ベートーヴェン ピアノ三重奏第7番「大公」 Beethoven: Piano Trio No.7 "Archduke"

 ベートーヴェン ピアノ三重奏曲 第7番「大公」
Beethoven: Piano Trio No.7 "Archduke"
ピアノ:ウラディミール・アシュケナージ Vladimir Ashkenazy 1982年
ヴァイオリン:イツァーク・パールマン Itzhak Perlman
チェロ:リン・ハレル Lynn Harrell

アシュケナージさんを初めとするお馴染みのメンバーでの演奏だ。3人バラバラという感じで、音が絡み合っていないというか、しっとり瑞々しいというわけにはいかない。今、聴くと、かなりイマイチかもしれない。全体的に荒れて、カサカサしている感じがする。テンポは普通だが、響きがパサついているためか、弾力性が少なく感じられる。フレーズの歌い方は、少しテヌート気味なのにフレーズの切り方が細かいようで流れて行かない。大きなうねりを持って歌うというのではなく、ぶつ切り的に聞こえる。しなやかな弾力がないので、ノビ感がなく、特にチェロが、朗々と歌えず堂々とした恰幅の良い弾き方ではないように思う。溶け合わない響き、細切れのフレーズで、やたら、弦の引きが強いとか、ピアノのタッチが強いとか・・・。それしか感じられない。大きな膨らみ感や、ゆったり感、余裕がなく、全体が弱々しい気がするのに、ダイレクトに、吃音で発せられているかのように、語尾がキツい。
録音状態とフレージングで大損している気がする。異常乾燥注意報が発令中という感じになっており、パサついて残響も少なく、ちょっと聴いてられない感じがします。


 ベートーヴェン ピアノ三重奏曲 第7番「大公」
Beethoven: Piano Trio No.7 "Archduke"
ボザール・トリオ 1979年
Beaux Arts Trio
ピアノ:メナヘム・プレスラー Menahem Pressler
ヴァイオリン:イシドーア・コーエン Isidore Coken
チェロ:バーナード・グリーンハウス Bernard Greenhouse

ゆったり遅めのテンポで、昔ながらの大らかで優美な運びだ。当曲の大公は、古今東西~ ピアノ三重奏曲のなかではダントツの有名な楽曲だ。演奏されているボザール・トリオさんは、1955年の結成後、ずっと第一線で活躍されてきた著名な団体だ。この団体の十八番、他を寄せ付けないこの演奏は、1979年のもので、年代もののワインを飲んでいるかのような深々とした味わいが漂う。ダイナミックな打音があったり、ぐぐっとブレーキをかけてみたり、強弱をつけながら進むが、そこには確実に年輪を刻んできた、確かさがあるような気がする。決して重すぎず軽すぎず、プレスラーさんのピアノは高音域でのチャーミングな音を響かせ、間合いの巧さがある。チェロの渋い低音のフレーズは、まるで使い込んだ高級家具のように周囲に馴染んだ存在感がある。楽章最後の主題の演奏は、しみじみ一抹の寂しさみたいなものを織り込みつつも、恰幅の良い響きとなって終わっており、自信と誇りみたいなものを垣間見た感じがする。第2楽章では、さすがに、若々しいとは言えないけれど、軽やかに喜びを表現しているようだ。くすんだ色彩感でセピア調の空気感がある。ヴァイオリンの音色とピアノの活力ある音色が、チェロの響きのなかで、自分の色を主張している。それぞれの個性ある音が、混濁しないで存在し、鼎談しているような感じで整えられている。
第3楽章は、「そぉ~そ ふぁ ふぁみ みふぁそ らぁ~ら そ そぉふぁ~ ふぁそら しぃ~」じわじわと、懐古調のように、ゆったりした歩みで進む。年輪を刻んだ壮年時代のような、まあ、定年退職間近って感じの管理職が、過去の自分の職歴を振り返るかのような、しみじみ感、そして、矜持もあるような気がする。ちょっと例えがまずいかもしれないが、年齢の高い方の演奏の方が、しみじみ感が味わえるのではないだろうか。そんな気がする。
第4楽章は、軽やかにスキップしていく転がる楽章だ。瑞々しい演奏とは言えないが、精一杯、運動してますという感じだろうか。ピアノのトリルが可愛い楽章だ。すごく、速く~速く~ 転がって、猛スピードで駆け抜けて行こうとしている。で、ラストは、間合いをとって、ダメ押し的に終わっている。ボザール・トリオさんの演奏を聴いてて、ふと思ったことだが、1つの楽曲のなかで、楽章ごとに、人生の成長過程を描いているかのように聞こえた。脂ののった働き盛りの年代と、それが過ぎた頃の年代、そして、また、青春を取り戻したいと頑張っているかのようなシルバー世代のような楽章って感じがする。


