ブラームス ドイツ・レクイエム Brahms: Ein Deutsches Requiem

 ブラームス ドイツ・レクイエム
Brahms: Ein Deutsches Requiem
ダニエル・バレンボイム シカゴ交響楽団 1992年~93年
Daniel Barenboim Chicago Symphony Orchestra
ソプラノ:ジャネット・ウィリアムズ Janet Williams
バリトン:トーマス・ハンプトン Thomas Hampson

バレンボイムの演奏は、とても遅めのテンポで進む。最後はドラマティックに盛り上げてくる。コーラスが「悲しんでいる人は幸いである。彼らは慰められるであろう」と歌い始める。ゆったりと慎ましやかに歌われるので、すーっと引き込まれていくような雰囲気がある。次第に高揚するなか、オーボエが「しぃ~~し どれみふぁ しぃ~っ」と、魂を導くようにうえに昇っていく。シカゴ響とは思えないほど神妙だ。テンポが猛烈に遅い。これでは遅すぎると、たまりかねてCDプレーヤーで時間の経過を確認したが、このスピードで展開すると、いつまでたっても終わらないと思わず絶句するほど。美しい響きを持っているが、こっちの気持ちが続かないかも。
第2曲は、疲れ果て足取りも重く、瀕死の状態って感じで始まる。もう朽ち果ててしまった感じで、叱咤激励、しっかり歩いてください~ 遅い遅い、超遅いと顔を真っ赤にして、聴いているワタシが鞭打ってしまいたくなるほど。(笑)女性のコーラスが入ってきた頃から、他の演奏と同じ程度のテンポに変わるので、ほっとするが、頭を抱えたくなる心境に陥るほどの鬱陶しさ。ちょっと、やりすぎだと思う。で、今まで遅かった時間を取り戻すかのように、スピードをあげて速くなっていく。
第3曲、トーマス・ハンプソンさんの声は、さほど響かないがコーラスが美しく支えている。「主よ、今私は何を待ち望みましょう。私の望みは、あなたにあります・・・」というフレーズから力強い。オケは、ドラマテックな様相で強め粘って歌い始める。バリトンの声が明るく語りかけてくるためで、まるでオペラを見ているかのような錯覚に。

第4曲~第5曲は、とても穏やかにコーラスが歌われる場面である。間奏曲風に、雲のなかで天使が歌うと評されるように、ふわっとした感覚が美しい。4分の3拍子というリズムが活かされている。第5曲では、ソプラノの声が硬く、もう少し包容力が感じられば嬉しいところ。第6曲~第7曲は、まず合唱が、静かに「やがて来るべき、それを探し求めている」と歌い始める。で、バリトンが登場し、「目を開くがよい。わたしが、あたなたちに奥義を告げよう・・」と歌う。第6曲は、バレンボイムさんの真骨頂って感じで、ぐぐぐぃ~っと盛り上げてくる。ティンパニーも大きく叩かれ、ドラマテックに歯切れ良く、低音のごろごろ~っという響きを持って、勢いが段々と増していく。最後の審判だな~っていうのが誰が聴いてもわかるようになってて、凄まじい威力だ。パワー炸裂っという状態だ。合唱にまろやかさが感じられるので救われるが、美しい和音が階段のように続いていく。
第7曲は、ハイ、ここは天国ですよぉ~って感じの音楽で、最後の審判を無事に通過された方のみお越しになれる世界です。大変美しい世界でございます。さて、聴いた後の感想としては、う~ん。最初の2つの曲が超遅く、まどろっこしく感じられるものの、最後の6~7曲目は、さすがに劇的にもりあげてくるので、終わり方としては悪くない。終わりよければ~の典型的な演奏だろうか。メリハリがあるのでツボにハマれば良いかも。
テンポ比較をしてみたので記しておきます。

バレンボイム(CSO) カラヤン(VPO) カラヤン(BPO) ジュリーニ(VPO)
1 「幸いだ、悲しんでいる人たちは」 12:24 11:35 11:31 10:25
2 「何故なら全ての肉なるものは草に等し」 16:40 14:46 14:41 15:15
3 「主よ、私を諭したまえ」 10:38 11:47 11:41 10:23
4 「何と麗しいのかあなたの居ますところは」 5:27 5:43 5:39 6:04
5 「あなたたちは今悲しんでいる」 7:23 8:16 8:12 7:24
6 「何故なら私たちはこの地に永続する都を持たない故に」
   11:55 12:34 12:29 12:02
7 「幸いなのは死者たち」 11:47 12:16 12:09 11:23


