ベートーヴェン 七重奏曲 Beethoven: Septet

 ベートーヴェン 七重奏曲
Beethoven: Septet
ベルリン・ゾリスデン 1990年
Berliner Solisten
ヴァイオリン:ベルント・ゲラーマン   ヴァイオリン:ライナー・モーク
ヴィオラ:ベルンハルト・ハルトーク  チェロ:イェルク・バウマン
コントラバス:クラウス・シュトール   クラリネット:カール・ライスター
ホルン:ラドヴァン・ヴラトコヴィチ   ファゴット:ミラン・トゥルコヴィチ

室内楽っていえば、たいてい、ピアノと他楽器のソナタとか、三重奏曲(トリオ)とか、四重奏曲(カルテット)とかで、それ以上になると珍しいかもしれない。ウィキペディア(Wikipedia)で調べてみたら、五重奏曲(クインテット)、六重奏曲(セクステット)、七重奏曲(セプテット)、八重奏曲(オクテット)、九重奏曲(ノネット)、十重奏曲(デクテット)と呼ぶらしい。
弦楽六重奏曲は、ブラームスやチャイコフスキーに有名な曲があるが、それ以上になると、う~ん、正直言って、あまり馴染みがないように思う。七重奏曲は、ベートーヴェン、サン=サーンス、ストラヴィンスキー、ブルッフの曲があるようだが、ここで、ご紹介するベートーヴェンの七重奏曲も、あまり聴かれていないのではないだろうか。まあ、もっとも、ベートーヴェンさまには、他に聴く曲(=聴かねばならぬ曲)が、わんさとあるので、致し方なしってところか。

実は、自分のCD棚を整理してて、えっ! こんな曲あったと驚いた始末なので、あまり褒められたことではない。日頃から室内楽に親しんでいないのが、超バレバレ。ベートーヴェンの七重奏曲は、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、クラリネット(B♭管)、ファゴット、ホルンという編成だ。コントラが入ってくると、かなり重くなりそうだが、実際に聴いてみると、さほどでもなく、さらっと軽快でノリ感もあるし軽妙さがあって楽しい。交響曲1番(作品21)と、同じ頃の1800年に作曲されてて、モーツァルトか、とも思ってしまうところがあるが、ころころと飛んでいくわけではない。1楽章は10分程度、2楽章は9分、3楽章は4分、4楽章は7分半、5楽章は3分半、6楽章は8分弱と、結構、バラバラの長さだ。ついつい、すーっと聴いていると、いつの間にか5楽章に突入してて、ホルンが吹かれて、あらら~っと、最初に戻って、何度か繰り返して聴かないといけない羽目になってしまった。でも、この曲、結構楽しいのである。

第1楽章は、冒頭こそ、いろんな楽器で、もしかしたら全員で奏でているのかも。クラリネットの音が入ってきて、柔らかくもリズミカルに弾んで行く。ヴァイオリンが軽快に明るく奏でているし、春の風を運んでくるようだ。クラと弦の相性って、いいなあ~って思いつつ、ぼーっと聴いてしまった。第2楽章もクラリネットが活躍しており、抒情的でゆったりとしたフレーズで、ヴァイオリンが、スプリングソナタのように絡んでくる。ファゴットも参加しているが、基本的には弦楽四重奏曲という感じがする。
第3楽章は、「ふぁ~み みぃ~ふぁふぁ ふぁ~らっ どっどれ どしらっ」って歌う主題があり、この主題に基づいて、いろんな楽器が入ってくる。ホルンやクラリネットが、絶妙なタイミングで入ってきて、巧いっ。最初は、もっちゃりした粘りのある旋律で始まるが、段々と気づかないうちに速くなってきて弾んでいく。弦のフレーズに乗っかって、ホルンが合いの手を入れて、木管が、さらっと弾んでいくのだが、このリズム感がホント楽しい。「らっ しっ そふぁ・・・」うぱぁ~ パパパ パパパ パパパっ。という、シンコペーションのリズム感が、アハハ~っ。メチャクチャご機嫌になる。
第4楽章は、変奏曲なのだが、「どぉ~しっそ どれみっ~れ みっふぁ みれ れっそっどっ」というお題があって、そこを替えて変奏していくのだが、(あっ ワタシの音は怪しいし、音型は、実際にはもっと弾んでます。謝)これが、また、おもしろいっていうか~ よく考えているというか、(ベートーヴェンさまは天才なので、アタリマエなのだが)聴いてて楽しいことは請け合っちゃう。旋律を担当する楽器と、その合いの手を入れる楽器がねえ~ この組み合わせなの。これでいく? あっだから、ホルンとクラ、ファゴットが必要なのかあ。こりゃ おもしろいですよぉ。
第5楽章は、ホルンが大活躍する。「ふぁどっど らっら ふぁ~」「どどっそ みっみ どぉ~ ら~そふぁみれどっ」「んた んた んたぁ~」というリズムが、音型を続けていく軽快さがあって、「ど ふぁ~っ」というオチがついてくる。中間部は、チェロが大活躍して、あらま~というぐらい甘いフレーズで抒情的に奏でてくる。このサンドウィッチは、ホント、美味しいっ!あそび心が満載というか、リズムを、こんな風にしちゃうとおもしろいんじゃーないかなあ。というお試しなのかもしれないが、なんだか音楽の原点みたいなのを感じる。第6楽章は、一転して葬送曲のように悲しげにホルンが吹かれて始まる。「どどど どぉ~」といったん終わった後に、一転して、軽快なリズムが始まるという、なんともニクイ演出なのだ。「ふぁぁ~どぉ らっふぁっどっ!」ウパパパっ。というクラリネットの転がり感が、やっぱ巧いです。弦の長音と木管のリズム感を、これだけ絶妙に組み合わせてくると、弦が木管につらされて踊り始めるのが愉快だ。その後、ヴァイオリンが大活躍して、まるでヴァイオリン協奏曲なみになってくるのだが、いや~すごい。
いろんな要素を詰め込んで提示されてくると楽しいです。それだけ、やっぱ、ベートーヴェンさまは才能豊かなんですね。ホント、初期の作品なんですけど、これが、するするっと聴けちゃう。おもしろくて楽しんで聴けちゃうことの素晴らしさ。交響曲を聴くのも良いですけど、これを聴かないのは、もったいないかも。いや、大損しちゃう感じがします。


