「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

ブラームス 4つのバラード
Brahms: Vier Balladen(4 Balladen)


ミケランジェリ 1981年
Arturo Benedetti Michelangeli

ブラームスの渋くて、難しく、陰気で鬱陶しくなるような演奏ではなく、優美で、軽やか、嘘みたいに爽やかである。
カップリング:ブラームス4つのバラード、シューベルトのピアノ・ソナタ第4番D.537 現在、これにベートーヴェンのピアノ・ソナタ第4番をカップリングされている。

実は、このミケランジェリ盤を聴く前に、グレン・グールドが演奏したのを聴いていたのだが、文字通り、なにもたさない、なにもひかない状態で〜 
すっかり枯れており、どういえばよいのか、虚無の胸中というか、既に、悟りを開いたような演奏になっていた。で、私は、すっかり〜 この楽曲は、ブラームスの後期作品だと思いこんでいた。
元々、ブラームスは苦手なのに、草1本も生えていない荒野のごとく、風も吹かず、墓場に佇むような、生きた心地のしない、無味乾燥とした雰囲気には陥りたくないと、それ以来、お蔵入りしていたものである。
しかしっ ミケランジェリ盤を聴いて、イメージが違う。あまりにも違う。はあ?
諦観のイメージで彩られた作品だと思い込んでいたものが、明るいではないか。ミケランジェリさんの粒立ちの良い、キラキラした音色が、爽やかに風を運んでくる。
あ〜 未来があるんだぁ〜 鐘が鳴ると、ますます、胸が膨らみ意気高揚としてくる。
う〜ん。どうして、ミケランジェリとグレン・グールドが、こうも違うのか。気になって調べてみると、あれまっ。
「4つのバラード」は、ブラームスが若い時のピアノ曲だった。「op.10」って書いてあるじゃないか。
ブラームス10番目の作品である。
おまけに、この4つのバラードを作った頃、クララ・シューマンさんとの出会いがあったらしいのだ。
・・・ うぐっ。愕然としてしまった。

で、ミケランジェリ盤は、冒頭こそ、物憂げに考えごとをしているようだが、渋いが色調は明るく、ボクトツと傍らに座っている人々に、語っていくような雰囲気を持っている。
「し〜どし そらしみふぁ〜 しし〜 ふぁ〜しし〜」
「し〜どし そらしみっふぁみ どれみ〜ふぁ〜れみ〜そら〜」
「みれどれしら みれしらら〜 らそふぁそみ れ らそど〜しし」 
すごく素朴だけど、じんわり響く、懐かしい香りがする。
スコットランドの民謡詩「エドワード」に霊感を受けて作曲されたと言われているそうだ。
バラードという意味を、あまり考えたことがなかったが、これは、バラードではなく、本来、バラッドなんだろうか。物語や寓話のある歌というのが、バラッドらしいが。
で、古代ギリシャのホメーロスと、よく似たケルト版(アイルランド発祥か)オシアンなる人物(Ossian 実在は?)の詩に影響を受けているようである。
ちなみに、ウィキペディアには、「・・・シューベルトは、オシアンの詩に曲をつけた歌曲を作った。「吟遊詩人の歌 D.147」「ナトス滅亡の後のオシアンの歌 D.278」など・・・との記載があったから、かなり影響を受けていたんだろうなって思う。(いや、真似したんだろうなぁ)

ミケランジェリ盤では、序奏部が終わると、鐘が明るく鳴り響く、「パパパ〜 そそそ〜 そらしら〜 そらしら〜 そそそ〜 そふぁそら〜 ららら〜 らそらし〜 ・・・」
まるで結婚式のような、華やかで明るく希望に満ちた鳴り方をしている。
グールド盤とは、えらい違いである。(グールド盤は、死者の弔いのような鐘じゃ。)
まっ そんなことで、両者がどう解釈するかは、さておき〜
実は、父親を殺したエドワードを描いた詩を元にしているらしいので、う〜ん。と唸ってしまうのだ。

2曲目は、
草原に座って、恋人が甘く囁いているような可愛い曲だ。
「そしそし〜そしそし し みれど しら らしふぁ〜」
中間部は、ちょっとテンポをあげて、「そそそ ど〜 どれれみ れ〜」って小走りになっていくが、じゃれているような雰囲気がする楽曲になっている。いや〜 ブラームスって、ぶっきらぼうで、堅物だと思って敬遠してたけど。意外と、あまいフレーズも書いているんじゃん。

3曲目は、
「そっ そっ そっれっみそ〜そっられ〜 パラパラパラ〜」 間奏曲でテンポが速い。
最初は、力強い低音が支配しているが、中間部は、柔らかく粒立ちのよい軽やかな楽想に変わる。
「そ〜ら れれっ し〜らそら そふぁ み〜」「ふぁ〜そ れれっ し〜らそら そら〜そら〜」
ミケランジェリさんが弾くと、まるでオルゴールが鳴っているみたいに聞こえる。大変美しい。

