「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

ベートーヴェン ピアノ三重奏第5番 「幽霊」
Beethoven: Piano Trio No.5 "Ghost"


ベートーヴェンのピアノ三重奏曲第5番「幽霊」(作品70-1)は、1808年頃、ピアノ・ソナタとして書き始められましたが、途中で、ピアノ三重奏曲に変更されたものだそうです。

第1楽章 ニ長調 3/4拍子 ソナタ形式
冒頭の第1主題(溌剌としたスタッカートによる)に続いて、ヴァイオリンとチェロがユニゾンで音階を動き出します。
これを、第2主題としたり、第1主題の変形としたものとみなす場合があるそうですが、主題の動機を扱った経過部を経て、イ長調に転調して第2主題が現れます。提示部(反復あり)の後、展開部に入って再現部を経ると、展開部から反復し、そのままコーダに。冒頭のスタッカートの動機を奏して終わります。

第2楽章 ニ短調 2/4拍子 展開部を欠くソナタ形式
抒情的で悲歌的な雰囲気が漂う楽章で、第1主題は、弦のユニゾンの動機に、ピアノが呼応して繰り返されるもの。
第2主題は、ヘ長調で幻想的な趣を深めます。展開部はなく、再現部からコーダへと続くもの。コーダでは、64分音符を奏しながら終わります。

第3楽章 ニ長調 2/2拍子 ソナタ形式
明朗な楽章で、8小節の序奏があり、ヴァイオリンとチェロによる第1主題が提示されます。主題は、ピアノによって繰り返され、経過部に続き、やさしく歌われる第2主題は華やかなもの。展開部では、第1主題が主に扱われ、再現部では第2主題がニ長調で奏でられます。弦楽器のピッツィカートで始まるコーダから、ピアノが華麗に弾かれて終えます。

ワタシは、このタイトルに騙されました。全くイメージが違うっ。(笑) 

 

ボザール・トリオ 1964年
Beaux Arts Trio
ピアノ:メナヘム・プレスラー ヴァイオリン:ダニエル・ギレ チェロ:バーナード・グリーンハウス
  ← 2楽章


録音状態は、まずまず。古い録音なので仕方ないが、一応、リマスタリング盤である。(96kHz24bit) 演奏は、2楽章が渋くて暗いっ。さすがに、これだけ擦れた声で泣かれると、幽霊というより鬱状態で救いようがない。
カップリング:ベートーヴェン ピアノ三重奏
7番「大公」、4番「街の歌」、5番「幽霊」のカップリングである。

1楽章
「幽霊」ってタイトルがついているので、ん〜タラ ラッタッタ タタタタ タタタタ・・・と勢いよく軽快に出てきて、びっくりしちゃった、タイトルとは全くイメージの違う楽曲である。
最初に聴いたとき、幽霊ってタイトルが付いているから、てっきり、夏の夕涼み、肝試しに持ってこいだと思っていたのに、調子が狂っちゃったことがある。 ハイ、この楽曲は、タイトルとはイメージが違うんです。

ここに聴いた感想を書こうと、改めてウィキペディア(Wikipedia)で調べてみたら・・・
「この曲は、1808年に、ピアノ・ソナタとして書き始められ、元々はルドルフ大公に捧げるはずであったが、エルデーディ伯爵夫人が、ピアノ三重奏曲の新作を熱心に依頼したために 、当初の計画を変更し、ピアノ・ソナタから、2曲のピアノ三重奏曲に変わったという。

この第5番の「幽霊」というタイトルは、ベートーヴェンがシェイクスピア悲劇「マクベス」のために書かれた、魔女の宴会のシーンのスケッチをこの作品に流用しようとしたためといわれている。
しかし、魔女と幽霊は全くの別物であり、あるいは第2楽章の開始部分が、当時の聴衆にとっていかにも幽霊が出てきそうな不気味な雰囲気に感じられて、そう呼ばれたと言われているが、実際はそれほど不気味とはいえない。
いずれにしても、この「幽霊」という名称は、作品の本質とは大きな関わりはなく、誰が命名したのかはいまだはっきりとしていない。・・・とのことだった。

