「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

ラヴェル 左手のためのピアノ協奏曲
Ravel: Piano Concerto for the Left Hand


ラヴェルの「左手のためのピアノ協奏曲」(作品82)は、第一次世界大戦で右手を失ったピアニスト、パウル・ウィトゲンシュタインの委嘱を受けて作曲されたものです。
ウィキペディア(Wikipedia)を元に記述すると
ピアノ協奏曲ト長調と並行して作曲しており、1930年に完成し、翌年初演されています。

単一楽章の3部構成で、オーケストラパートをピアノ編曲した自筆譜の表紙には、「混じりあったミューズたち」(musae mixtatiae)と記されているそうで、叙情的な音楽、ジャズ、スケルツォ、行進曲など、異なる様式の音楽が並置された性格を示唆したものとのこと。
ニ長調 4/4拍子で、コントラバスとチェロの和声とコントラファゴットの旋律という超低音で始まります。
管弦楽が、高揚し、最高に盛り上がったところで、ピアノが登場し、華やかなカデンツァを奏します。
全体的に、1部は可憐なイメージで、2部はジャズ的にピアノが演奏されており、3部では、1部の主題が回帰するものの、すぐに、ピアノの非常に長いカデンツァになります。
ラヴェル独特の精緻な技巧が、左手のみで演奏され、最後は2部の動きが再度繰り返され、瞬時に終わります。

とても重厚な出だしであること、和音の美しさ、ジャズの雰囲気など多彩な楽想が、わずか20分弱のなかにパッケージされており、ゆったりと甘美に演奏されると、うっとりします。とても左手だけで奏でられるとは思えないほど。
ちなみに、ウィトゲンシュタインが委嘱した作品は、他に、プロコフィエフのピアノ協奏曲第4番、ブリテンのディヴァージョンズ、R・シュトラウスの家庭交響曲余録があるそうです。

  フランソワ クリュイタンス パリ音楽院管弦楽団 1959年
Samson François  André Cluytens
Orchestre de la Société des Concerts du Conservatoire



録音状態は、59年にしては良い方だと思う。昔からの名盤中の名盤とされており、強烈な冒頭部分に圧倒される。
カップリング:ラヴェル 左手のためのピアノ協奏曲、夜のガスパール(水の精、絞首台、スカルボ)
まず冒頭、超低音の蠢きが聞こえてきて、もごもごした雰囲気が、不気味なぐらいだ。
これにまず驚かされる。

で、「しぃ〜ふぁどそぉ〜 ふぁらし〜 ふぁどそぉ〜 ふぁらし〜ふぁどそぉ〜」というボリュームアップしてくる弦の響きのうえ、さらに乗っかってくる軋んだ金管の「みそふぁみ〜みそそふぁみ〜」という絡みの高揚感たるや、猛烈だ。
ギャフンである。ごぉ〜っという響きを持った、高揚感なので、ものすごいインパクトがある。
この音は、軋んだ破裂したような醜い音なのだが、すごい軋みと叫びなのだ。
で、そこに、凄い音量のピアノが、ガツンと割り込んでくる。
「し し〜 らふぁら しふぁら し〜 らふぁらしふぁらっっ」
凄い険しくて硬い打音で、ガツンっと一発ごつい響きのパンチをくらった感じで、う〜ん。すごい。
圧倒されて、綺麗なカデンツァだとは言い難いのだが、これだけ、暗くて硬い叫びを聞くと、のけぞってしまいそうになる。

それがようやく終わると、明るさを取り戻してくるのだが、そこから以降は、晴れやかでのびのびと雰囲気が変わるし、世俗的な喜びのような華やかな世界となる。
ジャズの要素も絡んでくるのと、ほっとした安寧の世界が広がってくるのだ。
この世界感に、ものすごい差があって、それを見事に描ききる力量には、圧倒される。
これは、やっぱ、昔からの名盤だと言われる所以かしらん。見事だと思わざるを得ない。
キラキラした、ほっとした緩やかなフレーズに変わるときや、洒脱の効いた楽しさは、カラダいっぱいに表現されているし、行進曲のようなフレーズには、手拍子を打ちたくなるし〜
あれも、これも、やっぱり、冒頭の暗くて硬い、縮こまった世界を、極めて明瞭に描いているからなんでしょうねえ。中途半端にやらない。ダイナミックな演奏だ。