 ベートーヴェン 七重奏曲
Beethoven: Septet
エンシェント室内管弦楽団アンサンブル 1990年
The Academy of Ancient Music Ensemble
ヴァイオリン:サイモン・スタンデイジ Simon Standage
ヴィオラ:マーティン・ケリー Martin Kelly
チェロ:ティモシー・メイソン Timothy Mason
コントラバス:バリー・ガイ Barry Guy
クラリネット:アントニー・ペイ Antony Pay
バソン:フェリックス・ワァーノック Felix Warnock
ホルン:アンソニー・ハルステッド Anthony Halstead

録音状態は良い。古楽器使用の演奏である。意外とあっさり~淡泊で、愉悦性は少なめに感じてしまった。エンシェント盤は、古楽器を使用しての演奏で、CDのブックレットには、スタンデイジさんが使用しているヴァイオリンは、ストラディヴァリウス1703年製で、1987年ディヴィッド・ルビオ製作の複写なのだろうか、英語で、使用楽器を、こまごま書いてあった。さらっと拝見しているだけで、1700年代の楽器もあるようだ。先日、ベルリン・ゾリスデン盤を聴いたが、カッチリしているが、とても愉悦性の高い演奏だった。で、この古楽器使用の演奏であるエンシェント盤を聴いたのだが、う~ん、ど素人のワタシには、その古い楽器のありがたさが、イマイチ、ピンっときていない。もちろんヴァイオリンの音も、悪い筈がないし、とっても良い。で、クラリネットが入っているし、バソン(古楽器なのでバソンという表記で良いのかな~)の響きもあって多彩だ。音質としては、最近、古楽器演奏のCDを聴いて、耳慣れたせいか違和感はさほど感じない。違和感はないが、颯爽とした推進力はあるものの残響の響きが少ないので、サロン風の艶っぽさよりも、意外とあっさり淡泊に聞こえてしまった。 う~ん やっぱり、ワタシの耳はダメだな~ 猫に小判なのかもしれない。
カップリング:ベートーヴェン 七重奏曲、ウェーバー クラリネット五重奏曲


 ベートーヴェン 七重奏曲
Beethoven: Septet
ベルリン・フィルハーモニー八重奏団 1995年
Philharmonic Octet Berlin
ヴァイオリン: サシュコ・ガヴリーロフ Saschko Gawriloff
ヴィオラ: ヴィルフリート・シュトレーレ Wilfried Strehle
チェロ: ペーター・シュタイナー Peter Steiner
コントラバス: ライナー・ツェペリッツ Rainer Zepperitz
クラリネット: アロイス・ブランドフォーファー Alois Brandhofer
ホルン: ゲルト・ザイフェルト Gerd Seifert
ファゴット: ハンス・レムケ Hans Lemke

