「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

ラヴェル 鏡
Ravel: Miroirs


ラヴェルの組曲「鏡」は、1905年に作曲されています。ラヴェル30歳の時の作品です。
ウィキペディア(Wikipedia)を元に記述すると
5つの曲で構成された組曲で、初演は1906年、パリの国民音楽協会演奏会においてリカルド・ビニェスにより行われたそうです。全部で30分程度になりますが、各曲が、単独で演奏されることも多く、海原の小舟、道化師の朝の歌は、ラヴェル自身によって管弦楽曲に編曲されています。

第1曲 蛾(Noctuelles):詩人のレオン=ポール・ファルグに献呈されています。
第2曲 悲しげな鳥たち(Oiseaux tristes):初演者リカルド・ビニェスに献呈されています。
第3曲 海原の小舟(Une barque sur l'océan):画家のポール・ソルドに献呈されています。
第4曲 道化師の朝の歌(Alborada del gracioso):批評家のミシェル・ディミトリー・カルヴォコレッシに献呈されています。
第5曲 鐘の谷(La vallée des cloches):作曲家のモーリス・ドラージュに献呈されています。

それぞれラヴェルが所属していた「アパッシュ」のメンバーに献呈されているのですが、このアパッシュ(La Société des Apaches)っていうのは、1900年頃、パリの音楽家、詩人などが結成した芸術グループだそうです。
語源は、どうもアパッチのようですが〜 ドビュッシーの歌劇「ペレアスとメリザンド」(1902年初演)を始めとする、新しい芸術を支持する「芸術的ごろつき」であることを信条としていたそうな。

ミハイル・ルディ 1987年、89年
Mikhail Rudy

ふむふむ。

録音状態は良い。
少し曇りがちだが、柔らかく、儚く〜の世界が広がっている。
このCDは、ミハイル・ルディさんのリストとラヴェルのピアノ曲集(2枚組)である。
カップリングは、1枚目がリストで、2枚目がラヴェルの作品となっている。
カップリング:
CD1
1     エステ荘の噴水
2〜3  忘れられたワルツ第1番、第2番
4〜5  3つのペトラルカのソネット
7〜8  演奏会用練習曲
9〜11 3つの愛の夢
12      ローレライ
13   イゾルデ(ワーグナー リスト編曲)
CD2
1 ラヴェル 亡き王女へのパヴァーヌ
2 ラ・ヴァルス
3〜7 鏡
8〜10 夜のガスパール

今日は、ラヴェルの鏡を聴いた。
1曲目は、蛾だが〜 でも、この曲は、とっても難しくて、どう聞いたらいいの?
何度聞いても、蛾は、ふわふわ ふら〜っとしている、夜の蛾で、儚げとしか・・・。
まあ、実際には、夜の街の娼婦さんたちを象徴した曲らしいのだが、ワタシの想像の域を超えている。
ルディさんのピアノは、このふわふわ感が良くでてて、録音状態で、音に、少し濁りがみえるのだが、セピア色っぽくって良い雰囲気になっていたりする。(えっ・・・)

これが、フランスのピアノっていうものなのだろうか、リズムが、規則正しく、カツカツと弾かれるドイツっぽいピアノとは異なる。
もわっと〜した色彩で、くぐもった世界なのだ。
指で鍵盤を撫でるように滑っていく。で、ところどころ〜 パチパチっと弾かれ、パラパラ〜っと装飾される。

2曲目は、悲しげな鳥たち。
鳥というよりは、先程の蝶になる前の青虫か、サナギみたいなものだ。
なんとも不気味な、モゴモゴした、ぼわ〜とした世界が広がっている。いつ聴いても1曲目も2曲目も、どーも、暗闇で、もごもと動いているらしき、生物のようで、気持ち悪い。

