「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

12970605

リスト ピアノ・ソナタ ロ短調
Liszt: Piano Sonata in B minor


1297

マルタ・アルゲリッチ 1971年
Martha Argerich

もえてるぅ〜

録音状態は良い。超ヘビーで過激。頭のなかでスパークするほどの演奏で、まるで火山の爆発のようだ。聴いて疲れ果てる。
←「デビュー・リサイタル」としてCD化されているもの。ピアノソナタだけ71年で、あとのカップリングは60年の録音
カップリング:ショパン「スケルツォ第3番」、ブラームス「2つのラプソディ1番、2番」
プロコフィエフ「トッカータ」、ラヴェル「水の戯れ」、ショパン「舟歌」、リスト「ハンガリー狂詩曲第6番」

1楽章〜2楽章
「らっ らっ ら〜そ〜ふぁみれどし らっ らっ ら〜そ〜みれれどし らっ らっ らら〜」
めちゃ小声で始まる。そろっと忍び足風で、臆病なほどなのだが、「ら らら〜 ど〜れみ れしそふぁ」のところでガツンっと1発、 「れれれ れどしそふぁ ふぁどみ〜 ふぁふぁふぁ ふぁみれらそ しれふぁ〜」
その後、音が聞き取れないほど回転が速くなっていく。
文字にするなんて無謀な楽曲だから。まあ。黒鍵の音が曖昧にしか書けないのだが、 音の押し込みも強いし、タッチが強いのに速いので、まず、あっけにとられる。
雷にでも打たれた気分で、バリバリっとした音が出ている。
「っふぁふぁっ! らしど〜 みそ〜 みそ〜 らふぁ〜 らふぁ〜 ら〜」 
でも、左手の低い音は、メチャ深い音だし、硬いっ。シ シ・・・ ドン ドン ドン・・・
でもよく響いているのだ。お腹に響くようなゴツイ響きのなかで、右手のパッセージが、回転の速いカラフルな音なので、聴いていて気持ちが良い、スカッとした格好の良さがある。
「ら〜そふぁみれど〜 ど〜 み〜れどしらそふぁ ら〜そふぁみれ〜 ど〜しらそふぁ」

「し〜し し しどど〜 みみ〜 みみふぁふぁ〜 ら ら〜しし〜 らそふぁみれどれみふぁ そ〜」
このフレーズが、ジャジャジャジャ・・・という伴奏付きなのだが、伴奏も大きな音である。 で、何かに打ち勝った強さみたいなモノを感じる。 「どっど れれ〜 ららみみ どどっ れれ〜」 
この勝負あった〜 といわんばかりに、勝利の鐘が鳴っているように感じる。

その後、一転して、「らら れれっ ふぁ そ〜らそふぁそし〜そみど」 可愛く変貌する。 はあ? ここまで変身できるの?と思うほどの変わり身で、これには仰天しちゃう。テンポは落ちている。「らららら らーそふぁ れ〜どど〜」
コロコロと小節がまわってて、右手が、まるで、ショパン風に変わっているのだ。えっ?
「そそそそ そ〜ふぁみし〜ら らららら ら〜しどどし しししし・・・」というフレーズで、あっ これリストだっけ。という風に思い出したのか、でも、またショパンのように聞こえてしまう。

「らっ しど ら〜 らっしど ら〜 らしどれみふぁそ・・・」と駆けめぐったあと、また凄い跳躍が始まる。
ひーっ 息がつけないっ。目が回るぅ〜 この跳躍は、天駆ける馬にも感じるし、暴れ馬が後ろ足で蹴っているような感じもするし、なにせ、変貌しちゃうところが、とてもすごいのだ。ちょっとした フレーズで、表情ががらり〜と変わってしまうのだ。
「れっれっ れれ みみっ〜 そっそっ そそ ららぁ〜」
フレーズっていうより1音で、がらり〜と男から女に、女から男に変わるぐらいの変わり方で、 さっきまで、楚々としていた女性が、いきなり目の前に立ちはだかって、横っ面を殴られたようで、ガツンっ。

