バッハ トッカータとフーガ J.S Bach: Toccata and Fugue, BWV 565

 バッハ オルガン名曲集 トッカータとフーガ ニ短調
J.S Bach: Toccata and Fugue in D minor, BWV 565
ヘルムート・ヴァルヒャ(バルヒャ) 1956年(62年、69~71年)
Helmut Walcha

オルガン名曲集と題されたCDで録音年は古いのだが、そんなことは嘘のように生命感あふれる演奏だ。ヴァルヒャは、盲目のオルガニストとして有名な方だ。短めのフレーズでテンポ良く、最後のノビが尻切れトンボ風に弾かれているが、明るく爽快。音が鼻にかかっているような音で響いている。即興的にも聞こえ、小回りの効いた雰囲気を持ちながら重厚な響きがする。高い音と低い音の響きが、リズミカルに輪を描くような感じで、上へ上へ舞い上がっていく。響きに余波があると言えば変だろうか。波打った響きというののではなく、さざ波的に届くと言おうか。転がるのではなく波打つさざ波のような音。これが快感だ。主題が変わるところから、硬めにリズムカルに揺れる。抑揚がついて、深く沈んでは、海面に顔を出してくるような魚のような感じ。動的で、浮き沈みをする生物的な動きに感じて、聴いてて快感だった。 活き活きしてて、生命感を感じるって嬉しいですよね。リズムと響き技で、これは五感が解き放たる。愛聴され続けている演奏のことはある。これは楽しい。

 バッハ オルガン名曲集 トッカータとフーガ ニ短調
J.S Bach: Toccata and Fugue in D minor, BWV 565
パワー・ビッグス 1960年~67年
Power Biggs

トッカータとフーガの冒頭。驚愕し、汗がタラリと出る漫画チックなシーンに、BGMとして使われている。CMの見過ぎかバラエティ番組の影響か。超有名曲であることは確かだが、オチャラケ的に固定化してしまった嫌いがあり、改めて聴こうという意欲が減退気味。クラシック音楽が教養・素養のレベルにもなれず、BGM化し効果音として使われてしまうとは。う~ 情けなかぁ~っ。ビックスは、無駄をそぎ落としたスマートな音で、ストレートに出てくる。アラン盤のような豪華な音ではなく細身。ぐわ~っとは鳴らないので、聴きようによっては淡泊だ。
オルガンが違うとイメージが変わるから、なにもオルガニストだけの責任でもなさそうだ。音質の感じでイメージが変わるだろう。最初に聴くには、やはり地響きの立つ重低音がなければ、わざわざ聴かないような気がする。少しテンポが速め。パイプオルガンって、直ぐに音がでてこず、ぶわ~っと遅れて出てくるらしいが深く吸い込んで吐く力に引き込まれるところが魅力だ。


 バッハ オルガン名曲集 トッカータとフーガ ニ短調
J.S Bach: Toccata and Fugue in D minor, BWV 565
カール・リヒター 1964年(1966~67年、1978年)
Karl Richter

録音状態はまずまず。派手で大音量で聴きたいという向きにはダメだが、じわ~っと染み入ってくる。有名なBWV565以外にも、聴かないとダメだなと猛省しました。カール・リヒターの演奏は、カッチリ硬めで淡々と弾かれており、線が細めで、パイプオルガンという巨大楽器というイメージが薄い。この曲を大音量で、たらら~ 俗っぽく聴きたい向きにはお薦めしない。落ち着き払った演奏で、地味だが繰り返して聴いていると、微妙にテンポが揺れたり間髪入れずに来るフレーズがあったりする。さすがに学究肌の方の演奏なのだが、意外と地熱タイプで、じわじわ沁み入ってくる演奏だ。
俗人ゆえ大層に聴く方が、やっぱり内心は嬉しく、ついついBGM的に聞き流してしまいがちだ。しかし、リヒターの演奏は、聞き流しているつもりでも、ん? 勝手に耳が立ってくる。どうしてなのかなあ。不思議な演奏だ。これがリヒター故なのか。トッカータとフーガ BWV565だけを聴き比べてみて、コメントを書こうとしているが、リヒターの演奏は極めて地味な存在。いや、ど素人なので怒らないでください。いかに他の演奏がご大層なのか気づいて、大笑いしてしまったところです。