3曲目は、海原の小舟だが、「ふぁ〜れぇ〜らそぉ ふぁ〜れぇ〜らそぉ」というフレーズが出てくるので、これは、ちいさな舟に乗って遊んでいる感じはするが、まあ、元気よく、さあ。遊びましょうっ!という元気良さはない。
小さな池に浮かぶ舟で、それも、気怠く、木陰のもとで、ぷわ〜っと浮いている感じ。
まあ、少しは光が射しているが、気怠い感じが先にあって、草原で寝っ転がっていたいと、いう感じがする。
そんなに遊ぶのが、イヤなら、舟をおりたらいいのに〜 と言いたくなっちゃう。
で、途中、バンっと大きな音が鳴り、フレーズが大きくなっていくのだが、滝壺に落ちるかのような感じで、違和感あり。
女性たちのまどろみ感を描いたものというよりは、ルディさんのピアノで聴くと、自然描写という感じがする。

4曲目は、道化師の朝の歌。
この曲のシャックリしているかのようなリズムは、ルディ盤で聴くと、規則正しく鳴る音と、そうでない音がある。
細かな同音の打音は、ちょっと、揃ってないし〜 シャックリ気味のところは面白いのに〜
どこか、ギクシャクしているのは、そういうアプローチなのだろうか。
中間部のとろっとした、気怠いフレーズに差し掛かると、別人のように、形が溶解して液体のように変わっている。
リズミカルな部分より、ルディ盤は、この、とろん〜とした、気怠さが持ち味みたいだ。

5曲目は、鐘の谷。
ラフマニノフの奏でる鐘とは違って、谷間のもわ〜っとした靄のなかから、かすかに聞こえる鐘かなあ。
賑々しい感じのする教会のカリヨンではなく、あちこちから響くという共鳴感は、どちらかというと、あまり感じない。
個人的には、日曜日のミサが終わった教会の〜というよりは、田舎の小さな教会かなあ。という雰囲気だが、音が立体的に感じられるというよりは、ブツブツ呟かれた、ひとりごと風で〜 あまり光景はイメージできなかった。
セシル・ウーセ 1988年
Cécile Ousset

ばっちグー!

録音状態は良い。クッキリした綺麗な演奏だ。気怠さが好きなた方には、お薦めしづらい。ワタシ的には、好きなタイプである。
カップリング:
1〜8 ラヴェル 高雅にして感傷的な円舞曲(全8曲)
9  ラヴェル 水の戯れ
10 ラヴェル ハイドンの名によるメヌエット
11〜13 ラヴェル ソナチネ
14 ラヴェル 亡き王女のパヴァーヌ
15〜19 鏡(全5曲)

セシル・ウーセさんの演奏は、明快な演奏だ。輪郭がくっきりとしており、明るい音色で、さらっと、キラキラした音で描いていく。
蛾の演奏も、これっすごい、1曲目の蛾も、蛾というより蜂のようでもあり、シャープなのだ。
ぼわっとした夜の暗闇のなかを、ひろひろ〜 ふわふわ〜 ぼよよぉ〜っと、浮かんでいるかのような儚げな演奏を耳にしてきたのだが、あらまっ。全く違う演奏だ。
チャーミングであり、中音域から低音にかけては、幾分、ふわっとした感じもする場面があるものの、総体的には、くっきりと描き出している。
明るい灯に群がる、どっちに向かって飛んでいるのか、わかりづらい飛翔ではなく、繊細でありながらも、ぴよんっと羽ばたいてて、くっきりとした芯のある煌めく響きで奏でられている。
音は、明瞭だし、明確だ。綺麗な音で、はっきりと〜 くっきり〜っと描かれている。
でも、ふっと力が抜ける場面あって、そんなところでは、妖しく、気怠さも感じさせるものとなっている。う〜ん、これは女性のピアニストだからなんだろうか。女性の二面性なんかを感じる。
ワタシ的には、とっても好ましい。ふふっ〜 意思力を感じさせる蛾である。
まちがっても、ワタシ、ふぬけの、抜け殻ではないわよん。って感じの蛾 いや、夜の女性である。
今風の、ハイ、生活力のある、割り切って、喜んで娼婦やってるわん。って感じだろうか。

2曲目の悲しき鳥たちは、これも、キラッとした音が立っており、勢いが出てきたり、さっぱりしている。
沈み込むというより、表面の煌めきを演奏させたら、これはキラキラと音が立ってくるし、勢いがあるので、完全に沈没しちゃったかのような、ぬめぬめ〜 ずぶずぶ〜という感覚にはならず、いたって健康的だ。
ほの暗い森のなかとか、ひとめにつかないような場面設定ではなく、幾分、明るい。メリハリのついた繊細さだが、影に同化してしまうこともなく、朽ちることもなく意思が強い。