録音状態は宜しくない。だって、50年代の録音ですからね。
しかし、この世界は、猛烈で恐ろしいですよん。第一次世界大戦で、右手を失ったピアニスト ウィトゲンシュタインさんの恨みと怨念、憎悪も入っているのかな〜って思うのと、戦争が終結した平和を祈るような気持ちも存分に入っているのかな。っと感じさせられた。
ピアノのテクより、人間の情感の爆発みたいなのを感じて、ハイ、圧倒されました。

  ベロフ アバド ロンドン交響楽団 1987年
Michel Béroff  Claudio Abbado
London Symphony Orchestra



録音状態はまずまず。いまいちヌケが良くない。重々しい演奏で、ラヴェルというより、カッチリしすぎた演奏で、ドイツ臭くて、鬱々している。
カップリング:
1〜3 ラヴェル ラヴェル ピアノ協奏曲ト長調
4 ラヴェル 左手のための協奏曲(ピアノ:ベロフ 1987年)
5 ラヴェル バレエ音楽「ジャンヌの扇〜ファンファーレ〜」
6 ラヴェル 古風なメヌエット
7〜10 ラヴェル クープランの墓(管弦楽版)

冒頭、低弦と、コントラファゴットが、モゴモゴ〜っと、どす黒くうねってくる。
「どどぉ〜しら〜 どどぉしら〜 どどしらぉ〜 みそし〜らぁ〜」
「どどしら〜 み〜そ ふぁみみ〜 そふぁみ そそふぁ〜み どどしらぁ〜どどどしらぁ〜」
スターウォーズのダースベーダーが、格好良く登場するのとは違って、暗黒の世界だが、どこか、火山の溶岩ドームのような粘りけがある。コントラファゴットだと思うが、すっげ〜 暗い。
音にならない音という感じ。

「れふぁ〜 らし〜 れふぁ〜 らし〜 られ〜 どそらぁ〜」
「どみ〜 そら〜 それぇ〜 どそら〜」「どみ〜 そしぃ〜 ふぁどそぉ〜 ふぁどそ〜」
ヴァイオリンの明るい弦の音とノビが出てきて、そして金管の色がついてくると、一気に晴れる。
この辺りの音の広がり、一気に広がる開放感、太陽がまるで昇ってくるような楽器の使い方だが、上に伸びていこうとするフレーズなのに、どこか足取りが重い。
カラフルな音ではあるのだが、うっ 重い。なんだか音が混濁しているような気がする。
せっかく、昇ってきて頂点を描くところで、抜けきらない、広がり感が少ない音で〜 あららぁ。
足を引きずっているかのような粘りけと重さがあり、「どぉ〜しぃ〜 みそら しぃ〜」「らぁ〜」と響く金管の音と、シャーンっという響きが、ヤスモノの金属っぽい。

ベロフさんのピアノは、出だしが、オケの響きの方が重く、響きに重なってしまってて、聞こえづらい。
せっかく格好良く出ようとしているのに、音が聞こえないなんて〜 なーんて、もったいない。
特に、高音の音が、粒立ちよく叩かれておらず、聞こえない。
オケの音量に負けないように、頑張っているって感じがするのだが、う〜ん。確かに、ガツンと出てくれないとダメなんだけど、オケが重すぎて、また、ピアノのゴンゴンした低音の響きが硬い。
総体的には、意外と硬くて、重くて、がっしりしているという感じだ。 テンポも遅め。
「れれっ〜 どしれぇ〜 どしれぇ〜 どっらっ ふぁ〜 そっらし〜」
「みみっ〜 れれ どっみ〜 れれどみ れれどみ〜 れど しっそ〜」

音の間合いは面白いが、ところどころ、はっきりしない音があったりする。左手1本だが、右手の役割を果たすべきフレーズが、もっと強調されても良いんじゃーないかと思うんだけどな。 ちょっと主となるフレーズが、低音と同じ質感をもっていて重い。 パラパラパラ〜っと展開の速いところは、スピード感があって、とっても綺麗に弾けている。