 ブラームス ドイツ・レクイエム
Brahms: Ein Deutsches Requiem
クラウディオ・アバド ベルリン・フィル 1992年
Claudio Abbado Berliner Philharmoniker(Berlin Philharmonic Orchestra)
ソプラノ:シェリル・ステューダー Cheryl Studer
バリトン:アンドレアス・シュミット Andreas Schmidt
スウェーデン放送合唱団、エリク・エリクソン室内合唱団

アバドさんのライブ演奏は、柔らかく、ゆったりとした雰囲気を持つレクイエムだ。この演奏を聴く前に、1990年録音のガーディナーの演奏(レヴォリューショネール・エ・ロマンティーク)を聴いたのだが、素っ気なく、まるで別の曲を聞いているような気がした。で、この演奏を聴いて、いつものドツレクだと、ほっとしたところ。この違いは何だったのだろう。アバドの演奏は、ジュリーニと同様に大らかな包容力のある演奏だと思う。まずテンポがゆったりしており、重厚で豊かな響きで包まれる。すこぶる古典的に演奏しているように思う。カラヤンの演奏ほど厳格ではなく、ゆったりした呼吸で、ふわっと歌われていく。

第2曲は、静かにティンパニーが、「タタタ タンタン タタタ タンタン」と連打されている。「ふぁ~そみ らそど~ ら~そふぁみふぁ~」「そしれら~ どみられ~ そしれら~ どみしら~ どれらそ~ どみそ~ふぁ~そ」重々しい歩みの葬送行進曲だが、緩やかに厚みをもって厳かに演奏されている。ティンパニーの音が広がると充満になりすぎ、幾分、収まり切れないところが垣間見られるが、天井の高い奥行き感のたっぷりのホール感は、大変気持ちの良いものである。流麗なフレージングで、球体状に包まれたような感覚だ。

第3曲~第5曲は、コーラスが美しく、低弦の響きが支えとして存在している。木管が響き渡り、タイトな感じを与えつつも、ゆったりした余力を持ち合わせている。フーガの重厚さ、弦の刻みのテンポが高揚感を与える。宗教的な雰囲気を出してくるところが、やっぱり巧いと思う。第4曲のコーラスの美しいこと。乳白色系の柔らかさを感じる。ステューダーさんの声は、清潔な声だが引き込まれる。

第6曲~終曲は、レクィエムの「怒りの日」に相当する場面で、ドラマ性の高い楽章だ。コーラスが「この地上には、永遠の都はない。来たらんとする都こそ、私たちの求めているものである」と歌う。陰鬱な空気が漂っているなか、「突然、瞬く間に、最後のラッパの時に。すなわち、ラッパが鳴り響き、死者はよみがえり朽ちぬ者となりわれらは変えられるのだ。」と激しく歌われる。
ここの三連符って印象的だよなあ。「れ~みっ れ~みっ れ~み  (アアア アっアっアっ) ふぁらっそふぁみっ」「ふぁっ~そ ふぁっ~そ (アアア アっアっアっ) ふぁ~らそふぁっみっ」アバドの演奏は、一大スペクタルとまではいかないものの、厳格よりも柔らかく、コーラスを活かしてオケが鳴る。とても充足感の高い演奏だ。ドツレクの第6曲は、やっぱりポイントだろうか。カラヤン盤だと、ハリウッド映画、史劇のようなスペクタル性のある演奏だし、信じて疑わない圧倒的なパワーで、押しまくり状態という圧の高い演奏だ。しかし、アバドの演奏は、コーラスがメインで、オケはそれをうまく包みこんでいる。ジュリーニのような熱っぽさはないが、とっても自然な演奏だ。ライブ盤ならではの雰囲気もあると思うが、この場にいたら、しみじみ~ とっても、シアワセに包まれていたでしょうね。ちなみに、1997年、ソプラノ:バーバラ・ボニー、バリトン:ブリン・ターフェルを迎えて、ウィーン楽友協会でのブラームス没後100年記念演奏会DVDも発売されていた。