 バッハ オルガン名曲集 トッカータとフーガ ニ短調
J.S Bach: Toccata and Fugue in D minor, BWV 565
マリー=クレール・アラン 1993年
Marie-Claire Alain

録音状態は良い。すごい重低音が入ってて、ホントに、ごごごごぉぉ~っと響く。迫力満点だ。マリー=クレール・アランさんの3回目のバッハのオルガン作品全集の第12巻を聴いている。オルガン全集を3回も収録しておられて、すごい偉業なのだ。すごく綺麗な音だ。音楽を言葉にするのは難しいが、穏やかだが煌めきがあり 癖のない音という感がする。CDのブックレットを拝見すると、ここで収録されているのは、ハールレム聖バーフォ教会及びレーワルデン聖ヤコブ教会(共にオランダ)のミュラー・オルガン(1738年製 マルキュッセン1961年修復、1727年製)だと書いてあった。トッカータとフーガBWV565を弾いているのは、クリスチャン・ミュラー(Christian Müller)という人が、1735年~38年に製作したパイプオルガンで、とても有名らしい。ちなみに、グローテ・オフ・セント・バーフォ教会(Grote of Sint-Bavokerk)は、オランダのアムステルダムから東、電車で約15分~20分ぐらいに位置するまちで、聖バフォ教会とも表記される。なんでも、メンデルスゾーン、ハイドン、1766年当時10歳だったモーツァルトも、このオルガンを弾いたことがあるらしい。
時間のスパンが違いすぎて想像できないが、目をつぶって聞くと、教会に座って居る感じがする。空気感、残響、ごごごぉぉ~っという重低音が鳴って素晴らしい。歴史的な重みのある時空間のなかで、感謝して聴きたい演奏だ。


 バッハ オルガン名曲集 トッカータとフーガ ニ短調
J.S Bach: Toccata and Fugue in D minor, BWV 565
マリー=クレール・アラン 1978年・80年
Marie-Claire Alain

昔から名盤とされている演奏だが、録音状態は、やはり後年の方が良い。音が明るく、短めのフレーズでテンポ良く流れ、畳みかけるようにして続いていく。フレーズ最後の音が短めで、繰り出すリズム感が楽しい。特に、高音の細かい短いテンポで、長い音がより一層長く聞こえて、圧の高い演奏だと感じる。総体的には、几帳面で楷書体である。足盤の重低音が欲しい気がするし、語尾の歯切れの良さやキレも欲しい気もする。高音域の音色は、安定して綺麗だし、明るいので聴きやすいと思う。ところどころ語尾が草書体風に聞こえるところもあるが、これは好みかもしれない。


 バッハ オルガン名曲集 トッカータとフーガ ニ短調
J.S Bach: Toccata and Fugue in D minor, BWV 565
サイモン・プレストン 1988年
Saimon Preston

録音状態は良い。ドイツ・ボン市の「Kreuzbergkirche」クロイツベルク教会での収録で、パワーもあり、すかっとしたノリのよい演奏だ。スタッカートで弾むというより、まるで飛んでいるかのようなテンポ速めのトッカータである。装飾音が大好きで、自由に飛び跳ねている快活なお嬢ちゃんって感じがする。また、ためては、たららら~と転がり落ちて巻き舌になる。転がっているかと思えば、ここで瞬間的に間を空けるのかと驚かされたりする。触れるという意味がトッカータにあるらしいので、奔放であることに眉をしかめてはいけないのだろう。個性的で即興的な演奏だ。トッカータで乗せられて、フーガに突入する。フーガは、メトロノームのようにテンポが一定だが、アクセントをつけてて聞きやすく、ノリの良い演奏である。パイプオルガンの裏で、ブカブカと鞴が動いている様が想像できて笑える。最後、重低音が入って和音となるところも綺麗だし、音に濁りがない。ホールトーンも充分で、低音高音共にスッキリした伸びある響きで嬉しい限りだ。正調という趣こそ薄いが、安定した響きと愉悦度の高い演奏で楽しい。


 バッハ オルガン名曲集 トッカータとフーガ ニ短調
J.S Bach: Toccata and Fugue in D minor, BWV 565
ピーター・ハーフォード 1977年~80年
Peter Hurford