へぇ〜 なんだぁ。そうだったのか。足が無いどころか、元気で明るく、活発そのもの。
チェロが、冒頭、ガツンっと一発入れたと思ったら、ピアノとヴァイオリンが、巻き舌に乗っかって、カッカッカッカっと弾んで飛び出して言っちゃう。 で、ピアノとヴァイオリンが絡むのだが、再度、ん〜タラ ラッタッタと弾んで元に戻ってくる。
3拍子だけど、元気に弾んだ女の子のようで、かなり活発。
チェロは、下支えをして地味なのだが、ヴァイオリンもピアノも、巻き舌風に軽やかに、舞い上がっていくようなフレーズが多用されている。

2楽章
で、確かに2楽章は、短調に変わるので、イメージは暗くなる。
あれだけ、活発に弾んでいた1楽章に比べて、はぁ? なんでー こんなに暗いのぉ。
1楽章は躁状態で、一気に2楽章で鬱状態に陥れられたみたいで、メチャ、くらーっ。暗すぎっ!
チェロが、「みぃ〜〜しぃ〜」 ピアノは、「しぃ〜どしらそぉ〜み しぃ〜」 
チェロが、「そぉ〜〜みぃ〜」 ピアノは、「らぁ〜どしらそ そ らぁ〜」
チェロが、「らぁ〜〜れぇ〜」 ピアノは、「どぉ〜れどし られしぃ〜」
チェロが、「ふぁ〜〜どぉ〜」 ピアノは、「らぁ〜しらふぁし みみみみみ・・・」

まあ、このチェロの響きが、メチャクチャ擦れており、この出だしが、そういえば幽霊っぽいかな。と思う。
チェロがねえ。弱音で、憂鬱な暗さを秘めてて、擦れ声なのである。 いかにも、メソメソ泣いているような、すすり泣き風だ。 これじゃー 幽霊というより、鬱状態ですよ。
ピアノは、足のように、ひろひろ〜っと明るく響くんだけど、テンポは遅めだし、低いジミーな音である。 チェロの音って、ステキな甘いボイスだと思っていたのに、こんな擦れ声で泣くんですねえ。 ヴァイオリンの音も低めの声だし、弦の響きには驚かされる。 タイトで、首が絞まる感じだ。
はあ〜 こんなメソメソ音が出るんですねえ。ホント、悲しくてメソメソ〜なんである。
まあ、日本の幽霊のように、ウラメシヤ〜って感じではないし、ピアノは、結構楽天的なので、幽霊というよりは可愛い女の子が、木の下で、 メソメソ、落ち込んじゃって救いようがない。
最後の、弦のピチカートを聴くとオチが着いちゃったみたいで。はあ、さようなら〜

3楽章
はぁ?
3楽章は、これまたうってかわって明るい。 ピアノが爽快に、明るく軽快に動き出す。
甘いチェロの声が聞こえて、さっきの楽章は、どう考えたら良いのでしょう?
まあ、楽章間の関連づけはないのかもしれませんが〜 明るくて、ハイ、春の響きがある。 「そぉ〜ふぁみ らららっ・・・」 明るく、ちょっぴり浮かれた感じのフレーズが可愛くなっている。

ボザール・トリオさんの演奏は、ひとことで言っちゃうと渋いです。古い録音なので、録音状態がイマイチで、明るいモノの、ちょっと重めだ。で、2楽章のインパクトが凄い。ハイ、落ち込み方が、救いようがなく〜 ワタシには、鬱っとしすぎてリアルですね。ちょっと敬遠気味〜(苦笑) 
1楽章、3楽章は、もう少し伸びやかな演奏が好ましいかなあ。
当盤は、ボザール・トリオさんの旧録にあたる。ちなみに、ボザール・トリオは、55年に結成されて、メンバーの交代はされているが、ずーっと、2008年まで続いていた。
ワタシが所有しているこの盤は、ベートーヴェンのピアノ三重奏の4番、5番、7番のカップリングとなっており、当初のメンバーで演奏されたもので、ピアノ:メナヘム・プレスラー  ヴァイオリン:ダニエル・ギレ チェロ:バーナード・グリーンハウスさんの組み合わせとなっている。

 

ボザール・トリオ 1982年
Beaux Arts Trio
ピアノ:メナヘム・プレスラー Menahem Pressler
ヴァイオリン:イシドーア・コーエン Isidore Coken
チェロ:バーナード・グリーンハウス Bernard Greenhouse