 ブラームス ドイツ・レクイエム
Brahms: Ein Deutsches Requiem
カルロ・マリア・ジュリーニ ウィーン・フィル 1987年
Carlo Maria Giulini Wiener Philharmoniker(Vienna Philharmonic Orchestra)
ソプラノ:バーバラ・ボニー Barbara Bonney
バリトン:アンドレアス・シュミット Andreas Schmidt
ウィーン国立歌劇場合唱団

ジュリーニの演奏は、ひとことで言ってしまうと、大らかな包容力のある演奏だと思う。ゆったりとしたテンポで、柔らかく優しい。大きな、ふんわりとした感覚に包み込まれるような感じだ。ちょっぴり流麗系。息の長くて深い演奏である。声と言うよりは息に近いミストのような息が、頭のうえから降り注がれてくる感じで、神懸かり的な雰囲気がする冒頭だ。空気感が違う。
そのなかをコーラスが、「悲しんでいる人は幸いである。彼らは慰められるであろう」と歌い始める。オーボエが序奏部分で響いてくるところで、う~ん、いきなり天上の世界に引きずり込まれ、目の前の階段を、おそるおそる昇っていくという劇的な効果がある気がする。誘われるというのが正しい表現だろうか。残念ながら、イマイチ録音状態は良くないのだが、これが幻想的というか、この世のモノではないような感覚にさせられちゃうのかもしれない。極めて柔らかいレクイエムだ。木管はストレートに響くが、あとは、ふぁ~っと全体的にレガート気味。がちっとした構築性、重厚感というよりは、形の無い空気感が、全体を包んでいるような、空に漂っているような印象を受ける。

第2曲は、静かにティンパニーが、「タタタ タンタン タタタ タンタン」と連打されて出てくる。段々と大きく鳴ってくるが、いかにも高揚していますという雰囲気とは違う。カラヤン盤だと極めて強烈で、まるでオペラなのだが、ジュリーニの演奏は大袈裟ではない。声楽が、柔らかくって~ きまじめな敬虔さが感じられる。大きな高揚感を描く場面でも、雲のうえから地上を眺めているような、客観的な雰囲気がする。長大な2曲目だが、いたわりが感じられ優しさが残っている。

第3曲~第5曲は、アンドレアス・シュミットさんのバリトンが登場し、艶のある芯のある逞しさが感じられる。「主よ、知らしめたまえ、われに終わり必ずあること、わが命に末あること、我この世より必ず去ることを」は、神に向かって訴えるという感じで、後半、段々と膨らみスピードをあげて高揚する。柔らかいが熱っぽい。4曲目で、「ら~しどれふぁそ~ふぁみ ふぁら~ そふぁみ~ ふぁしどれふぁそ~ふぁみ」と、柔らかくフルートと弦、女性コーラスが重なって優しく揺れる。第5曲は、ソプラノの純真無垢な歌声が聞こえ清冽だ。

第6曲は、ここからはドラマティックに、力強さが表出してくる。重厚だが、フレーズ自体は美しく流麗。フーガのパワーは、熱いし壮大だが、少し大雑把かもしれない。録音が良ければ、もっとインパクトのある演奏だったかも。第7曲は、ほとんど蛇足に感じられてしまう最後の楽章。「今から後、あなたに会って死ぬ人は幸いである」と歌われるが、ジュリーニ盤で聞くと、蛇足と言うには憚られる。第1曲と同様に、柔らかい空気感のある楽章で、この楽章があって、よかった~と感じて終わることができる。
こんなことを言うと、誤解を生むかもしれないが、 ドイツ・レクイエムをヴェルディのレクイエムばりの恐ろしい演奏で聴きたければ他盤で、優しいフォーレのレクイエムと同様に聴きたければ、ジュリーニ盤でというところだろうか。リマスタリング盤があればなお嬉しい。