1楽章を象徴する「し〜し し しどど〜 みみ〜 みみふぁふぁ〜 ら ら〜しし〜 らそふぁみれどれみふぁ そ〜」  ダイナミックで豪快、硬くて鋼のように響く。グッサグッサ・・・
本来甘くてロマンティックなフレーズだと思うのだが、ぐっさ〜っと、刺されても泣いて喜んでしまう。 刺されても、自虐的に喜んでしまうような、フレーズに聞こえてしまう。まるで、 両極端の極みのような演奏で、赤道と南極を往復しているようで、聴いててとても疲れてしまった。

3楽章
「そっ そ〜しど れ〜どしそみっ みふぁそら〜そみどし れれれ れ〜どし みそしそふぁみどし・・・」
「ししし し〜れどし ししし し〜れどし」と、繰り返すパッセージ
ちょっと、ご勘弁を〜と言いたくなる気分なのだが、おかまいなしに3楽章に突入して、 パッパ パッパ パッパ〜っ と進んでいく。

最初は小声なのだが、段々、ゴツンゴツンという低音と、右手のパッセージが甲高くなってくる。
頭のなかで、音が、「ふぁ ふぁ ふぁ ふぁ らそふぁ どどっ〜 そそっそそ ししっしっ ふぁふぁ・・・ ふぁふぁふぁ そらそふぁ しどれふぁみれ・・・・」 頭のなかで、音符が火花をあげて、スパークしてしまう。
シュポッ! ひっ〜 熱いっ。止まってくれ〜と言いたいのだが、勝手に弾んでしまって転がっていくうちに、摩擦で火がついて、焦げちゃったような感じがする。

「そそぉ〜 そそ らら〜 どど ど どれ〜れれ ふぁ〜ふぁ〜 そ〜ふぁみれどしらし どれみ〜」
「れどそら〜 らら〜 しし〜 ららっ ししっ ららっ ししっ みみ〜」
このフレーズは、透明度が高いっ。はあ。澄んだ音だ。いきなり湖にドボンした感じで生き返る。
で、今度は、めちゃとろけるようなフレーズに変わっている。

「ふぁふぁふぁ〜ふぁみれそふぁ ふぁふぁふぁふぁ みれし〜ら ら〜そ」
こりゃ〜 あれだけ激しく動き回って疲れないのだろうか。
ひとやすみしたら、また速いパッセージが到来する。行き着くところまで行ってくれ〜というほど、音が飛び交っている。
また鐘がなるのだが、今度は、鈴が鳴っているようなパラパラ音で、それが終わると、ゆったり〜 過激すぎて疲れるっ。

すっかり〜 頭のなかで音符が爆ぜてしまい、まるで火山である。メチャメチャ疲れる。
最後は、すっかり魂が持って行かれたような気分で、死に絶えた感じで、楽曲と共に聞き終わった。 この演奏は、超激しく、カラダもココロも鍛えておかなければ、耐えられないぐらい。 演奏しているご本人は、疲れないのだろうか。
きっと、天才は疲れないのだろう。 耐え難いっ、もう少し中庸の演奏で充分だっ〜と、のたまうワタシは、小市民的な存在なのだろう。そう思う以外にないように思いました。とても、ついていけません。

0605

クラウディオ・アラウ 1985年
Claudio Arrau

ほぉ〜良いヤン

録音状態は良い。分厚い響きがたっぷり入っている。浪漫派の色合いの濃い演奏で、ゆったり、たっぷりめ。
カップリング: リスト「巡礼の年」第1年「オーベルマンの谷」、同第3年「エステ荘の噴水」、同2年「ダンテを読んで」

1楽章
「らっ ら ら〜そふぁみれどし らっ ら ら〜そみれれどし」
↑ 冒頭のフレーズには、半音が入っているので、きっちり歌えないが。この後の、左手のドスンっという音に、びっくりさせられる。アラウさん、確か80歳超えてるんだというのに、結構、強烈っ。
「そっそっそっ ふぁみれっど・・・」左手の重さって相当だ。
で、右手の回転速度の速いこと。階段を上っていく足取りも、下ってくる速さも、はあ〜速い。
恐れ入りましたという感じ。当然のことながら、そこらへんの、おじいちゃんとは違う。
しかし、全体的には浪漫派の色合いが濃い。たっぷり〜豊かに響いている。これが魅力である。
イチバン印象的なフレーズに、ゆったりとした足取りで入ってくる。
「し〜し し しどど みみ みみふぁふぁ〜 ら らしし〜らそふぁみれどれみふぁ そ〜」
で、たっぷり歌いあげる。
う〜 すごいっ。おおらかに、たっぷり〜 どうだ〜 広いだろ〜 目の前は大海原だぁ・・・。って感じ。
有無を言わせないな。
その後、繊細さも目を見張る。遅いって言えば、メチャ遅いんですけどね。
テクがどうのこうのっていう世界じゃーないんだなあ。そんなこと言わせないだけのモノがある。

