「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

ヴュータン:ヴァイオリン協奏曲第5番
Vieuxtemps: Violin Concerto No.5


グリュミオー ロザンタール コンセール・ラムルー管弦楽団 
1966年
Arthur Grumiaux Manuel Rosenthal
L'Orchestre Lamoureux 
Orchestre Lamoureux)

録音状態はまずまず。優美な演奏で、古き名画を見ているみたい。カップリング:サン=サーンス ヴァイオリン協奏曲第3番、ヴュータン ヴァイオリン協奏曲第4番、5番

「ふぁっそ し〜ら ふぁ〜しどれ みれど〜し」「し〜し〜 ら〜そ ふぁれみふぁ ら〜そ」
物憂げで鬱っとしたところのある序奏なのだが、ラムルー管らしく、木管の響きが良く聞こえ、音の響きに艶があり、少し明るめに演奏されている。テンポはゆったりめ。重厚なのだが、音色は明るい。
ちょっと色彩が豊かすぎなんですけどね。
音色にはオケの特色がでるし、雰囲気は違うのは仕方ないか。
で、それよりも、テンポが一様で・・・ はあ。ちょっと違うんじゃーないのと感じる。情感のうねりってモノがないんだなあ。深さが足らないっていうか、うねってくれえ。
「パパパ パパパ パ〜 ふぁそし〜 ふぁみふぁみ ふぁみふぁそ らそらそ らそらし・・・」
なんとも区切りの良い演奏で、一律同じにやられると。あちゃ〜 こりゃ違うでしょう。はあ。違うと思います。としか言えない。

グリュミオーさんのヴァイオリンは、豊かな線で、ぐい〜っと伸びていく。品のよい太さである。
テンポゆったりと、情感たっぷりめに弾かれている。ジプシー風なフレーズがあるのだが、ここは、タメが充分にある。でも、几帳面って感じもするし、まあ。ほどよいってところだろうか。
私的には、ミンツ盤が好きなのだが、これは、若い活き活きとした清楚さが魅力である。
で、グリュミオー盤の魅力は、老練さだと思う。
これは、私的な感覚でしかないので、各人それぞれ受け止め方が違うのだが。
この盤で聴くと、グリュミオーさんのヴァイオリンは、フレーズの最後に、ちょっと力を、ふっと抜いたところを感じるのだ。そこが儚げに聞こえるのだが、間合いが、下向きにさがっているような感じがする。

次の跳躍に向かってのパワーが、あまり感じられない。何故なんだろう、そう感じるのは・・・。
響きが、ちょっと硬めで、跳躍感が少ないと感じるからかも〜。
重厚さは、もちろんたっぷりあるし、線が、細くなったり太くなったり、情感もニュアンスも豊かだ。
音色も好きだし、さほど濁らず重音の部分も、わりと聞きやすい。優美さも品も良いのだが。私的には、たっぷり歌う、そのたっぷりさの加減は良いし。
もう少しだけ、ノビが感じられたらよかったのになあ。と思う。そこは、ちょっと残念だが。
でも、ミンツ盤も好きだが、ちょっとクラシカルな雰囲気が漂っているグリュミオー盤も好きだ。
昔の白黒映画で、まったりとした会話を楽しみ、バックに流れる音楽を楽しみ、ストーリーそのものを楽しめる、クラシックな名画を見ているようで、たまらない雰囲気である。
そう意味では、この盤も好きである。

チョン・キョンファ フォスター ロンドン交響楽団 1975年
Chung Kyung-wha
Lawrence Foster Orchestra
London Symphony Orchestra

録音状態は良い。情感豊かに、草書体で描かれており、その力強さと情熱に圧倒される。
カップリング:サン=サーンス ヴァイオリン協奏曲第3番

録音状態が良く、透明度がある。
「ふぁっそ し〜ら ふぁ〜しどれ みれど〜し」「し〜し〜 ら〜そ ふぁれみふぁ ら〜そ」
物憂げな冒頭、長い序奏も、きびきびとした演奏で、シャキシャキとした感覚で進む。
音色が明るめで、もう少し陰影がついてても良いかもしれないが、他の盤とは違って安定感が高い。のびやかで、安心して気持ちよく聴いてられる。
ソロ・ヴァイオリンは、この長い序奏の後、ふっとした間を縫って出てくる。
「しどみそ しどみそ〜 しどみそ〜」 艶のある声で、喉をふるわし、素早く草書体で描かれている。
情熱が、深く沈み、そして解き放たれる時に放出されるパワーが、すごい。
キョンファさんのヴァイオリンは、う〜ん。やっぱり絶品だなって思う。
低い音から、高い音に駆け上がってくるスピードと、細かく震えるところの速さが、う〜ん。やっぱ、凄い。
どっぷり甘くて、とろり〜とした甘さは無い。甘いどころか、とっても厳格なのだ。
音色に勢いと艶があるので、厳しいだけではなく、聞き惚れてしまうし、その迫力に呑み込まれてしまうのだと思う。
それに、キレが違うんだなあ。歯切れが良くって、すぱっと切れる風合いである。
日本風に言うとチャンバラ風だが、いや、いや〜それではダサイ。雰囲気としては、フェンシングか。
風を切って振り下ろされるというか、鋭いモノで、突かれているような感じ。
フレーズが先へ先へと進んでいるし、ところどころ、ひゅっ ひゅっ と、弓と弦の音が鳴っている。
ひぇ〜っ。ホントにひゅっ。と音が鳴っているのだ。
テンポは揺れるし、振幅の幅が大きい。また、重音のところは、ゴツイんだが、渋い音色と、艶のある音色が混じって広がっていく。もちろん、超高音域の音も、ひぃ〜っと弾かれており、聴きどころである。

