「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

1085

ベートーヴェン ピアノ・ソナタ 第23番「 熱情」
Beethoven: Piano Sonata No.23 ''Appassionata''


ベートーヴェンのピアノソナタ第23番ヘ短調(作品57)は、通称「熱情」と呼ばれており、中期の最高傑作のひとつとして名高い曲です。
ウィキペディア(Wikipedia)を元に記述すると
燃えるような激しい感情を寸分の隙もない音楽的構成の中に見事に表出しており、劇的な情熱が現れる中にも、正確なリズムを維持するよう説いてて、演奏には非常に高度な技術が要求されるものです。

第1楽章  ヘ短調 12/8拍子 ソナタ形式
序奏を置かず、弱音による主題の提示に始まり、主要主題は、いずれも5対1の鋭い付点リズムです。
第1主題は、分散和音の下降動機(C-A♭-F)と、旋律的動機(C-D-C)の2つから構成されます。
これらの動機は、全楽章の主題に用いられており、すぐに反復されます。静かに交響曲第5番の「運命の動機」が現れて、第1主題が強奏で繰り返されると、同音連打に乗った推移を経て、ドルチェの伴奏の上に変イ長調の第2主題が出されます。荒れ狂うような結尾楽句が続き、次第に静まりながら提示部を終え、アルペッジョの連続と、第1主題が交差する展開へと続き、第2主題の展開となり、転調を繰り返す間にクライマックスに到達します。コーダは、規模の大きなものです。

第2楽章 変ニ長調 2/4拍子 変奏曲形式
威厳を湛えた穏やかな主題と、3つの変奏およびコーダからなっています。主題は、前段、後段のそれぞれ8小節が各々繰り返されます。第1変奏は、シンコペーションが特徴的な変奏。第2変奏は、右手は16分音符の音型、第3変奏は音型が32分音符と細かくなり、主旋律と声部を交代しながら進んで、アタッカで終楽章へと突入するもの。

第3楽章 ヘ短調 2/4拍子 ソナタ形式
開始から強い減七の和音が打ち鳴らされ、音型が発展して第1主題で16分音符の奔流は途切れることなくそのまま経過句を形作り、ハ短調の第2主題の出現を促し、カノン風からコデッタとなり、音量を弱めながら提示部を終えます。提示部に反復は設けられておらず、すぐさま展開部となり、新しいリズムを持つ旋律が現れます。
第2主題は、ヘ短調で再現される。コーダでは加速してスタッカートを付された新しい素材が出現し、その後、第1主題が急速に奏されてアルペッジョの激情の中で一気に全曲を終えます。

バレンボイム 1981年
Daniel Barenboim

まっ こんなモン

録音状態は良い。パッションは感じるが、大柄すぎて力が強すぎて〜 ちょっとずさんな感じがしちゃった。
カップリング:ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第14番「月光」、8番「悲愴」、23番「熱情」
1楽章
力強いタッチで、アクセントがついており、付点のリズムはダイナミックだ。
鋭いタッチではあるけれど、音は全体的に丸みを帯びてて、粒の大きな音が鳴ってくる。
また、分散和音のところも、強く、ババン バンバンバンって感じで鳴りっぷりがよく、スケールが大きい。細かいトリルの部分も大柄で、とても繊細とは言えないけれど、綺麗に揃っているし〜 高い音域でポイントでは、カン〜っと鳴らしている。
楽章の最後は、しっかり情熱感を表して放出させているように思う。

2楽章
穏やかな主題で、間合いはゆったりとしているが、少し緩めに感じられてしまう。
シンコペーションの部分は、ばらけた感じを受けた。音符が段々と細分化されていくところは面白いのだが、意識的に均質的に鳴らしているようだ。軽やかさよりも、充分な響きを確保しているのかなあ。左手の和音が強いように思ったりするのだが、丁寧にきまじめに弾かれている。

3楽章
「れぇ〜れれ〜 れ れっれっれっれっ れぇ〜」と、粘りのある強いタッチで和音を奏でて、する〜っと、スタートしていく。
力の入れ方が、くさびを打ち込むような感じではなく、結構、ゆったりとしている。
れみれど れみれど・・・ と呟くように繰り返した後、16音符になった途端、スピードをあげていくのだが、イマイチ、細かいフレーズには聞こえないし、エンジンの掛かりが遅め。
音が濁っていたりするし、う〜ん。粒立ちが揃ってないし〜 ちょっと大柄すぎるかも。情熱はわかるし、パッションも強い放出がされているようにも思うんだけど、なーんか、表情が細かく刻まれていないように思う。
右手のパッセージが綺麗だと思っていると、左手の方が無造作な音が出ているな〜っと感じてしまったり。
「そぉ〜 そそ らぁ〜らそ そぉ〜れみふぁみっ・・・カカカ」っと、歯がカチカチ言っているような感じで、ちょっと、げんなり。
ラストなんぞ、快速に飛ばしていくのだが、気持ちはわかりますが・・・ ちょっと、ばらけてません?