 ブラームス ドイツ・レクイエム
Brahms: Ein Deutsches Requiem
ベルナルド・ハイティンク ウィーン・フィル 1980年
Bernard Haitink Wiener Philharmoniker (Vienna Philharmonic Orchestra)
ソプラノ:グンドゥラ・ヤノヴィッツ Gundula Janowitz
バリトン:トム・クラウセ Tom Krause
ウィーン国立歌劇場合唱団

ハイティンクの演奏は、テンポが猛烈に遅くて驚かされるが、清潔で落ち着いた切々と語りかけるような演奏だ。長らく入手が困難だったが、デッカにレーベルが移ってからは、SHM-CDも発売された。とてもゆったりと、ゆっくりと始まる。ホント、すごく、ゆったり、ふわーっと進む。この冒頭の遅めのテンポは、馴れないと違和感があるかも。猛烈に遅いと感じたのはバレンボイム盤だが、第1部で12分24秒。ちなみにハイティンク盤は、12分21秒というクレジットである。やっぱり同じぐらい遅い。
何度か聴いてみたが、やっぱり遅め。しかし、バレンボイム盤とは違って、慈しむ感じで劇的なレクイエムとは異にしたアプローチである。誠実で素朴。妙に納得させられてしまうところがある。

第2部は、ますますテンポが遅くなりまして~うぐぐっ。疲れ果て足取りが重く泥沼にはまり込んだ感じ。すごい遅い。この2部のなかでも段々に遅くなっていく。ドボン! で、この第2部は、バレンボイム盤は16分48秒、ハイティンク盤は16分5秒だ。遅さを競うわけではないが、もうイチイチ書いているのが邪魔くさいので、表にしてしまおう。このレクイエムは、まずテンポがねえ、気になります。(バレンボイム盤の感想のところにも、他盤の演奏時間の比較表を記載しています。)

ハイティンク盤 バレンボイム盤
第1部 12分21秒 12分24秒
第2部 16分05秒 16分48秒
第3部 10分22秒 10分46秒
第4部 05分15秒 05分29秒
第5部 08分29秒 07分30秒
第6部 11分03秒 12分00秒
第7部 12分14秒 11分55秒

ワタシが所有している盤は、1995年の輸入盤だ。最近は、フィリップスがデッカに吸収されてしまった。そのおかげ(?)で、再販され手に入れやすくなったようである。第4曲~第5曲は、穏やかな楽章で素朴で楚々としている。ウィーン・フィルなので、もっと艶があるのかと思ったが、素朴で清潔で、木綿の肌触りとなっている。もう少し流麗、優雅さがあっても良いと思うが、レクイエムだし、ヤノヴィッツさんの優しい声も魅力的だった。中間部から、抑制された美意識が満載という感じが猛烈にしてくる。厚ぼったい重厚さで充満する楽曲ではなく、ほほぉ~ 清潔なトーンで、全体の雰囲気が優しく慈愛に満ちたものに感じられる。沁み入る感じで、中間部まで来ることができれば、なるほど、こういう構成なのかと気づくことに。そう、この中間部からは別世界に入ったようで恍惚とし、とても好ましく思える。特にヤノヴィッツとコーラスのフレーズで、天上への入り口に至ったことが感じられる。
第6曲~終曲は、「怒りの日」に相当する場面になるが、歯切れ良くバンバンっと奏でられる。ティンパニーと弦のキレが、スパスパっと鳴って、歯切れが良くなるのだ。力強く歌われ、静謐なのだが熱い。少し怒りを含んだ激しさを帯び、神の怒りに触れたような緊張感が生まれてくる。段々と熱を帯びてくるのが目に見えるかのよう。覚悟と激しさを持って、長い階段を昇っていく光景が見えてくるようだ。神が怒り、改悛を求めていると感じられるが、終曲で平穏で平和な雰囲気に変わる。センテンスごとに、舞台が変わっていくようで、メリハリをつけて演奏していることが理解できる。なるほど、楽章でストーリー展開されているのだ。
(えっ、今頃気づいたの? 怒られそう。)


 ブラームス ドイツ・レクイエム
Brahms: Ein Deutsches Requiem
ヘルベルト・フォン・カラヤン ベルリン・フィル 1976年
Herbert von Karajan Berliner Philharmoniker (Berlin Philharmonic Orchestra)
ソプラノ:アンナ・トモワ=シントウ Anna Tomowa-Sintow
バリトン:ジョゼ・ヴァン・ダム José van Dam
ウィーン楽友協会合唱団

