「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

サン=サーンス ヴァイオリン協奏曲第3番
Saint-Saens: Violin Concerto No.3


グリュミオー ロザンタール ラムルー管弦楽団 1963年
Arthur Grumiaux Manuel Rosenthal  
L'Orchestre Lamoureux
 (Orchestre Lamoureux)

 

録音状態は良い。リマスタリング盤だと思う。2楽章は、宙に浮く感じがして不思議感がある。最終楽章は、もっとエキゾチックでも良いんだけど、なにせ軽やか。
ひとくちでは言えない難しいっ。
カップリング:サン=サーンス ヴァイオリン協奏曲第3番、ヴュータン ヴァイオリン協奏曲第4番・第5番
サン=サーンス ヴァイオリン協奏曲第3番

1楽章
録音状態は63年だけど、まずまず、太めのたっぷりした音が鳴り出す。
冒頭のヴァイオリンは、唐突にいきなりテンションをあげて出てくるわけでもないし、古風な感じのする伸びやかさ、テンポを維持している。ヴァイオリンの音色も、たっぷりしているが、バックのオケのティンパニー、金管 トロンボーンの和音が、結構入っていて、厚めの構成音になっている。 このオケの厚みには驚かされちゃった。ソロ・ヴァイオリンを食っちゃう感じだ。

「どれらし (ぷわぁ〜) どれらし (ぷわぁ〜)」
「れ〜らっしどぉ〜 (どろどろ〜) れ〜らっしどぉ〜 (どろどろ〜)」
毛の長い絨毯のうえを、ゆったり、歩いているかのような、非常な重厚さが感じられる。
ひえっ サン=サーンスで、これだけ重いとヤバイんじゃーっと一瞬思ったのだが、陰気くさくないんだな。
結構、ラテン的にさっぱりと開放的な響きなのだ。音色がサッパリしているからだろうか、嫌みには感じない。
色彩感も明るいだけでもないし、暑苦しいだけにも陥ってないし、サッパリしながらも大らかすぎず〜 なかなかに難しいバランスのうえに立っている感じがする。

キョンファ盤のような繊細さ、熱い吐息のような、くねっとした動物的なエネルギーを感じさせるものではない。
どちらかと言えば、客観的で静的な演奏なのだけど、ドラマティックだ。
ヴァイオリンの音色は、ちょっぴり太めで甘め。 高音に行くと、確かに力強いけれど〜 ウネウネと腰をくねらせて階段を下りてくるタイプじゃなく、直線的。しかし、重量感を漂わしてながら、結構、健康的で、上品でノーブルな感じがする。
下手すると、ちょっと格調に欠けちゃってハーレクインロマンス的な小説、ラブロマンスだけ雰囲気を漂わせて終わっちゃう楽曲になりそうなところを、いやいや〜 しっかりキープしているなって感じ。
キョンファさんの演奏は、熱さを感じさせ、演奏家の本能のようなモノを、聴き手にバンバン伝えてくるし、主体性を感じるんだけど、グリュミオーさんの演奏は、一歩引いた感じで客観的で静かだ。 くわ〜っとは、熱くならない。
端正で、そのくせ、ちょっぴり甘めの、エスコートの巧いスマートな男性って感じの演奏に感じる。思わせぶりの素振りをしない、スマートな甘さ。
う〜ん。例えが難しいけど、白黒映画に登場するような、タキシードを着た細めの紳士風の演奏で、ちゃんと、楽章最後にはアクロバット風に、超テクで、ひろひろひろ〜っと小気味よく高音を奏でて終わる。