オケの鳴りっぷりは、う〜ん。どこかアラっぽい。
「そっらぁ〜 そどっ しっふぁっ〜どみそぉ れれ〜みどっ ふぁ〜」というフレーズは、音が、まろやかではなく、粗野で綺麗な音が出てない。ティンパニーには勇壮さがあるのだが、丁寧じゃーないよねえ。
パパパっ・・・と金管のパッセージの部分も、なんかねえ。粗い。

それに、ピアノも、粒立ちがハッキリしないなあ。
ペダルで濁ってしまい、まるで、濁った水のなかを歩いているような気分になってしまう。指が立って、カチンと叩かれているのだろうか。
ソロ部分も、綺麗だが、明るさに欠けており、鬱々してて、どこか傷まみれで歩いているような気分だ。録音状態はまずまず良いのだが、ヌケがよろしくない。明晰な録音とは言い難く、クリアーではない。
少しデットかな。
ミリタリー調の部分は、「しらそ ふぁみれ どっ」「どふぁそ らしら らっそ しっそ らっそ しっそ・・・」というフレーズは、軽快ではあるが音が暗い。ちっとも、楽しくならないんですけど・・・。

ラヴェル特有の明るい色彩感あふれる音で、演奏されてなくて〜 ワタシ的には期待はずれ。
この楽曲は、グロテスクさも持ち合わせてはいるが、洒落っけのある踊るフレーズもあるわけで、全体的に足取りが重いのは、どうかなあ。 ジャズっぽい即興性のあるフレーズもあるんだし。もっと洒落てても良い筈だと思うんだけど。
モゴモゴ、鬱々してて〜 間合いと、うえに伸びる音、長く伸ばす音に、弾力性が無いって感じがする。ピアノにもオケにも、ノビ感、柔軟性に欠けているかもしれない。

「ふぁふぁ ふぁみれぇ〜 ふぁふぁ ふぁみれぇ〜」というフレーズの裏で、タッタ タッタ タッタ・・・と、打楽器的に使われているシーンもあるのだが、音が弾まないんだよね。
いろんな要素が詰まった、おもちゃ箱みたいな楽曲だが、透明度は高くないし、活き活きしてない、瑞々しくないっていうか、、、、 オケが主役になってしまって、野性的な要素も、行進風にも鳴っているんだけど、どことなく中途半端。
ソロ部分は、繊細さもあるが、すぐに暗く沈んでしまって〜 ある意味、うつうつ〜としてて瞑想的だ。
ワタシ的には、ラヴェルは、もっと弾んで欲しい気がする。
で、オケは、どこか映画音楽ぽい感じで仕上がっているような感覚だ。特に金管は、いただけない。おいおい、映画の録音かい。そういう意味では、安っぽい感じがして、格調高い洒落っけが感じられず。
ワタシには、楽しくないです。スミマセン。

  ジャン=イヴ・ティボーデ デュトワ モントリオール交響楽団 1995年
Jean-Yves Thibaudet Charles Dutoit
Orchestre Symphonique de Montreal
(Montreal Symphony Orchestra)



録音状態は良い。柔らかい良いピアノなのだけど、ピアノとオケの色彩感覚が違うような気がする。
カップリング:
ラヴェル「左手のためのピアノ協奏曲」
オネゲル「コンチェルティーノ」
フランセ「コンチェルティーノ」
ラヴェル 「ピアノ協奏曲ト長調」
この楽曲は、単楽章だが、内容的には3つの部分に分かれている。
まず冒頭で低弦と、コントラファゴットがモゴモゴと蠢き、ホルンの「どどしら〜どどどしら〜」と、暗闇から立ち上がってきて、弦や金管が合わさって、大きな高揚感を生んでいく。
まず、コントラファゴットの不気味な音色が印象的だ。

