ブラームス クラリネット三重奏曲、ホルン三重奏曲

 ブラームス クラリネット三重奏曲
Brahms: Trio for Piano, Clarinet and Cello (Clarinet Trio)
クラリネット:リチャード・ストルツマン 1993年
ピアノ:エマニュエル・アックス
チェロ:ヨーヨー・マ
Richard Stoltzman Emanuel Ax Yo-Yo Ma

ブラームスのクラリネット三重奏曲は、虚脱感に襲われてしまう楽曲だ。「しれふぁし らぁ~そふぁ」というテーマが、何度も繰り返して綴られていく。この冒頭は、チェロで奏でられているが、これほど執拗に使わなくてもいいのではと思うほど使い回されている。語り口を変えて、まるでドラマの主題曲のように流れてくる。で、耳にこびりついてしまう。始めの方こそ、開放的に明るくスタートするが、そのうちウツウツ。マさんのチェロは明るいので救いだが、クラリネットが、主題を語り始めると肩が抜け落ちてしまう。がっくり肩が落ちて抜け殻風だ。ピアノのフレーズでチャーミングに弾かれ、クラリネットとチェロが入ってくるところでは、わずかな明るい光が射し込む。
第2楽章と第3楽章は、弦楽合奏のように穏やかに演奏される。主題はクラリネットが演奏するが、さりげないピアノの音が調和を生み、バランスが整っている。ストルツマンのクラリネットは、秋の温かい日射しのように暖かい。第3楽章では、寂しげなフレーズだが、ピアノが軽く寄り添う。3拍子の楽章だが、少し重く、踊り出せないもどかしさを感じる。
第4楽章は、マさんのチェロが、さらりと歌うが、クラリネットは、湿気を帯びて悲しみに満ちて沈み込んでいく。表情のつかみづらい演奏で、ねっとり気味で、枯れ葉が落ちてしまった風情だ。ため息まじりの疲れ切った感じがして、孤独な独居老人のような演奏のように感じられた。カップリング:ブラームス クラリネット三重奏曲、ベートーヴェン クラリネット三重奏曲、モーツァルト クラリネット三重奏曲


 ブラームス クラリネット三重奏曲
Brahms: Trio for Piano, Clarinet and Cello (Clarinet Trio)
クラリネット:フランクリン・コーエン 1989年
チェロ:スティーブン・ゲベル
ピアノ:ウラディーミル・アシュケナージ
Franklin Cohen Stephen Geber Vladimir Ashkenazy

クラリネット三重奏曲は、ブラームスの晩年の楽曲で、メランコリックで想い出に浸ったかのようなフレーズが続く。リチャード・ストルツマンさんのクラリネットで聴いた時は、虚脱感に襲われるほど暗い楽曲だと思ったが、コーエンさんのクラリネットの演奏で聴くと、さほど暗く感じなかった。バランス良く控えめで、しっとりしたフレージングで綴られてる。思索しているが、底辺では明るさが感じられる。明るい色調になったり、暗くて鬱々した色調になったり、心情の変化に富んでいる。
第2楽章と第3楽章は、クラリネットの柔らかいフレーズに、チェロがふんわりと寄り添う。甘美なフレーズが続くが、甘すぎず柔らかすぎず、さりげない。つづく第3楽章は、「れみらそふぁみれど・・・」 とクラリネットが紡ぎ出す言葉に、ピアノが寄り添い、ワルツを踊るかのような雰囲気がする。
第4楽章は、三者の会話が弾んでいる。コーエンさんのクラリネットは、明るめの音質で多彩な表情を見せる。ブラームスの晩年の楽曲は、どうも暗くて、しみったれてて苦手だが、この演奏は、逡巡していた想いが、ちょっと吹っ切れた感じだ。演奏者が演奏を楽しんでいるようだと伝わってきたので、さほど深刻にならずにすむようだ。かなり滋味な楽曲なので、梅雨時には聴かないほうがよいみたい。(今日は、梅雨まっさかりの時期だ。)程よいバランス感覚で、救われた気がする。
カップリング:ブラームス クラリネット三重奏曲(1989年)、ブラームス ピアノ五重奏曲(1989年)クリーヴランド管弦楽四重奏団 ヴァイオリン:ダニエル・マジェスケ Daniel Majeske、ヴァイオリン:バーナード・ゴールドスミス Bernard Goldschmidt、ヴィオラ:ロバート・ヴァーノン Robert Vernon、チェロ:スティーブン・ゲベル Stephen Geber、ピアノ:ウラディーミル・アシュケナージ Vladimir Ashkenazy