2楽章
「れ れそみれ〜どし らしらそらみ〜れ」 ゆったり歌う。かなりゆったり。
まあ。右手は結構、煌めき具合もあって、私的には、ゆったり、まったり型のリストとしては、満足している。
「れれ〜れみみ そそ〜 そららら〜 ど どどれ〜ど しらそふぁ〜ふぁそ〜」
と、これまた、たっぷり ゆったり。
左の音のペダリングが綺麗だなあ。と、その響きに聞き惚れる。
ちょっとムード音楽になってないかね。とは思うんだが。まあ。ゴージャスで可愛いリストも、たまには良いのじゃ〜ないだろうか。
ついには、とろけて眠くなっちゃう・・・。そんなリストって言うのも、珍しいんだけどねっ。
70年の録音を持っていないので比較していないのだが、また聴けたらアラウさんの若い時の録音も、ぜひ聴いてみたいと思う。

3楽章
「そっ そ〜しどれ〜どしそみっ みふぁそら〜そみどし れれれ れ〜どし みそしそふぁみどし・・・」
「ししし し〜れどし ししし し〜れどし」と、繰り返すパッセージのところなんかは、足元がおぼつかないし、危ないな〜って思うところもたくさんある。
あ〜 転けないでっと祈る心境にもなるのだが、それは巨匠には失礼ってなもん。
3楽章は、やっぱ正直、ちょっとキツイ。
その変わり、左手の深いごっつい音は、やっぱアラウさんかなあ。響き全体として、まろやかに大きい。
部分的には、やっぱ精緻さが足らないし、テクがおじいちゃんだけに衰えてはいるが、それは、他の盤に求めれば良いわけで。
私的には、アラウさんの歌
「そ そ〜そそ らら ど〜ど ど ど〜れれ〜 ふぁ ふぁふぁ そっ そふぁみ どしらしどれみ〜」
このフレーズさえ聴けたら良いわ〜という感じなのだ。
このフレーズを聴く際には、しんみりに聞こえたり、大海原的に聞こえたり、呟くように聞こえたり、雪の結晶を見ているような気分になったりする。
これは、聴き手である私の心情にも依るところも大きい。
豪快に、ダイナミックに、駆け抜けて行く演奏も大好きだ。しかし、たまには仕事で疲れ果てて、誰かに寄りかかりたい時もある。そんな時に取り出して、こっそり〜 内緒で浸る1枚である。


1462

クリスティアン・ツィマーマン 1990年
Krystian Zimerman

こりゃ良いわ〜拍手

録音状態は良い。剛柔あわせ持った演奏で、優美で煌めきがあり、甘美でソフト。そして、タッチも強く深い。余韻もあるし、快速に飛ばすところは、メチャ速くて熱も帯びてくる。こりゃ絶品っ。
カップリング:灰色の雲、夜、「悲しみのゴンゴラ第2番、葬送曲

「らっ らっ らぁ〜そぉ〜ふぁみ れどし らっ らっ らぁ〜そぉ〜みれ れどし らっ らっ」
冒頭こそは、弱く短めのフレーズで、区切りをつけて奏でられるが、「ら ららぁ〜し〜どみ れしそふぁ」
「みふぁっそ し〜らふぁれしっ」ここで、ガツンっと一発、大きく鳴らされる。
「しど れれれ れどしそふぁ ふぁどれ〜 ふぁふぁふぁ ふぁみれらそ しれふぁ〜」
テンポは遅め。その後は、アルゲリッチ盤にも似てて段々と回転があがっていく。
アルゲリッチが、ここから火がついて、ぐわ〜っと熱っぽくなっていくのだが、ツィマーマンさんも、すごく速いっ。
でも、音が綺麗で、力強く、特に、降りてくるところの粒立ちの良い音っ。う〜ん 美音だっ。
音が濁らず、粘りもあって、音が、飛びだっていくような飛翔感がある。