このティボーデ盤は、よく綺麗に録音されているな〜と感心しちゃうほど、オケの音色は、極めてクリアーだ。
ホルンの「ど〜しら どどしら〜 みそふぁみそふぁみ そ〜ふぁみ ど〜しら〜」というフレーズの合わさり方も、靄がかかっているなかでの響きが感じられる。
また、木管の「らし〜られ〜どそら〜 どみ〜そら〜 それ〜どそら」と重なるところもクリアーだし、ヴァイオリンが 入ってくると、一気に色彩が変わるところも見事だ。
「どみ〜そし〜ふぁどそ ふぁどそ ふぁらし〜ふぁどそ〜」
その後、トロンボーンやトランペットのファンファーレ風なフレーズで、頂上に登ってオケが解散する。
この盤は、デュトワさんの振っているモントリオール響の煌めきのある軽やかな響きが、かなり印象に残る。ねちっこくされると、なんとも、アメリカ映画っぽく、世俗的になりかねないんだけど〜 シャープで爽やかに、鮮やかなほどの煌めき感が気持ち良い。新鮮で明るいし、色彩感は断然良いのだ。

で、肝心のティボーデさんのピアノは、う〜ん。オケに比べると、くすんでて甘いし、柔らかい。
色彩的には中庸で、冒頭のフレーズが終わって、ちょっと間をおいて、ピアノが、低音の方へと「タタタ タカタカ タ〜」と下りていく ところの重量感は、うーん。ちょっと欠けているかも。
ピアノの出だしで、ガツンっと一発かましてくれないところは、残念だ。ガツン、ドシンっと来ないので、モノ足らない感じがするのだ。
でも、やっぱ〜 ピアノの音自体が少し遠目に感じちゃうことと、沈みがちなフレーズの捉まえ方で、さらっとしているフレーズだが、憂いが含まれている。 ソロとしての雰囲気は、バッチリなのだ。
でも、左手だけで演奏される楽曲だし、ピアノの左端にある超低音が、ガシン、ガツンと響いて来ないと、この楽曲としては面白くないんだよなあ。
ペダリングは、短めなのかもしれない。

中間部のリズム感は、まずまず。
ミリタリー調に、「ふぁふぁふぁみれ〜」「ふぁみれ どしらそっ ブン チャッチャッチャ・・・」
金管のキレはあるのだが、総体的に、ドンドンっと入ってるとこも、なーんかパワー不足。なんか乗りきれてないのかもしれない。
中間部は、可愛いフレーズもあるし、ミリタリー調はあるし、ソフトさもあるし、ちょっとジャズっぽい風味もあって〜
複合的に織り込まれた面白い楽曲なのだが、どうも、ノリノリ感っていうのが、なーんか体に伝わってこない。ワタシ的には、ちょっぴり残念。

最後のピアノのソロは、柔らかく、ドビュッシーのピアノ曲を聴いているような、くすみが感じられる。
音はタップリ詰まっているが、穏やかで、おとなしめ。ピアノのソロとして聴く方が聴き応えはあるように思うんだけどなあ。オケはオケで、なかなか良く響くし、音もタップリ入っているんだけど。
なんか〜 ピアノと、オケが合ってないような気がするのだ。
オケは、バンバンに行きましょうって誘っているのに、ピアノは内気で〜 全体的には柔らかい陽射しを感じさせる雰囲気で・・・。
爽やかで、金管や弦の華やかさの香りは、やっぱり〜オケの色彩だろうし。そういう意味では、1部、3部は、輝かしく、外向的に広がって、とても気持ちが良い 。それに、中間部のリズミカルさは、幾分抑え気味で〜 なんか不完全燃焼って感じが否めない。 ティボーデさんのピアノと、デュトワさんの振るオケでは、色彩感覚が、異なっているのではないだろうか。
ソフトフォーカスされた、ちょっぴり憂いのある左手だと思うが、この盤を聴くと、ピアノとオケと、性格の不一致という感じがしちゃう・・・。

ツィマーマン ブーレーズ  ロンドン交響楽団 1996年
Krystian Zimerman  Pierre Boulez London Symphony Orchestra



録音状態は良い。オケも巧いし聴かせどころを聴かせてくれて〜 もちろんピアノも、左手1本とは、とっても思えない。格好が良い。おみごとっ。千両役者っ!
カップリング:
ラヴェル ピアノ協奏曲ト長調
高雅にして感傷的なワルツ(ブーレーズ クリーヴランド管弦楽団 1994年)
左手のためのピアノ協奏曲(ブーレーズ ロンドン交響楽団 1996年)
カップリングされているピアノ協奏曲ト長調と、この左手のための協奏曲では、オケが違う。
ブーレーズさんの指揮だけど、クリーヴランド管とロンドン響である。 それにしても、欲張りなディスクで、ピアノ協奏曲が2曲と、高雅にして感傷的なワルツが聴けるので、このCD1枚で、優雅に演奏会に行った気分だ。
で、ピアニストのツィンマーマンさん。表記が混在してて、ツィマーマンともツィメルマンと呼ばれることがあるが、このサイトでは、ツィマーマンさんて書いておく。

