「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

サラサーテ カルメン幻想曲
Sarasate: Fantaisie sur Carmen (Carmen Fantasy)


パールマン メータ ニューヨーク・フィル 1986年
Itzhak Perlman Zubin Mehta
New York Philharmonic

録音状態はまずまず。さほど情熱的とは言い難いが、穏やかな美音で奏でられており、品のある演奏会を聴いている感じ。
テクニックもパールマン絶頂期ではないだろうか。
ピアノ伴奏版もあるが、当該盤は、管弦楽版である。
カップリングは下記のとおり。

カルメン幻想曲 〜パールマン ヴァイオリン名曲集〜
1 サラサーテ カルメン幻想曲
2 ショーソン 詩曲
3 サン=サーンス ハバネラ
4 ラヴェル ツィガーヌ
5 サン=サーンス 序奏とロンド・カプリチオーソ

サラサーテが、ビゼーの歌劇「カルメン」を題材にしたヴァイオリンの超絶技巧曲の「カルメン幻想曲」は、 正式には「歌劇カルメンの動機による演奏会用幻想曲」と言い下記の5つの部分からなっている。
1 序奏部分、第4幕前奏曲「アラゴネーズ」
2 第1幕「ハバネラ」
3 第1幕「カルメンの鼻歌」
4 第1幕「セギディーリア」
5 第2幕「ジプシーの歌」
って言っても、弾き手によって昔に改編されているようで、複数の版が存在するらしい。
詳しいことはワカンナイけれど、聴きどころをピックアップして、技巧的に聴かせてくる楽曲である。

1 序奏部分、第4幕前奏曲「アラゴネーズ」
1つめのアラゴネーズは、「しっし どれど しっし らそら しっし どれど しっし らそら しっ」という、誰もが、このフレーズを聴いたら、ハイ、カルメンですね。という序奏から始まる。
まっ そっから、ピチカートが流れ、「しら らっそ ふぁみ みっれ ど〜どれど しぃ〜」という、独特の暗いうねりと、むせび泣きのようなフレーズを経て、いっきに高音域へ。
アラゴネーズ(Aragonaise)っていうのは、スペインのアラゴン地方の踊り。っていう意味らしい。
チャッチャ チャ チャッチャ チャ・・・という伴奏のフレーズが、心地良く響く。
パールマンさんの高音域の音は、うん。美音だ。
ひぃ〜〜っ。と、首筋が凍るような硬い音ではなく、あくまでも柔らかいし、よく響いている。弾かれた音と、「しぃら らっそ〜 ふぁ〜み みっれ〜 みふぁ どしど〜 れ〜どしぃ〜」というなかの、グリッサンド(弦でグリッサンドって言っていいのかなぁ) 音が、シュルシュル〜っと半音で降りてくる。ところが魅力的。
まっ そう言ってても、聞き入る暇もなく、わずか2分46秒で、次の、ハバネラへ。

2 第1幕「ハバネラ」
「ふぁっみっれ れっどしっ しっしっ らっそふぁ〜」というフレーズで始まる有名な曲。
歌劇「カルメン」のなかでは、カルメンのアリアとして歌われる。
お馴染みの、「恋は野の鳥」っていう歌である。
「恋は野の鳥 誰も手なずけられない 呼んでもまったく骨折り損で ふさわしくない時にはやって来ない・・・ 恋〜 恋〜 恋〜 恋〜」という、メチャ濃厚な濃いフレーズである。
ここでは、音が重なって演奏される重音と、細かく動き回るテクっと、まあ。同じフレーズを使いまわして、いろんな演奏バージョンがある。まあ、1挺のヴァイオリンで、かようなテクで、いろんな風に聴かせていただけるのはありがたいこと。パールマンさんの演奏は、あまり挑発的では、ないんですけどね。
まあ、オペラとは違って、ヴァイオリンのテクで勝負だからか、すっきり系に演奏されてます。

3 第1幕「カルメンの鼻歌」
「ふぁ ど〜ど れみれっ れどし らっそふぁみ ふぁ どっど ふぁっふぁみれ らっらそふぁ み〜」
↑ メチャ半音系のフレーズ。
「ふぁ ふぁみれ しっし しどれ みっみどしら〜」という鼻歌は、うん。甘い女性が鼻をクンクン言わせているみたいな甘いフレーズで。猫型女性のセクシャルな色香が、まき散らされる楽曲である。
パールマンさんのヴァイオリンは、クンクン系には至らないが、間奏曲的に品良く演奏されている。
低い音の響きも甘いし、間合いがゆったりしている。