2楽章
まるで、昔の映画を見ているかのような演奏で、貴族っぽく、スマートだ。素っ気なくも聞こえるんだけど、それがノーブルな感じを与えるんだろうな。
「そぉ どしら そ〜 みふぁみ れっれ〜  れみふぁそらし どれみ みっそそぉ〜」
分厚く、やぼったく、汗くさい演奏ではない。まるっきり反対なんだよなあ。
テンポはゆったり、典雅だし、ちょっぴり擦れ声にも聞こえるが、品よく抑制された甘さ。
ふむ。心地よさを感じる柔らかい音色だ。囁くように。
でも、一歩離れた感じがする。その感覚が、むしろ、聴き手が、音を追いかけたくなる気にさせるようだ。
どことなく、宙に浮くような不思議な感覚を持たせる。
木管のフレーズは少し細切れっぽいけれど、ちょっと間合いの空いた感じが、ますます不思議な気分に。
幻想的で、ノスタルジーを感じさせる、ふわ〜っと引きこまれる軽やかさ。
ひぇ〜 この世のモノとは思えない感覚になってしまった。
自分が、風にそよぐレースのカーテンのように感じる。

3楽章
情熱的な楽章で、2楽章から続けて、すかさず演奏されるのだが、これまた軽やかだ。
妙に小節をつけて、転がっては行かないし、エキゾチックさは少なめ。
折り目正しく端正に演奏されている。
ちょっぴり、この楽章は、動物の匂いをまき散らしても良いような気もするが〜 
アクロバット風にも無機質にもならず、そのくせ、軽やかに小花を撒いて歩いていくかのように、音を振り撒いて進んでいく。う〜ん。人間臭い感じがしないなあ〜 もう少し妖艶で、エロティックでも良いんだけど。この楽章にしては、グリュミオーさんの演奏で聴くと、上品過ぎるかもしれない。「どっど そ〜 ふぁそふぁみっ れみれど しれどみどそ〜」というフレーズになると、ぴっ。と語尾を切って、見栄を切ってくる。
ヴァイオリンの重音も軽やかで、バックのオケも、伸びやかで軽やかだ。
あの1楽章で鳴っていた重厚さは、嘘のように全く聞こえてこない。総体的に、遊び心はあるけど、かなりシャイな音で、さらり〜っと、深く入り込まず終わってしまう。
たっぷりとした太い音もあるが、全体的に高い音域で、音を散らしてくる楽章のように感じる。
シャイでスマート、軽やか。でも、軽薄にならないのはテンポがゆったりしているからかもしれない。
オケも、最後、開放的で軽やかで、一種のノー天気っぽく、カンカン踊りでも踊っていくような明るさがある。はぁ〜っ まあ。これも解釈の違いか。と思いつつ、さらりとした感覚で、深追いしませんねえ。
後腐れがないというか、健康的って言うか。

グリュミオー盤で聞くと、刻み込んでいく、深い精神性という点は、ほとんど無いな〜という楽曲に感じちゃう。確かに、そうかもしれない。
しかし、最後は、あまりにも健康的に終わっちゃって、ありゃりゃっ。と思っちゃった。
シャイで、端正で、スマートな演奏だという感じで、最終楽章は、私的にはモノ足らないけど、2楽章は、不思議な感覚になるほど宙に浮く感じがして絶品だと思う。でも、やっぱり全体的には、もっと動物的で、汗臭いエキゾチックな色気を感じたいし、濃密でも良いんだけどな〜。(無いモノねだりで、とっても申し訳ないけど) 
その点、チョン・キョン・ファさんの演奏は、う〜 女性だからかもしれないが妖艶だったし、この楽曲の面白さを感じられたんだけどな。グリュミオー盤は、最後が、あまりにアッサリしちゃって、好みが分かれちゃうかもしれないが、品の良さは絶品モノだと思う。 しっかし、サン=サーンスのこのヴァイオリン協奏曲、どんな風に聴いたら良いのか。
う〜 こりゃ 困っちゃった。悩ましい。

チョン・キョン・ファ  ローレンス・フォスター ロンドン交響楽団 1975年
Kyung-wha Chung Lawrence Foster  London Symphony Orchestra