さて、左手は、単楽章だが、3つの部分に分かれている。
冒頭のフレーズでは、弱々しい低く呻く声が聞こえてくるが、弦と金管が合わさってくると、艶のある響きとなって、いきなり明るく煌めいてくる。 まるで太陽がいきなり、水平線から昇ってきたような感じで、まぶしいぐらいだ。金管の伸びやかで、すーっと伸びてくる、勢いの良さと、心持ち太い線のしなやかな響きが聞こえてくる。
それが、う〜ん。伸びて伸びて〜 ぐいっと、キレ良く、締めくくる。

で、すかさず、ツィマーマンさんのピアノが、力強くクリアーに入ってくる。ゴンゴン、ドスンドスンという、荒々しい気配で入ってくるのではなく、さすがにスマートだ。
ワタシの勝手な予想では、幾分弱々しいかもしれないな〜かと思っていたのだが、さにあらず。
この曲想独特の展開、つまり、地下で蠢くカオス的な、混沌とした雰囲気から、一気に、派手なぐらいに荘厳に光が射し込んでくるような場面の変化が、これは、格好良いのだ。
臭いぐらいに派手で、そのくせ、格式高くやってくれないと〜 この曲の最初は決まらない。
ツィマーマンさんのピアノも、オケも、なんとも爽快で、こりゃ〜 格好良いのである。 この格好の良さは、金管の音色と色彩度だろうと思う。

で、ピアノも、低音のガツンとした、ガッツのある音が入ってくる。
そして、グリッサンドなんて大見得を切る歌舞伎役者のように、爽快極まりなく、胸がスカっとするぐらい決まっているのだ。う〜ん。こりゃ凄い。
少し幅の利かした、豊かな音量と音質で、こりゃ〜 役者だっ。拍手!って感じ。
ツィマーマンさん、よくぞ、見栄を切ってくれた〜 役者じゃ。
(ハッタリをかます。このかましかたが、やっぱ年輪というか熟練というか、良い味の品のあるハッタリなのである。やっぱ〜巧いんだ。)
ティンパニーもメチャ大きく入ってくるし、こりゃ〜良いわ。
オケも、力強いし、ピアノも決まっているし、全体的に勢いもノビもあるし、きらめき度も高いし、ホント、格好が良い。

録音状態も良いし、音の広がり感も満足。
ピアノも、左手だけで演奏されているとは思えないほど、豊かな音量で収録されているし、聴き応えがある。
星が瞬いているような音の煌めき。間合い。粒立ちの良さと、力強い押し込み。
いろんな要素を、それぞれの場面で使い分けるテク。これを全体の構成を把握して、その場面、場面で、多彩に使い分けているように思える。
それに、これ、ホントに左手だけで弾いているのか? と耳を疑ってしまう。
通常だと右手の音、左手の音になるだろうと思われる音があるのだけど、その両方に役割分担されているであろう音に、間合いがあるような気がするのだ。うまく言えないんだけど、左手1本で弾くわけだから、ついつい繋がってしまうだろうに、通常のように、普通に、右手、左手で弾いているように、わけて聞こえてくるんだよね。
音も、他の盤で聞くより多いんじゃーないかと思うほど、細かな音が聞こえてくるんだけど〜

で、中間部分のミリタリー調のフレーズも、金管が巧い。リズミカルで、コミカル。
「ふぁみれ どしらそっ・・・」「っふぁふぁふぁみれ〜」 世俗的っぽく、そのくせ、オチャメだ。多彩な楽器で構成されていて、各楽器が、口々に吹かれ、弾かれ、いろんな音が聞こえてくる。
グリッサンドの、パラパラパラ〜 「タタタ タタタ タタタっ」
これが、うるさくなく〜 ペチャペチャ、クチャクチャ〜 楽しげに聞こえてくるから不思議だ。
こりゃ〜良い演奏だなあ。楽しい。