「みふぁそし〜 らふぁどら そどらふぁ・・・ どみれそ ふぁらどそ・・・」半音階でのぼっていくところ、う〜。
このピアノから発せられる音の余韻が残っていて、その響きが、微妙に残り香りのように漂っている。
「ら〜そふぁみれど〜 ど〜 み〜れどしらそふぁ ら〜そふぁみれ〜 ど〜しらそふぁ」 
「し〜し し しどど〜 みみ〜 みみふぁふぁ〜 ら ら〜しし〜 らそふぁみれどれみふぁ そ〜」
ペダルの余韻もあるとは思うが、このツィマーマンさんの使っているピアノからの、ホント残響が、余韻が、大変気持ちが良い。そして、おおらかである。
弱音時の優しさ、柔らかさ、まろやかさ。これだけ、強い音と、優しい音の使い分けができるなんて〜
めちゃ驚きだ。「そそそそ そ〜ふぁみし〜ら らららら ら〜しどどし しししし・・・」と、ショパンのように可愛く鳴っているフレーズもあり、こりゃ〜 この落差では、とろけない方がおかしい。
人間、こんなに多様な顔を持てないでしょ。というほど、いろんな様相を持っているリストの楽曲だが、このあらゆる要素を詰めこんで、なおかつ、美音にしてしまう。
う〜ん ツィマーマン盤は、すげっ。この演奏には、のけぞってしまう。
「らっ しど ら〜 らっしど ら〜 らしどれみふぁそ・・・」
アルゲリッチ盤のように、火柱が立つほどには燃えていないけれど、余裕を感じさせ、優美な舞う姿を彷彿とさせる。硬いっ 強いっ。でも、しなやかである。
抒情的な面を忘れず、しっかりロマンティックであるのだ、怒りを込めた強いタッチではあるけれど、でも、即座に優しく変貌してくる。

3楽章
「そっ そ〜しど れ〜どしそみっ みふぁそら〜そみどし れれれ れ〜どし みそしそふぁみどし・・・」
「ししし し〜れどし ししし し〜れどし」と、繰り返すパッセージは、メチャ速い。
でも、テンポは乱れない。前につんのめることなく几帳面なほどの規則正しさで、速い。
これは驚きっ。
「ふぁ ふぁ ふぁ ふぁ らそふぁ どどっ〜 そそっそそ ししっしっ ふぁふぁ・・・ ふぁふぁふぁ そらそふぁ しどれふぁみれ・・・・」
「そそぉ〜 そそ らら〜 どど ど どれ〜れれ ふぁ〜ふぁ〜 そ〜ふぁみれどしらし どれみ〜」
「れどそら〜 らら〜 しし〜 ららっ ししっ ららっ ししっ みみ〜」
「ふぁふぁふぁ〜ふぁみれそふぁ ふぁふぁふぁふぁ みれし〜ら ら〜そ」
右手の速い駆け上りは、変なアクセントもなく、なんて粒が揃っているんだろう。と驚かされる。
で、左手の深い、まろやかな響き。硬いだけでなく、鋭いだけでなく、みごとな音の広がり。
アルゲリッチ盤が、まるで火山の噴火のようだったが、ツィマーマン盤は、う〜ん。熱は帯びてくるが、ベタな表現だが、ホント粒ぞろいの宝石のような風情である。

で、深い響きのなかで、再生するように「そぉ〜そ〜 そそらら〜 どど〜 ど どれれ〜 ふぁ〜 ふぁふぁそ そ〜ふぁみれ どしらし どれみ〜 しれそ ら〜っらら ららしっし〜 そそ れれ らら しし 」
このフレーズは、柔らかく、優しい。慈愛に満ちている音色と言えると思う。
う〜ん。その後、音が空中に舞っていくような、柔らかく響いていく。まるで星のようで〜 絶句っ。
星となって昇天しちゃった後は、再度、豪快なラストになっていくが、あ〜 こりゃ参りました。