 

ゲルハルト・オピッツ 1989年
Gerhard Oppitz

あちゃ〜

録音状態は極めて良い。とても個性的というか、とっても速く、とっても跳躍して〜
呆気にとられて終わる。筋肉質で綺麗な打音で、熱いパッションが火花のように飛んでいる。
カップリング:ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」、14番「月光」、23番「熱情」

1楽章
オピッツさんは、2004年〜6年にベートーヴェンのピアノ・ソナタをヘンスラー(Hanssler Classic)に録音していたように思う。で、このCDは、それ以前に、グラモフォンに入れたものである。
初めて聴いた時に、端正というか細身だと感じたことと、もっと重心の重い、がっしりした演奏の方が好きだな〜と感じてしまったので、その後、ヘンスラーの全集は買い求めていない。

で、久々に取り出して聴いたのだが、あまりに強烈な演奏で、端正で素早く、火花が散っているかのようだ。
でも、だから何?って感じがしていた。 主題の付点のリズムが、特徴の楽章だが、堅牢な、ごっついパワーで押してくるような押しの強い演奏ではなく、跳躍能力が高いというか、すごい速い指の移動で、高音域のパラパラパラ〜という装飾音が美しい。
何度かこの分散和音を繰り返しているうちに、導火線が短いというか、一気に熱が籠もってきて、え? ここで跳ねる?
段々と、軽やかさに勢いが出てくるというか、左手のババババ・・・というリズムに乗ってきて〜
主題が、跳ねてくる感じで、勢いが出てくるのだ。
見た目は普通っぽいが、いいスーツを着ているおじちゃん、という感じで格調は感じる。しかし、その実は、瞬間湯沸かし器のように、一気に火花が飛び散っていく。
で、指で鍵盤を押すピアノというより、まるで、高音域の音は、ハープをつま弾いているように感じる。
なんていうのか、粒立ちが良いという言葉では、もう言い表せないぐらいのタッチで、ツメで弦を直につまんで、音を出しているかのようだ。

特に、2楽章は、寂しい曲想なので、いつもは、退屈するのだが、オピッツ盤で聴くと、瑞々しく感じてくる。
最初の出だしは、じわっと奏でられているので、スピードは遅い。いつものベートーヴェンと違う感じで、なんだか不思議なフレージングで、ん たぁ〜ら たら ららっと流れて行く。ゆらゆらしているという感じかな。
で、たたたた たたたた・・・と、平坦な部分の音の粒が、じわっ じわっ じわわぁ〜と、熱っぽく、そのくせ穏やかさがあるというか。怜悧な打音だ。 ブレンデル盤のように、チャーミングで、無邪気ではないものの、2楽章は不思議な感覚で、訴えてくる。なかなかに聴かせてくれる2楽章だ。

3楽章は、最後メチャクチャ 速くなってくる。 だが、アクセントが均一的で、せっかく楽しい、風変わりなシンコペーションが入ってくるのに、なんだか変化に乏しい。スピードはあるのだが、 付点のリズムが活かされていないように感じる。
なぜなんだろう〜 リズミカルだとは、あまり感じない。
綺麗な打音なのだが、常に一定の力で打音されており、耳あたりは良いのだが、さらっと音が入って、さらっと出て行く。付点があった筈なのに・・・。 なんだか、つっかえた感じがしないまま、一気呵成に突っ走るもの。
とても筋肉質で、均整がとれているのだけど〜 熱い演奏ですが、さーっと吹いて去って行く風のようでもあり、とても呆気にとられます。  

アルフレッド・ブレンデル 1993年
Alfred Brendel



録音状態は良い。ガツンとしたガツガツ、ガシガシに肩をいからせて演奏しているタイプではなく、庶民的と言ったら語弊があるが〜
柔らかく、リリックで、とってもチャーミングな演奏である。可愛い。
ブレンデルさんのピアノソナタ全集10枚組BOX(1992年〜96年)

1楽章
「れしそぉ〜 しれそ しれそ そ れ〜み ふぁらふぁら ふぁ〜みれ〜」
「れしそぉ〜 しれそ しれそ そ れ〜み ふぁらふぁら ふぁ〜みれ〜」
「どぉ〜れ みみみれど (れれれど) みぃ〜ふぁ そらそらそら らそらみ〜(れれれど)」
主題の付点のリズムが、軽やかで、重々しい熱情とは違う。重さの付点というよりは、高音域のパラパラパラ〜という装飾音に耳が行く。
シンプルな分散和音だけど、段々と、軽やかに勢いがあって、主題が生きてくる。
「どぉみら〜 どらそ〜 しそら〜ふぁ そ〜れど み〜どし み〜れ ど〜し」
「どぉみら〜 どらそ〜 しそら〜ふぁ れ〜 どぉ〜 しら み〜 み〜」
転がるフレーズの綺麗なこと。
特徴のある付点のリズムで、重さを持ちつつ、音の移動していくのが面白いのだが、ブレンデルさんのピアノは、分散和音の部分よりも、高音域で転がっていくトリルの部分が綺麗で〜 軽やかに聞こえる。
ところどころ、はっしょって走っている感じにも受けるところがあるが、澱みがない。

