ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」、チェロ・ソナタ第3番

 ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」
Beethoven: Violin Sonata No.5 "Spring"
イツァーク・パールマン ウラディーミル・アシュケナージ 1973年
Itzhak Perlman
Vladimir Ashkenazy

ベートーヴェンの「春」は、CDをあまり所有していない。もちろん偉大なる楽曲なので、ありがたく拝聴するが平明な曲である。いつも1楽章をさらっと聴いてしまう。交響曲だと聞き比べをしたいと思うが、古い録音、オイストラフさん、シェリングさんとかメニューインさんら演奏家のCDを購入する気が起こらなかったというのが正直なところ。当盤は、若かりし頃のアシュケナージさんとパールマンさんの演奏、もっと音質やノビ感があっても良いかなと思う。少々覇気がない。何度か繰り返して聴いたのだけど、今日の感想はかなり手抜きでしたね。スミマセン。

ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第5番(作品24)は、1800年から翌年にかけて作曲されています。とっても有名な楽曲なので、一度は耳にされたことがあるのではないでしょうか。幸福感に満ちた明るい曲なので、「春」「スプリングソナタ」という愛称で親しまれています。ウィキペディア(Wikipedia)を元に記述すると、ベートーヴェン自身のヴァイオリンのテクニックは稚拙だったそうで、ソナタの旋律リズムは、ピアノのものが中心になっているのだそうです。

第1楽章 ヘ長調 4/4拍子 ソナタ形式 ピアノの伴奏に乗って、ヴァイオリンで第1主題が歌われます。主題は、10小節のもので、順次進行で下降したあと、跳躍を含む音型が3回繰り返されて、もりあがって終わるというバランスの良い美しい旋律です。
その旋律が、ピアノで繰り返されたあと、第2主題が導かれるが、それは第1主題と対比して、和音連打によるもの。コデッタは、連打による動機の模倣と、音階によるもの。展開部は、第2主題が使用され、再現部は、提示部と逆で、第1主題は、ピアノからヴァイオリンの順で奏されます。
第2楽章 変ロ長調 4/3拍子 三部形式(または変奏曲形式)分散和音の伴奏に乗って、美しい旋律が、ピアノ、ヴァイオリンの順で歌われ。主題が再現する際には、装飾的な変奏や転調などで彩られるもの。
第3楽章 ヘ長調 4/3拍子 音階が上がったり下がったりする主部と急速なトリオからなる、短い楽章です。第4楽章 ヘ長調 2/2拍子 ロンド形式 「A - B - A - C - A - B - A - コーダ」の構造を持っており、軽やかなAの主題は、同音が3回連打されることで印象づけられます。2部分からなり、ハ短調に陰るなど様々な要素を持つBと、3連符とシンコペーションのリズムを伴うニ短調のCを経て、Aの主題がニ長調で再現されると、変奏され喜びに満ちたまま曲は終わります。


 ベートーヴェン チェロ・ソナタ第3番
Beethoven: Cello Sonata No.3
ミッシャ・マイスキー マルタ・アルゲリッチ 1992年
Mischa Maisky Martha Argerich

やっぱり語り口が巧いと思う演奏で、マイスキーさんも、アルゲリッチさんの伴奏で活き活きしている。また、ピアノが巧いですよね~ 冒頭から1分も経たない場面で、既にノックアウト。弱音と強い打音のコントラストも濃く出ているが、特に、寂しそうな雰囲気、うつむいた表情、物憂げな多感な表情など、エキサイトする演奏よりも、1楽章の最初の静かな雰囲気のところで、ぐいっと引き込まれていく。いつもなら濃厚な表情の演奏、まるで歌舞伎役者風情のマイスキーさんのチェロが、ぐっと抑え気味で演奏されている。えっ、嘘みたいにおとなしい。抑え気味の方が深みが出てきて良い味が出ている。
第2楽章は、ピアノの明るさ、ほの暗さを含んだチェロの跳躍が、とっても魅力的だ。なんという間合い、語り口だろう。やっぱりピアノが巧いと、チェロが生きてくる。ここだけで、何度も聞きたくなっちゃうシンコペーションのリズムだ。手が飛び跳ねた後に、くるん~っと空中で一回転したくなるような、ぷるんとした弾力性のあるリズム感になっている。極上の白玉粉で作った大福餅のような、もちっとした風合い。それでいてキレがあるリズムだ。第3楽章は、短いアダージョで1分59秒というクレジットになっている。続けて後半に入っていく。柔らかいフレーズで、なでるようなピアノが印象に残る。水面をすーっと通り過ぎるようなチェロの足並みは、さりげないが深みが感じられる。
後半のアレグロ・ヴィヴァーチェ(Allegro vivace)は、最初は小声で囁く風情だが、ピアノの軽やかで高音域のころころした音が、とって魅力的だ。もちろん、チェロも負けてないけれど、スケール部分では、やっぱりアルゲリッチさんの楽しい熱っぽさが、ふふふっ、巧いっ巧いっ。チェロの存在を立てていながら、ピアノのキラっと光る独壇場になっていくところが、おもしろい。
さりげない表情だが、ほくそ笑みながら、2人で燃えていくところが、なかなかに憎い。聴いてて楽しくなってくる。
ふわっとした雰囲気で暖かさがあるし、余裕のある幾何学模様という感じだ。草書体の雰囲気だが、密やかな遊び心がある。ベートーヴェンのチェロ・ソナタって、楽しいですね~ 3番は、いろんな表情を見せてくれるし、大人の余裕を感じさせる演奏だと思う。カップリング:ベートーヴェン チェロソナタ第3番、第4番、第5番、マカベウスのユダの主題による12の変奏曲
チェロ・ソナタ第3番・第5番、魔笛の主題による7つの変奏曲・12の変奏曲とカップリングされている盤もある。