ソロ・ヴァイオリンの魅力が満載である。絶品だと思う。
タメも大きいし、息づかいの深さもあるし、リズムの揺れの振幅も大きい。それに、音の描き方が速く、鋭角的で、ダイナミックだ。これじゃ、圧倒されない方は、いないのではないだろうか。みごとです。
わずか20分弱の楽曲だが、熱っぽく、ヒートアップされる。
桜の花びらが、風に誘われて飛び散っていく。そんな潔さが最後に感じられる。これは、やられたっ。

パールマン バレンボイム パリ管弦楽団 1977年
Itzhak Perlman
Daniel Barenboim
Orchestre de Paris

録音状態は良くない。豪快には鳴っているが、擦れ、ヒスっぽい感じする。演奏はごつく厚ぼったい。
カップリング:ヴュータン ヴァイオリン協奏曲第4番、5番

「ふぁっそ し〜ら ふぁ〜しどれ みれど〜し」
「し〜し〜 ら〜そ ふぁれみふぁ ら〜そ」
どことなく、もの悲しく、明るくなりたいけれどなりきれない。そんな物憂げな序奏である。
弦と木管のフレーズが、ふわふわとは絡んでくるのだが、それにしても、かったるいぐらいに重くて、どてっ〜としたメタボ調である。
ティンパニーが鳴って、「ふぁ〜 みれどしふぁ〜 (雪崩落ち2回) ふぁっそし〜 ・・・」 
「ふぁみふぁみ ふぁみふぁそ らそらそ らそらし しらしれ そふぁそふぁ れどれど し〜」
古典的にも聞こえるし、「ふぁ〜らっそふぁ〜っ」という、ノビのある浪漫的な様相もある。
揺れ動く心情が感じられるものの、不思議な感じのする、かなり長い序奏部分である。
で、いつになったらソロ・ヴァイオリンが登場するのだろうと思ったら、なんだか序奏とは雰囲気の違うフレーズが登場する。
「しどみそ しどみそ〜 しどみそ〜」と、これまた序奏のように奏でてくる。
パールマンのヴァイオリンは、擦れた太めの音で、甘美に揺れる。
「ふぁ〜らそふぁ〜」 ふわ〜っと太くなったり、ふわ〜っと細くなったり自在に音の幅が変わる。
ひぃ〜っと、首筋をなでるように奏でるところもあって、捉まえづらく難しい。
たっぷり歌うのだが、艶があるものの綺麗な音色という感じがしない。
私的な好みからすると、うへっ。ごっつい〜 全体的に、ぶっとくて、ゴツイ。ガシガシしている。もう少しスリムになれないかな。と感じて、音色も濁っている感じを受けるのだ。汗くさく、泥臭いというか。
あまり繊細な感じがしない。堂々と歌うのだが、喉が太く、唸るようなコブシに近く、苦手である。
情感に溢れているのだろうが、押しつけがましい気がする。うへっ。オケと共にメタボである。
超テクの楽曲らしいが、ヴァイオリンなんぞ弾いたことがないので、よくわからない。
でも、主となる旋律は、シンプルである。
「ふぁし ふぁし ふぁし ふぁ〜 らし らし らし ら〜」
「ふぁ〜 ふぁ〜 ふぁ〜」「ふぁ〜そら らし〜どし〜 どみ〜れ どしら・・・」
ところどころ重音で、まったり、どっぷり〜と奏でられる。ホント、どっぷり型で。うぷっぷ。

途中、ティンパニーと金管が2発ほど、ぱぱ〜っ。と鳴ったあと、「ふぁふぁ〜みれどしら ら〜」
「そふぁみ み〜 ふぁそふぁみれ〜どみれど〜 ふぁふぁ〜・・・」。
「ふぁそら ら〜そふぁみ〜 そ〜らしどれ〜どしら らしらそふぁ み〜」 どうやら、後半に入ったらしい。
切々と弾かれるパールマンさんのヴァイオリンは、ゆったりと、滔々とした流れで、甘く。どっぷり。
開放的な図太い線で鳴ってくる。タメの多いこと、このうえないが、最後には、猛烈なパッセージがある。
ひよぉ〜っ と、メチャ大きな跳躍があり、まるで、パガニーニばりのジプシー音楽的に、しゅるしゅる〜っと花火が打ち上がったように終わる。