 ベートーヴェン ピアノ三重奏曲 第7番「大公」
Beethoven: Piano Trio No.7 "Archduke"
トリオ・フォントネ 1990年~92年
Trio Fontenay
ヴァイオリン:ミヒャエル・ムッケ Michael Mucke
チェロ:イェンス・ペーター・マインツ Jens Peter Maintz
ピアノ:ヴォルフ・ハーデン Wolf Harden

録音状態は良い。押し出しの強い演奏ではない。さらっとした風合いで、リズミカルで爽やかな演奏だ。トリオ・フォントネ(Trio Fontenay)は、1980年にハンブルグ音楽大学に在籍していたメンバーで結成されたピアノ三重奏団である。ウィキペディア(Wikipedia)を元に記述すると、「フォントネ」はフランス語で、 「源泉」もしくは「幻想」といった意味なのだそうだ。各地で演奏活動を行って、CD録音も多いのだが、残念ながら2006年に解散してしまった。
今日は、大公を聴いたのだが、当盤は、1994年のドイツレコード批評家賞を受賞しているので、期待して聴いた。1楽章は、淡々と演奏されているようで、確かに、新しい新鮮な息吹を感じるものなのだが、あまり主張は強くない。テンポは、普通で、あまり肩肘をはらず、自然な感じで、淡々とした演奏に聞こえる。ピアノのトリルは細かく、パランパラン~っと流れて行く。息づかいは柔らかく、ふっとした間合いがあり、強引で、ダイナミックな、強烈なアタッカは少なめ。フォルテの強烈な、押し出しの強い演奏が多い気がするが、他の部分は、柔らかい優しい、弱音の部分がふんわりしてて優しいのだ。昔の演奏で、あまりにも恰幅の良い演奏を聴いてしまったためか、ちょっとモノ足らなさを感じてしまうかもしれない。
第2楽章は、軽やかに歌っており、パステルカラーのように明るくて、チャーミングな演奏となっている。軽やかでありながら、きちんとキレもあって、しっかりと弾力のある跳躍が聞こえてくる。ピアノの音が、クリアでダイナミック、タメも十分~ ピアノの表情が豊かで、色濃く反映している演奏だ。
第3楽章は、まるで小学校の教室で、子供たちを相手に歌を歌わせているかのような風景だ。じっくりと演奏するというよりは、少し速めかもしれないが、このテンポの方が、自然なのかもしれない。ふわっと、軽やかで優しい表情で奏でられており、リラックスできる楽章となっている。第4楽章は、アクの強い演奏ではない。他盤で聴くと、なんか煽っているかのような、三つ巴~という感じの押し出しの強い演奏があるが、調和して愉悦性の高い演奏で、ピアノのトリルが、とっても興味深い。音がいっぱい転がってて~ 弱音部で、間合いもあるし、歌っているよね~ 3人で楽しみながら演奏している気がする。溌剌としてて、リズミカル。ヴァイオリンの伸びやかな歌が、しっかり聞こえているし、がっついて演奏されていないところが、とても聴いてて楽しい。ワクワク感が聴き手に伝わってくる演奏だ。尻上がりに調子が出てきたような、自分たちの個性が出てきたという感じがする。



 ベートーヴェン ピアノ三重奏曲第7番「大公」
Beethoven: Piano Trio No.7 "Archduke"
スーク・トリオ 1961年
Suk Trio
ピアノ:ヤン・パネンカ Jan Panenka
ヴァイオリン:ヨゼフ・スーク Josef Suk
チェロ:ヨゼフ・フッフロ Josef Chuchro

