ブラームス ピアノ五重奏曲 Brahms: Piano Quintet

 ブラームス ピアノ五重奏曲
Brahms: Piano Quintet in F minor, Op.34
ボロディン弦楽四重奏団 ピアノ:エリソ・ヴィルサラーゼ 1990年
Borodin Quartet Eliso Virsaladze

ボロディン弦楽四重奏団の演奏は、ゆったりと暖かい音色と、ロマンティックなフレージングで、甘さと渋さが頃合いに聞こえる。
冒頭、ど演歌風の主題は、とても優しくソフトタッチで奏でられているし、間合いを十分にとって出てくる。その後、ガッシっとした弦の響きがベースになり、堅実なピアノが絡んでくる。幾分、渋みが勝っているものの、時折、ピアノが可愛く変身するし、弦の豊かで大らかな響きは、落ち着いた演奏である。艶とか粒立ちの良さ、颯爽とした演奏ではないが、ピアノに煌めきがあるだけで、かなり雰囲気が変わるようだ。主題が執拗に繰り返してやってくるが、イヤミなくふわんと聴ける。厚めの響きが重要視されているのか、綺麗な分散和音が、まるで交響曲風のコーダのように予定調和的に響いて終わる。

第2楽章は、弦とピアノのつぶやき風のフレーズが、お互いに巧く乗っている。どちらが主体というわけではなく、調和型。ワタシ的には、鬱々とした雰囲気が苦手だが、ボロディン弦楽四重奏団は、少し恥じらう可愛いらしさが出ている。弦のハーモニーが主体となって、ピアノはレース襞のように後ろにまわっていくが、ほの暗い旋律が交錯していくなかで、静かに落ち着いた優しさがあり、ゆったりとした気分で聴くことができる。

第3楽章は、最初、スキップするようなフレーズから始まるが、胸を張って歩いていくスタイルに変化する。和音がわかれて、パララパララと奏で始めるが、連打していくうちに、テンションがあがる。ボロディン弦楽四重奏団の演奏は、几帳面に連打を繰り返していくなかで、徐々にパワーをためていく。ピアノは、1人、テンションマックスになって、走り始めてそうになりつつも、弦の前後に機敏に立ち回って色付けを怠らない。

第4楽章は、チェロとピアノの静謐な序奏と舞踏風の主題が顔を出してくる。そのうちに火がついたようにテンションがあがりて、シンコペーションのリズムになって、たたぁ~たた ダッダ ダーダダっ! と怒りを含んだように燃え上がる。ここは、しっかり燃えていただかないと面白くないわけで、リズムの処理がイマイチだと締めとしては具合が悪いかも。ヴァイオリンの高く硬い音で、リズムをくっきり描くのが良いみたい。もっとスリリングに演奏していただければ、もっとニヤリと喜んでるかもしれないが、ボロディンの演奏は大人だ。この楽曲は、プチ交響曲のようで、なかなかに壮大だ。これがブラームス30歳頃の作品なのだ。ひぇ~恐れ入りました。てっきり60歳過ぎの作品だと思ってたので、びっくり。
カップリング:ブラームス ピアノ五重奏曲、弦楽四重奏曲第2番


 ブラームス ピアノ五重奏曲
Brahms: Piano Quintet in F minor, Op.34
ピアノ:アンドレ・プレヴィン ウィーン・ムジークフェライン四重奏団 1984年
André Previn
Vienna Musikverein String Quartet

ピアノは、アンドレ・プレヴィンで、とてもメリハリのある演奏で、艶っぽく新鮮な感じがする。ウィーン・ムジークフェライン四重奏団とは、ウィーン・フィルのコンサートマスターだったヴァイオリニストのライナー・キュッヒルにより1973年に結成された四重奏団である。この演奏では、ヴァイオリンは、ライナー・キュッヒルさんと、エックハルト・ザイフェルトさん、ヴィオラはペーター・ゲッツェルさん、チェロはフランツ・バルトロメイさん。