当盤は、ベートーヴェンの七重奏曲と、めずらしいヒンデミットの八重奏曲がカップリングされている。ワタシのお目当ては、ヒンデミットなのだが~ まずは、定番のベートーヴェンの演奏を聴いてみた。ベートーヴェンの七重奏曲は、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、クラリネット(B♭管)、ファゴット、ホルンという楽器編成で、コントラバスの響きが綺麗に、ボンボンっと響いている。すごい低音の響きで、驚いてしまうほど。で、重低音の響きはすごいのだが~ でも、どことなく全体の響きとしては、薄い感じがする。音の高低差が大きいというか、極端に広がってて、ヴァイオリンの音がイマイチ、中音域の弦と絡まないので、浮いた感じがするのだ。う~ん、どうしてかなあ。
ワタシの好きな3楽章と、4楽章は管が大活躍する。テクニックは、もちろんBPO首席さんだった方が演奏されているので、文句のつけようがないという感じなのだが、ワタシ的には、愉悦性がモノ足らない感じがしちゃいました。カッチリといた演奏なのだ。いやいや、こんなモノだよ~と言われちゃうかもしれませんが、ワタシ的には、中音域の厚みが、ちょっと少ない感じがしたのです。1990年録音のベルリン・ゾリスデン盤の方が、愉悦性が高く、楽しめちゃいました。でもね~ 七重奏のCDって、さほど多く発売されていないので大変貴重です。
カップリング: ベートーヴェン 七重奏曲(作品20)、ヒンデミット 八重奏曲


ベートーヴェン 七重奏曲
1990年 ベルリン・ゾリスデン Tedec ★★★★★
1990年 エンシェント室内管弦楽団アンサンブル OL ★★★
1995年 ベルリン・フィルハーモニー八重奏団 Nimbus ★★★
2004年 ジンマン チューリヒ・トーンハレ管弦楽団 Arte Nova


ベートーヴェンの七重奏曲(作品20)は、ウィキペディア(Wikipedia)を元に記述すると1799年から1800年にかけて作曲されており、同時期に、交響曲第1番などがあります。ベートーヴェン初期の傑作で、明るい旋律と堂々としたリズムをもち、作品が公開された当初から広く親しまれたとされ、初版が出版される前から、海賊版が出回っていたとも言われています。
しかし、この作品の人気とは裏腹に当のベートーヴェンは、いつまでもこの作品がもてはやされ続けるのを拒んだと言われており、「あの七重奏曲のベートーヴェンさん」と形容されるたびに不快感を示したといわれるそうです。モーツァルトのディヴェルティメントのように、娯楽的でサロン向けの音楽として書かれているものの、旋律やリズム、構成の面などで、その後のベートーヴェンらしい作品の登場を予感させる部分も随所に見られ、第5楽章のスケルツォはそのひとつであるとのこと。古典派から初期ロマン派の作曲家であるシュポーアやフンメルや、ブランやブルッフのようにロマン中期の作曲家にも同編成での作品があり、シューベルトは、この作品に影響されて八重奏曲を書いたとされています。

第1楽章 変ホ長調 4/4拍子 ソナタ形式。序奏のあと、ヴァイオリンが堂々とした主題を奏でます。
第2楽章 変イ長調 9/8拍子 いわゆる緩徐楽章。クラリネットが美しいメロディーを奏でます。
第3楽章 変ホ長調 3/4拍子 メヌエットで、主部で弦楽器の奏でる旋律は、ピアノソナタ第20番の第2楽章からの転用で、トリオでは管楽器が活躍するものです。
第4楽章 変ロ長調 2/4拍子 変奏曲。変奏に用いられる主題は民謡からの引用とされる。
第5楽章 変ホ長調 3/4拍子 スケルツォで、ホルンの分散和音と、ヴァイオリンの応答で始まる軽やかなスケルツォとチェロが、流麗な旋律を奏でるトリオからなっています。
第6楽章 変ホ短調 - 変ホ長調 4/4拍子 ソナタ形式 厳粛な序奏のあと、チェロの伴奏に乗ってヴァイオリンが堂々とした第1主題を奏で、第5楽章で見られたホルンの分散和音がリズムを変えて再現されたあと、ヴァイオリンとチェロが流れるような第2主題を奏でます。

展開部の終わりでは協奏曲で見られるようなヴァイオリンのカデンツァ風ソロがあり、再現部で各主題が再現され、最後は第1主題が帰ってきて、明るく堂々と曲を閉じるものです。




YouTubeでの視聴


Septet in E-Flat Major, Op. 20 ベートーヴェン 七重奏曲
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 - トピック
Provided to YouTube by The Orchard Enterprises
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=nq2TWk0hdsA
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=B6gnc2YuyWM
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=lwoSjqW2UdE
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=GPpaHyzB5qU
第5楽章 https://www.youtube.com/watch?v=sV7uAdoouDA
第6楽章 https://www.youtube.com/watch?v=dyTfou0MXSM


ページトップに戻る