「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

フォーレ レクイエム
Faure: Requiem


ミシェル・コルボ ベルリン交響楽団 1972年
Michel Corboz
Berne Symphony Orchestra

ボーイ・ソプラノ:アラン・クレマン Alain Clément
バリトン:フィリップ・フッテンロッハ ー Philippe Huttenlocher
オルガン:フィリップ・コルボ
サン=ピエール=オ=リアン・ドゥ・ビュール聖歌隊 St. Pierre aux Liens de Bulle Choir
録音状態は良い。ソプラノの代わりにボーイ・ソプラノを起用し、柔らかく包まれるような、ゆったりとした演奏である。

フォーレのレクイエムは、版が複数あり、最近では室内楽的に演奏されるものが出ているが、フルオケで演奏される第3稿が一般的である。他に、第2稿ラッター版、ネクトゥー/ドラージュ版と呼ばれる版等がある。

ミシェル・コルボが、1972年、ベルリン交響楽団を振ったレクイエムは、第3稿。
後に、ローザンヌ室内管弦楽を振り、2005年に収録された盤(第2稿)等があるので、当盤は、旧録にあたる。
で、ちなみに、このCDのジャケットは、ジョージ・フレデリック・ウォッツ(George Frederic Watts)の描いたロンドン、テートギャラリー所蔵の「希望」という絵画の一部である。目隠しをされた女性が、1本の弦だけが残っている竪琴を抱えて、茶色い球体(これ実は地球である)に横座りしている。
竪琴からは、チェーンがつけられてて、女性は囚われ人を象徴しているようだ。
「目隠しされて地球の上に座り、わずか1本の弦を残すだけとなった竪琴をひきながら、その持てる全ての能力を、かすかな響きに傾け、その響きから生まれる全ての音楽を聞き逃すまいとしている」という場面を描いているとのことらしいが〜
これを希望というには・・・うむ。あまりにも悲痛な絵である。
う〜ん。これでは、絶望的な予感めいたイメージが漂う、地球を憂うかのような、ちょっぴり暗い象徴絵画である。

まっ そんな絵を見ながら、このコルボのレクイエムを聴くと、穏やかで柔らかい旋律を、安らぎと感じつつも痛ましくて〜 なんだか、やりきれなくなってしまう。
レクイエムと言っても、圧倒的に劇的なヴェルディのレクイエムもあるけど、、、こりゃ〜 まったく違う次元のレクイエムなのだ。地味と言えば地味だが、しんみりと、残響を残しつつ、ふんわりとした、てらいのない、嫌みのない、するする〜っと自然に入ってくる演奏である。

コルボ・ベルリン交響楽団の盤は、かなり、ゆったりしたテンポで演奏され、ソプラノの代わりに、ボーイ・ソプラノで歌われる。
抑制された美というか、無垢な感じが前面に出ており、柔らかく、慎ましやかである。
素朴とまでは言わないけれど、田舎の教会で演奏されているような、穏やかで、日々の暮らしのなかでの祈りに近い。
ある意味、気をつけて見ないと、耳を傾けていないと、すーっと通り過ぎてしまうような演奏で、果たして、これを美しいと表現して良いのかどうか、迷ってしまうし、確かに、美しいが美しいという言葉以外の言葉がふさわしいように思う。何と言えばよいのか。ちょっと言葉に詰まる。
いたわり、そう、慈悲深い、そっと包むような、かといって、客観的で、少し距離感のある・・・。
でも、この演奏に対して、何も求めなければ、すごく普通っぽく、抑揚が少ない分、あっさりと単調に過ぎて、何も得られないような〜 そんな演奏に聞こえた。どっか、ぶっ飛んでて、この世ではない世界が、冒頭より描かれていて、夢想的というか瞑想的であり、形が形ではないような。

フォーレのレクイエムは7つの部分にわかれている。
第1曲 入祭唱とキリエ Introitus et Kyrie
第2曲 奉献唱 Offertorium
第3曲 聖なるかな Sanctus
第4曲 慈悲深いイエス(ピエ・イエス) Pie Jesu
第5曲 神の子羊 Agnus Dei
第6曲 われを許したまえ Libera me
第7曲 楽園にて In paradisum

特に、第3曲のハープの分散和音に乗って歌われるサンクトゥスと、続く第4曲のピエ・イェズが印象的で、ボーイ・ソプラノの清潔な声が美しい。
音が丸く、シャボン玉のように儚げに膨らみ、フワフワとした微妙な調和を生み出し、ちょっと危なっかしいぐらいに、脆く、儚く、慎ましさが、美しさに繋がっているような気がする。
最後、第7曲のイン・パラディズムは、ハイ、完全に天上でありまして〜 元々、第1曲目から、穏やかなレクイエムだが、最後、やっぱり〜 天国の穏やかさに憧れを抱く、死後の世界に安らぎを求める気持ちにさせられ る。
死を美化するわけではないが、特に、ラスト、この消え方が、う〜ん。
これだと、消えたくなるよなぁ〜って感じだ。
神秘的で瞑想的、もはや別世界へと誘われてしまいそうな(演奏自体は、決して、人を誘っているわけではないのだが)、すーっと、喜んで運ばれていってしまうような〜 そんな演奏 である。