カラヤンの1970年代の録音演奏である。さすがに少し古めかしいが、音楽祭を除いて4回も録音されているようだ。冒頭、厳かな和音が序奏部分で響き、低弦による和音がパイプオルガンのように響く。コーラスが「悲しんでいる人は幸いである。彼らは慰められるであろう」と歌い始める。歌詞カードを手に持って聴いてみて雰囲気だけで、結構、引きこまれて慰められる。
ドイツレクイエムは、いきなり目の前に、天国の階段が表れたようで、促されて一歩一歩踏み出していく感じだ。略してドツレクは、入祭唱、キリエ、怒りの日等が続く、一般的に形式化されたレクイエムではない。目的や意図が違っててスタイルも異なっているのだ。心地良い生きる人のための慰め的な音楽で、いきなり雲のうえを歩いているような気分にしてくれる。もちろん歌われている歌詞は、「涙をもってまく種は、喜びの声をもって刈り取る」と詩篇に基づいているが、マタイ、ペテロ、イザヤ書や詩篇などから集められたもの。箴言を、音楽付きで読んでいるようなものかもしれない。木管の音色がコーラスに添って、低弦の響きがまろやかに響く。この楽章では、ヴァイオリンは登場せず、低弦(ヴィオラとチェロ)主体で演奏されている。

第2曲は、「そ~ど そ~ど」静かにティンパニーが、「タタタ タンタン タタタ タンタン」と連打される。重々しい歩みで葬送行進曲だ。悲痛な音のなかから慰めの声が聞こえ、上昇していく印象的なフレーズが大変美しい。「人はみな草のごとし その栄華はみな草の花に似ている 草は枯れ、花は散る」ペテロの第一の手紙から採られた歌詞が歌われ、DNAに組み込まれているような近親感を感じる。しかし、歌詞のわりには、ダダダダ、ダーっというティンパニーの連打によって大きく高揚し、頂点に立つ大袈裟なアプローチに超びっくり。ひぃ~!「花は散る。しかし、主の言葉は永遠に残る」オペラ風の派手な演出で、ヴェルディ・怒りの日・ティンパニー版って感じがする。音量が大きすぎたのか、音が割れてしまっているほどの迫力ぶり。後半は、平べったい木管の音によって天上へ誘われ、のどかなフレーズに変わるのだが、再度、葬送の主題が現れ、あの高揚がやってくる。第2曲目の迫力と劇的な効果は凄い。かなりのエネルギーを放出してくるので、くたびれる。

第3曲は、ちょっと休憩って感じで、ジョゼ・ヴァン・ダムさんの声を聴く。無常観のただよう迷いのフレーズが続くが、後半、「主よ、今私は何を待ち望みましょう。私の望みは、あなたにあります・・・」というフレーズから、力強くなっていく。永遠のD(ニ)と言われる壮大なフーガの底辺を流れる音が支えとなって、ずっと続いていくのだが、その上のコーラスも、ずーっと慌ただしくフレーズを続けていくので、聴いている方も、息継ぎができない苦しさを感じてしまう。かなりの圧迫感で、最後は聞きづらく、ここでも疲れてしまった。曲が終わると、ようよう解放された感じに。

第4曲は、安らかな楽曲のはずだ。フルートと弦が優しく揺れるフレーズで奏でられ、4分の3拍子という拍の調子が柔らかい。優しくホルンが吹かれ、フルートのフレーズにも優しさがある。天上的なフレーズが、何度か繰り返され美しい。ヴァイオリンの高音域の響き、低弦の豊かさ、天使のようなコーラスが美しい。この楽曲の白眉的存在だ。ここを中心にシンメントリーに構成される。

第5曲は、アンナ・トモワ=シントウさんの声を聴く。最初は少し硬いと感じるが、コーラスが入ってくると、ほんわかしてくる。母のその子を慰めるように、私もあなた方を慰めると歌われる。