 ベートーヴェン チェロ・ソナタ第3番
Beethoven: Cello Sonata No.3
リン・ハレル ウラディーミル・アシュケナージ 1984年
Lynn Harrell Vladimir Ashkenazy 

ベートーヴェンのチェロ・ソナタは、「新約聖書」と言われている。で、旧約聖書って例えられているのは、もちろん、バッハの無伴奏だ。調べて見たら、ベートーヴェン以前にも、結構、チェロ・ソナタってある。だから3番を新約聖書と例えるのは、どうかなと思っていたのだが、モーツァルトにはチェロ・ソナタってないんですよね。ウィキペディア(Wikipedia)で見ると、え~ こんなに、チェロ・ソナタってたくさんあるんだ。ホントに、クラクラしちゃうほど多くの作曲家が創作している。昔から、とっても愛されている楽器なのである。
ベートーヴェンのチェロ・ソナタは全部で5曲あるが、3番がイチバン有名だ。冒頭から、とっても美しい調べが登場するのは、間違いないところ。主題が素敵で、いっきに引き込まれてしまう。チェロの甘くて渋い、色彩というか香りが、もうすでに冒頭で花開いており、あらまぁ~素敵じゃんという感じなのだ。主題が、何度となく登場するので耳に定着していく。もちろんピアノも重なって、さりげないが華やかだ。大胆にイ長調からイ短調に変化する。えっ、あのチャーミングだった子が、あらまっという感じに劇的に変化する。「しぃ~ふぁそっふぁ みれっ どぉ~しっ」と、リズミカルに付点のリズムとなって、活発になっる変化は面白い。すぐに主題が、戻ってきて 「どど ふぁみれ~」と、ピアノとチェロのフレーズとなり、ボンボンっとチェロが叩かれる。瞬間的に、勇壮で開放的に変わるのだ。
第2楽章は、ピアノとチェロが、シンコペーションのリズムを刻む。「ん ぱぁ~ぱっぱら ぱしっ」というフレーズなのだが、文字にすると巧く書けない。このシンコペーションのオンパレードみたいなテーマは、互い違いにピアノとチェロが掛け合う。ウパパ ウパパというところの面白さは、斬新だ。とてもワクワクさせられる。
第3楽章は、「どぉ~ ふぁみふぁらどぉ~しぃ れどみふぁ ら どぉ~し」と小声のピアノで、チェロは伴奏にまわっていく。続いて、同じ主題をチェロで奏でていく。ここは、しっとりとした情感が漂う。甘くて、ちょっぴりかすれた声で囁かれる。3楽章のアダージョの部分は、ここでは1分46秒となっている。
アレグロ部分は、同じ3楽章のなかで、2つに分かれていて、先がアダージョ・カンタービレで、つづいてアレグロ・ヴィヴァーチェとなっている。するっと軽快に変わり、ピアノが、ババババと伴奏をしていく。続いて、ピアノが、同じ主題をチャーミングに奏でていく。特に、チェロとピアノの細かなスケール部分が4回ほど走る。で、それが、終わって、「ら どっど れれっれ どっど みみみ ふぁどっど れれっれ どどっど みみみ ふぁふぁっふぁ ふぁみっ ふぁっ ふぁ~」というところは、なんとも言えない、痛快なほど楽しい。
この曲は、確かにアダージョの部分は、チェロの出番だが、ラストのアレグロになると、俄然、ピアノの方が面白いように思う。チェロのフレーズも、なかなか良いんですよ。でも、ワタシの耳には、ラストのピアノの軽快さ。リズミカルさは、やっぱり、チェロより、ピアノでしょう~っていう感じだ。チェロにとっても苦痛ではないだろうが、この弾み方は、ピアノに書かれたと言われそうである。チェロソナタなのに? まっ チェロの持っている音を消しているわけではなく、アシュケナージさんのピアノの方が、燃えている感じがする。


 ベートーヴェン チェロ・ソナタ第3番
Beethoven: Cello Sonata No.3
ヨーヨー・マ エマニュエル・アレックス 1983年
Yo-Yo Ma Emanuel Ax