エマニュエル・クリヴィヌ  国立リヨン管弦楽団 1988年
Emmanuel Krivine
Orchestre National de Lyon
(Lyon Opera Orchestra)
ソプラノ:ガエル・ル・ロワ Gaële Le Roi
バリトン:フランソワ・ル・ルー François Le Roux
オルガン:ジャン=ルイ・ジル Jean Gilles

ふむふむ。


録音状態は良いが、うすぼんやりしている。
カップリング:
1〜7 フォーレ レクイエム
8 ラシーヌ讃歌(雅歌)
9〜12 フォーレ マスクとベルガマスク(オーケストラのための組曲) 
クリヴィヌ盤は、リヨン市との共同制作ってことで、教会で録音されているのだが、ワタシ的には、この録音は、どうも、ハッキリしないものに聞こえてくる。
とても柔らかいのだが、柔らかすぎて、奥行きが感じられず、音の響きが、自分より遠ざかって、すーっと消えていく感じがする。音が、ワタシの前に来ないというか、音の波動、反射を感じないので、どうも気持ちが悪いという感じがする。
オルガンの音色も、奥まりすぎて、ぼわぁ〜んと響いている。
普通、教会だと、もっと、音が、あちらこちらに響いて聞こえるだろうに、この響きがないというか。ホント、どこか、ブラックホールのような闇に消えるかのように、減衰してしまうので、自分の立ち位置がわかりづらいというか。いったい、ワタシは、どこに立っているのだろう〜という、変な感じがする。
まあ、一般的なコンサートホールでの録音ではないので、致し方ないのだろうが、ワタシ的には感覚的に馴染めなかった。

で、演奏は、とても素朴で、美しい息遣いが感じられる。
使っている版は、CDのブックレットを拝見しても、ちょっとわからなかった。 テンポは、総体的にゆったりめ。ふーっとした息づかいがあるが、緊張感が張ってきたり、もりあげてダイナミックに〜という演出感は少ない。
歌っておられる方は、自然発露的に、すーっと静かに包まれてていくかのように表現されているようにも思うが、聴いている方は、かなり抑え気味というか、控えめすぎて、そっと、後ろに佇んでいる地味な感じがする。
う〜ん。最初に聴く1枚としては、どうも、その存在が、伝わってこないというか。いささか、わかりづらいかも。
ソプラノの声は、オペラ専門なのだろうか、ちょっと、ビブラートが気になるかもしれない。

ラストに近づくにつれて、ようやく音量も大きく、ゆったりと歌われ、包まれてくるかのような雰囲気にはなるのだが、ぼんやりと聴いていると、いつの間にか、ラシーヌ讃歌が歌われている。
(まあ、それはそれで、シアワセなんですけどね)

フィリップ・ヘレヴェッヘ シャンゼリゼ管弦楽団 2001年
Philippe Herreweghe
Orchestre des Champs-Elysées



ソプラノ:ヨハネッテ・ゾマー Johannette Zomer
バリトン:シュテファン・ゲンツ Stephan Genz
録音状態は良い。アメル社新版を使用した演奏である。穏やかで、あまり主張してこないが、それが好ましいかな。
カップリング:フランク 交響曲ニ短調

フォーレのレクイエムには複数の版がある。
このヘレヴェッヘさんの指揮の新録(旧録音は、2001年録音)は、1901年の原典版と言われ、フルオケのバージョンで、ピリオド楽器を使用して演奏されている。
正しくは、ジャン=ミシェル・ネクトゥー校訂の1998年アメル社新版を使用しているとのことだが〜。
どこが、どう違うのか、素人のワタシには難しすぎて〜 よくわからない。
で、大変申し訳ないのだが、HMVサイトで解説されているのを、抜粋して引用させていただく。

アメル社新版っていうのは、・・・
フォーレの研究家として世界的に名高いジャン=ミシェル・ネクトゥー氏が、最新の研究成果を反映して校訂した、1998年出版の楽譜(通称アメル新版)である。
で、フォーレのレクイエムには稿が3つあり、第1稿、第2稿はヴァイオリンと木管を欠く特殊な楽器編成のために書かれ、第3稿はフルオーケストラのために書かれています。

構成曲数にも違いがあり、第1稿は5曲、第2稿が第1稿に2曲が加わった7曲で構成されています。第1稿としての出版楽譜がないのは、共通している部分が第2稿と同じためです。
第2稿はラター版とネクトゥー/ドラージュ版(ロジェ・ドラージュは指揮者)の2種類の楽譜が出版されています。この2版の最大の違いは、第3稿に近い立場をとる(ラッター版)か、より細かい復元に意を置いた(ネクトゥー/ドラージュ版)かという点で、例えば、歌や伴奏のリズムが細かい点で違っています。