第6曲は、最後の審判、死者の復活という大変重い楽章だ。一般的なレクィエムの「怒りの日」に相当する。「この地には永遠の都など無い」という諦念が渦巻く楽章で、オケの伴奏は、まるでオペラ的。まっ、劇的な神のミラクル模様を描いた楽章になっているので、これが正解なのだろう。コーラスが「この地上には、永遠の都はない。来たらんとする都こそ、私たちの求めているものである」と歌う。とてもソフトタッチの歌い方で、羽毛のように聞こえてくる。

弦が、「ふぁみどら ふぁみどら~ しらそふぁ~」と序奏した後、「れ~みっ れ~みっ れ~み (アアア アっアっアっ) ふぁらっそふぁみっ」「ふぁっ~そ ふぁっ~そ (アアア アっアっアっ) ふぁ~らそふぁっみっ」録音も、奥行きがこの楽章で感じられる。まるでオペラを見ているようだ。空間がひろがっていき、大迫力で。激情的に奏でられる。「ここに、あなた方に奥義を告げよう。」ここは、一大スペクタルである。確かにイチバン重要な曲だと思うので、大迫力を待ってました~という気分なのだが、まあ、それに答える圧巻さ。ハリウッド映画の史劇みたいで、壮大だ。フレーズを区切っていくところが力強く、何にもまして、固い信念のもと圧倒的なパワーで押してくる。う~唸ってしまった。特に、低弦のゴリゴリ感がすごい。弦が高みを目指して昇るところは、低弦が、パイプオルガンのように響かせる。 全ての音を、ぐい~っと、ひっぱりあげるフーガのパワー。こりゃ~凄まじい。第7曲の終曲は、「今から後、あなたに会って死ぬ人は幸いである」と歌われる最後の楽章だ。軽やかに厳かに奏でられる。
総体的に、カラヤンの演奏は、いささか強引でコントラストが強い。底から上昇を描くパワーが他を寄せ付けない。好き嫌いは抜きにして、そのエネルギーに根負けしちゃう。特に、第2曲と第6曲は、すっかり呑み込まれちゃいました。


ブラームス ドイツ・レクイエム
1961年 クレンペラー フィルハーモニア管弦楽団 EMI
1973年 コッホ ベルリン放送管弦楽団 DS
1976年 カラヤン ベルリン・フィル EMI ★★★★
1980年 ハイティンク ウィーン・フィル Ph ★★★★
1981年 チェリビダッケ ミュンヘン・フィル EMI
1983年 シノーポリ チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 G
1986年 コルボ デンマーク放送交響楽団 E
1987年 ジュリーニ ウィーン・フィル G ★★★
1990年 ガーディナー レヴォリューショネール・エ・ロマンティーク Ph
1992年 アバド ベルリン・フィル G ★★★★
1992年 バレンボイム シカゴ交響楽団 E ★★★


ブラームスのドイツ・レクイエム(Ein deutsches Requiem)作品45は、オーケストラと合唱、ソプラノ・バリトンの独唱による宗教曲で、1868年に完成し、翌年の69年に初演されています。全7曲で構成されています。混声4部合唱と、3楽章と6楽章ではバリトンのソロが、5楽章ではソプラノのソロが登場します。通常レクイエムは、典礼音楽としてラテン語の祈祷文に従って作曲されますが、ブラームスはマルティン・ルターが訳したドイツ語版の聖書などに基づいて、ブラームスが自分で選んで歌詞に使っており、そこが特徴となっています。全7曲約70分の大曲です。

第1曲 「幸いなるかな、悲しみを抱くものは」
第2曲 「人はみな、草のごとく」
第3曲 「主よ、わが終わりと知らしめたまえ」
第4曲 「万軍の主よ、いかに愛すべきかな、なんじのいますところは」
第5曲 「汝らも今は憂いあり」
第6曲 「われらここには、とこしえの地なくして」
第7曲 「幸いなるかな、主にあいて死ぬるものは」

冒頭より、ブラームスならではの分厚い響きで始まり、その重さにちょっと驚かされます。しかし途中で、ほっとする曲もあるので心配いりません。(笑) また、第1曲で登場するフレーズが随所に現れて、 否が応でもアタマに染みついてきます。曲タイトルの和訳は、それぞれの盤によって異なっています。