冒頭のフレーズは、とても個性的で鼻の詰まったクサイ演歌風のフレーズである。風変わりな旋律だと思うが、これがウィーンの香りにミキシングされると、どうなるのだろう。興味を持って聴いたが、やっぱりクサイ演歌だった。しかし、あとは明るくて、オシャレな音が出てくる。ボロディン四重奏団の演奏は、中高年の落ち着きがあったが、プレヴィン、ウィーン・ムジークフェライン四重奏団の演奏は、活発で元気があり色彩的に豊かだ。若々しい青年のような雰囲気で、愉悦性が感じられて思わずにんまり。弦楽四重奏は、各人がそれぞれに主張してた文字通りソリスト集団という感じが演奏に出ている。

CDのブックレットに掲載されていた文章から引用させていただくと、ウィーン・フィルのコンサートマスターであるライナー・キュッヒルによって、1973年に創立された弦楽四重奏団で、ウィーン・フィルの本拠地であるムジークフェラインの栄誉ある名を冠したこの四重奏団は、ムジークフェラインザールでの定期演奏会、ザルツブルク音楽祭ほかのヨーロッパでの演奏での聴衆、評論家の心をつかみ、一躍その名で知られるようになった。4人ともウィーン音楽院の出身で、キュッヒルは20歳でウィーン・フィルのコンサートマスターになった方で、四重奏団は彼の名をとってキュッヒル四重奏団ともいわれているとのこと。

ヴァイオリンの音は、澄んだ綺麗な音で決して濁らない。ブラームスのピアノ五重奏曲は、チェロが入っているので重みがあるが、この演奏では、ピアノの存在が大きく、カッチリした音が立って出てくる。チェロが、ため息まじりの穏やかさで甘すぎない。まるで、アコーディオンの楽曲を聴いてるかのよう。
第2楽章は、穏やかに歌うかのように弾かれ、抒情的な雰囲気が漂う。ソリスト集団はしっかり自分の演奏に終始している。弦のフレーズは、美しく品のある物憂げで、甘美なフレーズで、退廃的な香りがする。第3楽章は、ピアノは、元気よく胸を張って歩いている感じ、チェロは歯切れが良く、細かく動き回ってシンコペーションを奏でる。

第4楽章は、鬱々、悶々としはじめる。序奏が終わると、チェロは踊りだそうとして誘われていく。鬱々としたシンコペーションが入ってきて、ギクシャクしている。弦のフレージングは、穏やかだが、どことなくメラメラしているようでもある。女性の黒髪を、そのうちに振り乱して「だだ だぁ~だだ ダッダ ダーダダっ!」と、勢いがついてくるが、全体的には、さっぱりしている。ほの暗くもあるが、黒光りしているかのような感じで、艶を出して美しい。ワタシが所有しているこのCDは、このピアノ五重奏曲しか収録されておらず、なんと、41分ちょっとかかる。正直疲れるのだが~ なかなかに聴き応えのある演奏だ。メリハリがあり、キッパリした感じが好ましい演奏だった。 


 ブラームス ピアノ五重奏曲
Brahms: Piano Quintet in F minor, Op.34
ピアノ:グレン・グールド モントリオール弦楽四重奏団 1957年
Glenn Gould Montreal String Quartet

今日は、ブラームスを聴いたのだが、さすがに録音年が古いので、録音状態はそれなり。多少歪みが見受けられる。1957年8月のCBC放送録音盤である。感想はというと、ピアノが主導権を握っており、ピアノに制圧されているという感じがする。弦が歌えないというか、どうも窮屈そうだ。弦特有のノビ感が、ほとんど感じられず、普通なら、ここでフレーズが伸びて、ゆったりするところでしょう~というところが、紋切り調になっていたりする。
ブラームスを、ゆったり優雅に聴きましょうというのではないようだ。オーバーに言ってしまうと、インテンポで機械的。近未来的感覚で、無機質的で、まるで無調音楽を聴いている風にも思えちゃうぐらい、ちょと不思議感のある演奏である。ピアノにスポットライトがあたっているのが、まるわかりの録音状態だと思う。グレン・グールドさんのファンの方は、聴いていただきたいが、うーん、ワタシ的には、どうかなあ。イマイチ良さが解りませんでした。