最も一般的な第3稿にはすでに4種類の楽譜があります。もともと使われていたアメル社の旧版、1978年にオイレンブルク社から出版された版、1995年にペータース社から出版された版、そして、今度の録音に使用された1998年にアメル社から出版された新版というラインナップです。

この最新版が今までのものとどう違うかというと、まず、第2稿の校訂もしたネクトゥー氏が校訂しており、レクイエムの変遷及び、第2稿についての充分な知識を踏まえた作業をおこなっていること。
オイレンブルク版のように間違いが多いアメル旧版に依拠していないことが重要な点です。

具体的には、第2稿と同じように細かい点でのリズムや音高などの相違となって表れてきており、今回のヘレヴェッヘの新録音がクリティカルな意味でも高い価値を持ったものであることは間違いないところです。 ・・・ってことです。
(って言いつつ、イマイチわかんない。)
他にも詳しく紹介されているサイトがあるので〜 他サイトをご参照いただければと思います。(汗)

で、聴いたワタシの感想は、特筆すべきは、やっぱりコーラス部分だと思う。
実際に聴いてみても、ピリオド楽器だというが、あまり気にならないし、ガンガンに響かせて、元気に聴かせる楽曲ではない。あくまでも、主となるのは声楽である。
録音状態は良く、わりと響きの残る盤となっているし、オルガンの音もしっかり入っている。
だが、声楽部分を大事にしてて、バックのオケ部分はソフトである。ふんわりした音響空間が出来てて、雰囲気・感覚も申し分ない。
オケは、多少、こぢんまりした人数で演奏されていても、この楽曲では、その方が適しているように思う。

ヘレヴェッヘさんには、室内楽的に小さな編成オケで1988年に録音した旧録の方が、フルオケバージョンの当盤より、人気が高い。
ワタシはヘソマガリなので、フルオケバージョンを買ったのだが〜 
ゆったり、ふんわり、ソフトに包み込むように演奏されている。
ボーイ・ソプラノで歌われるミシェル・コルボ盤も好きなのだが、あちらは、無垢って感じがした。
このヘレヴェッヘ盤は、大人のソプラノ、テノールで歌われるが、それ相応に、もちろん好ましく、大きなホールでありながら、ささやかめに歌われているところが、ニクイです。高音域の豊かなノビのある、派手ではないが、ちょっぴり晴れやかに、感じさせられちゃう声が良いですね。

ワタシが特に好きな第3曲 聖なるかな Sanctusは、ボーイ・ソプラノの声で歌われるコルボ盤のイメージが、個人的に染みこんでしまっているので、なかなか払拭できないし〜
第4曲 慈悲深いイエス(ピエ・イエス) Pie Jesuも、透き通った声で歌われ、やっぱ、しみじみ〜っ じわじわ〜っと来る曲なので、天国気分に行かせてもらえます。
まっ このフォーレのレクイエム どの盤で聞いても、しみじみ、じっくり染み渡ってくるような楽曲なので、なかなか、難癖をつける気にならない。というのが正直なところ。
ハイ、フォーレのレクイエム 聴くだけで、穏やかな気分になるので〜 
聴いている時だけ、ちょっぴり性格変わります。(笑)

ついでに〜 当盤のジャケット写真は、ローマのトラステヴェレ地区にあるサンタ・チェチリア・イン・トラステヴェレ教会(Basilica di Santa Cecilia in Trastevere)にあるステファノ・マデルノ(Stefano Maderno)の彫刻である。
この教会(聖堂)は、聖チェチーリア(チェチリア)を祀る。

この聖チェチーリアは、初期キリスト時代3世紀頃に殉教した聖人で、音楽家の守護聖人としても有名だ。ローマ貴族だったのだが、夫とその弟をキリスト教に改宗させたということで処刑となった。
初めは、蒸し風呂で窒息させよう〜という刑を受けたが死なず、次は、3度斬首されたが、首が落ちなかったという。
で、この彫刻 首のところに、わずかな傷が描かれているというワケである。
ワタシ、ローマに行って、この教会に足を運んだのだが、その日、結婚式が執り行われており、う〜ん。残念ながら、この彫刻を見られなかった。

1962年 クリュイタンス パリ音楽院管弦楽団 EMI  
1972年 ミシェル・コルボ ベルリン交響楽団 ★★★★ 
1986年 ジュリーニ フィルハーモニア管弦楽団
1987年 デュトワ モントリオール交響楽団 L  
1988年 クリヴィヌ 国立リヨン管弦楽団 DENON ★★★
1992年 ガーディナー オルケストル・レボリューショネル・エ・ロマンティーク Ph  
1994年 チェリビダッケ ミュンヘン・フィル EMI  
2001年 ヘレヴェッヘ シャンゼリゼ管弦楽団 HM ★★★★
所有盤を整理中です。

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