしておらず爽やかで、のびやか、揺れが大きくならずに、全体的にすっきりしている。
テンポは、ゆったりめ。ヒステリックにならないところや、妙に歌い回しをシツコクしていないところが、意外と心地良く感じられる。
もっと強引に、大仰な抑揚がついている盤もあるのだが、一聴すると普通っぽく聞こえるかも。
でも、か細い声で、オケの「どどど〜らふぁふぁ〜 ししし〜そみみ〜」のフレーズに乗って、細かく動いて気持ちが良い。
ダイナミックでもないし、テクが凄い。って驚くようなところもないのだが。なんだろう。
妙に落ち着いているというか、日常的な風景の日だまり的な雰囲気がある。緩いわけでも、テンションが低いわけでもなく、さりげない。
大音量で、ねちっこく、歌いっぷりがみごとってワケでもないし、いたって普通っぽい1楽章だが。
聞き込むと品があるし。すーっと、なにげない風通しのよい、肌触りも快適さがある。
あまり、この楽曲で歌い込むと、ど演歌風になってしまうかな。その頃合いが難しいところ。
旋律が綺麗すぎるのでね・・・。ミンツさんのヴァイオリンは、爽やかである。

2楽章
ゆったりした美音で、この楽章は聴き応えがある。
1楽章より聴き応えがあり、アプローチとしては、この楽章に焦点があたっているかもしれない。
「み〜ふぁれしら〜そ ふぁみ れらふぁ〜み〜れ」
「そどみれ〜しら そどみれ〜しら そどみそ〜みれどらふぁれ〜」
「み〜ふぁれしら〜そ〜 ふぁみれらふぁ〜ふぁ〜み」
特に、高音域での優しい歌い方が、さりげなく、抑揚をたっぷりにしては歌わない。
テンポをゆったり、間合いを充分にとっており、意外なほど緩やかである。
でも、この2楽章は、儚げで、少し悲しみにくれている、そんな風情が描かれている。
メンデルスゾーンって、幸福で、満ちあふれた・・・と、思いこんでいたのだが、このミンツ盤を聴いていると、ちょっと違う側面を見た感じがする。
「それれ〜どしら〜 ふぁふぁ そらそ〜 ふぁふぁ ふぁ〜み ししし〜ら ふぁみふぁみ」
と、細かく揺れているフレーズでは、ひとり、静かに泣いているような、憂いのある声に聞こえる。
「みみみ〜れ ららら〜そ ふぁみふぁみふぁみ・・・」 
アバドのオケも、悲しみを込めて押し殺しているかのように鳴っている。こんなに、抑制された悲しみが詰まっていたとは知らず。思わず唸ってしまった。
いったい今まで、私は、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲で、何を聴いていたのだろう。

3楽章
「みみみ〜しどら みみみ〜ふぁ〜みふぁそ〜」
物憂げな秋色に染まった空をみあげて、なーんか寂しくなってしまう。なんて寂しい音色なんだろう。
この寂しげな風景から、脱皮するかのように変化するのだが、これが3楽章の数小節で変わる。
これ以降は、弾んでいく。
跳躍は決して大きくないが、かなりキュートで可愛いっ。
クラリネットの音色と絡み合って、子供たちが遊んでいるような雰囲気が出ている。
「そどどらら〜ど ふぁ〜みれど〜 ふぁ〜そそら〜そ」 
室内楽的に響いているように聞こえるし、大きな声でたっぷり歌わないところが、かえって新鮮で、さりげないスマートさが、小鳥のように鳴っている。
もちろん小技がタップリ入った楽章なので、聴きどころが多い。オケも大柄ではなく、引き締まった端正な鳴り方で、ミンツの美音を損なわない。
ちょっぴり、民族風に崩しても良いのではないかな〜と思う部分もあるのだが、1楽章から聞いてくると、いやいや、このまま爽やかな世界に閉じこめておいて正解なのだろう。
聞き慣れてしまったこの曲を聴いていると、やっぱり、豪快さも欲しいのも正直なところだが、こういうアプローチもあるんだな。と気づかせてくれたことに感謝。
1959年 ハイフェッツ ミュンシュ ボストン交響楽団 R  
1960年 グリュミオー ハイティンク コンセルトヘボウ Ph  
1969年 ズーカーマン バーンスタイン ニューヨーク・フィル SC  
1972年 アモイヤル グシュルバウアー バンベルク交響楽団  E
1972年 ミルシティン アバド ウィーン・フィル G ★★★★
1974年 コーガン マゼール ベルリン放送交響楽団 Eu
1980年 ミンツ アバド シカゴ交響楽団 ★★★★
1980年 ムター カラヤン ベルリン・フィル
1981年 チョン・キョンファ デュトワ モントリオール交響楽団 Dec
1987年 ナージャ シュォーツ ニューヨーク室内交響楽団 EMI
1988年 シャハム シノーポリ フィルハーモニア管弦楽団
1990年 ムローヴァ マリナー アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ Ph
1993年 ヴェンゲーロフ マズア ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 T
2002年 ムローヴァ ガーディナー オルケストル・レヴォリュショネール・エ・ロマンティーク Ph
所有盤を整理中です。

「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

Copyright (c) mamama All rights reserved