4 第1幕「セギディーリア」 (Seguedille)
この曲は、カルメンがホセを誘惑しようとして歌うアリアである。
「れそら しどれ み〜 ど〜しらそふぁ〜」 半音の鼻にかかった3拍子のフレーズで始まる。
「られど しらそ れそふぁ みれみ〜」
小悪魔的な女性に誘惑されてしまう、ふりまわされるような感があり、それでいて、星空に輝くような煌めき度の高い演奏で、これは、やられるっ。
これをヴァイオリンで、グリッサンド的に音が落ちてきちゃうと、ハイ、心も落ちちゃいますね。

5 第2幕「ジプシーの歌」
「どっどっどっど どしらそ どしらそ ふぁっふぁっふぁふぁ ふぁみれみ ふぁみれみ〜」
と軽快に舞われて、軽やかに、ぶっとんでしまう舞踏系の楽曲で。遠心力で、遠くに飛ばされるかのような雰囲気。
このボーイングは、さっぱりワカンナイです。超テクなのは容易に想像つくのだが、ヴァイオリンの跳躍は、どんな様になっているのか、DVDでも、動画サイトで確認した方が良いかも。

なにせ、短い1分後半から2分そこそこの短いフレーズで、美味しいところを集めた超テク楽曲だ。
全部でも12分程度の楽曲、いや編曲になるのかな。その面白さは充分に伝わってくる。

パールマン、メータ盤は、濃い口というよりは、あっさり系。
ムター盤のような、官能的な演奏ではないけれど、普段聴くには、まあ、これぐらいでちょうど良いかも。
熱くてたまりません。という感じではなく、すっきり、美音で流れるように演奏されている。
優美さもあり、演奏会風で、高音域の細い美音には、やられる。
演奏としては、ちょっと型どおりという感じも否めず、どっぷり、ひとり堪能して聴きたい方には、どうかな。モノ足らないって方もいるかもしれないが・・・。
パールマンさんの演奏を聴くと、もっと即興的に、もっと熱く演奏されている盤が欲しくなるかもしれないし、生で聴きたい〜と言う方もいるかも。
まっ、安心して穏やかに演奏会として聴く分には、かなり満足度の高いものだ。
誰もが演奏して、CDとして売られているって風でもないし・・・。楽曲自体が、品の無いもの。格調の高いものとして扱われていないためなのか、それとも、超テクすぎて難しいから避けられているのか、(最近は、そんなことは、ないと思うんだけどな〜) はたまた、スペイン独特のDNA的な雰囲気が醸し出せないためなのか、その辺りは、ワカンナイが、あまりCDは多く出回っていない。
そうそう、カルメン幻想曲というのは、サラサーテだけではなく、ワックスマンが作曲したものもあり、さらに演奏によって版が違うこともあるので、ご注意ください。

アンネ=ゾフィー・ムター レヴァイン ウィーン・フィル
1992年
Anne-Sophie Mutter  James Levine
Wiener Philharmoniker
(Vienna Philharmonic Orchestra)

  

録音状態は良い。濃厚で官能的。音の揺れと、振幅の大きさ、豪快さ・・・。その存在は圧倒的。役者の格が違うって感じ。
カップリングは下記のとおり。

カルメン幻想曲 〜ヴァイオリン名曲集〜 ムター/レヴァイン ウィーン・フィル
1 サラサーテ ツィゴイネルワイゼン
2 ヴィエニャフスキ 伝説曲 op.17
3 タルティーニ  ヴァイオリン・ソナタ第4番ト短調「悪魔のトリル」
4 ラヴェル ツィガーヌ
5 マスネ タイスの瞑想曲
6 サラサーテ カルメン幻想曲
7 フォーレ 子守歌 op.16

どっちかというと、相当に癖のある演奏なのだが、これぞ、超テク、ムード満点というソロ・ヴァイオリニストならではの、聴かせ上手というか、はへぇ〜 すげっ。という感じで、すっかり息を呑んでしまう演奏である。
官能的で濃厚で、メチャ高い音を、軽々と飛び跳ねて、どっかに行ってしまうような危険な香りを放ちながら自由奔放的に動き回る。

