「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

ドビュッシー 映像第1集・第2集
Debussy
: Images


ドビュッシーのピアノ曲「映像」は、全部で4集あります。映像第1集と映像第2集はピアノ曲で、第3集は「管弦楽のための映像」、そして、生前に出版されなかった「忘れられた映像」となっています。
ここでご紹介するのは、映像第1集と、第2集です。

映像 第1集 (Images I)は、1904年〜5年に作曲されています。
1 水に映る影(Reflets dans l'eau)
  「水の反映」とも訳され、水を題材にした曲の中でも特に有名な曲です。
2 ラモー賛歌(Hommage à Rameau) 「ラモーをたたえて」とも訳されています。
3 動き(Mouvement) 「運動」とも訳されています。

映像 第2集 (Images II) 1907年に作曲されています。
1 葉ずえを渡る鐘(Cloches à travers les feuilles) 「葉蔭を漏れる鐘の音」とも訳されています。
2 荒れた寺にかかる月(Et la lune descend sur le temple qui fut) 「そして月は廃寺に落ちる」とも訳されています。
3 金色の魚(Poissons d'or)
  金魚ではなく、机の上に飾ってあった日本の漆器盆に金粉で描かれた錦鯉の方から触発された作品です。

  ミシェル・ベロフ 1996年
Michel Béroff



録音状態は良い。ある一種の明瞭さがあり、一瞬浮かび上がってくるところを見るのが楽しい。
ドビュッシー ピアノ作品全集4
1〜3 版画
4〜9 映像
10〜12 忘れられた映像
13 喜びの島(97年) 14 マスク(仮面)(97年)
映像 第1集

1 水の反映(水に映る影)
1901年にラベルが「水の戯れ」を発表して話題になったので、ドビュッシーも触発され、負けじと1903年に、この「水の反映」を発表したそうであるが、天才2人の作品を、聞き比べるのも、とても楽しいひとときだ。
ど素人なので、曲のつくりを分析する能力はないが、ベロフさんのピアノは、蓮の花が咲いた池のほとりに佇み、アメンボたちが泳ぐなか、光が、ほのかに煌めいている感じがする。
曇りがちのお天気のなか、意識しないとわからないような、さわっとした風が吹いて、木々の間から、光がこぼれている。
煌めきを表す分散和音は、ほのかに分離していて、とても柔らかい。
粒立ちの高い演奏ではないが、柔らかいが芯があるし、パラパラっと、こぼれおちる様が、そろっと自然体に落ちていく。
低音の響きのリズムは、多少粘っており、均質的ではない。小さいけれど力強くうねる。
とっても難しい楽曲のようで、均質化しないところが、なんとも・・・ 難しそうだ。一律すぎないように、力も間合いも、細かく計算されて、余白の使い方が巧いという感じがする。

2 ラモー讃歌
するっと1曲目から、2曲目に移っている。
インデックスの間が狭いので、気をつけて聴いていないと曲が変わっていることに気づかない。
バロック時代の作曲家の雰囲気で、導入部は、小さな単旋律をゆったりと奏でるところから始まる。
でも、そのうちに和音が、たくさんついてきて〜 いろんな音が、いっぱいになって豊穣感があふれてくる。これは、水の精が立って織られるのだろうか。精霊の衣がレースのように、少し風になびいているのかな〜という感じがする。

3 運動
モールス信号のように、たった たったたぁーっを繰り返しているなか、速い3連符が始まる。
らっら らそみ れっれ れらぁ〜 というフレーズの、最後のらぁ〜の部分の一歩手前で粘りをみせる。
さほど機械的ではなく、運動機能というネーミングが、ちょっと不釣り合いな感じのする演奏だ。
あっ もちろん、運動機能が劣っているわけではない。そのうち、右手のフレーズが、すごく活発になって、色彩的に広がりを見せる。波紋のようでもあり、一律に広がっていく波紋ではない。
その膨らみは、あまり立体的ではなく、やっぱ平面的なんでしょうねえ。
無窮動のような風情を持っているのだが、連続する音は、ヴァイオリンの無窮動の動きとは違って、微妙に指が動いていく、時間のズレのようなものが感じられて、やっぱ、これは、限られた小さな空間の池のシーンだよね。と感じられる。
大きな世界の、そう、瀧のような、噴水のようなシーンは出てこない。


映像第2集

1 葉ずえを渡る鐘の音
「らそふぁみ どれみふぁ らそふぁみ どれみふぁ らそふぁみ どれみふぁ・・・」
っと続くフレーズのなかで、「どれみぃ〜ど  どれみぃ〜ど  らふぁっれ みぃ〜 パラん パラん」と、もわもわもわ〜っと動きが出てきて、波動が起こる。
どこか、音が柔らかいのだが、濁りのようなものが感じられる。
もちろん半音も入っているので、音は正確ではないが、グリッサンドのような、ハープを掻き鳴らすかのような音が入ってきては、波のような調べがあり、葉っぱに風がそよいでいるのが、よく感じられる。
葉っぱより、どこか、水辺の光景のように聞こえるし、雨粒のような音が聞こえたり、反射しているかのような、もわっとした空気感もあり、とても美しい。詩情感あふれるものだ。