 ブラームス ホルン三重奏曲
Brahms: Horn Trio
ホルン:ギュンター・ヘーグナー 1982年
ピアノ:アンドラーシュ・シフ
ヴァイオリン:エーリッヒ・ビンダー
Günter Högner András Schiff Erich Binder

へーヴナー、シフ、ビンダーさん三人の調和のとれた演奏である。ピアノとヴァイオリンで主題を奏でた後、同じ主題をホルンが吹く。先日、タックウェルを聴いた時、くらぁ~い、どすん、ずどん~という主題に辟易してしまった。一緒にカップリングされているシューベルトのピアノ五重奏曲「鱒」が、ピチピチ弾んで爽やかな楽曲だっただけに、愕然とした。鱒の次に、このホルンの三重奏を持ってくる? で、当盤のヘーグナーさんのホルンは、同じ沈み込んだ秋色の旋律であっても、ふわっとしている。この楽曲は、脱力感に襲われて好きではないが、当盤のウィンナー・ホルンは、柔らかい音に包み込まれる。大きく吹かれたホルンの音は、そのまま耳の穴まで直撃という感じで飛び込んで来るが、寂しげなフレーズであっても強さが感じられ前向きな表情をしている。語尾が落ちておらず安定している。ピアノとヴァイオリンは、強く主張しておらず、ホルンの残響の奥まったところで、密やかに音が出ている。第2楽章では、シフさんの清潔なピアノが柔らかく弾かれている。柔らかい森のホルンという表現が適切な感じ。ホルンも良い音だが、ピアノの力強さと柔らかさの柔軟性が、とっても好ましい。ヴァイオリンも、さりげなくサポートにまわって奥まったところで鳴っている。3人が3人共前に出てきてたら、妙にバランスが悪くなるところを、それぞれ、ホルンの持続音が切れそうになったところに、さらさら~っと登場している感じ。

第3楽章は、ピアノのアルペジオが印象に残る。ホルンとヴァイオリンが、涙ながらに訴え、殺伐とした寂寥感に襲われるものの、暖かい音質なので救われた感がする。また、ピアノがさりげなく情感を織り込んでくる。ホルンとピアノのフレーズが、うつむいて涙しているように感じるが、どこか暖かく、ほっこりしてて、じわじわ~と気持ちが温かくなる演奏だ。
第4楽章は、ブラームスのホルン三重奏曲って言えば、ワタシにとっては、この楽章。メチャ楽しくて、ワクワクしちゃうフレーズが続く。狩りのようなシーンで、 「どどふぁ そそら どどら ふぁふぁみ れれみ れれみ・・・」「どふぁ~ どふぁ~ らぁ~み らぁ~み」パパパ パパパ・・・という短いパッセージが続いていく。チャーミングなピアノの音が小春日和の光のように鳴っている。テンポもゆったりして穏やか。ピアノの音が、馬がパッカパッカと走っているように聞こえ、イマジネーションが広がって楽しかった。
ブラームスにとって、この楽章は何なのだろう。3楽章までは母親の思い出がいっぱい詰まった、泣きそうな楽章だが、このラストの楽章は? どこか、とってつけたような感じがする。ゆったり奏でられた人情味のある演奏で、ピュアなピアノと柔らかいウィンナー・ホルン、控えめなヴァイオリンが、互いに尊重しあって活かしてる感じが伝わってくる。例えが、とっても世俗的で申し訳ないのだが、ほっこりとした、焼きいもを、懐に抱いているかのようで~ 心のこもった1枚だと思う。
カップリング:シューベルト ピアノ五重奏曲「ます」、ブラームス ホルン三重奏曲


 ブラームス ホルン三重奏曲
Brahms: Horn Trio
ホルン:バリー・タックウェル Barry Tuckwell 1968年
ピアノ:アシュケナージ Vladimir Ashkenazy
ヴァイオリン:パールマン Itzhak Perlman

