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ラフマニノフ ピアノ三重奏曲第1番、第2番
Rachmaninov:
Piano Trio No.1&2


ラフマニノフのピアノ三重奏曲は、悲しみの三重奏とも呼ばれます。
第1番は、モスクワ音楽院在籍中の1892年に作曲されています。
ウィキペディア(Wikipedia)を元に記述すると

第1番は、単一楽章のト短調で、古典的なソナタ形式ですが、呈示部はそれ自体が12のエピソードで形成されています。第1部では、ピアノの「慟哭のレント」に始まり、チェロとヴァイオリンに悲歌が引き継がれますが、曲想は、常にうつろいがちです。 レント主題は、再現部で型通りの再登場をした後で、最後に葬送行進曲として再現されるもの。
全体を貫く哀調と、肥大化された楽曲構成、葬送行進曲による締め括りから、チャイコフスキーの「偉大な芸術家の想い出」の第1楽章を手本にしたことは間違いないとのことです。
ラフマニノフ19歳のときの作品で、47年になるまで出版されておらず、作品番号もありません。わずか15分程度の楽曲ですが、すでに、ラフマニノフ節が聞こえてきそうです。

ピアノ三重奏第2番(作品9)は、1893年11月に、チャイコフスキーの訃報を受けて12月に完成された曲です。
故人を偲んで、ピアノ三重奏曲ないしは室内楽を作曲するという発想は、チャイコフスキーが始め、アレンスキー、ラフマニノフ、そしてショスタコーヴィチ、シュニトケが同じように作曲しています。

第1楽章:モデラート 厳粛な調子を帯びて始まり、終結部に近づくや烈しく炸裂する。
第2楽章:クヮジ・ヴァリアツィオーニ 第1主題に基づく変奏曲です。この主題は、ラフマニノフの幻想曲「岩」の主題に似ています。
第3楽章:アレグロ・リゾルート 終楽章は短いながらも、雄渾多感なピアノの表現力に支配されており、楽曲構成は明らかに、チャイコフスキーの「偉大な芸術家の思い出に」に類似しているとのこと。
なお、1907年、17年に改訂されています。

ボロディン・トリオ 1983年
Borodin Trio
ヴァイオリン: ロスティスラフ・ドゥビンスキー Rostislav Dubinsky
チェロ: ユーリ・トゥロフスキー Yuli Turovsky
ピアノ:リューバ・エドリナ Luba Edlina

切なくて泣きそう


録音状態は良い。残響が多め。ゆったりとした絶妙のタメ感で、しみじみ、うるうる。
カップリング:1 ラフマニノフ ピアノ三重奏曲第1番、2〜4 第2番
ラフマニノフ ピアノ三重奏曲第1番

冒頭の、弦の「らみらみ らみらみ らみらみ・・・」と、五月雨のように、とても、弱く、かしげたような音が続く。
この音が、最初は、とてもゆったり、とても弱く、そして、ららみみ ららみみ・・・という感じに聞こえて、少しだけスピードをあげていく。この弦の揺れる、弱い振動のような波動は、とても、興味深い。

そこに、ピアノが、「らしど みぃ〜 らしど みぃ〜 らそみ どふぁみど られどら ふぁ〜そぉ」
「られみ ふぁら〜 れ〜 みれみふぁ らぁ〜 ふぁみど られどら ふぁしらみ ふぁ〜そぉ〜」
このピアノのフレーズの後ろで、まだ、弦が揺れるように聞こえてくる。
硬質感のあるピアノだが、とても、タメ感があり、もう、この冒頭と胸キュン状態になってくる。

ボロディン・トリオさんの渋さは、チェロの渋さと、ヴァイオリンの音色なのだ。
タメのあるフレージングで、ヴァイオリンの渋い音が聞こえてくる。少し弱いかな〜というぐらいの囁きのようなフレージングだ。
ボザール・トリオさんの音も渋かったが、このボロディン・トリオさんの音質の方が、もう少し渋めで、ヴァイオリンが高音域にさしかかっても、艶を出さずに、ぐっと沈んでくる。
チェロのフレージングも、たっぷりと歌っており、ここまで歌う?というぐらいに、深く、うぐぐぅ〜というほどに、掘り下げて、大きな感情のクライマックスをつくってくる。

フレーズが、あがる前のタメ感は絶妙で、あがった後は、少し、はしょりぎみに降りてくるので、フレージングの畳み方が、なんとも言えない情緒感が出てきており、息を詰めて、うえにのぼったあとの、息の吐き出すタイミングが、はぁっ〜っ。
この連綿としたフレーズは、このコンビでないと、ダメなぐらいに〜 とろけちゃう。
もちろん、このような波は、なんども来るわけではないが、甘いフレーズなのに、渋い音質で奏でられ、ふっと力を抜かれて歌われると、ころり〜と、なってしまうこと請け合いだ。