もえてるぅ〜

録音状態は、まずまず。もう少しクリアーさが欲しいけれど、演奏そのものは文句のつけようがないと思う。凄い圧倒的な演奏で、吐息の熱さに悩殺される。
カップリング:サン=サーンス ヴァイオリン協奏曲第3番、ヴュータン ヴァイオリン協奏曲第5番、ショーソン 詩曲
サン=サーンス ヴァイオリン協奏曲第3番

サン=サーンスのヴァイオリン協奏曲って、3番まであるのだが、3番はまだしも、1番、2番は、とんと聴かない。
1番、2番のCDって発売されてたっけ?
(1番は、チョン・キョン・ファさんの演奏 ラロのスペイン交響曲とのカップリングCDがある。)
そんな危うい聴き手なのだが、サン=サーンスのヴァイオリンって、結構情熱的で、チョン・キョン・ファさんのCDを、ずーっと聴いてきた。っていうか、これが決定盤CDなのだ。
名曲だと思うのだが、意外とこのサン・サーンスを収録したCDは少ない。

1楽章
結構、唐突に始まってしまう。バックの弦が、もそもそ〜っと弾いているなかから、いきなり熱いエネルギーで、情熱的に弾かれる。えっ 序奏なしか? 
いや、弦の、もそもそとしたトレモロがそれらしいのだが、ソロ・ヴァイオリンの出だしが大胆なのである。
いきなり汗くさいっ。いきなり、熱い吐息で言い寄られた感じがする。
「れみしど そぉ〜 らそふぁそ れみどぉ〜 しらし〜 らそら〜 そふぁそ〜」
「ふぁみふぁ〜 みれみ〜 しどれぇ〜」
この楽曲は、上品さに欠けてしまうと、ちょっと場末の飲み屋的な雰囲気に陥りそうな気がする。
女性のヴァイオリニストが演奏するのも、なんか似合わない感じがするのだが、キョン・ファさんのヴァイオリンは、繊細であり、そのくせ吐息が熱い。
およそサン=サーンスらしくない、なーんか、下町クサイ臭いのするヴァイオリン協奏曲だな〜っと、私的には思っていたし、ホント、フランス? むしろスペイン臭い楽曲であるなーっと勝手に思っていた。
熱いのは確かなのだが、バカテクで高音が巧く弾けないと、歌わないと、ホント、駄作になりそう。
癖の強い、アクの強い楽曲という感じがする。 そうかといって、天女にもなる楽曲で〜 
場末のフトッチョのグラマーなオンナになっちまうか、神々しい天女になれるか、きわどいオンナが主人公のような、どちらにでも転べそうな楽曲だ。

ホント、CDを何度も聴いてても、よくワカンナイ楽曲である。
キョン・ファさんの演奏は、ねちっこい部分も多少は感じさせるものの、それよりも繊細さが勝っているし、特に、高い音のすーっと伸びて、永遠に伸びるかのような音の持続音が、何度も出てくる。
その度に、うっ すげっ。と感じさせられる。
素人なので、テクのことは判らないが、このサン=サーンスの3番は、高音の鳴らし方が難しいような気がする。

ど下手な方が演奏しちゃうと、喉に骨が刺さったみたいに、痒くてタマラン、首が絞まる〜っと叫びたくなるような曲だ。そのくせ高音から下りてくると時には、天女が舞い降りるかのように、弦が寄り添って、ふわっと下りてくる。高音が命のようなヴァイオリン独特の音色で、バックは添え物なのだが、この高音から下りてくる時だけは、ちゃんとした繋がったサポートが無いと、崩れ落ちてしまう。
う〜ん。こりゃ、アブナイ、きわどい楽曲だ。
バックにしちゃー 面白くないだろうなあ。ヴァイオリンだけが目立つ楽曲なんでしょう。それだけヴァイオリンの音色だけが、目立っちゃう。主人公なんだから仕方ないんだろうけど。
オケの弦が重いと、軽やかさが出てこないし、舞い下りる天女さまのサポート具合で、かなりイメージが変わってしまうかもしれない。