2 そして月は廃寺へ落ちる
「ふぁ〜 ふぁ〜  そらしぃ〜みふぁ そふぁみし  しれらそふぁそら し どぉ〜」
ハイ、これも半音いっぱいの不思議な和声で、音と音の間合いの優しさを感じるものだ。
「そふぁ れぇ〜 みそ らぁ どっぉ」「どぉ どど〜 しぃ〜そそ し〜どど れ〜ふぁふぁ れ〜どど・・・」と、和風のフレーズのような雰囲気がある。
月なんだ・・・ 鄙びた雰囲気があり、「らそ みふぁ ら し そぉふぁれみ そふぁれど ふぁ〜」
わびさびの世界じゃん。と思いつつ、なんだか、微笑ましい。
夜の月なんだろうが、感性が問われているかのような曲で、聴くものによって、目の前の風景が変わっていくのだろう。

3 金色の魚
さざ波が、ずーっとわき起こっているかのようなフレーズが続く。
そう、水のなかをのぞき見しているかのようでもあり、水を得た魚のように、ピチピチ跳ねていきたくなるような感じもする。
「らそぉ〜 れっど らぁ〜 パラン パラン パッパ ぱぁ〜」
なんだか、とっても楽しくなるような曲だ。えっ 金魚すくいの時の、和紙の上を跳ねてる金魚?
いやいや、違うだろう。
この曲は、ベロフ盤で聴くと、ちょっぴり激しいっ。まるで、金色の魚というより、カジキマグロのように強くて、海面を弾んでいるかのようで、力強い。(えっ そんなことないって〜) 
まあ、最初は、金魚鉢をイメージしたのだが、ラストに近づくにつれて、海のクルージングのようになっている。

ピエール=ロラン・エマール 2002年
Pierre-Laurent Aimard

ほぉ〜良いヤン

録音状態は良い。ゆるやかな、ほわんっとした柔らかい映像で綴られている。

カップリング:
1〜3 映像第1集 4〜6 映像第2集
7〜12 練習曲集第1巻 13〜18 練習曲第2巻
映像第1集

1 水の反映(水に映る影)
エマールさんの水の反映は、水面の底を見ているかのような雰囲気がする。
先日聴いた96年のベロフさんのピアノは、わずかに煌めきが感じられたのだが、この水は底が深そうで〜思わず覗き込んで、ふっと震えちゃう感じがする。
覗き込んでいる人の心象を、鏡のように映し出すのだろうか。
最初は、分散和音により、横に、水面の広がりを感じられる。滑らかというよりは、ふっと沈む感じがあり、ピアノのタッチが、ふわっとしているのだが、そのうちに、右手のフレーズにより、さざ波のように立ってくる。
そして、なんとも言えない深さが感じられるようになるのだ。
ラヴェルの水の戯れが、水そのものを表して、粒立ちが良いのに比べて、ドビュッシーの水は、水面の広がりや、揺らめき、水滴が落ちていく感じや、波紋を描いているように思う。で、表情に陰翳があり、絶えず移動している。

2 ラモー讃歌(ラモーを讃えて)
「みらそぉ  みれ みそら どしぃ〜れ み みどら らしそ みそ れしどら・・・」 
「ららどぉ どら ららど どら らぁ〜 みみそ そみ みみそ そみ み〜 みれみら らそら れぇ〜」
全音階のような音が綴られているというのだが、その音の不可思議さのとりこになりそうだ。

3 動き
最初は、規則正しく3連符が鳴らされる。とってもすばしっこい「どっし どら どっし どら・・・」だが、「らっらっ らそふぁ みれ れらぁ〜」 と鳴らされると、雰囲気が変わる。
3連符が綴られていると思うのだが、規則正しい3連符という感じではなく、とってもリズミカルで、自発的に跳躍していく感じがする。どことなくジャズっぽく、右手と左手のリズムが、えっ 違うんじゃ-ないの。
わぁ〜 どうなっているのだろう、波紋がぶつかったかのようになっている。
また、規則正しい3連符に戻ってくるのだが、もはや、形はないような感じで、消えていく。

1961年・63年 ハース Ph
1971年 ミケランジェリ  
1986年 ルヴィエ DS
1996年 ベロフ De ★★★★
2002年 ピエール=ロラン・エマール Warner ★★★★
所有盤を整理中です。

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