で、バックなんぞ、すっかり霞んでしまっており、バック無しでの演奏会かしらん。という感じになっている。
バックの音は、冒頭と最後しか感じず・・・ えっ あらっ いてたの?
後ろで、モゴモゴ、すごく、へっこんでる存在なのだ。耳が行くのは、鈴の音色とか、タンバリンぐらいで、あとは、ボンボンっと弦のピチカートが鳴っているだけで〜 

1曲目のアラゴネーズは、「しっし どれど しっし らそら しっし どれど しっし らそら しっ」という、誰もが知っている序奏から始まるのだが、意外と遅め。
弦のピチカートから、ソロ・ヴァイオリンが絡んでくるのだが、ここからして、音の揺れが激しく、目眩がしそうなほどである。
「し〜ら らっそ〜 ふぁ〜み みっれ〜 どれ どぉ〜れ どしぃ〜」という、フレーズもねちっこいが〜
その後の「どし どぉ〜れどれ みぃ〜ふぁ みふぁ そぉ〜ら そら そぉ〜らそら」とうねる。
そのなかにも、小さな音が挟まってくるのだが、うは〜 音が揺れて揺れて、振幅の激しい、むせび泣きフレーズになっている。

そっから、いっきに高音域へ移動するが、ひぃ〜 音にならない音があって、ひぃ〜ぃぃぃ〜。
はあ、首筋が、すすすっーーーーー。ひれひれ はらはら〜っ。音が泣いているのだ。
また、震えるような泣き節フレーズと、硬く音をかき鳴らすフレーズと、弱さと強さとの幅も大きく、大柄、大袈裟、濃厚、官能的 その姿は、圧倒的である。

誤解を恐れず、あえて言うなら、美空ひばりさんのような低音はごっつい太めの幅の広い音で、それが、ひろっと、一気に一瞬にして、高い声は裏返って、ひえ〜っと思うほど細い甲高い音に変貌する。
一人二役しているといっても過言ではなく、ハバネラのフレーズが鳴り出すと、もう、呑み込まれてしまっている。
切れの良さはもちろん、弦の細かい音、小さくて、か細い音かと思えば、一瞬にして、合いの手は、図太い、擦れ気味の声であったりする。というように、二種類同列、いわば、そろい踏み状態である。
また、間合いは、ゆるやかな陶酔型で、引きずった、なんとも気怠く〜 充分な間合いである。

カルメン幻想曲は、5つのショートプログラムって感じで並んでいるのだが、こんなモン、1つ1つ、ご説明しているわけにはいかない。何度も繰り返して聴くというより、まず、1回目でノックアウトで、もはや冷静には聞けない感じがするのだ。こんなモン 繰り返して聴いてしまうと、麻痺するというか、悪酔いしちゃうというか、毒がまわってしまうというか・・・。(笑)

あ〜 ホントに、クラクラしちゃう。まっ 楽曲が楽曲だけに〜 
これは、ムターの方が役者がうえ。ってことになるだろうなあと思う。
パールマン盤を聴いたあとに聴くと、なんとも〜 品のない、汚い音だなあ〜っと思ってしまうのだが、このクラクラ悩殺されるようなフレーズの揺れ、独特のアクの強さ、弾き飛ばすような感じさえ与える豪快さ。
熱い演奏で、みごとに、アクロバティックに演奏されている。
最後になると、アミューズメントパークの揺れ、捻り、超高速、振り子状態のジェットコースターに乗っているみたいなモンで、気分が悪くなってしまって、クラクラ クラクラ・・・ 目眩がしちゃうのである。
全部で12分38秒というクレジットになっているが、あっという間で〜 目眩を起こしている間に終わる。

それにしても、目眩がしそうになるってことは、まあ、超テクなんでしょうねえ。
もちろん、豪快でありながら、繊細な面もあって、挑発的でありーの、健気でありーの。まあ、役者なのである。(いや、天才型演奏家なのである。)
恐れ入りましたと、思わず、文句なしにひれ伏してしまう威力、威圧的な演奏だけど。カルメンなんでねえ。ムターさんを超える演奏って、そうそう無いかもしれないな〜って思う。
で、このムター盤、カルメン幻想曲のあと、フォーレの子守歌が流れてくるが・・・
ほっ。やれやれ〜 いっぷくの清涼剤というか、安定した気分でCDを聴き終えることができるので、ホント、ありがたい存在なのである。なんともニクイ、カップリング順です。
1986年 パールマン メータ ニューヨーク・フィル ★★★★ 
1992年 ムター レヴァイン ウィーン・フィル ★★★★★
所有盤を整理中です。

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