2楽章
泣き濡れたオンナが1人・・・。1楽章から続けて聴くと、はあ。こんなオンナを相手にしていると疲れるっ。と思いつつ、キョン・ファさんのCDを聴いていると、結構、楚々としているんだな。これが。
うー すごいっ。少女に戻ってるぞ。この変身ぶりは怖いぐらいだ。
「れみふぁっ そっそ〜 れみふぁっ そっそ〜 みふぁ そっそ〜 みふぁ そっそ〜」
「そっ どしらそ〜みふぁみれっれ〜 れみふぁそらし どれみ みっみ〜」
キョン・ファさんのヴァイオリンは、ヴァイオリンの旋律=1人のオンナの所作として聴いていくと、面白いかもしれない。
ヴァイオリンの音色が、イコール女だとして聴いていると、1楽章は、手に負えないタイプに聞こえてくるのだが、2楽章は、すっかり夢をみる乙女に変身しているのだ。

青春時代の、甘くて、ほのかに酸っぱい薫りがする。
この薫りは、木管のフレーズによるところが大きい。木管たちが、ヴァイオリンに囁きかけているし、ヴァイオリンは、優しいサポートを得て柔らかく変貌しているのだ。このサポートは大きい。ほっとさせられる。
とにかくヴァイオリンが、他の楽器と呼応する余裕が出てきているのだが、この盤では、やっぱ、ヴァイオリンもさることながら、木管の音色の美しさ、優しさ、柔らかさが特筆しているように思う。
ヴァイオリンと木管の呼吸が、スムーズなのだ。巧いっ。
この2楽章が好きな人は多いだろう。
とにかく聴きようによっては、楚々とした少女だし、エロティックにも聞こえるし、甘くて、甘酸っぱいし、夢の世界でとろけちゃうフレーズが詰まっている。

3楽章
情熱的な最終楽章で、2楽章から続けて、すかさずソロから始まる。
熱い、こってり感の味がする楽章である。
フラメンコの踊りが始まるような、エキゾチックで、ゾクゾクしちゃうフレーズが続く。
う〜ん。キョン・ファさんのヴァイオリンは、動物的な感覚って感じがする。この楽章の始まりは、ライオンか豹のような動物が、目の前に迫ってて、飛びかかってくる前の息づかいのような感じがするのだ。
でも、キョン・ファさんのヴァイオリンは、さほど汗くさくない。男臭いわけじゃーないんだよね。やっぱり。
髪の毛を怪しげにかき分けて、迫ってくるような色気が感じられる。息づかいは深く、熱く、妖艶だが、そのくせ、線が細めで艶があり品がある感じがする。いつ聴いても、女の情熱が籠もってて悩殺されてしまうんだよな。

主題が変わって、「どっど そ〜 ふぁそふぁみっ れみれど しれどみどそ〜 そらそ ふぁふぁ っし〜」と跳躍してくるところは、セカセカせず、エキセントリックにもならず、結構、テンポはゆったりめで、腰が座ってて堂々と、たっぷりと歌ってくる。そのくせ大柄ではないんだよな〜

繊細さとタップリ感。その両面を兼ね備えてて、微妙なバランス感覚で迫ってくるのが嬉しい。
バックのオケも、悩ましげに揺らせて、くねらせて、気を持たせるかのような旋律を奏でており、優美に振る舞っている。いや〜 なかなかチャーミングな色気もあるし、可愛いコケティッシュな面もあって、なかなかに油絵的な妖艶な振る舞いを魅せる楽曲だと思う。

パールマン バレンボイム パリ管弦楽団 1983年
Itzhak Perlman  Daniel Barenboim Orchestre de Paris 

ばっちグー!