なにせ、音が綺麗に響くところが嬉しい。それに、草書体にならず、乱れもせず、1音1音が、しっかりと理知的に鳴っている。 極めて個性的な盤が並ぶなか、う〜ん。オーソドックスに感じるほどだが、あるようで、なかなか、このスタイルがないように思う。
ポリーニさんの演奏も、めちゃ完璧だし綺麗なのだが、ちょっと近寄りがたさがあり、 クールで硬い。
アルゲリッチさんは、火山の連続爆発で〜 怖ろしくて、なかなか手がのびない。
でも、ツィマーマンさんは、情熱的だが、もっと、しなやかで柔軟なのだ。剛柔あわせ持った演奏で、これには、泣いて喜んじゃう。これは絶品っだとワタシは思いました。


1044

アルフレッド・ブレンデル 1991年
Alfred Brendel

なんじゃ こりゃ〜

録音状態は良い。81年(確か2回目)にも録音しており、当盤は3回目にあたる。力強く、硬く、優美さとか華麗な要素は、感じられない。
カップリング:詩的で宗教的な調べ第7曲「葬送曲」、灰色の雲、ピアノ小品嬰ヘ長調、夢の中に(夜想曲)、R・ワーグナー〜ヴェネツィア〜

「らっ ら ら〜そ〜ふぁみれどし らっ ら ら〜そ みれれどし」
冒頭こそゆったりしてしているが、硬い。そして強いタッチである。全体的に強くて硬くて、がっしりしており、ずーっと強烈なタッチで弾かれている。
「ど みふぁ〜ら〜そ そみどそ しどれ ふぁ〜 みどそみっ」 頂点の音の強くてキツイ音っ。
「ど みっ〜ど〜し らみどらっ しどれ ふぁ〜 みどらみっ」
うっ これは強くて逞しく、容赦のないパワーだ。耳に、ビンビンと響いて入ってくる。
まるで、車輪が回転しているような、機械的な回転音のようにのぼっていく。
うわっ。強烈っ。それも手加減なし。ゴンゴン バンバン、キンキン、トントン・・・

そうかと思ったら、左手が優しく、ポワポワっという響きを紡ぎながら、 「み〜れ どしらそふぁみ ら〜そふぁみれどし ど〜しらそふぁみ・・・」 「し〜し し しどど みみ みみふぁふぁ〜 ら らしし〜らそふぁみれどれみふぁ そ〜」
と、ちょっぴり甘めにフレーズを奏でてくれる。
リストのピアノ・ソナタ、このフレーズだけと言っても過言ではないほど、甘美なんですよねえ。

しっかし、これもブレンデル盤は、硬いっ。おおよそ浪漫派の色香が、無いような〜 
華やかさとか、揺れ動く心情とか、芳醇さとか、香りとかが、う〜ん。無いって言ってしまうと、まずいけれど、ちょっと少ないかなあ。クール過ぎか。
もっとソフトに叩いても良いんじゃーないだろうか。耳が痛いんだけど。
パラパラパラ・・・というフレーズも綺麗とは思うんだが、「っら しれそ〜 らっ しれそ〜 らしどれ みふぁそら られふぁら れふぁらし ど〜」 きっぱり紋切り調で。うぷっ。 
華麗さとは、あまり、ご縁がないのか、ごっつ〜っ。ゴンゴンっというような、無骨な音がする。
レースのヒラヒラ感とか、優美な装飾なんぞ、一切なし。って感じで、即物的に聞こえてしまう。
まあ。クールって言えばクールなんでしょうが、これがロジカルな響きかと言えば、う〜ん。
粗野な音にも聞こえるし、結構、土臭いリストになっているような感じ。
響き自体は綺麗だが、美音という感じでもない。逞しい、土俗的な田圃や畑を耕しているような雰囲気がしてきて、これじゃー リストは、逞しい無骨なオヤジじゃん。
決してサロン風ではない。優しさもあまり感じないし、優美さも〜 イマイチ。