ボザール・トリオさんの方の音質は、もう少し洗練された感じで、スマートなのだが、ボロディン・トリオさんの音は、少し太めで無骨で、枯れた音で、少しど演歌風の野暮ったい感じがする。しかし、このある意味泥臭さ、野暮ったさが、素朴で、じわじわ〜しちゃうのだ。 これで、胸キュンにならず、ぐっと来て、うるうるしない方は、まず、おられないんじゃーないだろうか。まあ、古い奴だとお思いでしょうが・・・ って感じなんである。
(えっ このセリフがわからない? ワタシも、この年代じゃーないんですけどね。)

最後のピアノの重い音にも、思わず、息が深く吸い込まれていくようだ。艶がありすぎると、どろどろ状態になってしまうかもしれないが、この音の渋さが、引き締まった感を与えているし、物憂い旋律を奏でさせると、天下一品という感じ。
これには、まいりました。わずか、15分18秒というクレジットの楽曲だが、とても、ながく感じられる。


ラフマニノフ ピアノ三重奏曲第2番

1楽章
ラフマニノフのピアノ三重奏曲は、2曲ある。
習作とされて、生前に出版されていなかったのが1番、作品9というのが第2番である。この2番は、1893年の作品で、チャイコフスキーの死を悼む作品として、あっという間に書き上げたそうなのだが、演奏時間約45分という長大なもの。
よく言われているのだが、ニコラス・ルビンシテインが亡くなった際にはチャイコフスキーは、「偉大な芸術家の思い出のために」を作曲し、チャイコフスキーが亡くなった際にはラフマニノフが、この2番を作曲したという。
まあ、一種の連鎖でしょうか。ピアノ三重奏曲には、そんな要素、系譜があるのかしらん。

で、この2番は、情緒豊かな楽曲だと思うし、実際に書かれたのは若い頃の作品だが、落ち着き払った甘さがある。
「れ れどどし し れどどし そ れどどし み れどどし・・・」というようなピアノのくぐもったフレーズに、チェロとヴァイオリンが、「そぉ〜そ そぉ〜 そぉ〜 そら そみぃそぉ〜 そらし そぉ〜 れ れ れぇ〜」というフレーズが重なってくる。
ピアノは、和音を微妙に変えていくのだが、チェロは涙を拭きながら、オトムライに歩いているような〜雰囲気だ。
この淡々とした、くすんだ音色のピアノ、せつない弦のフレーズは、なんとも言えない沈痛な表情を見せる。
葬送行進曲というか、家族的な雰囲気がするから、行進曲というのは不適切なのだが、う〜ん。葬列かな。

で、その冒頭が終わると、次第に高揚して、トゥッティを築き、想いが迸るような激しさを放出するのだが、その間の、まどろうかのような雰囲気が、少し甘め。
「らそふぁ〜 らそふぁ〜 らそふぁそらし どしら〜 どしらぁ〜 どしらしどれ みれど どれみふぁみれ〜」
という、とても甘いフレーズと噴きだしてくる。

作品9という、とても若い頃の作品なので、うわ〜っ これは、悲しみを美化したかのようなフレーズだと思いつつも、これがラフマニノフなんだなあ。と、ある程度、美化されていることに微笑ましさを感じる。
スケールがデカイというか、大きくしているような気がしてしまう。多少、表現がオーバーなのだ。
ただ、淡々とした面持ちで、オトムライ風楽曲なので、白黒の映画を見ているかのような〜
映像化できそうなBGM風楽曲なので、さほど長いとは感じない。というか、冗長的だが、時間が止まった感のする曲なので、長いのは苦にならないのだろう。まあ、耳触り良く、うるっ〜とは来るが、ある意味、さらっと涙を流して後に残らないという感じがする。
ボロディン・トリオさんの演奏は、どこか客観的で、絵画的、動画的で、慟哭しないところが好ましい。

2楽章
ピアノが、優しくソロで、「れ そ〜ふぁ れみふぁ そ〜ら しど れ〜そ ふぁ れどぉ〜 しら・・・」
柔らかい主題が奏でられる。
郷愁を感じさせる主題だが、ピアノからチェロに引き継がれていくと、若々しい雰囲気が出てきて、リズミカルに青春時代の歌を歌っている感じになる。ピアノとは違って、チェロの流麗な語り口が、すわーっとした爽やかな空気を運んでくるのだ。再び、ピアノが主題を繰り返すと、現実の世界に引き戻される。
あぁ〜 あのチェロの主題は、やっぱり若かりし頃だったんだな〜と、思い返すのだ。でもね、また、今を楽しんで生きて行きましょうよ。と、語りかけているかのように優しいのだ。
今度は、チェロが、コミカルに、ちょっと弾んで、ワクワクした感じの主題へ。
物語を描いているかのように聞こえるんだけど・・・。あっ、なるほど、変奏曲なのね。
この2楽章は、主題がピアノソロで奏でられ、1〜8まで変奏曲となっている。で、第2番目の変奏曲だけ、ピアノのソロが出てくるのだ。
この楽章は、ラフマニノフの幻想曲「岩」の主題の1つに似ているという。
(えっ・・・ そうだっけ。岩の主題? また、聞き直さないといけない) この岩は、チャイコが初演することを約束していらしいのだが、実現できなかったらしい。