 

YouTubeでの視聴

ブラームス ドイツ・レクイエム
Brahms Ein deutsches Requiem, Op. 45 バレンボイム シカゴ響 1992年
Daniel Barenboim
Provided to YouTube by Warner Classics International
第1曲 https://www.youtube.com/watch?v=pAztLzMAkgU
第2曲 https://www.youtube.com/watch?v=4LDM-pSa5AI
第3曲 https://www.youtube.com/watch?v=bEk24cYU2BA
第4曲 https://www.youtube.com/watch?v=hmTYfMQCtVs
第5曲 https://www.youtube.com/watch?v=YZ3sQcx8DvA
第6曲 https://www.youtube.com/watch?v=Lyi43erCAmg
第7曲 https://www.youtube.com/watch?v=zgLAE0j5psU


Brahms: Ein deutsches Requiem, Op. 45
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 - トピック  アバド ベルリン・フィル 1992年
Berlin Philharmonic Orchestra - Topic
シェリル・ステューダー - トピック Cheryl Studer - Topic
アンドレアス・シュミット - トピック Andreas Schmidt - Topic
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1曲 https://www.youtube.com/watch?v=JCln5IPzX38
第2曲 https://www.youtube.com/watch?v=jc-P-FZGHYw
第3曲 https://www.youtube.com/watch?v=LshxrxZuW8g
第4曲 https://www.youtube.com/watch?v=DXAevclIZzg
第5曲 https://www.youtube.com/watch?v=URc5XL7ZPk8
第6曲 https://www.youtube.com/watch?v=rCx7CdYydiU
第7曲 https://www.youtube.com/watch?v=OFBzuJ8sHXE


Brahms: Ein deutsches Requiem, Op.45
チャンネル:カルロ・マリア・ジュリーニ - トピック ジュリーニ ウィーン・フィル 1987年
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1曲 Selig sind, die da Leid tragen 
https://www.youtube.com/watch?v=u-nTz60vMyc
第2曲 Denn alles Fleisch, es ist wie Gras 
https://www.youtube.com/watch?v=RSqRdX-7pFk
第3曲 Herr, lehre doch mich
https://www.youtube.com/watch?v=3yZ5TMM9uUA
第4曲 Wie lieblich sind deine Wohnungen, Herr Zebaoth! 
https://www.youtube.com/watch?v=LaXlmRlmxLw
第5曲 Ihr habt nun Traurigkeit
https://www.youtube.com/watch?v=sRNqLI45McI
第6曲 Denn wir haben hie keine bleibende Statt
https://www.youtube.com/watch?v=Z__tYQH_U9g
第7曲 Selig sind die Toten, die in dem Herrn sterben
https://www.youtube.com/watch?v=b46MnzaXFY0


Brahms: Ein deutsches Requiem, Op.45
ベルナルト・ハイティンク - トピック Bernard Haitink - Topic ハイティンク ウィーン・フィル
Provided to YouTube by Universal Music Group
第1曲「幸いなるかな、悲しみを抱くものは」Selig sind, die da Leid tragen
https://www.youtube.com/watch?v=-P1HiuCoRWw
第2曲「肉はみな、草のごとく」Denn alles Fleisch, es ist wie Gras
https://www.youtube.com/watch?v=9r3mBUueEYI
第3曲「主よ、知らしめたまえ」Herr, lehre doch mich
https://www.youtube.com/watch?v=8ALBnjT0QLk
第4曲「いかに愛すべきかな、なんじのいますところは、万軍の主よ」
Wie lieblich sind deine Wohnungen, Herr Zebaoth!
https://www.youtube.com/watch?v=i8yInhD43gw
第5曲「汝らも今は憂いあり」Ihr habt nun Traurigkeit
https://www.youtube.com/watch?v=nBx1LNrHggE
第6曲「われらここには、とこしえの地なくして」Denn wir haben hie keine bleibende Statt
https://www.youtube.com/watch?v=Av9gHMge-sU
第7曲「幸いなるかな、死人のうち、主にありて死ぬるものは」
Selig sind die Toten, die in dem Herrn sterben
https://www.youtube.com/watch?v=wBU-t0qWf4c



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