このブレンデル盤を聴いていると、私的には、難しい問題を解いている最中の、いらいら〜っとした感じがしてくる。また、座禅をして背中を叩かれるのを待っているかのような、どう言えば良いのか、背中に緊張が走るていうか、つまり、聴いていても愉快じゃない。
これは、楽しめないっ。聴いてて、どことなく馬が合わない、ヤダな〜と思う盤である。 どーしてなのだろう。
聴いてて遅いな〜と思うものの、アラウ盤のほうがおおらかで良いなあ。と思ってしまう。
硬い、杓子定規、タイトで息苦しい。余裕がなく、可愛くない。抑揚がない。感情が入っていないというか、う〜ん。ブレンデルさんのピアノは、結構聴いている方なのだが、楽曲が硬いのか、はたまた、録音された音が、うるさいの か、キツイのか(← リマスタリングされているように思う)
どうも、これは苦手です。い〜っ 悲鳴をあげてしまう。


0955

ヴァレリー・アファナシエフ 2000年
Valery Afanassiev

なんじゃ こりゃ〜

録音状態は良い。テンポの遅い演奏で、大変個性的な演奏だ。
聴くたびに印象が変わり、腹が立つ時もある。まっ それだけ個性的な演奏。
カップリング:ピアノ小品嬰ヘ長調s192NO.3、同s192NO.4、悲しみのゴンドラ第2番、凶星(不運)

アファナシエフは、テンポのメチャ遅い演奏で、大変個性的な演奏である。
トータルで、41分38分というCDのクレジットになっている。
「らっ らっ ら〜そ〜ふぁみれどし らっ らっ ら〜そ〜みれれど〜し〜 らっ らっ らら〜」
間合い充分だが、息の詰まるような緊張感のある演奏で、普通なら回転度数をあげて、火がついたように速くなっていくフレーズも、確実に、音を刻んでいく。
このテンポの異様な遅さに、初め、とっても面食らってしまう。
他の盤をスローにしたような感じだ。
このテンポの遅さ、タッチの刻み方に馴れると、う〜ん。強い押し込みのタッチと共に、不思議な快感に聞こえ始めるのだが、ただし、フレーズを口にできるぐらいに、何度も他の盤で聴いてて、次の音が、何の音が鳴るのか知っている人に限るかもしれない。
次の音が、緊張感のなかで、待ち遠しくなる。多少じれても、煌めく音を心地良く待ってられないと、ちょっとツライかもしれない。
最初の1枚としては、絶対にお薦めできない。違和感だけが残るだろうなあ。
リストのロマンティックなフレーズが好きな方には、う〜ん。個性盤だが、夢見心地な要素も、大きく孕んでいるので快感となるかもしれない。
音は綺麗っ。粒立ちも文句なし。がっしりした硬めの厳つさのある音である。
硬さと柔らかさを併せもってはいるが、流れが、大きく膨らんだり、萎んだり、厳つさから柔らかさに変貌するような演奏ではない。
フレーズによって、まるで別人のように、その姿を変えていく演奏が多いし、また、それを楽しむ楽曲のように、私的にはとらまえているのだが、アファナシエフさんの演奏は、その変化を拒んでいるかのような演奏なのだ。
じゃ〜 何が楽しくて、この長大な楽曲を弾いているのか。う〜ん。わからないなあ。
そんな風に思いつつ、でも、何度か繰り返して聴いていくと、じわ〜っと面白く、引きずり込まれて聴いてしまう。
ダイナミックなんだよねえ。大きなスパンで、この楽曲を俯瞰しているように感じたり。
また、姿を、これ見よがしには変貌させないのだが、不可思議な合わせ鏡のなかに、入り込んで、抜けられないような感じになってしまう。ずーっと自分を見つめて、その姿が永遠に続いていくような。
変わらない姿を、ずーっと見続けていなければならないような。そんな不思議さを感じるのだ。
ちょっと、ホントは、耐えられないんですけどねっ。
演奏しているアファナシエフさんご本人は、どのようにこの楽曲にアプローチしているんでしょうねえ。