アシュケナージ、パールマン、タックウェルさんの演奏は、昔からの名盤って感じらしいのだが、どうもホルンの役回りが、ピンっと来ない。ワタシの場合、第4楽章は、快活で楽しいのだけど、 このラストの楽章に至るまでは、すこぶる長く感じら、めげてしまう楽曲だ。ホルンが活躍するという楽曲は少なく、ブラームスのこの三重奏曲は珍しいように思う。ウィキで調べたら、ホルン協奏曲って、モーツァルト ホルン協奏曲第1番~第4番、オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットと管弦楽のための協奏交響曲 ウェーバー  ホルン小協奏曲 op.45 リヒャルト・シュトラウス ホルン協奏曲第1番、第2番 シューマン 4本のホルンと管弦楽のためのコンツェルトシュテュック ぐらいだ。室内楽になると、ピアノとホルンのソナタを除くと、五重奏、六重奏以上の楽曲のようだ。で、三重奏となると、このブラームスの曲以外は、ないみたいなんですけど・・・。

主題がねえ~ くらっ。もわっとした沈み込んだ、重苦しい空気感が漂う。う~ん、しまった。こんな楽曲は、真夏の朝の休日に聴くのではなかった。大失敗である。ブラームスは秋、それも冬に近づくような頃に聴かないとダメかもしれない。同じ主題を、なんで、こんなに繰り返すのだろう。第2楽章は、最初こそ元気にピアノが駆けまわっているのだが、ホルンの柔らかい音を聴く。アダージョ・メストの第3楽章は、ただただ聴いて~ という感じ。ばららん ばららん~っていう伴奏のうえを、葬送風フレーズが奏でられる。ホルンとヴァイオリンの二重奏は聴きどころ。ホルンは、すっと寄り添って包み込みこんでは、さりげなく、すっと離れていく。はは~ん、ブラームスにとって、ホルンはママの愛なのだ。母親の愛情を表現するには、ホルンの音色がうってつけだったのに違いない。(と、勝手に決めつける)第4楽章は、舞曲風のフレーズで綴られた楽章だ。とっても開放的で明るくのびやか。屈託のないホルンの短いフレーズが、合いの手を入れてて、るんるんしちゃう。短いパッセージがテクを要するのだろうが、ホント、渋いんだけど、小春日和のような希望を抱かせるような楽しい雰囲気がある。ここは、テンポアップされてて、狩のロンドだという表現が見られる。また、現在のバルブ式のホルンではなく、自然なヴァルトホルンで吹かれることをイメージしていたらしい。ワタシにとっては、あまり身近な楽器ではないし、微妙な組み合わせの楽曲だと思ってしまった。


ブラームス クラリネット三重奏曲
1989年 コーエン ゲベル アシュケナージ Dec ★★★
1993年 ストルツマン アックス マ SC ★★★

ブラームス ホルン三重奏曲
1968年 アシュケナージ パールマン タックウェル Dec ★★★★
1982年 シフ ビンダー ギュンター・ヘーグナー Dec ★★★★★



◆ ブラームス クラリネット三重奏曲
ブラームスのクラリネット三重奏曲(作品114)は、クラリネット、チェロ、ピアノの三重奏のための室内楽作品です。ウィキペディア(Wikipedia)を元に記述すると、ブラームスは、晩年、創作意欲の衰えから一時作曲を断念することを決意したそうですが、クラリネット奏者であった、リヒャルト・ミュールフェルトの演奏に触発されて創作意欲を取り戻し、1891年、クラリネット三重奏曲と、五重奏曲(作品115)とを、同じ時に書きあげたそうです。3つの楽章から構成された約25分の作品です。

第1楽章 イ短調 2/2拍子 ソナタ形式
序奏はなく、哀愁を漂わせる第1主題がチェロに、次いでクラリネットによって奏でられます。ピアノに2度、音程をうごめく動機が現れますが、これは後に、副主題として活用され、第1主題の確保がクライマックスを形成すると、ハ長調の第2主題とホ短調の小結尾が続きます。展開部では、提示部の諸動機が活用され、激情と抒情が交代するもの。再現部は、やや変形され、第1主題がクラリネットに途切れがちに奏されると、間もなく第2主題がヘ長調で再現されます。小結尾は、束の間イ長調の明るい世界に移りますが、静かなパッセージで結ばれます。

第2楽章 ニ長調 4/4拍子 展開部を欠いたソナタ形式
まず、クラリネットによって、第1主題(第1楽章第2主題と関連)が奏でられ、なだらかな第2主題が続きます。再現部では、変奏が加えられ、繊細なパッセージが絡みつくもの。