録音状態は良い。耳元近くで鳴っているような雰囲気がするほどパワフル。少し金属質的な響きがする。ハーフォードの演奏は、幾分、細切れ状態に感じる演奏だ。重低音はパワフル。間合いのあるとこでは、シーンとなる瞬間があり、なにやら恐ろしい隙間クレパスを覗き込んでいるかのようで怖い気がする。フレーズの伸縮度合いの大きい、重々しい、そして厳しいトッカータだ。フーガは、少し軽めの演奏で、楽曲によって、すばやく軽妙に、するりと演奏スタイルが変わる。音が平たく勢いがある。極めてクールに高音域が鳴り響き、低音が被さってくる。オルガンの個性によるところの大きい演奏だと思う。


バッハ オルガン名曲集 トッカータとフーガ ニ短調
J.S Bach: Toccata and Fugue in D minor, BWV 565
トン・コープマン 1995年~96年
Ton Koopman

録音状態は極めて良い。装飾たっぷりのオルガン演奏で、奇想天外すぎて驚いてしまった。楽想のなかを自由に泳いでいる感じで、段々と共感を感じるかもしれない。(眉唾ものだけど)おしゃべりな演奏で、ペラペラペラ~装飾たっぷりのバッハだ。少し漫画チックだ。まあ、はったりをかまされた感のする冒頭だが、徐々に落ち着き通常走行に戻るが、また、突然、パッションがわき起こり、振り回され圧倒される演奏となっている。リズムを刻むなかで自然発露的に燃えるタイプなのか、お茶目な役者タイプなのかは判らない。
今日聴いた曲のなかでは、トリオ・ソナタト長調 BWV530 レントが面白かった。プツプツ、息の漏れたような音が、とっても不思議で、とっても怪しげな感じがする。ウィキペディア(Wikipedia)で調べてみたら、この曲は、6つのトリオ・ソナタ(BWV525-530)のなかの第6番にあたるもの。右手パート、左手パート、足鍵盤パートが、完全に独立した3つの声部となっており、バロック音楽における室内楽合奏曲の一分野であったトリオ・ソナタ、すなわち2つの独奏旋律楽器と通奏低音の3パートの合奏形式で作曲されたものを、オルガン1台で演奏するという野心的な試みがなされた作品だそう。
各曲は、急-緩-急の3楽章構成で作曲されているが、第4番のみ、1楽章の冒頭にアダージョの序奏部が加えられている。室内楽曲としてみても非常に魅力的な音楽であるため、この曲を敢えて通常のトリオ・ソナタの形式に編曲し直して、ヴァイオリン、フルートと通奏低音(チェンバロと、チェロまたはビオラ・ダ・ガンバ)などの組み合わせで、4人で演奏することもしばしば行われ、そのような編曲の録音も行われているとのことだった。コープマンさんは、この6つのトリオ・ソナタを、アルヒーフでもテルディックでも出しているようだ。次は、トリオ・ソナタに焦点をあてて聴いてみるのも、面白いかもしれないと思っている。


J.S Bach バッハ オルガン名曲集
1956年~71年 ヘルムート・ヴァルヒャ G ★★★★★
1960年~67年 パワー・ビッグス CS ★★
1964年~78年 カール・リヒター Ar ★★★★
1977年~80年 ピーター・ハーフォード Dec ★★★
1978年~80年 マリー=クレール・アラン E ★★★
1988年~99年 サイモン・プレストン G ★★★★
1993年 マリー=クレール・アラン E ★★★★
1995年~96年 トン・コープマン Teldec ★★★



 

YouTubeでの視聴

J.S Bach バッハ オルガン名曲集
J.S. Bach: Toccata and Fugue in D minor, BWV 565
カール・リヒター トピック Karl Richter - Topic
Provided to YouTube by Universal Music Group
1 トッカータ Toccata https://www.youtube.com/watch?v=NPz93s8tTNg
2 フーガ Fugue https://www.youtube.com/watch?v=lQJo1sOxkYE


J.S Bach Toccata & Fugue in D Minor, BWV 565
マリー=クレール・アラン - トピック Marie-Claire Alain - Topic
Organ Masterpieces Vol.1 1994 Erato Disques S.A.
トッカータ https://www.youtube.com/watch?v=hhi2DmQOv1M
フーガ https://www.youtube.com/watch?v=T8f6KOGo3xY


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