「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

スクリャービン ピアノ・ソナタ 第1番
Scriabin: Piano Sonatas


ロベルト・シドン 1968年
Roberto Szidon

録音状態は良い。ちょっと入れ込みすぎで情感のダイナミックさについていけず、めげそうになるけれど〜低音の芯の硬い、ごっつい演奏で、メリハリがあり豪快。
← 1番〜10番、幻想ソナタ嬰ト短調、ピアノ・ソナタ変ホ短調
3枚組BOXより
スクリャービン ピアノ・ソナタ 第1番

1楽章
スクリャービンが卒業する頃に書いた作品らしいのだが、とても甘いフレーズが流れてくる。
冒頭は、ちょっぴり爆発気味だけど、右手のフレーズがとても綺麗でキラキラしている。後期の作品とは、全く違っててノスタルジックで、ちょっぴりショパン風。
シドンさんのピアノは、ちょっとウネウネ気味だけど、もだえそ〜になっているところが面白い。
鬱っとしているなかに、煌めきがちょこっとだけ顔を覗かせては、甘い主題の筈なのにメチャ激しくうねる。
うっ 若いじゃん。
「ふぁれどし〜 みふぁそら しらし・・・」ブツブツ呟いていたかと思えば・・・
「ら〜らっらら〜らどみ〜 みふぁそ そ ら〜」「れどれふぁ〜 みふぁそ ら ら〜し どら〜 」と歌う。
はあ。エネルギッシュだなあ。自由奔放なようだが好ましい。
羨ましいような情感の起伏があって、ぐわ〜っと、駆け上り、ストンと墜落しちゃうようなテンションの高さがある。まっ それだけエネルギーがあって喜ばしい限りだ。
シドンさんのピアノは、単なる甘いフレーズになってなくって、ハチャメチャさが豪快に鳴り響く。ちょっと疲れるけれど、フレーズ自体が甘めなので、ハイハイ。わかりますよぉ〜と、許容範囲に収まる感じ。
ちょっぴりお子ちゃま風なのだが、我が儘なところが、かえって好感が持てる。
これを分かり切った大人風に演奏されちゃうと、鼻につくかもしれないし、単に懐古調になるかも。

2楽章
あのエネルギーは何処へ行ったのやら、憔悴しきって抜け殻風に早変わり。
悲しとか寂しいなーんて感じではなく、ハイ文字通りヌケガラ。ありゃりゃ〜 えらい沈みこんでて救いようがないほどに、とほほ状態である。
フレーズは、なでるように始まっているが、そのなかでちょっと塊が見えてくる。でも、なーんかフレーズが繋がってこなくて、ブツブツ。モゴモゴ。はっきりしろよぉ〜と言いたいのを我慢して聴いていると、ブツブツ繰り返している間に、何かが塊となってまとまってくるのか、しだいに細い糸が見えてくる。
でも、あ〜 やっぱり1楽章で、激しく鳴っていたのが嘘みたいに、意気消沈しちゃったのだ。

3楽章
「それ そど らふぁ しら れど・・・」 ゴツンゴツンと左手が、ブツブツと文句を吐き出してくる。
ハチャメチャな感じで、はっきりと音が聞き取れないけれど、文句だなあ。こりゃ。
「れそ そど らふぁ し れそ どそ ふぁし・・・」
暴力的な言葉でも言っているのか、さほど過激じゃーないけれど、右手が、左手の言葉を煽っているかのように響くし、文句は階段をのぼっていく。 シドンさんのピアノは、いささか荒い。いや楽曲が〜なのだ。
暴力的ではないが、精神的に荒い。ツンツンしてトゲトゲしい。
いったん静まって、気持ちを入れ直したのかもしれないが、まあ。きっと、女の子に慰めてもらっているんだろう。可愛く、音がクリアーに響くところが出てくるが、でも、モゴモゴ言っているようだ。
「そ〜れ〜どどれ〜 ら〜ふぁふぁれ〜 パラパラ〜」
せっかく可愛くなったのに、ごっつい低音が、ゴツゴツゴツ・・・ と響きだして、どうやら怒っているらしい。
なにか希望を失ったのか、悲観して〜 また2楽章のようにヌケガラになっちゃってる。
シドンさんのピアノは、ダイナミックで、情感タップリ入れ込んでおり、聴くのがちょっぴり辛い感じがする。