4曲目は、
半音が入って陰影のついた流れるようなフレーズで、ちょっと素直じゃないけど〜微笑ましい。
パララ パララ パララという流れのなかで、たゆとう〜雰囲気を持っている。
まるで、ちょっとしたラヴェルもどきようなフレーズで、水の精霊オンディーヌのようなのだ。
へえぇ〜 のけぞってしまうわ。こりゃ。
「み〜ふぁ そ〜みれ〜ど ら〜し れ〜し ら〜しど・・・」
「タッララ ら〜 タッララ ら〜 みふぁ みれ どれみふぁ らそれ〜」
これじゃ ブラームスじゃないような気がする。
なんだか、ラヴェルからドビュッシーになっちゃったのか、前奏曲集を聴いている気分になる。(あくまでも気分だけどね)

ミケランジェリ盤で聴くと、ブラームスの違う一面を見たというか、全く違った側面を見たような気がする。
粒立ちの良さがあり、柔らかく明るめの色調なので、ブラームスの渋さ、晦渋さが消えているようだ。
それに、たった4曲の短い作品だけど、物語性を持った楽想でイメージを膨らませやすいし、響きが柔らかく、弾力性があって繊細。沈んではいるが、のびやかで、空気が爽やかだ。
それに加えて、ミケランジェリ盤は優美だ。絵画でたとえると、印象派かラファエル前派だろうか。
自分が所有している盤は、今のところ、グールド、アファナシエフ、ギレリス。う〜ん。これでは、じめ〜っとして陰気くさいし、無我の胸中か虚無感に陥るか、 下手すると地獄の深淵を見そうな気がする。
ぞっ・・・。
よくぞ、ミケランジェリさん、この曲を弾いてくれた〜と思う。ありがたくて泣けちゃうなあ。ブラームスとは信じられないほど優美だもん。これは、貴重で、嬉しくなる1枚。
  グレン・グールド 1982年
Glenn Gould



凍り付くような演奏で、絶句。
カップリング:ブラームス:4つのバラード(1982年)、2つのラプソディ(1982年)、間奏曲集(1960年)
間奏曲集(10曲)というCDも、別に発売されている。

グレン・グールド ブラームス:4つのバラード、2つのラプソディ、間奏曲集
1 4つのバラード op.10
2 2つのラプソディ op.79
3 3つの間奏曲変ホ長調 op.117-1
4 3つの間奏曲変ロ短調 op.117-2
5 8つのピアノ小品イ長調 op.76ー6
6 6つのピアノ小品イ短調 op.118-1
7 6つのピアノ小品イ長調 op.118-2

グレン・グールドって、バッハのピアノ曲が有名なのだが、ブラームスもある。
で、きっとエキサイティングだろうと思いこんで聴いたのだが、ところがどっこい。
「し〜どし そっらっし みふぁ〜 しし〜 ふぁ〜し〜」
冒頭、このフレーズを聴いて固まってしまった。げっ・・・
続いて聴いてみたが、やっぱ血の気が引いて、青ざめるほど、凍り付くような虚無感。
死体を見たような冷たさ。いや〜 無風状態というか、白目を剥いて、ひぃ〜
凍り付くような鐘の音色を聴いてダメっ。
(ギブアップ。お蔵入りにしてしまった)

今回、改めて聴いたが、やっぱ凄く冷たいし、取り憑く島もなし。
崖っぷちに立っているというより、氷河のクレパスにはまってしまった気分で、これじゃ、凍死しちゃうぜ。
それでも、ご本人、歌っているんだよねえ。
これで、よく口ずさんで弾けるものだ〜 
聴いている方は青ざめちゃって血の気が失せているっつうに。
グールド盤のおかげで、ブラームスの4つのバラードが、すっかり晩年の曲だと思いこんでしまった。
おじいちゃんになって、死期が近づいた人のような楽曲に聞こえてしまった。
とにかく、グールド盤は、達観しているというか、墓場まで、思いを詰め込んで持っていこうとしている人が弾いているかのようである。
フレーズに幅がなく、平坦で、荒野の大地のなかを1人、すまし顔で歩いているかのような。
だれーも来ない墓場で、落ち葉が積もっている中を、1人ピアノ弾いているというか。
しーんと静まりかえって乾いた世界観が広がっており、とにかく、メッチャ行っちゃっている演奏だ。

平凡な方ではないと思うので、自分の時空間で遊んでいる気分なのかもしれないが、こんな弾き方で、清々しい気分なのだろうか。どーも天才のことだから、よくわからない。
とにかく、閉鎖的で無口である。1人で、ぶっとんでる。
俗っぽい現世で、遊んで暮らしているような人物が弾けるモノじゃーないですね。
いささかオーバーなことを、興奮気味に口走っているのかもしれないが、でも、少なく見積もっても、達観していることは確かなようだ。
ハイ、これを聴くときは、聴き手も、これは覚悟して踏ん張って聴かないと、連れて行かれそうデス。

これに共感できる方も多くおられるとは思うが、私的には、どうぞ〜ご勘弁を。死に神が憑きませんように、と祈りたい気分。
演奏的には、ミケランジェリ盤とは正反対方向を向いている。
楽曲へのアプローチは、度外視して〜 私としては、別世界行きに決定。とにかく、メドゥーサに睨まれ、石になっちまった感じで・・・。恐ろしいけれど★5つ。 また、しばらく封印しておかないと〜 クワバラクワバラ。
1975年 ギレリス  
1981年 ミケランジェリ ★★★★★
1982年 グールド SC ★★★★★
1993年 アファナシエフ De  
所有盤を整理中です。

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