「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

 スクリャービン ピアノ協奏曲 嬰へ短調
Scriabin: Piano Concerto


  アシュケナージ マゼール ロンドン・フィル 1971年
Vladimir Ashkenazy  Lorin Maazel  London Philharmonic Orchestra



録音状態は良い。ぶあつく、濃厚で、たっぷり〜 うっぷっ。
カップリング:
1 スクリャービン 交響曲第5番 プロメテウス
2〜4 スクリャービン ピアノ協奏曲
5〜6 2つの詩曲    7〜8 スクリャービン 2つの舞曲
9 ヘブライの主題による序曲    10 交響的スケッチ「秋」
1楽章
悲しみを含んだ短いフレーズが、ホルンと木管で奏でられる。「ふぁ〜み〜 らしそら〜 しらそ〜」
その直後に、ピアノが入ってくる。 「ふぁ〜みれ〜 れみれ そらしどみれ どしどれふぁみれ〜」
ピアノのフレーズの甘さにも驚かされるが、この冒頭のフレーズを再度、オケが太く甘く弾いてくる。
「ふぁ〜みれ〜 れみれ そらしどみれ どしどれ ふぁみそふぁ〜 れ〜どし〜 しどしら〜」
うっ なんて甘いんだ。
メロドラマ風のフレーズが飛び込んで来たので、これホントに、スクリャービンか?
で、これ、マゼールが振っているんだよなあ。
思わず、目を白黒して仰天してしまった。
甘い主題で、スクリャービンの若い頃の習作らしい。ラフマニノフ系で、とろり〜としている。
後の神秘的とも言える作品群とは、全く違う作風である。
それにしても、大仰なアシュケナージさんのピアノで・・・ また、それに寄り添うオケも、メチャ甘いフレーズを、これでもかぁ〜というぐらいに、甘く振っている。
「らふぁど み〜れ みふぁそ〜ふぁ ふぁ〜み どれふぁみれ」
太く甘く、重厚に、たっぷり〜とタメて、どよぉ〜んという大きなフレーズにして鳴ってくる。
ピアノの音が、伸びきったオケの音に、ジャジャジャ ジャジャジャと重ねて強打してくる。
ホルンの音色も、「そ〜らどしそ〜 そ〜らどしそ〜」 甘いフレーズを受け継いでいく。
う〜 これは、うぷっぷ〜だ。信じられないほどの甘さである。

で、つい耳がオケの甘いフレーズに行ってしまうが、ピアノは細かく動いており、そうだなあ。
あえて例えて言うならば、オケは、ラフマニノフに似た、伸びやかで甘めタップリの大きなフレーズ。
ピアノは、細かく動き、隙間無く、チャララ チャララ・・・と鳴る可愛い系のショパンに似ている。
ラフマニノフ+ショパン この合体版って感じの楽曲だ。
なにせメロディー主体で、スクリャービンの和音は生まれてきていない。
恐ろしいほど俗っぽく、昨今、映画でも使わないだろうというぐらいの、クラシカルな雰囲気が漂う。
B級のサスペンスドラマや、涙モノのドラマだったら〜使えるかもしれないとも思うが、とにかく今風のドライ感覚とは異なっている。
演奏が、どうのこうのという前に、楽曲の風味が、しっかり付いており、口出し無用状態。
で、アシュケナージさんが弾いているので、さらに濃厚になっており、まったり〜ずっしり、超重いっ。

2楽章
「れそしらそ〜 そ〜しれ どし〜」 「れ〜そしらそ〜 しれそ〜ふぁみ〜」
弦が、素朴に、可愛く清楚にシンプルなフレーズを鳴らしてくる。茫洋とした、ぼわ〜っとした空気感が漂っており、ノスタルジックに奏でられている。
この楽章は、変奏曲になっているが、「れ〜そしらそ らそ〜 そしれ〜どみ」 クラリネットの音色がまず提示されており、ピアノのコロコロとした可愛いフレーズが伴奏になっている。
「しれそふぁみ〜れ しれそ〜ふぁみ」 このフレーズが繰り返されるところは、ピアノ協奏曲という感じがしないし、セピア色に染まった主題に、ピアノが光を注いでいる格好だ。
で、ひとしきり主題を提示した後、時空間を飛び越えたようにテンポがあがる。
コロコロとピアノが、同じ主題を弾き始めるが、「れっそしら〜そ」と、跳ねるようになってくると、弦と木管が、ひゅ〜っという音色をつけて、目覚めさせてくれる。
その後は、低弦がフレーズを持ったりしている。
う〜ん。ピアノ協奏曲という雰囲気じゃーなくなっているんだけど・・・。