4楽章
「そらら〜 ら〜そふぁみ〜 ソラソラ〜」
鬱の感じで、足をひきづって歩いているかのような、どっぷり疲れモード。
左手の音が鐘のように響き、「ふぁふぁ〜 そ〜ど〜」 「そ〜らしし〜」
「らそそそ〜 らそそそ〜」 ありゃりゃ〜 こりゃ葬式じゃん。いつの間に、鬱に取り憑かれエネルギーが無くなってしまったのか。自殺でもしたのか、どうもアカン。抜け殻が、ホントになってしまう。
で、いったん音が消え去ってしまったので、こりゃホントに昇天しちまったようで、弱音が続く。抜け殻というよりも、なーんもない状態で、ダメっすね。音鳴ってるかしらん。と思うほどの静けさで、しばらく弱音が続いた後、また、鐘が鳴り始め、葬列のような歩みのフレーズが出てくる。
「らそそ〜 しそそ〜 しらしらしら しらそ〜」
あ〜 おわっちまいましたね。ご愁傷さまでした。と言おうとしたら、だめ押しの「しそそ〜」

げっ スクリャービンって、大学卒業時に、こんな曲を作っていたとはねえ。
シドンさんの演奏は、身につまされれる感じがして、ホント抜け殻風で、スカスカ、カスカス状態になってて、鬱になりそうである。1楽章だけは好きですけど、あと、できれば聴きたくないですねぇ。
演奏としては、メチャ低音がゴツンゴツンと入っているし、ゴリゴリ感があって面白い。激しいし、墜落してしまった後の葬送が、悲痛で枯れたというよりは、若くて、しょげちゃっているところが、凄いリアル。
ごっつい感覚が充分で、メリハリがあって聴き応えあり。
ホーカン・アウストボ 1990年
Hakon Austbo (Håkon Austbø)

ブリリアントから出ている2枚組BOX(原盤はSimax Classics)
1〜10番まで 90年代にしては、良いとは言いづらいけど、録音状態はまずまず。
スクリャービン ピアノ・ソナタ 第1番

アウストボさんは、1948年生まれのノルウェーのピアニストである。
アウストボーとも表記されるし、馴染みのないお名前だと思う。スクリャービンのピアノ・ソナタを廉価版で欲しいと思った時に、このBOXを購入。
ブリリアント(Brilliant)盤で、ついジャケ買いをしてしまったのだ。
もっとも、スクリャービンのピアノソナタって、前半はちょっぴりロマン派ぽいし、後期になれば全く違う様相を表してくるので、買うのは全集でなくても良かったのだが〜録音状態は良いし、気軽に全集として買うのは良いかも。
で、1番は、さっぱり系で、シドンさんのように、狂おしいほどもだえるような演奏じゃないし、さらり〜と弾かれている。誠実というか丁寧な演奏だという印象を受ける。
さっぱりしているので、情感が籠もってないって感じもするが〜 初めて聴くのであれば、変にいじくって演奏されるのは避けた方が良いだろうし。良い意味で、中庸的で安定している。1楽章は、北欧のDNAを持った演奏家だからから、甘いなかにも、ひんやり感があるような気がするし、ドスンと落ち込むような危なっかしさは少ない。
「ら〜らっらら〜らどみ〜 みふぁそ そ ら〜」「れどれふぁ〜 みふぁそ ら ら〜し どら〜」というフレーズも、わりと情感を籠もらせず、さらりと濁らずに歌う。 古風な感じはするけど。まあ悪くない。
高音域の音が硬くて大きいのには、ちょっとびっくりしたけど。

2楽章
シドン盤が、抜け殻状態になって落ち込んじゃうのに比べると、はあ。妙に安定して聴ける。
大人って言えば大人ですかね〜。シドンさんのような弱音までにはいかなくって、煌めきを失わない程度に沈んでいるし、湖の底で歌われているかのような感じ。

3楽章〜4楽章
「それ そど らふぁ しら れど・・・」 ゴツンゴツンと左手が、ブツブツと文句を吐き出してくるが、クリアーにゴツゴツしているわけじゃなく、リズムや音が丸くなって、幾分くぐもって聞こえてくる。
破壊的でも暴力的でもなく、音が丸く、ツンツンして聞こえるタイプではない。
さほど重々しい感じを受けないし、ちょっぴり怪しげになっているような気もするし、音階をあがっていくところが微妙で、強い意志は感じない。穏やかに丸く収めましょうって感じを受ける。
右手の煌めきを失わないところは良いんだけど、ちょっと、丸すぎじゃ〜ないだろうか。シドンさんの演奏のように、入れ込み過ぎてトコトン落ち込むのもなぁ〜 ちょっと辛いのだが・・・。
それと比べてしまうと、至って平凡っぽく聞こえてしまう。
1968年 ロベルト・シドン G ★★★★
1972年 アシュケナージ Dec  
1990年 ホーカン・アウストボ Brilliant ★★★
所有盤を整理中です。

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