3曲目の海原(洋上)の小舟は、「ふぁ〜れぇ〜らそぉ ふぁ〜れぇ〜らそぉ」というフレーズがあり、ちいさな舟に乗って、波間を漂っている感じなのだが、さあ。遊びましょうっ!という元気があり、茫洋とはしていない。
キラキラした感覚を、いつまでも持っており、拍の感覚も持ち続けている感じがする。
また勢いがついちゃうと〜 マックスまで行かないと。という感じで、ドラマチックに描き出す。
アハハ〜 このピアニストは、馬力があるんだ。ダダダ〜っと、勢いがつくと、いっきに走り出すところがあり、ずーっと、か細い振りはできないようで、儚げに、悲しみ、なよなよ〜している感じはしない。
ウーセさん自身が、きっと、ラテン的、意思の強い、エネルギッシュで、ハッキリとした女性なんだろうなあ〜と思わせる演奏だ。ティボーデさんの演奏の方が、よっぽど、歌舞伎の女形のように、くねっとした女性らしい演奏だ。(笑)

4曲目の道化師の朝の歌は、これはダイナミックだ。
楽天的で、ハッキリとした粒立ちのよい演奏で、これは楽しいっ。
結構、ダイナミックで豪快で、ウッパラ パッパ うっぱら パッパ〜っと、弾かれており、細かいフレージング、転がり方が、妙に堂に入っており、手慣れた躍動感という感じがする。
中間部は、遅めのテンポなのだが、スペイン風フレーズは太め。夜まで飲み明かしても、シャキっとした感じで〜 繊細だが、恰幅も良いし、これは、オトコマエという感じがする。
グリッサンドの部分は、短くて鋭いし、フレーズに鋭さがあり、明瞭に、テンションをあげて弾んで、弾んで〜 飛んでいく。という感じで、これは、ある意味、痛快な演奏かもしれない。アハハ〜 ライブ盤のようにテンションが高い。 

5曲目の鏡の谷は、涼しげな谷間で、和音の響きが美しい。
中庸で、靄のかかった雰囲気も多少はするが、他盤に比べると、輪郭がはっきりとしている。
そりゃ〜 多少、もわっとした空気感を、谷にもたらしてはいるが、す〜っと、音がたなびいている。
ちいさな音で、遠くから教会の鐘が聞こえてくる感じで、演奏自体に奥行きが感じられる。和音の柔らかい響きも大事にしており、間合いも充分にとって、演奏自身が、この響きを楽しんでいるように聞こえる。
ジャン=イヴ・ティボーデ 1991年
Jean-Yves Thibaudet

ふむふむ。


録音状態は良い。柔らかく、ウツウツとしており、ヌケガラのようになってしまう。
この曲をどう聴いたらよいのか、戸惑ってしまった。
← ラヴェル ピアノ作品集(全集)
まず、鏡ってタイトルなのだが、5曲の組曲で、それぞれ、変なタイトルがついている。
第1曲目が、蛾・・・ えっ 蛾なの? 蝶々じゃないの?

2曲目は悲しげな鳥たち 3曲目は海原の小舟 4曲目は道化師の朝の歌、5曲目は鐘の谷となっている。
なんで〜 この5曲をセットして「鏡」ってタイトルになるのか、わからん!
そうだよねえ。水をテーマにした曲を集めて、「鏡」というタイトルにしたのなら、キラキラ光る水面を鏡に例えて、イメージしたのだろう〜とでも思えるのだが、いきなり蛾だよ。 はあ?