ほぉ〜良いヤン

録音状態は良い。滋味な感じはするけれど、そこはかとなく、聴かせてくれる。
カップリング:3枚組BOX CDジャケットをみてもらったらわかるように、
左から、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲第5番「幽霊」と7番「大公」
中のラヴェルとショーソンのピアノ三重奏曲
右のドヴォルザークのピアノ三重奏曲第4番「ドゥムキー」とメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番が、カップリングされたお徳用盤となっている。
レーベルは、フィリップスからデッカに変わっている。

ボザール・トリオは、1955年に結成されて2008年頃に解散した、アメリカのトリオである。
このCDは、このトリオとしては、新盤にあたる。
64年の録音では、ヴァイオリンが、ダニエル・ギレさんだったが、82年の録音では、コーエンさんに替わっている。

で、ちょっと調べていたら、ベートーヴェンの作品1って、ピアノ三重奏曲第1番なんですねえ〜
1番〜3番までが作品番号が1になっていた。しらなかった〜
ちなみに
1番〜3番までは、作品1で、枝番付きで1-1 1-2 1-3と採番されている。
4番は、街の歌とタイトルがあって、作品番号が11
5番は、幽霊というタイトルがあって、作品番号が70-1
6番は、タイトルなしで、作品番号が5番と同じく70-2
7番は、大公というタイトルがあって、作品番号が97である。
その他は調べていない。

ベートーヴェンさま、ピアノ三重奏曲も作品数が多すぎ。弦楽四重奏曲なんて16曲あって、難しすぎて、怖ろしくて聴けないし、肝心要のピアノソナタなんぞ、32番まであるし〜 とても全て聴ける筈がない。
作品が多すぎなのだ。ピアノ三重奏曲だって、全て聴けないよぉ。勘弁して〜と言いたくなっちゃう。

この5番「幽霊」は、タイトルがおもしろそう〜 と、単純な動機で聴き始めたが、どこが幽霊やねん。
って感じで、全くイメージとはちがっていた。
1楽章は、快活で、転がる3連符が楽しいというか、ずーっと「ん〜たら らったったぁ〜」と続く。
まあ、聴きやすいっていえば聴きやすいが、あのぉ〜 転がってばっかりなんですが。と、言いたくなってしまうほど、旺盛なトリルがついてて、ご丁寧に繰り返しがある。

2楽章は、ラルゴの楽章で、しっとり〜 ヴァイオリンのすすり泣きっぽいフレーズが、幽霊っぽくもあるけれど、
まあ、このタイトルからは、離れた方が良いようである。
ピアノも密やかに寄り添い、沈みがちで〜 ウツウツツ〜 チェロの響きとピアノが泣き節に彩られた歌謡風でもあるが、シューベルトのピアノ曲のように暗い。暗すぎて〜 ついていけない。
階段をおりていって、ぽそっと終わるっ。
ありゃー このピアノが、降りていって〜というところが、それっぽいかもしれない。

3楽章
ピアノも明るく、ヴァイオリンは、高音域へ伸びて行こうとしている。
こうやってピアノ三重奏曲を聞くと、ピアノって、やっぱり異質な音なんだなあ〜って思ってしまう。
弦の響きとピアノって、どうも寄り添わない、交わらないモノなのではないのかなあ。同質化しないで、対抗しちゃう関係に陥りやすいような、そんな感じがする。 もちろんボザールトリオさんの演奏が悪いって言うわけではない。
音質は違うっていう意味なのだが、そんなの、あたりまえやん。楽器が違うのだから〜 でも、やっぱり異質なんだよね。
チェロとヴァイオリンは、どちらかというと、この楽章ではかすれ声に近い。
まあ、それにしても、1楽章も3楽章も、明るくて執拗なぐらい同じ音型が続けられるのに、なぜか、2楽章だけが、暗すぎて、ドンビキしちゃうことになってしまう。

  トリオ・フォントネ 1990年
Trio Fontenay
ヴァイオリン:ミヒャエル・ムッケ Michael Mücke  チェロ:イェンス・ペーター・マインツ Jens Peter Maintz ピアノ:ヴォルフ・ハーデン Wolf Harden