作品を創った人が、私はこう思った。こう感じた。だから、それを他の人に伝えたい。
何かの形にして、それを表す。そんな表現手段がある。
でも、そうではなく、見た人が、自由に発想し、何かを感じてくれたら、それで、いいんですよ〜という作品もある。
オブジェ的なモノで、ゲイジュツ家は問題を提示するが、見た人間が、それぞれの空間で遊ぶという感じの作品・・・。まあ。このアファナシエフさんの演奏も、どちらかというと、聴き手の私たちが、自ら、 考え感じることを要求するような演奏なのかもしれません。いや〜 要求しているわけじゃないな。
このテンポの遅さが、最初は強制的に聞かされているように感じるんですけど、そのうちに開放され、お仕着せ的な演奏ではないと感じるようになる瞬間が訪れます。 で、この演奏を聴きながら、自由に遊べる、そんな時空間を提供してくれているような演奏かと。 だから、私たちが自ら遊ばないと・・・。
受け身だけで待っていたら、何も生まれてこない演奏かも・・・しれませんねえ。


ファジル・サイ 2001年
Fazil Say

ばっちグー!


録音状態は良い。とても繊細でスピーディーだが、特に個性的には感じないし、派手な見栄を切る演奏でもないのだが、慎ましくも高揚感が感じられる。
カップリング:
1〜3 チャイコフスキーピアノ協奏曲第1番
テルミカーノフ サンクトペテルブルク・フィル
4〜6 リスト ピアノソナタロ短調
サイさんのピアノというと、どちらかというと、ストラヴィンスキーのハルサイ(春の祭典)のピアノ版とか、モーツァルトのトルコ行進曲とか、バッハのシャコンヌとかが有名なのだが、ここは、まっとうなリストである。

なにせ、バカテクの持ち主だし、「鬼才! 天才! ファジル・サイ! 」というキャッチコピーのイメージが強い。
まあ、そのとおりですよね〜って感じだが、このリスト、なかなかに素敵だ。
目の回るようなスピーディな演奏で、緻密だし、細かい音が機械的に繰りだしてくる。

冒頭のぼそっと出てくる音は、怖いぐらいに暗い。
でも、すぐに快速に弾かれる。その機械的に繰りだしてくる音なのだが、なにか気持ちが良いのだ。
どーしてなんだろう。単にサイボーグのように弾いているのではなく、音が立っているのと、筋肉質でありながら、ゴツくなく、爽やかさも感じられる。
規則正しく打ち込まれる音は、きんとアクセントがついており、打音は鋭いが、音が確かで立っている。

リストの曲自体が、構成的にカッチリして、場面で表情が変わり、抒情性もある楽曲だからだと思うが、ぐっとテンポを落としてくるところの表情づけは、細かく、とても密度が高い。
それでいて、夢のごとく浮いたところでは、とても、ふわっとした間合いがあり、とても繊細で柔らかい。
で、もちろんスピーディーに、快速に走って行くところは、とても速く、詰めるところは詰めている。
跳躍感もあって、リズミカルだが、見た目は普通っぽい。

う〜ん、なかなかに表情がづけも細やかで多彩だ。
音がキラキラしているわけではないのに、微妙なニュアンスが感じられる。
チャーミングさも、垣間見られて、端正で質実さもある。燃えるような情熱的な演奏ではないが、聴いてて、すっきと爽やかだ。単にテクニックで聴かされているわけでもなく、嫌みも感じず、暗くなって落ちるところは、闇に向かって落ちていくかのごとく、神秘的に、ウツっぽく落ちていく。
ラストの消え行くところの落ちていく音とは、冒頭と同様に、なんとも言えない底知れぬ暗さがある。
この和音の音は、メチャ怖い。

あまり、奇才というアプローチで聴くと、肩すかしを食らうほど、まっとうな感じがするが、天と地の高さが、他盤で聴くよりも高いというか、格差が大きいように思う。
見た目(聴いたすぐの感じでは)、あまり面白くないように思うのだが〜 リストの楽曲は、ちょっと、大層というか、大仰さがあり、下世話に見栄を切っていくところがあるのだが、サイ盤で聴くと、そこは、あまり横に大きくひろげていかない。
横に広がるって言い方は変だが、表情づけは大きくなく、ご大層ではない。
身振りが大きくないのだ。