わずか20分程度の楽曲だが、甘いくせに、何度聴いても、枠から飛び出してしまう自由奔放さに翻弄され、う〜ん。私的には難しく、とらえどころがない。
何が言いたいのか、ワカラナイのだ。全部主張されているのだが、核心がないような。そんな感じ。
で、バレンボイムさんの振るオケの序奏部も重いし、パールマンさんのヴァイオリンも重いし、う〜 ダブル攻撃なのだ。厚ぼったく 、執拗に、大仰に演奏されるのが、私的には好みではないし、あまり録音状態がよろしくないので、うっぷ ぷ〜である。
とにかく、最初にこの盤で聴いてしまうと、食傷気味になって、いっきに遠ざかってしまうかもしれない。

ミンツ メータ イスラエル・フィル 1988年
Shlomo Mintz
Zubin Mehta
Israel Philharmonic Orchestra

録音状態は良い。しなやかで美しく絶品。
カップリング:ヴュータン ヴァイオリン協奏曲第4番、5番、サン=サーンス「序奏とロンド・カプリチオーソ」

全体的には、さらり〜と流れて、さっぱりした淡泊系である。
間違っても、パールマン盤のような、ごつくて、鬱陶しいぐらいの厚さはない。
「ふぁっそ し〜ら ふぁ〜しどれ みれど〜し しし ら〜そ ふぁれみふぁ ら〜そ」
どことなく軽快なコミカルな冒頭になっており、付点がちょこっとついてて、弦と木管のフレーズがふわふわと絡む。 長い序奏なのだが、テンポよく、スイスイと進んでいく。
メータが振っているのだが、リズミカルすぎるほど速く、もちっと粘っても良いのでわ〜と思うほど、あっさり風味である。

情感が平板で、なんとなーく、情感っていうのが欠如している感じで、スカスカした鳴り方だ。でも、この楽曲では、ヴァイオリンの邪魔さえしてくれなきゃ。それでいい。
ティンパニーが鳴って「ふぁ〜 みれどしふぁ〜 (雪崩落ち2回) らそふぁみ〜」 
「ふぁみふぁみ ふぁみふぁそ らそらそ らそらし しらしれ そふぁそふぁ れどれど し〜」
「ふぁ〜らっそふぁ〜っ」という、とてもシンプルな音が続く。なんだか、密度が高くなく、スカスカしている。
で、かなり長い序奏部分で、ようやく、ソロ・ヴァイオリンが出てくる。
序奏とソロヴァイオリンのフレーズの関係が、なんだか、そこで、いったん終わるかのような、微妙な間合いが入る。主題が変わって、さあ 出番です。そろ〜っと出てきてください。と言っているかのような。
「しどみそ しどみそ〜 しどみそ ど〜 ふぁそしみ〜」

ミンツさんのヴァイオリンは、深い音色で、柔軟性があり、ノビがあって、う〜ん。さすがっ。
余裕が感じられる。洗練された音色で、濁りのない透明度の高さや清潔感がある。
こう言っちゃなんだが、パールマン盤とは雲泥の差で、はあ。こういう楽曲だったんだ。と、旋律が、綺麗に浮かび上がってくることに、思わず喜びを感じてしまうほど。
あまりオケの方は感心しないが、このヴァイオリンの歌い方、情感の出し方には抑制が効いている。
そのくせ、語りかけて来るような雰囲気がある。
で、聴いている聴き手が、ついつい、入れ込んで聴いてしまう。という雰囲気になっている。押し付け気味な演奏は、引いてしまうけどね。オケがイマイチだが、ミンツさんの演奏は、う〜ん。優しい。優しい語り口である。特に、モデラート部分 が良い。
「ふぁ ふぁ〜みれどしら らら〜 そふぁみれ れれ〜 みふぁ〜」
「ふぁ〜そら ら〜そふぁみ そ〜そらしど れ〜どしら ら しらそふぁみ〜」
心の底から、ふわ〜っと解きほぐしながら、じわ〜っと湧き起こって、ふわ〜っと立ち上っていく情感である。ごくごく自然に、のびやかに開放してくれるところが、ミンツの巧いっ。ところだと思う。
いきいきとした若さがあり、喜びに満ちあふれているが、それが、嫌らしくない。上品に包まれて、楚々としているのが、う〜ん。すげっ。

高音域の美しいのびは、ちょっと硬めだが、輪郭がすっきりと、洗練された曲線を描いており、なめらかだし、どこにも、余計な力が入っておらず、無理が感じられないのだ。で、メチャ美しく感動的である。
独奏部分なんぞ、メッチャ美しい。美しすぎて〜 すごすぎ。
1963年 グリュミオー ロザンタール コンセール・ラムルー管弦楽団 Ph ★★★
1974年 チョン・キョン・ファ フォスター ロンドン交響楽団 De ★★★★★
1977年 パールマン バレンボイム パリ管弦楽団 EMI ★★
1988年 ミンツ メータ イスラエル・フィル ★★★★★
所有盤を整理中です。

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