聴いていくと、とっても、なまめかしく、ふわふわ〜っと、力なく飛んでいる蛾である。
おまけに、ティボーデさんのピアノって、とらえどころがない、腰くだけになりそうな、気怠さがある。
で、色気がいっぱいあって、妖艶なのだ。ふわふわ飛んでる感じで、あっ こりゃ〜娼婦の館に忍び込んでしまったんだ。
濃い香水の香りというか、とても妖しい。なるほど、こりゃ〜 夜の光に集まる蛾じゃん。
退廃的な匂いがしており、なまめかしく、力なく気怠く、ヌケガラみたいになりかけた、なよっとした感じが出ている。
なんか、アブナイ、底なしに落ちそうな、透けた服をまとった、妖しい女性たちを描いたものだろうなあ〜と思えるし、首がくにゃくにゃしつつ、暖かい音で奏でられ、可愛くもあるが、ふっと音が抜け落ちていく。

悲しげな鳥たちは、音が、一瞬、朝の雰囲気がしたのだが、いや〜 これも、メチャクチャ気怠い。
ホントなら、鳥は、朝、元気よく、ピチピチと啼くものだが、へ? 夜なの? 
いや〜 こりゃ、いけないところに迷い込んだ、都会の少女たちの夜なんじゃーないのかなあ。でも、生きる気力が無くなるかのような感じで、気怠いどころか、気力がヌケて、ウツウツしており、こりゃ、蝉のヌケガラ状態で、ひからびてます。

海原の小舟は、ゆらゆら〜 夢みごこちのなかで、揺らめくさまが描かれており、陶酔的だ。ベールに包まれた立ち入り禁止みたいなエリアで、ティボーデさんの演奏は、艶っぽすぎて、どひゃん。とてもエロティックな香りがする。
小舟は、きっと、女性なのだろうなあ。この揺れているなか、夢を見ているのは男性なのだろうか。
柔らかいタッチで、軽やかだが、拍感覚があるのやら、消えていきそうになっているのやら、グリッサンド的な響きが、大変美しく、小さな音の粒が、大きなうねりになって、みごとに描かれている。
もてあそばれているかのようだが、このうねりに、いつまでも浸っていたいという、なんとも妖しく、快楽的で、心地よすぎ。
これじゃー朝を迎えられない。(笑)

道化師の朝の歌は、これは管弦楽曲に編曲されているので、よく聴く曲である。
前の曲に比べると、幾分かは、明るさ、快活さが感じられるが、それは、最初の部分だけで、さあ、起きましょう〜 朝ですよ。起こされて、せかされているものの、アタマが、もわっとしてて、低血圧の方のように、ぼわぁぁ〜っとしている。
元気に、活力みなぎった朝ではない。
ティボーデ盤で聴くと、すかっと起きて、さあ〜会社に行くぞーっという、エネルギーあふれる健康的な演奏ではない。
お酒を飲み過ぎて、夜更かしした、ツケが貯まっているかのような、カラダの重さを感じる。
くしゃくしゃになったシーツ、ベットから起きあがれず、だるく、もわもわした感が漂ってきており、シャックリしているかのようなリズム感になっている。
まあ、娼婦の館の朝の風景だとすれば、早く起きて出て行ってよぉ〜と、追い立てられている男を描いたものなのだろうか。
ティボーデ盤で聴くと、ラストの走りは、箒で、お尻を叩かれている男の姿が見えてきそうだ。
アハハ〜 (あっ 笑ってはいけないか・・・。)

鐘の谷って、なんだか変なタイトルのような気がする。谷あいに建つ教会の鐘なのだろうか。
とても静かな楽曲で、これだけが異質な感じがする。組曲のラストの曲だが、娼婦の館だと思って聞いていたのに、なぜか、清々しい朝のような雰囲気が漂っている。
どう、この曲をとらまえたらよいのだろう〜 ちょっと戸惑ってしまった。
で、最初は清々しい朝の雰囲気がしたのだが、途中で、ウツウツとして沈み込んでくる。敬虔な祈りのような心境ではなく、やはり、気怠く、ヌケガラっぽくなっていくのだ。
夜な夜な、蛾のように、力なく、ぷわぷわ飛んでいる女性の、なれの果てのような感じで、どうも〜悲しくなっていく。
う〜ん、華やかな夜を彩るような感じではなく、場末のすれっからしの果て、末路なのだろうか。
うぐぐっ。不健康で、とても、聴いてられない。

1987年、89年 ミハイル・ルディ   EMI ★★★
1988年 セシル・ウーセ   RMI ★★★★★
1991年 ティボーデ  Dec ★★★★
所有盤を整理中です。

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