アレンスキー ピアノ三重奏曲第1番 Arensky: Piano Trio No.1

 アレンスキー ピアノ三重奏曲第1番 Arensky: Piano Trio No.1
ボロディン・トリオ 1986年 Borodin Trio

渋く枯れた雰囲気を持つ演奏で、勢いには欠けているが、適度な重みがあり、渋いおじさま風の演奏だ。
1楽章の冒頭、くぐもったピアノの音に続き、ヴァイオリンが物悲しいフレーズを弾き出す。これが、とても甘いフレーズで、一度聴いたら忘れられないほど印象深い。チェロも甘く退廃的とも言える濃厚な浪漫派のフレーズを奏でていく。ボロディン・トリオの演奏は、甘さ控えめに渋い色調。テンポもゆったり穏やか、諦念のように静かで、どこか遠くを見ているかのような雰囲気を漂わせている。悲しみを帯びつつ膨らみを持たせたフレーズは、秋色に染まってくるかのようだ。晩秋の風景を見ているような気分になる。
アレンスキーのピアノ三重奏は、ピアノとチェロとヴァイオリンの3者による演奏である。ヴァイオリンは、まるでヴィオラのように低い声だ。ピアノも穏やかで余裕がある。チェロの響きは、誰であろうと受け入れることのできる懐の奥深さが感じられる。

2楽章は、弦のピチカートとピアノのワルツのような楽章で、ノリの良い軽快なスケルツォ。ボロディン・トリオの演奏は、ちょっと重めだが、絨毯のうえで繰り広げられる演舞のようだ。スマートとは言えないエスコートだが、初老風の演奏で、年齢相応にゆったり品良く社交を繰り広げている。3楽章は、ヴァイオリンの細く泣き細るようなフレーズが続くエレジーと名づけられた楽章で、チェロのメランコリックで寂しい気持ちが伝わってくる。ピアノは、チャーミングに慰めており、まるで、おじいちゃんの救いは孫娘という感じになっている。いやいや~ 笑ってはいけない。郷愁に浸りきっていては未来がない。元気ださなくっちゃ~っと、励ましてあげているような演奏だ。そして、夢のなかに誘われ、一瞬にして天上の雲のうえのなかに突入してしまった感覚になる。深刻なメランコリックさで、じっとり重いエレジーであるが、この演奏は、身につまされてしまうかも。

 アレンスキー ピアノ三重奏曲第1番 Arensky: Piano Trio No.1
ボザール・トリオ 1994年 Beaux Arts Trio

ピアノ:メナヘム・プレスラー
ヴァイオリン:イダ・カヴァフィアン
チェロ:ピーター・ワイリー

芳醇な香りを漂わせ、迸る流れのような華麗な演奏だ。渋くて甘いフレーズで、一度聴いたら忘れられないほど印象に残る楽曲。くぐもったピアノ、物悲しく渋い音色のヴァイオリンとチェロ。ボロディン・トリオの演奏は、乾いてて擦れた音色で、しんみり、ため息をついたような演奏だったが、ボザール・トリオの演奏は、息が長く濃厚で、たっぷりとした太い筆で、ぐい~っと演奏してくる。迸るような熱情があり熱い。情感たっぷり、うねるようなフレーズを描いてくる。猛々しくもあり勇猛果敢で、シナをつくって色香で迫ってくる。これは難しい女性を相手にしてしまったと苦笑しちゃう。優しく柔らかに迫られて、これには、まいってしまった。テンポを揺らせながら弦が絡み合い、うねるような動線を描いて上昇し跳躍する。チェロとヴァイオリンの細かな動き、甘くてとろみのあるたフレーズを奏でるなか、ピアノが知的に沈静して鎮めていく。むせかえるような甘さがあるが、水面を走るような動きをしてくるので飽きることはない。