録音状態は良い。しなやかで透明度の高い、すーっとした跳躍で、まるで陸上選手の無駄のない美しいフォルムを拝見しているみたいだ。
カップリング:サン=サーンス ヴァイオリン協奏曲3番、ヴィエニャフスキ ヴァイオリン協奏曲2番 (ラロのスペイン交響曲とカップリングされている盤もあります)。
サン=サーンス ヴァイオリン協奏曲第3番

1楽章
サン・サーンスのヴァイオリン協奏曲3番って、結構、コンサートでも取り上げられている曲とは思うのだが、なぜか、CDに収録されている枚数が少ない。へ〜 なんで?  名曲だと思うのだが、意外と、このサン・サーンスを収録したCDは少ないのだ。キョンファお姉さんか、このパールマンさんのCDが、ずーっと、決定盤的存在として君臨しているようだ。
もう少し、ねっとりしているのかと思っていたのだが、透明度の高い、細くもなく太くもなく、しっかりとした、弾力性のある音で、自在に姿を変える絹糸のようなヴァイオリンである。
改めて聴いてそう思う。

「れ み しど そぉ〜 らそふぁそ れみしど どぉ〜」
「しら し〜らそ ら〜そふぁ そ〜ふぁみ ふぁ〜みれ み〜しどれ〜」
冒頭の部分は、結構低音で太めの声で歌うのだが、そのうちに熱が籠もってきて跳躍が始まる。
すーっと高音域に行ってとどまっているところなんぞ、安定感が抜群で、ひぃーっ と声の裏返った感じは、まったくない。
そのまま、すーっと表のままの音 つまり、ころんと声がひっくりかえるような雰囲気なしで、すーっと高見へと昇るのだ。
まあ、裏声って感じがしないで、そのまま〜 するっと高音域へ達しているし、全く音質が変わらないところが凄い。
で、切々と歌ってくれる。
重さは適度 ずっしり重くて、しっけた感じのヴァイオリンの音色ではなく、澄み切った青空の元で、綺麗に抜けました〜という感じで、ホント、抜けるような青空に、飛行機雲のように、すーっと描いていく。
その清潔感というか、媚びのない素直さには、う〜ん、これも大きな魅力である。

サン=サーンスの3番は、1楽章としては、さりげなく、アクロバティックな運動機能を求めているようで、ちょっと癖のある、高音域のコーダでのスケール感を描いている。ものすごく自然で、ツライ声で歌ってますって雰囲気はない。
はあ〜 こんなモノかなあと思って、このサン=サーンスを聴いてて〜 他盤で聴くと、えっ。詰まった声じゃん。辛そうなのねえ。んじゃ、パールマンさんの演奏は超テクだったのね。という感じで、改めて驚かされるのだ。
「ふぁそら ら〜そ どれみ みそら し〜 ど し〜ら れみふぁ そらし ら〜そ・・・」
優美な甘さのある声で、ふんわりとした感じで、伸びやかな旋律を描く。
ふあっと降りてくるところも、完全に、タカラヅカのお嬢様風である。 

2楽章
「そぉ〜 ど〜しらそ み ふぁみれ れぇ〜  みふぁ そらし どれっみっ そぉ〜 (れみふっそ〜そ) みふぁそ そぉ〜」
メチャクチャ美しい、可愛いフレーズで、こぼれんばかりの笑みのなかに居るシアワセ感が、満喫できる楽章だ。
なんてシアワセな旋律なんだろう。
ホント。可愛さ満点の楽章で、「どれ みっそぉ〜 れみ ふぁっそぉ〜 みふぁそっ そぉ〜」
可愛いベイビーが、スヤスヤと、おねんね〜しているかのような旋律が続く。
で、単に、眠気を誘うかのような演奏もあれば、ハイ、超シアワセ感を感じる演奏まで、悲喜こもごも。
パールマンさんの演奏は、清潔で、清く正しく美しくという演奏で、媚びを売る。ねっとり歌う、色気を振りまくという感じではなく、端正でかつ親しみやすさを持っている。
流れるようなフレーズのなかで、木管が、鳥のように飛び交って、まさしく桃源郷の世界に・・・。