いかすぜっ


録音状態は良い。とても瑞々しく軽快な演奏だ。
カップリング:
1〜3 ベートーヴェン ピアノ、ヴァイオリンとチェロのための三重協奏曲
 インバル フィルハーモニア管弦楽団 
4〜6 ベートーヴェン ピアノ三重奏第5番「幽霊」
ベートーヴェンのピアノ三重奏曲選集として第1番〜7番が、3枚組BOXとしても発売されている。
1楽章
出だしは、「みぃ〜れど らどらふぁ そふぁみど しらそみ れどしら そふぁみっ ふぁ そぉ〜」と、とっても快活に出てくる。
で、一気に、このあと雰囲気が変わって、「そぁ〜らし しれみ ふぁ〜 (れぇみふぁふぁ〜)」と、柔らかいフレーズが登場する。でも、やっぱり、快活で、スイスイと繰り返して行く。
チェロとピアノのフレーズが、エンジンの軽いトルクのように進む。この転がる付点のリズムが、とっても、柔らかく、煌めき度があり、トリオ・フォントネさんの若さあふれる演奏は、聴いてて、とっても爽やかだ。
途中で転調もしているのだが、インパクトあるのが、やっぱり冒頭のユニゾンからの飛び出しだ。軽快で、付点のリズムが、ころころ〜 チェロも柔らかい。パラパラパラ〜っと、キュートなピアノの音が聞こえてくる。
最初の主題と、続く主題の繰り返しが行われ、三連符と十六音符が、入れ替わるフレーズが続く。
ん? 何度続いているのだろう。
とにかく、「ん〜タラ ラッタッタ」と弾んでいくところが、とっても楽しい。

2楽章
ボザール・トリオさんの演奏のところでも書いたのだが、
チェロが、「みぃ〜〜しぃ〜」 ピアノは、「しぃ〜どしらそぉ〜み しぃ〜」 
チェロが、「そぉ〜〜みぃ〜」 ピアノは、「らぁ〜どしらそ そ らぁ〜」と、掛け合っているのだが、このフォントネさんの演奏は、やっぱり若くて、さらっとしている。
ボザ−ル・トリオさんの演奏は、めちゃ湿気てて、メソメソ泣いているような、ウツウツとした演奏だったのだが、雰囲気は違う。幽霊というより、ノスタルジックな雰囲気はするけれど、細身で楚々としている。
楽章のラストに近づいてくると、ピアノの低音域の音が、ボソボソボソ・・・と鳴り出し、段々と、沈んでいく。
この時のピアノの拍感覚が、ちょっと均質的ではないのだが、そこがミソだったりして。うにゃうにゃ〜っと、歪み、ヴァイオリンとチェロの柔らかなフレーズが、襞のように美しく、悲しみを蓄えていく。

3楽章
「ん、しそれみそ どぉ〜れみふぁ らしどど どぉ〜」
「みれどし らそふぁみ みぃ〜ふぁ〜」
「らしらど ふぁ〜 そ らそらど ふぁ〜っそ らそらそ らそらど しぃ〜ど れぇ〜みみみ」
このフレーズが、とっても楚々としながら、ホント可愛く奏でられている。
ふふっ ベートーヴェンの楽曲で、こんなにチャーミングで良いのかしらん。
柔らかいフレーズだが、しっかり腰があり、「そぉ〜ふぁ みどらふぁれし そぉ〜ふぁ みどらふぁれし・・・」と繰り返す。
総体的に、細身だが、そこが軽やかさに繋がり、速いテンポで、スイスイ〜っと、可愛く進む。
チェロが、軽やかに奏でられ、重く、渋く感じないところが、今風って感じだろうか。
ある意味、ちょっと毛色が違うんじゃーっと、思いつつも、軽快さに押し切られた感じだ。
瑞々しく軽やかに付点を処理しているので、まるで、フランス系の楽曲を聴いているような雰囲気がするのだが、渋くて重い演奏から、ちょっと逃れたい時や、古い演奏から逃れたい時には、ワタシ的にはうってつけだと思う。
1961年 スーク・トリオ Sup  
1964年 ボザール・トリオ Ph ★★★
1982年 ボザール・トリオ Ph ★★★★
1982年 アシュケナージ パールマン ハルレ EMI  
1990年 トリオ・フォントネ TELDEC ★★★★
所有盤を整理中です。

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