3楽章
ピアノ 「れぇし〜 れっれ そふぁみ れどし らそらし〜」という舞曲風のフレーズと、ぱららら〜っと駆け上る音によって、ショパンのポロネーズのような主題が出てくる。
木管も、粘りながら同じフレーズを吹いているし、「どれど そっ どれ〜」っと呼応していく。
ポロネーズ風だったので、テンポがアップして、熱っぽくなるのかと思ったが、まあ。これが違ってて。
ずーっと、まったりとしたフレーズに収まっており、低音を響かせながら〜終始するのだ。
で、またもや、抒情的なフレーズが絡んでくる。
「しどれ ふぁそらし〜 らそふぁそ みふぁそ しど〜れみ〜」
ホルンが音を補いながら、ピアノの歌うフレーズを、オケがサポートして、色づけ、厚みをつけていく。
オケの方に主題が移ると、ピアノは、タタタタタタ・・・と、階段を上っていく。何度も何度も・・・
う〜ん。これじゃ。ショパンじゃん。

まあ。アシュケナージさんは、こんな楽曲は十八番なんだろうが、更に上乗せして超アマになっている。
多少は、弾んだリズム感も感じられるが、でもやっぱ楽曲が、べたっとしている。
ピアノは、シンプルなフレーズを、「れぇ しぃ〜ら れっぇれぇ〜 そふぁみれどし らそらしぃ〜」と、「れぇれぇ〜」っと、引きずり気味に、重くして弾いているし、これじゃ〜 どっぷり行き過ぎだよな。
この楽曲では、これぐらい厚みがあって重量級で勝負されると、首まで、どっぷり〜浸かる以外に方法はないのかもしれないが、ちょっとは抑制して欲しい演奏だった。
ちなみにアナトール・ウゴルスキ、ブーレーズ盤は、これほどには、どっぷり鳴っていない。
アナトール・ウゴルスキ ブーレーズ シカゴ交響楽団  1996年
Anatol Ugorski Pierre Boulez  Chicago Symphony Orchestra



録音状態は良い。渋みも苦みもあり、単なる甘い演奏ではない。
カップリング:
1 スクリャービン 交響曲第4番 法悦の詩
2〜4 スクリャービン ピアノ協奏曲
5 スクリャービン 交響曲第5番 プロメテウス
1楽章
ホルンの「ふぁ〜み〜みぃ〜」 木管と弦の「らしそら〜 そみふぁ〜しらそ〜」の呼応のあと、ピアノが入ってくる。「ふぁ〜みれ〜 れみれ そらしどみれ どしどれふぁみ そふぁ〜れ〜どし〜ど〜しら」
御茶ノ水博士のようなウゴルスキさんのピアノは、その見た目とは違って、儚げに夢を見るかのように、ふわっ〜っ。としている。
アシュケナージ盤のようなゴツイ感覚はなく、そそっとした女、泣き濡れている感じがする。
甘いだけではない、ちょっとした仕草が1音で変わるかのように感じる。
「ふぁ〜みれ〜 れみれ そらしどみれ どしどれ ふぁみそふぁ〜 れ〜どし〜 しどしら〜」
ピアノのフレーズの甘さに当初は驚かされるのだが、ウゴルスキ+ブーレーズ盤では、音質が硬めなので、ぶわ〜っとした厚みでは迫ってこない。
線の細さ、硬さ、硬質感によって、大甘って感じの感覚にはならないのだと思う。
アシュケナージ盤では、メロドラマ風のフレーズのように聞こえてくるし、ホントごっついのだ。
大きなフレーズで、波のように寄せては返すラフマニノフの2番をイメージしてしまうかのような、どっぷり感があったのだが、この盤では、そこまで行かない。
「れ〜どし ら〜そふぁ〜」 というフレーズだと、アシュケナージ盤だと、「れぇどぉし〜ぃ らぁ〜そふぁ〜」って感じに伸ばし気味なのだが、この盤は、わりとアッサリ抑制が効いている。
まっ のばさなくても、楽曲自体が、すでに伸びている状態なんだもんなぁ。
で、ピアノは、細かいフレーズが際立っているので、ショパン風味的な、夢想感や憂い感が出てくるし、煌めき具合も、地味で渋いんだが、よ〜く聴いていると、綺麗だわ。
まあ。それにしても、オケが、ブーレーズにシカゴ響。
アシュケナージ盤だと、オケが、マゼールにロンドン・フィル。
シカゴ響っていうのも驚きだけど、指揮者が・・・ はあ。なんと不似合いなと、思わず口にして言いたくなるような、いや、言葉を呑み込んじゃうような。微妙な笑顔で誤魔化したいような。
でもね。1楽章の最後の打楽器を従えて、ちょっと硬めのゴリゴリ感で、スピードをつけて押し上げてくるところが、ふふふ。なかなか、よさげだ。