第3楽章 イ長調 4/3拍子 二つのトリオを持つレントラー風の間奏曲です。優美な主題がクラリネットに奏され、ピアノに受け継がれます。第1トリオでは、クラリネットとチェロが掛け合い、第2トリオでは、クラリネットが8分音符で奏でられます。

第4楽章 イ短調 4/2、8/6拍子 ソナタ形式
規模は小さいものの力強いフィナーレで、リズム的な工夫や、ジプシー風の要素が特徴的です。通常、ブラームスのクラリネットといえば、クラリネット五重奏曲の方が、三重奏曲より有名です。しかし、ブラームス自身は、「自分は三重奏曲のほうが好きだ」と述べているそうです。ワタシには疲れ果てた~枯れた曲に聞こえちゃいます。



◆ ブラームス ホルン三重奏曲
ブラームスのホルン三重奏曲(変ホ長調 作品40)は、1865年に作曲されています。ブラームスは1833年生まれなので、30をちょっと過ぎた頃に書いたもので、ホルンを使った室内楽は、これだけ。ホルンと、ピアノ、ヴァイオリンのための三重奏だが、ホルンの代わりに、ヴィオラでもOKと認めているんだそうです。ウィキペディア(Wikipedia)で調べてみたら、作曲の動機は、ホルン奏者アウグスト・コルデスの依頼によるものと言われていますが、資料がないので、詳しい動機は不明なんだそうです。

4つの楽章で構成されており、バロック時代の教会ソナタを思わせる楽章配置で、ソナタ形式は終楽章のみ用いられていることが特徴です。3楽章の主題は、ドイツの古いコラール「愛する神の導きにまかすもの」が用いられ、重厚な対位法で書かれています。 この年にブラームスの母親が亡くなっているので、それが反映されているのかと。

第1楽章 アンダンテ 変ホ長調 4/2拍子
第2楽章 スケルツォ(アレグロ) 変ホ長調 4/3拍子
第3楽章 アダージョ・メスト 変ホ短調 8/6拍子
第4楽章 アレグロ・コン・ブリオ 変ホ長調 8/6拍子 演奏時間は、約30分です。

ウィキペディア(Wikipedia)で、ホルンのことを調べてみたら、・・・この角笛やそこから発展した信号用のラッパは、狩りの時に「獲物を発見した」「獲物を捕らえた」などの信号を、後ろにいる仲間に送るため、ベル(朝顔)の部分が横や後ろを向くように作られていた。 演奏の際ベルの部分が演奏者の後ろに向くように持つのはこの名残である。・・・

1814年のバルブの出現により、ナチュラル・ホルンは次第にバルブ付きホルンに取って代わられることとなる。それでもフランスのホルン奏者は、バルブ付きのホルンを好まずナチュラルホルンを愛用したため、ロマン派時代でもナチュラルホルンのために作曲されていることも多い。自身もホルンを演奏したブラームスは、当時のドイツでは殆どバルブホルンに代わっていたにもかかわらず、ナチュラルホルンを好んだ。ブラームスの管弦楽作品におけるホルンパートは、ナチュラルホルンを意識した擬古的な書き方になっている。 また彼のホルン・トリオは、完全にナチュラルホルンのために作曲されている。・・・との記載がある。ど素人のワタシには、ホルンの構造や歴史には、さっぱり疎いのだが~ この楽章だけを聴いて、狩りというイメージを、少し持つことができたのでした。




YouTubeでの視聴


ブラームス クラリネット三重奏曲
Brahms: Clarinet Trio in A minor, Op. 114
ウラディーミル・アシュケナージ - トピック  コーエン ゲベル アシュケナージ 1989年
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=Op6XwBRalIE
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=WeJa-g7fFZI
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=XtbriqzemqE
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=JRBYS2JsQ_o

ブラームス ホルン三重奏曲
Brahms: Horn Trio in E flat, Op.40
アンドラーシュ・シフ - トピック  シフ ビンダー ギュンター・ヘーグナー 1982年
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=lxpvpLItD1M
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=lTSpnKOIslM
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=kIVJSYShsIw
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=RlSVb1gj6DI

Brahms: Horn Trio In E Flat, Op.40
バリー・タックウェル - トピック Barry Tuckwell - Topic  アシュケナージ パールマン タックウェル 1968年
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=yyj0NAKYvMM
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=4DhFIuAyXxY
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=DfpxIedfEWI
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=8D_ZuacXXb8



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