ベートーヴェン ピアノ・ソナタ 第25番「かっこう」

 ベートーヴェン ピアノ・ソナタ 第25番「かっこう」
Beethoven: Piano Sonata No.25 "Cuckoo"
アルフレッド・ブレンデル 1993年
Alfred Brendel

ベートーヴェンのピアノソナタは、たっぷり32曲もある。とっても一度で聞き比べもできないし、他にも聴きたい楽曲が多いので、亀のような歩みで聴いている。今日は第25番を聴いたが、この曲は、構えて聴く必要もないぐらいとても優しい。ウィキペディア(Wikipedia)を元に記述すると、ベートーヴェンのピアノソナタ第25番(ト長調 作品79)は、1809年に作曲されている。第24番と25番は、交響曲第5番運命と、6番田園、ピアノ協奏曲第5番などと同じ頃の作品で、ピアノ・ソナタは、小品が量産されている時期でもあり、比較的小さな規模にまとめられている。楽譜の出版社には、「ト長調のソナタには『やさしいソナタ』もしくは『ソナチネ』と名付けて下さい」伝えていて、初版譜では、「ソナチネ」と題されたそうである。その名の示す通り、ベートーヴェンのピアノソナタとしては演奏も容易であるとのこと。で、第1楽章に、カッコウの鳴き声に似たところがあるので、ニックネームとして、「かっこう」とも呼ばれるらしい。10分にも満たない曲で、さらっと聴けちゃう。

第1楽章 ト長調 3/4拍子 ソナタ形式
「ドイツ風に」と指定されており、レントラーが意識されており、序奏がない。第1主題の提示に始まり、第2主題はニ長調で、提示部の反復後、展開部となっている。手の交差によるパッセージで、カッコウの声が繰り返される。実際、とっても明るい声で、「らどら みぃ~れど しらそらどら そ~ふぁ」と歌っていく。繰り返しているが、とっても爽やかに、素速く演奏されてて、左手伴奏も、ブンチャッチャ~と、軽やかにリズミカルだ。繰り返す場面では、アタマが、ちょっと力強く演奏されているので、気持ち良く、まるでモーツァルトのように軽快だ。綺麗に転調しているし、「みっら れっそ  みらっ れっそ」と、カッコウが啼いているようだ。

第2楽章 ト短調 9/8拍子 三部形式
メンデルスゾーンによる無言歌集の舟歌に似ていて、ゴンドラの上で、二重唱を歌うような感じ。ちょっぴり暗めに、「らぁ~ どぉ~れみ みみ ど らぉ~どし  らぁ~どれみ~ みみど れふぁしど~」と囁く。

第3楽章 ト長調 2/4拍子 ロンド形式
冒頭から軽快な主題が提示されるが、この主題は、ピアノ・ソナタ第30番の冒頭主題と密接に関連しているとのこと。「どぉ~れど み~ふぁみ ら~しら どぉ~ ふぁ~そふぁ ら~しら し~どし どぉ」っていう主題だね。この主題が素速く、さらっと弾かれている。ロンド主題が、3連符の伴奏に乗って出された後、ハ長調の主題が勢いよく現れる。その後、再度姿を現すロンド主題の伴奏は、16分音符に細分化され、ロンド主題を素材としたコーダは、最後に向かってクレッシェンドしていくが、突如音量を落として弱音で幕を閉じるもの。ブレンデル盤は、とてもチャーミングに弾かれていたように思う。この前、ポリーニ盤を聴いてみたのだが、あの方の演奏は硬いし、どこか人工的で、攻撃的に聞こえてくるのだけど、ブレンデル盤は、優しく清らかな音として、どことなく自然界にある音に近いように思う。だから、きっと気持ち良く聴けるんだろうな~って思う。


 ベートーヴェン ピアノ・ソナタ 第25番「かっこう」
Beethoven: Piano Sonata No.25 "Cuckoo"
スティーヴン・コヴァセヴィッチ 1999年
Stephen Kovacevich

