ブラームス 弦楽六重奏曲第1番 Brahms: String Sextet No.1

 ブラームス 弦楽六重奏曲第1番
Brahms: String Sextet No.1
ラルキブデッリ 1995年
L'Archibudelli

ヴァイオリン:ベラ・ヴェス Vera Beths マリリン・マクドナルド Marilyn McDonald
ヴィオラ:ユルゲン・クスマウル Juegen Kussmaul フース・ジューケンドゥルップ Guus Jeukendrup
チェロ: アンナー・ビルスマ Anner Bylsma ケネス・スロウィック Kenneth Slowik

ラルキブデッリの演奏は、古楽器を使用し、アクセントを強めに、現代的でクールな演奏である。ラルキブデッリ(L’Archibudelli)と言う名は、イタリア語の弓(archi)と、腸あるいは羊腸弦(Budella)という言葉を組み合わせたものらしい。チェロの有名な奏者、ビルスマさんが組織した合奏団である。名前のとおり、ピリオド楽器を使用している。ブラームスの弦六は、甘い演奏が多いが、ここでの演奏は、怜悧というかクールだ。アマデウス弦楽四重奏団とは、かなり趣を異にしている。甘い演奏を好む場合は、ちょっと違和感を感じるかもしれない。ガットを使用しているので音質が異なり、ビブラートがかかっていないため直線的に音が出てくる。しかし、意外とふくよかで、曲想にもよるのかもしれないがマッチしている。
第2楽章は、新鮮な響だ。とっても瑞々しく美しい。ホップするような感じで奏でられる。水が迸ってくるかのような新鮮さ。もぎたての瑞々しい果物を食しているかのよう。チェロの響きに支えられたヴァイオリンの強くて、しなやかなフレージングが、情熱が迸り、楽しくてしょうがないって感じで演奏される。活き活きしている。通奏低音のような響きは、アクセントが強め、アクがあって語り口調が強い。しかし、これがリズムを生んで説得性がある。求心力、訴求力が強く、アグレッシブなのが好ましく感じられる。押しの強いイケメン男性に、くどかれているかのような錯覚に。(ちょっと妄想が入っている)
第3楽章は、オチャメな楽章でワクワクする。中音域の響きは硬めだが、和音の響きが新鮮で、不協和音のようにも、現代音楽風にも聞こえる。テンションが高く、盛り上がってすっと消える。

第4楽章は、転がるトリルが可愛く、ヴァイオリンの強弱、揺れ感が心地よい。アクセントの強さや、癖の強いフレージングなのだが、慣れると軽やかで見通しのよい旋律に聞こえる。こんな演奏があったんだと、目から鱗のように感じられる。今までは、密集した音で、熱帯雨林のような暑苦しい演奏を聴いていたようだ。このラルキブデッリの演奏は、なんて涼しげなブラームスなのだろう。
厚く塗り込めたかのような演奏ではなく、リズミカルでポップ。清流のようなさらさら感。清冽な潔さが感じられる演奏で、まるで、現代風にアレンジされたかのような演奏だ。これは古楽器を使った演奏だったよね。使用している楽器は古楽器で、浪漫派の曲だが、演奏は現代風なのかもしれない。すごく楽しく愉快だ。ひねりが効いて素敵な演奏でした。


 ブラームス 弦楽六重奏曲第1番
Brahms: String Sextet No.1
アマデウス弦楽四重奏団 1966年
Amadeus String Quartet

ヴァイオリン:ノーバート・ブレイニン Norbert Brainin ジークムント・ニッセル Siegmund Nissel
ヴィオラ:ペーター・シドロフ Peter Schidlof セシル・アロノヴィッツ Cecil Aronowitz
チェロ:マーティン・ロヴェット Martin Lovett ウィリアム・ブリース William Pleeth

アマデウスSQの演奏は、中低音の響きに厚みがあり、浪漫的な要素の強い演奏である。とても渋く枯れている。しかし、これが、昔から名盤として有名な演奏である。チェロの声にして渋い。にがーいストロングコーヒーを味わっているようだ。アマデウス弦楽四重奏団の演奏って、渋すぎるぐらい渋く男臭い。無骨で背中で泣いているという演奏タイプになるだろうか。古風だな~ 昭和の名優高倉健さんみたい。枯れた味わい深い古風なロマンティックな声で歌われ、 むんむんとした男の体臭が広がっていく。
硬いドイツ風の楽曲だが、フレーズはカシカシしておらず、繰り出されるフレーズの滑らかさに驚かされる。柔らかく、伸び縮み自由自在で、ルバートをかけた演奏で、甘美で揺らめく情感がこもった感じ。今聴くには、ちょっと暑苦しくて重く、ひと昔以上前の演奏だとは思う。

第2楽章は、シンプルだけど耳に残るフレーズで、情緒的に弾いている感じはしないが粘っこい。トリルの最後に「たらら~ら~」の最後の音が出る前に、わざとらしい音の隙間が空いていたりする。う~ん。持って回った言い回しだなあ。伴奏が、う~っうっ。ら~っらっ。し~っしっ。最後の音が大きく粘っている。ねっとりしていた節回しで、骨太で重々しい。恋心にもだえて悲痛な心が、内声部で蠢いている。アマデウスSQ盤では、古楽的なバロック的な楽曲に仕上がっており、特に、伴奏が印象的だ。粘った伴奏で、チェロの伴奏が擦れた声で、「タララ ララっン」と、ボーイングされている。主旋律より伴奏の方が勝っている。内声部に厚みが生まれるのだが、好みが分かれるかも。ルイ・マル監督のフランス映画 ジャンヌ・モロー主演の「恋人たち」にも使われているそうだが、残念ながらモローさんの映画は拝見していない。

第3楽章は、なかなかにオチャメで優美だ。最初はテンポが遅めだが、中間部よりテンポアップ。高揚感があるが、渋い音で湿った音で終始する。第4楽章は、転がるトリルが可愛い。低いボンボンという響きが心地良く、「そっそれ~ どっどし~ ウパウパ パパっ」といった弾んだ音がする。渋くて重いくせに明るい。もっとストレートに若さを爆発しても良いんだけどね。アマデウスSQの演奏は、相当に渋く、熟成した赤ワインのようだ。既に枯れた境地に至っており年寄りくさい。青春の息吹が感じられるとは、とっても思えない。といいつつ、 昔から名盤の誉れ高い1枚なんですよね。ワタシ的には、この渋さには、ドンビキ状態。聴く人の年齢によるかもしれません。それにしても、いきなり弦楽六重奏曲だし、老境くさく、27歳の作品とは、ブラームスには驚かされる。アンバランス感覚が、ブラームスなのだろうか ? 


ブラームス 弦楽六重奏曲第1番
1963年 メニューイン、アロノヴほか EMI
1966年 アマデウス弦楽四重奏団ほか G ★★★
1995年 ラルキブデッリ SC ★★★★★




YouTubeでの視聴


ブラームス 弦楽六重奏曲第1番
Brahms: String Sextet No.1 In B Flat, Op.18
チャンネル:アマデウス弦楽四重奏団 - トピック
Amadeus Quartet - Topic
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=-5vXu34IkbE
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=2LuI83RWots
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=BjimQwogP9g
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=bs_p9wgLjQI


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