3楽章
情熱のカデンツァから、「ふぁ〜 そらそ どぉ〜 れどら ふぁ〜」 (どしどしどし・・・)
巻き舌風で、カーッとした見栄をきるソロヴァイオリンで始まる楽章である。
「どっど そぉ〜 ふぁそふぁみっ れみど そっ しどれ どみど そ〜」
巧く音がとれないが、飛び跳ねる付点のリズムに切れがあるし、可愛い。
ちょっと恥じらうように歌い始めて、 「みぃ〜れど〜 れ〜ふぁし ど〜みらし〜 ふぁ〜どし ふぁ〜みそふぁ〜 そふぁ そふぁ〜」と歌い始めると、真骨頂という感じだ。
ノビのある張りのある声で、朗々と明るく歌う。これぞ、パールマンさんの歌声なんだと思う。
ちょっと渋みのある音ではあるが、オケの明るさと、とても色彩がマッチングしている。高いところの声も、透っているし、転調していくところの色彩感も、渋みを足して影をつくり、弱音にして、
第2主題だっけ顔を覗かせ、「みぃ〜ふぁ〜 みらみれ どぉ〜れみ ふぁれし〜 みぃ〜ふぁ〜ふぁふぁ みらそみ・・・」
大上段に構えて、巻き舌風主題を、カッと、力強く、ダイナミックに歌い上げて行くタイプではない。

しなやかに、シャープな切り口で、すっと切れていく、鋭さがあって、可愛らしさを味付けしている。
しなやかに美しく力強く〜 跳躍していく、気持ちの良い造形美だと思う。とても、均整のとれた美しいバランス感覚を拝見している感じだ。

ジョシュア・ベル デュトワ モントリオール交響楽団 1988年
Joshua Bell  Charles Dutoit  Orchestre Symphonique de Montreal
(Montreal Symphony Orchestra)



録音状態は良い。線が細めで爽やか。コクが欲しい人には向かないが、さらり〜っと煌びやかに綺麗にまとめている。
カップリング: サン=サーンス ヴァイオリン協奏曲第3番、ラロ スペイン交響曲
サン=サーンス ヴァイオリン協奏曲第3番

1楽章
爽やかな演奏で、さらり〜とした喉ごしで、嫌みな感じは受けない。
チョン・キョン・ファさんのような、情熱を主体的に表してくるわけでも、グリュミオーさんのような、おっとり古風に迫ってくるわけでもなく、しょうゆ顔系というか草食風というか、ガツガツしていないというか。いたって、さっぱり〜した今風の演奏である。
ワタシ的には、聴いた後に、さっぱり残らないので、ちょっとな〜と思ってしまうのだが、ガツガツ汗くさくない演奏も、いいのかなあ〜と、何度か繰り返して聴く。
出だしの個性的なフレーズ 「れ み し ど そぉ〜」と、少し切れ目が入っているけれど、粘りは無い。
ゴツイ太めの旋律では描いてこないし、オケの方も、淡泊で胃もたれしないけれど、う〜ん。エネルギーは放出されてこないので、スカみたいと感じちゃう。
オケの金管が、旋律を添えてくると、ちょっとだけ厚みが出てくるのだが、それでも、さらり感がある。
グリュミオーさんのような品の良さはないし、キョン・ファさんのような熱い動物的な感覚は無い。
良く言えば、嫌みのない、すーっとアクの抜けた洒脱感というか。
悪く言えば、気の抜けたビールみたいというか。
しかし、高音域に入ると、すわ〜っとした心地よさが漂うのだ。ホント、伸びやかで爽やかだと思う。跳躍感も美しい。綺麗だっ。

しっかし、1楽章は、やっぱ低音域の粘りが欲しい。きっと、この楽曲自体が、ベタな演奏の方を選んでしまうのかもしれないな〜。コブシの効いた演歌調の演奏の方が、ずーっと気合いが入って、ムンムンした匂いが漂うことを望んでしまう。
汗くさい肉食系の男と、さらり〜とした品のある女性との絡みのような、その対比のある旋律が、絡んでいるので、その匂いや、クセやアクを出してこないと面白みに欠けるのかもしれない。
この演奏は、がっついてこないけれど、なかなかに美しい。色白の細身の女性タイプである。