コヴァセヴィッチさんの演奏は、硬い打音で、まるで怒ってるのかと思うほどのパッションで驚かされる。ピアノ・ソナタ第23番(作品57)の熱情を聴いた時も感じたが、同じCDに収録されているので、続けて聴こうものならぶっ倒れてしまうほど強烈で、火柱が立っているぐらいの燃える演奏である。(いや、他盤と聞くとまだ柔らかいと思うかもしれないが)
「らっどっら みー れどしらどら どふぁふぁっ・・・」というようなフレーズから始まるのだが、もう既に、切れてるって感じなのだ。CDのセットを間違ったのかと思うほど、えっ、この曲は「かっこう」だよねえ。ソナチネとも呼ばれる楽曲で、比較的優しく、平明な筈の楽曲なのだ。熱情は、燃えてても良いかもしれないけれど、25番の「カッコウ」ぐらい、もう少し穏やかに弾いて欲しいが、猛烈な勢いで突っ走っている感じがする。これじゃー、カッコウではなくツバメだよね。そう、佐々木小次郎の剣術、燕返しのように鋭く、切り返してくるような速さだ。
第2楽章は、さすがに優しい。「らぁ~ どぉ~ れみ みみ ど らぉ~どし  らぁ~どれみ~ みみど れふぁしど~」と、淡く、恋心を秘めたような演奏だ。コヴァセヴィッチ盤は、テンポが速めで呼吸が浅め。舟歌のつもりでゴンドラに乗っている気分でいたら、目眩を起こして船酔いするかもしれない。間合いも狭いし、これは、かなりせっかちな演奏だと思う。第3楽章は、何故、こんなに焦って弾いているのか疑問なのだが、ここもテンポが速め。早口に主題を弾いている。速すぎて舌を噛みそうな感じで、前のめりで転がってしまう。直情的すぎると思うのだが、若々しい情熱も孕んでいるようで、ベートーヴェンは燃え上がる恋をしていたのだろうか。また、そんな設定で、コヴァセヴィッチさんは演奏しているのだろうか。解らなくもないが、ちょっと苦笑いしてしまった演奏だった。


 ベートーヴェン ピアノ・ソナタ 第25番「かっこう」
Beethoven: Piano Sonata No.25 "Cuckoo"
ウラディーミル・アシュケナージ 1979年
Vladimir Ashkenazy

アシュケナージさんのベートーヴェンは、丸みを帯びてて暖かい音質で奏でられている。ブレンデル盤と比べると、丸すぎると言われるかもしれないし、もっちょっと跳躍して欲しいのに飛ばない。あーっ、じれったいなあと思うほど丁寧な演奏だ。 快活なところは、適度に強めで鋭く打音しない。もう少しチャーミングに演奏して欲しいのだが、真面目というかクソ真面目というか。まあ、そこが持ち味なのだが。弱音のフレーズは柔らかく沈み込んでいくし、柔らかいままに走るところは横にふわ~っと流れていく感じがする。もっと飛ばして欲しい、プレストなんだからと思っても、この方は強くは弾きませんね。粘りは少ないしアクセントも強くないので、平坦に聞こえるけれど粒立ちは良い。丁寧なフレージングで、カツカツ鳴らさないままに、スピーディというのだから、結構、凄いのかもしれない。ガツガツ弾かないので、ガッツがないように感じ、派手でもないので、平凡すぎるとか中庸だとか、まあ、すぐに口から出そうな感じ。(あっ、言っちゃった。)第2楽章は、柔らかいままに沈み、沈んだなかでも凸凹は形成されている。この楽章は、ゆったり遅めで粘りながら、呟きを聴かせてくれる。暗いと思うが、アシュケナージさんにしては歌っている感じで抒情的なのかもしれない。この楽章だけを聴くと、思わずシューベルトの楽曲と言いそうだ。第3楽章は、もう少し明るく軽快でも良いのだが、結構、丸くて軽めに、たらんたらん~と鳴らしている。結構速め。暗くて跳ねていないのに、粘りを保ちながら、意外と速い店舗設定なので驚いた。さらっと弾き流しているようだが、やっぱりテクは凄そう。(と、改めて思いました。謝)



ベートーヴェン ピアノソナタ第25番「かっこう」
1979年 ウラディーミル・アシュケナージ Dec ★★★
1993年 アルフレッド・ブレンデル Ph ★★★★
1999年 スティーヴン・コヴァセヴィッチ EMI ★★★★




YouTubeでの視聴

ベートーヴェン ピアノソナタ第25番「かっこう」
Beethoven: Piano Sonata No.25 in G, Op.79
アルフレート・ブレンデル - トピック Alfred Brendel - Topic
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=MXLLAKQaaDk
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=o3KQRFu2Zjg
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=2VQMDQbh4ew


スティーヴン・コヴァセヴィチ - トピック Stephen Kovacevich - Topic
Provided to YouTube by Warner Classics
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=8USgHzpD58w
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=BxEG9d38uSY
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=UOyZU25FtAA


Beethoven: Piano Sonata No.25 in G, Op.79
ウラディーミル・アシュケナージ - トピック Vladimir Ashkenazy - Topic
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=-25D3osm1f8
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=XXCvavZ2WBk
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=JfVnYNUBVq0



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