適度な重量感、重厚さと、煌めき、繊細さ。体が自然と動いてくるし〜 
かといって、音の数理的な整理が巧いのか〜良くワカンナイんだけど、理論的に、構成的に、♪が並んでいるような雰囲気もあって、プロット(脚本)を生かした演技って感がするのだ。
筋書きの巧い演劇を見ているような〜 気持ちの良さを感じるなあ。

構成力、それを見せて貰っているような面白い感覚というか、それと、マジックショーを見ているような痛快さ。騙されているのに、面白いって感じる、なーんか、ちぐはぐな感覚に楽しめちゃう。
ぐわ〜っと、外に向かって音が飛び跳ねていくんだけど〜 自由闊達な勢いの良さが、聴いている体にも、自然に入ってくるような、外内両方に、縦横無尽さが面白い。 むはは〜 やっぱ面白い楽曲だ〜。

皮がパリパリしてて、中がジューシーという水餃子のような。いやいや、柔らかい生クリームが入っているような、カスタード・シュークリームを食べているような感じで、う〜ん。思わず唸ってしまった。
まっ こんな単純な例えで、申し訳ないのですが〜 言いたいことは解っていただけるだろうか。
相反する要素が、当然のように、必然のごとく、そこに存在する。
巧いっ。やっぱ巧い。文句のつけようがない。痛快なほどに、笑えるほどに、完璧っ。すげっ。

運動機能も抜群だし、オケの持っている陽気な色彩感が、うんうん。良いです。
3部目のピアノソロは、ハイ、これも聴き応えあり。人間業とは思えないほど、音がたくさん聞こえてきて、ペダルの使い方わかんないですけど、アルペジオが繋がって、左手1本なのに、メチャメチャ、たっぷりと外に向かって広がって、広がって〜 
最後、オケの金管と打楽器と一緒になって、はじけて終わります。

宇宙的な壮大なイメージが湧いてくるし、そのくせ、めちゃ、カラフルで、オチャメで〜 いひひっ。
この構成の見事さに、やられますねえ。
壮大な宇宙的な場面展開が、最初と、最後にあって、のけぞるほどに豪快に、ぶちかまされる。
で、中間は遊びの要素をたっぷり詰まってて、最後の一歩手前では、繊細さが詰まってて〜
ホント、ミクロ、マクロの相乗効果抜群のベクトル この再現の能力には参りました。壮大なイメージで、そのくせ繊細さが同居してて〜 はあ。やられました。脱帽っ。
短い楽曲なので、何度でも繰り返して楽しめちゃうし、飽きません。しばらく、この盤に、はまってます。

  コチシュ フィッシャー ブタペスト祝祭管弦楽団 1996年
Kocsis Zoltán  Ivan Fischer  Budapesti Fesztiválzenekar
(Budapest Festival Orchestra)

いかすぜっ


録音状態は良い。派手さはないが、繊細で、しっくり馴染んだ優しい演奏のように思う。
カップリング:
ラヴェル ピアノ協奏曲ト長調(1995年)
左手のためのピアノ協奏曲(96年)
ドビュッシー ピアノと管弦楽のための幻想曲(1995年)
コチシュさんと言えば、ハンガリー三羽カラスと称されるお方である。
で、専門はバルトークでしょ。という感じだが、最近は、指揮もしておられるらしい。
この方の、バルトークは、なかなかに晦渋で、とっつきづらく難しく〜 いや、バルトークの曲自体が難しいので、聞き込めていないのだが、ラヴェルは好きである。

この左手は、単楽章だ。冒頭、コントラバスとファゴットの恐ろしいほど低音の蠢きが聞こえる。
そこから、じわじわ〜っと音が動き、頭を出して、急速に太陽が昇ってくるかのような輝きを生んでいく。
コチシュ盤のオケは、幾分、シャンシャンという音というか、金属片の輝きのようだが、ピアノは、いたって穏やかだ。
ガツンっと強く入ってくるのかと思いきや、そろっと音を置いて入ってくる。
落ち着いているというか、腰が据わっているというか、じわじわ〜っと、聞かせてくれる優しい間合いがある。