スーク・トリオさんの演奏は、当盤の1961年、75年、83年の録音がある。ワタシが所有しているのは、当盤の61年と83年のCDで、2回目の録音が抜けている。で、ピアノは、ヤン・パネンカさんが、1回目と2回目、3回目はヨゼフ・ハーラさんである。
ピアノとヴァイオリン、そしてチェロが絡んでくる。ベートーヴェンにしては、歌心満載の晴れやかな楽曲なのだ。で、スーク盤も、かなりリズミカルで、弾んだ感じがする。特に、ピアノのリズム感が軽やかで、コロコロ~ ソフトで柔軟性がある。多少、厳つい演奏もあるように思うが、この演奏は、春風がそよぐ感じで、軽やか。 アクセントをつけているところも、ガツンっと入ってこないで重すぎない。チェロの音を聴いていると、むはぁ~ やっぱり古めかしい音。シワシワのしゃがれた声に聞こえ、レトロ感が、満喫できそう。ピチカートの響きは、木靴を履いたネコが廊下を走っている感じだろうか。第2楽章は、「どれみみ みふぁそ~ そらしどぉ~ ふぁみれっれ みれど~ そらしっしぃ れみふぁどぉ~」と、軽やかに歌う楽章だ。ベートーヴェンが、こんな可愛いスケルツォを書いているとは驚いてしまう。何も知らないで聴いてしまうと、初期の楽曲かと思うが、作品96ともなると初期ではない。交響曲で言うと、7番が作品92、8番が93なので、その後の作品なのだ。ちなみに、作品90はピアノ・ソナタ第27番、作品91はウェリントンの勝利、作品95は弦楽四重奏曲第11番、作品96はヴァイオリン・ソナタ第10番、で、作品97はこの曲「大公」、作品98は歌曲「遙かなる恋人に」だった。
スーク・トリオさんの演奏は、古い録音なので、当盤を紹介するかどうか、ちょっと迷ったが、普段あまり聴かないので、最近、新しく所有した盤もないように思う。何故か、1928年録音のコルトー、カザルス、 ティボーのCDもあるが、さすがにね~。
しかし、ホント、聴いているうちにウキウキしちゃうほど、楽しくなってくる楽曲である。さすが充実した作曲群だ。


ベートーヴェン ピアノ三重奏曲第7番「大公」
1961年 スークトリオ Sup ★★★
1964年 ボザール・トリオ Ph 未聴
1979年 ボザール・トリオ Ph ★★★★
1982年 アシュケナージ パールマン ハレル EMI ★★
1990年~92年 トリオ・フォントネ TELDEC ★★★★


ベートーヴェンのピアノ三重奏曲第7番「大公」(作品97)は、1811年に作曲されており、ルドルフ大公に献呈されているため、このニックネームがあります。堂々とした楽曲で、優美さ、気品たっぷりの楽曲です。ピアノ三重奏曲といえば、まず、この楽曲が筆頭にあげられるのではないでしょうか。ウィキペディア(Wikipedia)を元に記述すると、
第1楽章 変ロ長調、4/4拍子 ソナタ形式
曲の開始から堂々としたピアノの主題が登場します。B♭ - D - A - B♭ - F という優雅な旋律を、ピアノがオクターヴ奏法で描き、ヴァイオリンが続きます。これをチェロが、がっしり~支える構図となっています。第2主題は、ト長調に変わり、音階を動機とした落ち着いた移行部です。ピアノを中心にして、弦が巧みに和声を補っているもの。展開部は変ホ長調で終わります。終結部は、ピアノのアルペッジョ、主題を斉奏して華やかに終わるもの。

第2楽章 変ロ長調 4/3拍子 明るいスケルツォで、変ロ長調の音階を基にした主題です。第3楽章 ニ長調 4/3拍子 変奏曲形式 アンダンテ・カンタービレで、緩やかな旋律の楽章です。第4楽章 変ロ長調、4/2拍子、8/6拍子 ロンド形式で、3連符を効果的に取り入れた快活な楽章です。
全4楽章 約40分の楽曲です。ピアノ三重奏曲は、結構、集まりやすいのか、息のあったピアノ三重奏団が演奏する以外にも、ソリストが、グループになって演奏している場合があります。




YouTubeでの視聴

ベートーヴェン ピアノ三重奏曲第7番「大公」
Beethoven: Piano Trio No.7 in B Flat, Op.97 "Archduke"
ボザール・トリオ - トピック  ボザール・トリオ 1979年 
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=aKLnNB0qH68
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=9FHYdf-D0vA
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=AOFvbID7g5w
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=WKtDJ8-87dw


Beethoven Piano Trio No. 7 in B-Flat Major, Op. 97, "Archduke"
ウラディーミル・アシュケナージ - トピック  アシュケナージ パールマン ハレル
Provided to YouTube by Warner Classics
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=eoDbisAwMQM
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=_3BJO-6iHLo
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=0TfHuX395mU
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=eoDbisAwMQM



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