2楽章
「れ〜そしらそ〜らら〜らしそ そ〜しれ どし〜」
「しれそ〜ふぁみ〜 し〜れそふぁみ〜 れ〜どし ら〜し ふぁ〜み」
弦は、抑揚をちょっぴりつけつつ、しーんみりとした、泣きを含んで鳴らしてくる。
何気ないような、物憂げな表情で、さっぱりしているんだが、でも悲しみがあって。
そっとしておいた方が良いような、言葉を掛けづらいような・・・ちょっと張りつめた空気が流れてくる。
一瞬、ふっと時間が止まるような感覚があって、オケのフレーズの間合いに、ん。耳がピクンと動く。
ふっと途切れそうになるフレーズの流れ。間合いの瞬間が良い。
そのなかを、クラリネットと煌めくピアノの音が入ってくる。この合流シーンは、言葉では表現しづらいんだが、絵で映像でもダメで、なんて言うんだろ。これこそ、耳だけで感じる空気感っていうのかなあ。
醍醐味って感じを受ける部分になっている。
濃密でもないが、押し付けがましくもなく、さらり〜っと聞き流してしまいそうなフレーズだけど。
立ち止まってみると、すーっと時空間が飛んでいくようなフレーズになっている。
で、ひとしきり主題を提示した後は、逞しいピアノが出てきて、懐かしい味わいを持ちながら、「れっそしら〜そ」と、木管の跳ねるようなフレーズを奏でる。
「ひゅ〜っ」という音が出てくるのだけど。ふふっ。なにやら妙に懐かしさを感じる。なかなかに、大人の渋〜い風味がある。
ウゴルスキさんのピアノは、左手が逞しく響いているし、オケの低弦の力。これが深い。
私的には、響きの間合いに魅力を感じた楽章となっている。

3楽章
ピアノ 「れぇし〜 れっれ そふぁみ れどし らそらし〜」という舞曲風のフレーズと、ぱららら〜っと駆け上る音によって、ショパンのポロネーズのような主題が出てくる。
木管も、粘りながら同じフレーズを吹いているし、「どれど そっ どしどれ〜」っと呼応していく。
で、抒情的なフレーズが絡んでくる。
「しどれ ふぁそらし〜 らそふぁそ みふぁそ しど〜れみ〜」
ホルンが音を補いながら、ピアノの歌うフレーズを、オケがサポートしてくる。
オケの方に主題が移ると、ピアノは、タタタタタタ・・・と、階段を上っていく。何度も何度も・・・
ふふふっ これは苦みも渋みもありながらも、爽やかな風味を持った演奏である。
これは、中年以降でないと感じない風合いを持っているかもしれない。
最後の盛り上げ方は、う〜ん。涙なしでは聴けなくなってしまうような、胸をしめつけられる面がある。
シカゴ響だな〜やっぱ。と思うような金管のフレーズもあるが、豪快さはないが、かえって抑制されたことによる効果がある。聴き手に、イメージさせる要素を残しているというか、決して、押し付けで大袈裟でないところが、やられる要素になっているかも。
なんとはなしに聴き始めた楽曲で、アシュケナージ盤では、とろみ感と甘い風味を、どっぷりと感じて、うっぷ〜となったのだが、実は、もっといろんな味があるな〜と、ウゴルスキ盤では感じた。
いやいや、なかなかに〜 やられました。
ニガミも後悔も含んで、忘れていた追いやっていた部分が、ちょこっと滲み出してくるような〜。
落ち着いた演奏で、地味だけど、じんわり来るところがあるなあ。
これは繰り返しては聴かない方が良いですね。忘れた頃に取り出して、さらり〜と1回聴く方が良いでしょう。ふふっ 苦笑いしちゃうような郷愁感を味わいました。
若い方が聴く場合は、アシュケナージ盤を。ちょっと下り気味かな〜という方はウゴルスキ盤で・・・。(笑)
1971年 アシュケナージ マゼール ロンドン・フィル Dec ★★★
1996年 ウゴルスキ ブーレーズ シカゴ交響楽団 ★★★★★
所有盤を整理中です。

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