2楽章
夢心地の楽章なのだが、ベルさんの演奏は綺麗なのだけど、ちょっとワタシ的にはテンポが速め。
でも、オケの木管は、確かに綺麗だし、これは文句がつけようがない。
1楽章では奥に引っ込んでいたオケだけど、2楽章は活躍している。
「そっ どしらそ〜みふぁみ れれぇ〜 れみふぁそらし どれみ みみぃ〜」
「ふぁそら れれぇ〜 そらし れれぇ〜」 
最後の2音が、流れがベタになってて弾まないところが難点だが、それでも綺麗だ。
語尾が、たれ〜っとしてて、甘ったるいけどデュトワさんだからなあ。まっ その方が、さっぱりし過ぎず良いのかもしれない。音が弾まないので、キョン・ファさんの演奏のように、広がり感や倦怠感は少ないけれど、それでも煌めきがあって綺麗なことは確かで、午前中の爽やかな朝日を感じているようだ。

3楽章
テクニックのことは解らないのだけど、こりゃ〜巧いわ。と思ってしまった。
3楽章は、これは良いねえ。思わず聞き惚れる。
「どふぁ〜ふぁらどらふぁ〜 どれどふぁ〜」 ← 音は怪しい。1楽章と同様に、ねちっこいコブシまわしから始まるのだが、オケの厚みが増してくる。
3連符の後の落としどころの音が、ぐぐぐ〜っと胸ぐらをつかむような凄みを持っている旋律であるが、まっ この点は、凄みはないんだけど、若い情熱は感じる。すばしっこいのだ。
低音の渋さ、ごつさに欠けているのだが、跳躍感のすごさには脱帽。
う〜 軽やかで、歌心もあって、細身だけど、聞き惚れてしまって唸ってしまった。
綺麗なんだなあ〜 スペインの赤い乾いた大地のなかの熱さだ。
この楽章で、湿気があるのは、いただけないが、これは良い。動物的も扇動的でもないけど、草食系とはいえども歌心あり。
オケも良いし、ヴァイオリンが軽いしピチピチしている。ウネウネと描いているのだが、それが乾いている。
「み〜れど〜 れ〜ふぁし ど〜みらし〜 ふぁ〜どし ふぁ〜みそふぁ〜 そふぁ そふぁ〜」
若くて活き活きした伸びやかさに、こりゃ良いわ〜と拍手したくなった。
オケの音色のキラキラした感覚を伴って、最後になるにつれて彩度が増してくる。

全体的には個性が無いと言ってしまいそうだが、無色透明のようなところが、ベルさんの演奏の良さでもある。しかし、あまりにも味わいが無さ過ぎだと困るわけで〜 その点難しい。
楽章によって、風合いが変わる楽曲なので、それぞれに演奏家の個性が出て面白い。
後味のキツイ演奏もインパクトがあって良いし、強い個性を楽しみ、それを求めてしまうのも、聴き手のサガかも。まっ 簡単に言えば、持っているCDをとっかえ、ひっかえ、その日の気分で聴いて楽しんでいるワタシ。
ベルさんのCDは貴重な盤だと思う。
特に、最終楽章のラストに向かって、線は細いままだけど、煌びやかを伴ってくる。
最初が、おとなしいな〜っと思っていたので、その変貌はドラマティックだし、高揚感を持たせて演出してくる点は、ベルさんもデュトワさんにも拍手を送りたいと思う。

1963年 グリュミオー  ロザンタール  ラムルー管弦楽団 Ph ★★★
1975年 チョン・キョン・ファ フォスター ロンドン交響楽団 Dec ★★★★★
1983年 パールマン バレンボイム パリ管弦楽団 ★★★★
1988年 ベル デュトワ モントリオール交響楽団 Dec ★★★
2003年 ヴェンゲーロフ パッパーノ フィルハーモニア管弦楽団 EMI
所有盤を整理中です。

「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

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