ワタシが所有している盤は、1996年に発売されているものだ。で、3番と5番と、魔笛の主題による変奏曲2曲が含まれている。チェロ・ソナタ全曲が2枚組BOXも発売されている。また、3番、5番のみで、魔笛の主題は割愛されているリマスタリング盤も発売されている。CDジャケット写真の使いまわしでの発売で、とても困ってしまう。間違いやすいのだ。(まあ、ソニーさんだけの話しではないが。)で、ソニーのうたい文句が、若い日のマさんの代表作で、世界中でベストセラーを記録したとあった。そのためか、とても期待して聴いたのだが、意外とおとなしい演奏で、躍動感、のびやかに歌いあげたという感じはしない。この3番は、運命、田園、皇帝の作曲された時期と重なってて、中期の傑作の森の1つなのだ。別人のような演奏で、意外や意外。もっと楽しい、もっとノビノビしているかと思ったのに、あれれ~なのだ。特に、スリリングさを求めているわけではないのだが、冒頭からして暗いし、ピアノも粒立ちの良さも特筆するほどでもないし。オツヤ状態。2楽章のスケルツォも。3楽章のアダージョも、少し期待したほどではなかった。するっと、5番に移っていき、5番の3楽章なんぞは、抜け殻状態に思ってしまう。ちょっと困ってしまった。


ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」
1973年 パールマン アシュケナージ Dec ★★★

ベートーヴェン チェロソナタ第3番
1983年 ヨーヨー・マ アックス SC ★★★
1984年 リン・ハレル アシュケナージ Dec ★★★
1992年 マイスキー アルゲリッチ G ★★★★★

ベートーヴェンのチェロソナタ第3番(イ長調 作品69)は、1808年に作曲されています。ウィキペディア(Wikipedia)を元に記述するとベートーヴェンは、5曲のチェロソナタを作曲していますが、初期、中期、後期にわかれていて、初期に作品が集中しているヴァイオリン・ソナタとはちがって、各形式を代表するような傑作となっています。この3番は、特に運命、田園、皇帝の作曲された時期と重なって、中期の傑作の森を代表する室内楽です。チェロ本来の低音とカンタービレの能力を生かしながら、高音なども、積極的に用いていて、従来のチェロ作品よりもチェロの持つ可能性を大きく拡張したものになっているそうで、一方、ピアノも、オクターブ重複など豪快かつ自由な歌いをしています。作曲技法においても、チェロとピアノの、両手による精緻な対位法的処理が随所に用いられるなど、この時期のベートーヴェンの作曲技法の高さを示しているものです。

第1楽章 イ長調 2/2拍子 ソナタ形式
チェロが雄大なイ長調の第1主題を奏し、ピアノもそれを受けて曲は始まります。ホ短調の第2主題は、チェロ、ピアノの両手による調性を変えながらの3声の対位法によって展開されます。展開部においても、チェロとピアノの有機的な関係が示されており、再現部を経て、第1主題の動機を用いたコーダが始まります。ここでは、動機圧縮の手法が用いられ、曲は盛りあがりを強め、チェロとピアノが第1主題を奏した後に、チェロの旋律で曲を閉じるもの。

第2楽章 イ短調 4/3拍子 A-B-A-B-A形式 
ピアノがかなり鋭く用いられた勢いのあるスケルツォと、明るいトリオによるもの。

第3楽章
優美で大らかなホ長調の序奏部から始まり、チェロのソステヌートの能力が存分に発揮されています。イ長調の属七の和音から雰囲気が変わり、チェロが、軽やかな第1主題を奏でます。イ長調の2/2拍子に変わり、ソナタ形式の提示部で、ピアノも加わって主題は大きな盛りあがりを見せます。短い展開部と、再現部を経てコーダに至り、ピアノの華々しい旋律が大きくクレッシェンドし、クライマックスを合奏で演奏した後、堂々と全曲を終わります。




YouTubeでの視聴

ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」
Beethoven: Violin Sonata No. 5 in F Major, Op. 24 "Spring"
itzhakperlman
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=AcofgtlKdj4
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=jloDQCf9NWo
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=cgAzCRwW4CA
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=cMjmwLWo22s


ベートーヴェン チェロソナタ第3番
Beethoven: Cello Sonata No. 3 in A Major, Op. 69
ミッシャ・マイスキー - トピック
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=toGOeXfikGA
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=nqEoX4mVrV0
第3楽章 https://www.youtube.com/watch?v=8M_V8TRTuRU
第4楽章 https://www.youtube.com/watch?v=g0YbGHtz4xE


ベートーヴェン チェロソナタ第3番
Beethoven: Sonata for Cello and Piano No.3 in A, Op.69
リン・ハレル - トピック Lynn Harrell - Topic
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1楽章 https://www.youtube.com/watch?v=UqHsPIe7n0Q
第2楽章 https://www.youtube.com/watch?v=89J6uLwiuUM
第3楽章-1 https://www.youtube.com/watch?v=Bcqa02-FkOU
第3楽章-2 https://www.youtube.com/watch?v=lH5tsTPewdw


ページトップに戻る