3楽章
「みっれ どしどぉ〜 らっそ ふぁみふぁ〜」この楽章の冒頭は、ピアノだけで、勇壮に弾かれる。
まるで、ピアノ協奏曲のようなダイナミックさで、ずーっと、しばらく演奏されていく。
「どぉ〜し どぉ〜し どぉ〜し」と、鐘のように響くフレーズがあった後、チェロがうめくように「みっ ふぁ〜 みぃ〜」と鳴る。
「みっ ふぁぁ〜みぃ みふぁ〜み どしら そふぁみ どぉ〜 ふぁ〜みっ ふぁ 〜みぃ〜 どしら ふぁみふぁみふぁみ・・・」
と、悲痛な叫びをあげ始める。
それが、ひとしきり奏でられると、ふっきれたように、ピアノとチェロが勇壮に、雄渾にフレーズを歌いあげていく。
これこそ、まさしく、「偉大なる芸術家の思い出のために」・・・って感じなんでしょう。

「みっ そ れどどし みっそ れどどし みっそ れどどし・・・」
「そぉ〜 そぉ〜 そぉ そら それそぉ〜 そぉ そらしぃ〜 そぉ〜れ れれれ れ みぃ〜れしれぇ〜」
という、第1楽章最初の主題に戻る。

ボザール・トリオ 1986年
Beaux Arts Trio

ほぉ〜良いヤン

録音状態は良い。渋くて甘いという音質と、ゆったりとしたフレージングで、胸をキュンっとさせられる。
カップリング:
1    ラフマニノフ ピアノ三重奏曲第1番
2〜4 ラフマニノフ ピアノ三重奏曲第2番
ラフマニノフ ピアノ三重奏曲第1番

弦の「らみらみ らみらみ・・・」と、かしげた音から、ピアノのフレーズが入ってくる。
「らしど みぃ〜 らしど みぃ〜 らそみ どふぁみど られどら ふぁ〜そぉ」
「られみ ふぁら〜 れ〜 みれみふぁ らぁ〜 ふぁみど られどら ふぁしらみ ふぁ〜そぉ〜」

とても切なくて、甘いフレーズで始まる。
続いて、同じ主題をチェロで奏でられると、胸キュンのようになっていく。
ボザール・トリオさんの音は、渋めで甘い。
特に、チェロとヴァイオリンの音色が良く、弦の音に同質感があるので、まろやかに溶け合って響き合うのだ。
まず、このチェロの安定した響きがあって、そこに、アルトの声のヴァイオリンの音が、すっと乗ってくる。
ヴァイオリンの音が、この楽曲だと、低い音域で奏でられる。
だから、もっと、まろやかに〜 うまく溶け合うのだろうと思う。キーっと昇った高いフレーズは見当たらない。

そして、ピアノが違和感なく、寄り添うように、強弱をつけながら描く。
「らしらし っらっしら しぃ〜」と、ヴァイオリンが旋律を、「どぉ〜しら そらそふぁ みぃ〜」っと、撫でるようにフレージングしていくと、ラフマニノフの甘いロマンティックな香りが立ってくるのだ。
チェロの「ふぁ〜そぉ〜らぁ〜そふぁしぃ〜 みぃ〜ふぁ そ〜らそしぃ〜 そぉ〜らぁ〜しらそふぁ〜」という、段々と声を振り絞って、ヴァイオリンの泣きが入ってくると、ラフマニノフさん特有の涙・涙の旋律となる。
主題のチェロの歌い方は、渋いし、穏やかで、中庸感があり、大人のビターな味のする演奏だと思う。
ヴァイオリンのシックな音色がチェロに絡み、適度な湿気を生む。
音の強さも、うまく、あいまっており、渋くも甘く、せつせつと訴えかけられる。適度な声の震えによって、少し膨張した感になる情感が、ふわーっと浮きあがる。そして、畳みかけてきて、強めに演奏されて、間合いを大きめにとった頂点を形成されると、ふっと、情感が堰を切った感じになってしまうのだ。
聴いている方が、じわじわと、ウチのほうから発熱してくる感じがして〜 やられたっ。という感じに。

1983年 ボロディン・トリオ Chandos ★★★★
1986年 ボザール・トリオ Ph ★★★★
2004年 マフチン・ベレゾフスキー・クニャーゼフ Warner  
まだ所有盤を整理中です。

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