2楽章は、ピアノが跳躍しているなか、弱音のヴァイオリンが猫の爪のようにカッシカッシ。ホント猫のようにすばしっこい。動物的だが、退廃的な風情を醸し出しているところがすごい。メランコリックな旋律に呑み込まれように、掌の上であやされ、聴き手が遊ばれているような感じがする。劇的でシンフォニーのように聞こえてきて、たった3人で演奏されているとは思えないほど大きな演奏だ。こぢんまりした閉塞的な室内楽という感じではない。3楽章は、物思いに耽る女性の雰囲気だ。セピア色に染まりつつあるが、艶、色香にむせてしまうほどに濃厚。男の背中というより、ボザール・トリオの演奏は女性的。ショパンのような甘さ、チャイコフスキーの渋さがない交ぜになった感じ。ベタにそう思う。4楽章は、ピアノとチェロが、ダイナミックに動く楽章で、特にチェロが、猫が喉をゴロゴロいわせているように細かく震える。寒さで震えているような演奏とは異なり、獲物を狙う猫の尻尾みたいに動いている。ボザール・トリオの演奏は、全体的に暖かく、安定感と安心感があり、後半は、春の息吹を感じる。柔らかいひざし、光がこぼれ落ちるような色彩感。ピアノが、特に際立っており、光がこぼれ落ちるような、柔らかく色彩的に奏でられている。


 アレンスキー ピアノ協奏曲ヘ短調 Arensky: Piano concerto
ドミートリー・ヤブロンスキー コンスタンティン・シチェルバコフ ロシア・フィル 2008年
Dmitry Yablonsky Konstantin Scherbakov Russian Philharmonic Orchestra

甘くてセンチメンタルな楽曲だけど、ちょっと主題を使いまわししすぎという曲である。冒頭から、ご大層に悲劇の幕開け~という風に始まり、木管の彩りも明るいが、歌謡風フレーズがたっぷり詰まっている。冗長的で、主題を使いまわしをしていくので、とても大らかに感じる。ラフマニノフ、ショパン、チャイコフスキーの匂いがする。のどかに甘くてよろしいかと。主題がシンプルすぎて、ちょっぴり退屈しちゃうが、作品2ですからね。若い頃の可愛い作品。2楽章には、華麗なる甘い調べが詰まっており、抒情的な雰囲気は織り込まれており、やっぱりショパン風に聞こえる。3楽章は、前楽章からうって変わって泥臭い楽章で、弦と金管が主題を提示する。舞曲風に速いパッセージが登場するのだが、速いスケールと跳躍をピアノは繰り返す。主題はオケで、その彩り的に、チャーミングなピアノが踊るという風情だ。主題が音を変えて登場するので、がらっと雰囲気が変わるわけではない。なので、ちょっと、ちょっぴり飽きちゃうかもしれない。良い主題でも、あまり繰り返し使用すると、飽きちゃいますよね。展開を待っていると、あらま同じなのね。ちょっと、つまらない残念な結果に。ど素人のワタシが偉そうに言っております。


アレンスキー ピアノ三重奏曲第1番
1986年 ボロディン・トリオ Chandos ★★★★
1994年 ボザール・トリオ Ph ★★★★
アレンスキー ピアノ協奏曲
2008年 シチェルバコフ ヤブロンスキー ロシア・フィル Naxos ★★★

アレンスキーのピアノ協奏曲は、あまり馴染みがない。ウィキペディア(Wikipedia)で調べてみたら記載がありました。ピアノ協奏曲 ヘ短調 作品2は、アントン・アレンスキーが1882年に作曲。9歳で既に作曲を行っていた彼は、1879年、サンクトペテルブルク音楽院に入学し、在学中にこのピアノ協奏曲を作曲したそうです。モスクワ音楽院で対位法と和声学の教授となり、教育者としてラフマニノフ、スクリャービンやグレチャニノフらを育てることになり、チャイコフスキーの知遇を得て、教職の傍ら作曲にも旺盛な意欲を見せていったといいます。その彼のピアノ協奏曲には、ショパン、チャイコフスキーをはじめ、メンデルスゾーンを想起させる旋律線、リストを思わせるヴィルトゥオーゾ風のピアノ書法など、多くの先人の影響が垣間見えるとのこと。



 

YouTubeでの視聴

アレンスキー ピアノ三重奏曲第1番
Arensky Piano Trio No. 1 in D Minor, Op. 32
チャンネル:アレクサンドル・ボロディン - トピック
Alexander Borodin - Topic
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=RvbgEhuCIuA
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=JfR33uEcvsc
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=6NTaFmmt6Do
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=Cf0rkjluSy0

Arensky: Piano Trio No. 1 in D minor, Op. 32
ボザール・トリオ - トピック Beaux Arts Trio - Topic
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=akcciTGoHyM
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=ntY1QCVbhjs
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=1i079NfSSfY
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=KWHLp1cHh1Q


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