「しっし どし しっれ〜ど どふぁ〜 み みみ み〜れ」
速く走ってしまうところと、もちっとした感触のあるところがあるが、幾分、速め。
「らっ どぉしら らっ どしら ふぁ〜 らそふぁ ふぁ〜らそふぁっ」
重さを持ちながらも、左手の回転で、重さが、ひょいと持ちあがって移動して回転していく感じがする。
回転度数の高いというか、即興性が高いというか、杓子定規ではないのだが〜 嫌みはない。
左手のフレーズが、カッチリしているからかもしれないが、右手は自由に奔放に動き待っているような気がする。

2楽章
「ら し ら らぁ〜 し ら ら〜そふぁ〜そら」
ブレンデルさんの演奏は、柔らかい変奏曲で、不思議と気持ち良い。
心地良い風が、窓からそよいでくるかのような、暖かさがある。
他の盤で聴くと、まるで、空虚でぽっかり穴が空いたみたいに、空しくなるのだが、この盤では、全くそのような気配がない。
ちょっと速めで、「ら し ら し らっそ ふぁふぁみみれ〜」と、ウパウパ ウパパミレ〜っと可愛く囁いてくれる。
芝生で子供が遊んでいるかのような、童心に戻ったような優しさがあって、無邪気な天使が遊んでいるかのような清々しさがある。で、変奏曲を聴くのが楽しくなる。
柔らかくて優しいフレージングで、さりげなく多彩な面をみせてくれる。

3楽章
猛烈な暑いパッションというよりは、軽やかで、しなやか。
冒頭、付点のついた和音の連打がある。「れぇ〜れれ〜 れ れっれっれっれっ れぇ〜」
不思議なシンコペーションのような連打のあと、流れるようなフレーズがある。
れみれど れみれど・・・ と繰り返されるなかで、「ふぁっふぁ〜 どど どぉ〜し ふぁふぁふぁ〜みれど」と
「しぃ〜ら そぉ〜ら しぃ〜ら そぉ〜ら」と、嵐のようなフレーズが入ってくる。
でも、ブレンデルさんの演奏は、怒濤の押しの強いパワフルな熱情というよりは、軽やかで、スイスイと推進力があって、身のこなしが優美な演奏だ。
厳めしく、体育会系の汗くさい、熱いエナジーが放出されていくというよりは、頭の良い優等生が、さらさらと難しい数式を解いていくようなクレーバーさが感じられ、ふふっ こりゃ〜 頭脳派って感じがする。
知性派と言われる所以なのか、安心して聴いてられる平穏さがあって、総体的に穏やかだ。
打音の強さというよりは、流れる美しさがあって、そうかと思うと息継ぎをしているかのような、ふっと、柔らかい間合いがある。
また、心地良く、歌うようなフレーズが入っており、リズミカルな打音のなかで、右手が良く歌う。
主部より、ますます最後になると速くなっていくが〜 左手のリズムに応じてさりげなく歌うところが凄い。
「そぉ〜そそ らぁ〜らら そぉ〜そそ れみふぁみ」
「そぉ〜そそ らぁ〜らら そぉ〜そそ れみふぁみ」
「れぇ〜れれ どぉ〜どど れぇ〜れれ らしどし」
最後のプレストは、やっぱり猛烈に速いけれど、破綻しないし、精密機械のように走っていく。

とってもドラマティックな楽曲だけど、ブレンデル盤で聴くと、爽快さがあって、厳めしさや、痛快な感じはしない。いたって穏やかで、内面的に静かに燃えている感じだ。
あまり外向きに、パッションを発散するタイプではないし、押し出しも強くないが、細やかな気遣いが感じられる、安心できちゃう上司のようで聴きやすい。  
1959年 バックハウス Dec  
1964年 ケンプ  
1964年 アラウ Ph  
1967年 グルダ Am  
1967年 グールド CS
1973年 ギレリス
1978年 アシュケナージ Dec
1981年 バレンボイム ★★★
1989年 オピッツ ★★★★
1994年 アルフレッド・ブレンデル Ph ★★★★
1999年 コヴァセヴィチ EMI
2002年 ポリーニ
2004年 近藤喜宏 Ph  
2005年 ルガンスキー WJ  
所有盤を整理中です。

「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

Copyright (c) mamama All rights reserved