録音状態は良いが、焦点は、少し奥まっている感じで、ピアノの音は、あまり前面に出てきていない。
ホールの中央より少し後ろの方に座っている感じがする、ライブ盤かな〜っと思うような録音である。
で、ピアノの音とオケの音のバランスが、自然な感じがするので、他盤のような、ドスン ドスンっという、ティンパニーの激しい音や、どす黒い暗黒の世界、そこから、光が射し込んでくる〜という、劇的な展開というか、リアル感は乏しい。
オケの厚みは、さほど感じず、どろっとした感覚ではなく、さっぱり乾いた雰囲気がある。
金管の短いパッセージも乾いている。

その代わり、ピアノのソロの部分の、じわじわ〜っと、繊細な音は、それは掌で大切に育てていかなければならない〜というような感じで、軟らかい、ふわっとした音で奏でられる。コチシュ盤のききどころは、このオケが関与しないピアノのソロ部分で、思わず息を止めて静かに耳を傾けてしまう。

中間部分は、行進曲風のリズムが生まれてくる。「ふぁふぁふぁみれ〜」「ふぁみれ どしらそっ ブン チャッチャッチャ・・・」
ふぁみれどしらそっ! と、歯切れ良く、リズミカルに進む。
金管の、ぱぁっとはじける音が、ジャズっぽさを表しているし、ガチョウのような木管の音が聞こえたり〜
えっ?と感じるほど、テンポもぐぐっと落として、タメて〜 間合いを十分に、気怠さも良く表現されている。
ふぁ ぷあぁ〜 という、とぼけた音や、のらりくらり〜っとした間合いもあるし、ジャズっぽさ表現は、頑張っていると思われる。ちょっぴり、クサイ演出でしょうけど。(笑)

小太鼓の軽快な響き、ちょっと、シンバルのシャーンと鳴り響く、ゴージャスな派手なオケ。
豪快なオケと、かつ繊細なピアノで、対比が巧いな〜っと思う。彩度を落とした、少し、くすんだ音の装飾音が、とても印象に残る。柔らかな、襞の細やかな、さらっとした、繊細なタッチが、オケのなかに、埋もれることなく、微妙なバランスのなかで溶け合うように、キチンと一緒になっているところが、すごい。

角が取れた丸い音とは違うし、硬質感はあるが、硬くないし、
くすんだ音色で、溶けそうなところがあるのだが、溶けてはないし。
鋭く、かつんかつんとしたタッチでもないし、形がクッキリしないのだけど、繊細さが感じられ、リズミカルで〜
とっても不思議で、なんと例えれば、うまく伝えられるのか。う〜ん。とっても難しいのだが。
華麗でも、派手に、キラキラした、クリスタル系の煌めきがあるわけもない、硬いんじゃーないのだ。
しっくり〜 慣れ親しんだ、ちょっぴりクラシカルな・・・シックな音質で、長年、木が磨かれて、ちょっと、風合いが出てきた太めの柱みたいな、優しい感じの演奏なのだ。
総体的には、歌舞伎役者のような、派手さはないし、ぐぐ〜っと引き寄せるような演技派でもないし、ご大層な演奏ではないが、ソロの部分の繊細さは、さすがっ。聞かせてくれます。

1959年 フランソワ クリュイタンス  パリ音楽院管弦楽団 EMI ★★★★
1965年 アース パレー フランス国立放送管弦楽団
1977年 ガヴリーロフ ラトル ロンドン交響楽団 EMI  
1978年 コラール マゼール ランス国立管弦楽団 EMI
1982年 ロジェ  デュトワ モントリオール交響楽団 EMI
1987年 ベロフ アバド ロンドン交響楽団 ★★★
1989年 ロルティ ブルゴス ロンドン交響楽団 Chandos
1995年 デュシャーブル プラッソン トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団 EMI
1995年 ティボーデ デュトワ モントリオール交響楽団 Dec ★★★
1996年 ツィマーマン ブーレーズ  ロンドン交響楽団 ★★★★★
1996年 コチシュ フィッシャー ブタペスト祝祭管弦楽団 Ph ★★★★
1998年 セルメット クリヴィヌ フランス国立リヨン管弦楽団 Naive
所有盤を整理中です。

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