カップリング:
シューマン ピアノ四重奏曲 グレン・グールド ジュリアード弦楽四重奏団 1968年
ブラームス ピアノ五重奏曲 グレン・グールド モントリオール弦楽四重奏団 1957年


ブラームス ピアノ五重奏曲
1957年 グレン・グールド モントリオール弦楽四重奏団 SC ★★
1979年 ポリーニ イタリア弦楽四重奏団 G
1984年 プレヴィン ウィーン・ムジークフェライン四重奏団 Ph ★★★★★
1990年 ヴィルサラーゼ ボロディン弦楽四重奏団 T ★★★★
1990年 シフ タカーチ弦楽四重奏団 Dec


ブラームスのピアノ五重奏曲ヘ短調作品34は、1864年に作曲されています。当初の版は、弦楽五重奏(ヴァイオリン2、ヴィオラ1、チェロ2)として1862年に作曲されたものの、終楽章を書かないままクララ・シューマンに草稿を送り、いったん弦楽五重奏曲を断念し、2年後の64年に、2台のピアノのためのソナタとして書き換え、作品34bとして出版しています。その後、ブラームスらしく逡巡したのち、ピアノと弦楽四重奏曲用のピアノ五重奏曲として書き直し、ヘッセン方伯家の公子妃マリア・アンナに献呈されて、65年に出版されています。ウィキペディア(Wikipedia)によると、この曲の両端楽章は、和声法においてブラームスとしては冒険的で、落ち着かない印象を醸し出す。このことは、終楽章の序奏において半音階で上行していく音型にとりわけ当てはまっているとのこと。

第1楽章 アレグロ・ノン・トロッポ  ヘ短調 4/4拍子
第2楽章 アンダンテ、ウン・ポコ・アダージョ 変イ長調、ホ長調 4/3拍子
第3楽章 スケルツォ アレグロ ハ短調、ハ長調 8/6拍子、4/2拍子
第4楽章 フィナーレ ヘ短調 2/2拍子、4/2拍子 8/6拍子 以上 4つの楽章からなっています。

吉井亜彦さんの名盤鑑定百科によると、ソナタ形式による第1楽章における両主題の対比感とその発展性には、いかにもブラームスらしいデリカシーと力強さがこめられ、第2楽章の抒情的美しさも印象的。ハ短調の調性をとるスケルツォ楽章の内向する情念の激しさ、色彩の濃厚さはブラームスの独壇場であり、序奏のついたロンド形式の終楽章も充実している。全体を通して「交響曲」のようなひびきを内包している。(当時のブラームスは、まだ1曲も交響曲は発表していない)・・・とのことで、ベタボメなのですが、確かにスケールも大きいしい、立派っ!という感じはします。でも、ワタシには、甘いメロディーが、ちりばめられてて、ちょっと昔風の甘いロマンス風映画の主題曲のようにも聞こえちゃうんですけど。大御所の作品を、こんな風に言っちゃ~マズイでしょうか。いっけん渋いけど、内実は、結構甘め。そしてラストは燃える。演奏によっては、この渋さと甘さのバランス配合が異なるし、情念のようなモノが出てくるので、聞き比べてみると楽しいかもしれません。




YouTubeでの視聴


ブラームス ピアノ五重奏曲
Brahms Piano Quintet in F Minor, Op. 34a
ボロディン弦楽四重奏団 - トピック Borodin Quartet - Topic ヴィルサラーゼ ボロディン弦楽四重奏団
Provided to YouTube by Warner Classics International
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=2kPCTMZlDpg
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=AT2VJDgb0o8
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=izowBUGMObk
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=28Qrl9crLyk

Brahms: Piano Quintet in F minor, Op.34
チャンネル:ウィーン・ムジークフェライン弦楽四重奏団 - トピック プレヴィン ウィーン・ムジークフェライン四重奏団
Musikverein Quartet - Topic
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=91AbrXOHmDk
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=c8VRbmIypU4
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=qk3MGhQwEXc
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=duo4g8G715s


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