でもね、ホント、細やかで、派手でもないし、遊び心はないのだが、それでいて、慎ましやかな高揚感、充実感が感じられる。不思議な端正さで、やっぱ非凡だな〜と思う。
特に、驚くほど個性的というほどではないが、なかなかに聞き応えがあり、飽きないように思う。
どことなく、精神的なつらさみたいなものを感じ、1人で悲愴感を抱えたような雰囲気すら感じのだが、どうだろう。


ユンディ・リ 2002年
李雲迪 Yundi Li

いたってフツウ


録音状態は良い。スタイリッシュで速いけれど、ワタシ的には音質がイマイチな感じがしちゃった。
カップリング:
1〜4 リスト ピアノ・ソナタロ短調S178
5 リスト パガニーニによる大練習曲第3曲「ラ・カンパネラ」S141
6 リスト 献呈 S566
7 リスト 愛の夢第3番 S541
8 リスト 巡礼の年第2補遺ヴェネツィアとナポリ第3曲タランテラ(1859年) 
9 リスト リゴレット・パラフレーズ S434
ユンディ・リさんの演奏は、今どきの若いピアニストって感じで、スピードが速くて目が回るって感じで、速いっ。
最初は、強い打音で、きつ〜っと思うけれど、強い打音を打ち込んでおいて、そこから、快速なっていく。
これだけ速いと颯爽としているというか、何故か、テニスの錦織さんの飛び上がって打つスタイルを思い浮かべてしまった。それだけ、スカッと気持ちが良いというか、跳躍している場面では、ホント、すかっとしている。
しかし、どこか抜けきっていないというか、う〜ん。右手の音が、もっとスカッとした音質だと、もっとメリハリがついて、ダイナミックさがあって良いのになあと思う。

「しっしぃ どどぉ みみ みふぁふぁ〜ふぁ らぁ〜 らら しぃ・・・どれみ」という、大きなフレーズは、ダイナミックだ。
間合いもあるし、左手の音に分厚さがある。かといて、ガツンっという感じではないし、硬質的ではない。
美音であるとか、特別に抒情的という風ではないように思っちゃった。
ドラマティックで、結構聴かせてくれる。しかし、速いけれど、右手の音の粒立ちが、音が匂うように立ってくる〜という感じの音ではない。もっと、もっと、煌めいて欲しいんですけど・・・。(欲深いかしらん)
左手の音は強めで演奏されており、また、すごく弱音で、間合いをあけて弾かれているところも、雰囲気はある。
でも。思わず息をのんで〜 聴き惚れるというところまでは、ワタシ的には、ちょっと至らなかった。
右手の音がなあ、もう少し立ってくれたら〜 嬉しいんだけど。

なぜか、ワタシ的には、この方の左手の音の迫力に、気が行っちゃう。
どす黒い渦巻くようなリストの怪しげな音で、ドスンっとくる太い音、そして、ある種の悪魔的な誘いをするかのような〜 甘い、誘惑的な響きが欲しいかもしれない。(これも欲深いのかもしれないが)

左手の豊かさが、もっと浪漫的に化けて、このタッチの強さで演奏されると、もっと、黒々とした、怪しい音が出そうな感じがする。右手はねえ〜  ショパンの楽曲だったら、もっとクリスタル調に変わるのだろうか、 
で、気になったのは、段々と音が硬くなっていくような気がすること。 もっと、若いのだから、手首に、しなやかさがあっても良いのではないかしらんと思う。
聴き始めた時は、快速で、格好良く颯爽としていたような気がしたのですけど。きのせいかしらん。
そして、1粒の音の表情づけが、これから濃厚になっていけば嬉しいですね。
続く、ラ・カンパネラの音も、少しカツン、カツンっとした鍵盤を叩いている音まるだしで、キラっとした、うえに立ち上るかのような感じはあまりしなかったです。えらそうなこと言ってスミマセン。


1971年 アルゲリッチ ★★★★
1985年 アラウ Ph ★★★
1989年 ポリーニ
1990年 ツィマーマン ★★★★★
1991年 ブレンデル Ph ★★
2000年 アファナシエフ De ★★★
2001年 ファジル・サイ Teldec ★★★★
2002年 ユンディ・リ ★★★
所有盤を整理中です。

「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

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