「 頭のなかの ♪ おたまじゃくし 〜クラシック音楽を聴いてみよう〜」

ショスタコーヴィチ オラトリオ「森の歌」
Shostakovich:
Song of the Forests


  アシュケナージ ロイヤル・フィル 1991年
Vladimir Ashkenazy    Royal Philharmonic Orchestra
テノール:ミハイル・コトリャロフ  バリトン:ニキタ・ストロエフ
ブライトン音楽祭合唱団、ニュー・ロンドン児童合唱団



録音状態は、イマイチ。いや91年のくせに悪い。奥行きがないのと低音が入っていない。演奏も、ひとことで言うと「ユルイ」 ダメ。
カップリング:ショスタコーヴィチ 祝典序曲、交響詩「十月革命」、交響曲第2番「十月革命に捧ぐ」、オラトリオ「森の歌」
アシュケナージ盤は、全般的に録音状態は良いのだが、このオラトリオ「森の歌」だけは、なぜか、ボリュームレベルが低い。合唱が入ってくることで、わざとマイクを遠めに設置したのかなあ。
幾分、ホールトーンが少なめだし、少しボリュームをあげて聴きたい。

1曲目「戦争が終わって」
ティンパニーが静かに鳴って、クラリネットが冒頭のフレーズを吹く。
「みそぉ〜 みみそぉ〜 どれみふぁそらそぉ〜み ふぁ〜みれそぉ〜み ふぁふぁみれそ〜」
低音の金管が重なってはいるが、クラさんのフレーズが、完全に流れてしまっており、緩く感じられてしまう。
バリトンの声は良いが、オケが奥まってしまうことと、メリハリが無く、どっか腑抜けみたいで。
う〜ん。緩やかと言えば緩やかなのだが、弦の艶もイマイチで、しっかり聞こえない。
ソロの声楽は速めだし、オケは緩めのフレーズで、特に、「みみそ〜 みみそぉ〜」というフレーズが、う〜ん、テレっとしているのが、どうも馴染めない。
声楽の膨らまし方や、膨らむ前の、ちょっとした間の呼吸感は良いんだけど、でも、なんだか、戦争が終わって〜という感じがしないといか、喜びがあふれているわけでも、緊張が解けた、ほっとした感じでもなく、はあ〜

2曲目 「祖国を緑にかえよう」
「そっしらそ どっそ そしらそ どっそ・・・」
「どふぁ〜れ みれど ふぁ〜れど ふぁ〜ふぁれ どしら そ〜しれ〜 それ〜み れどし み〜れど」
「どふぁ〜れ みみれど ふぁ〜  どふぁ〜れ みみれど そ〜 」
軽やかすぎて〜 あれまっ。軽いっ。低音の響きが少なめで、スカスカしている。
テンポは、まずまずなのだが、メリハリのついた付点で彩られているわけではなく、弾んだリズム感がイマイチだ。ええ〜 もっと喜びで、希望に満ちあふれて、意欲的に進む事業ではないのかい。
おいおい、やる気あるんか? 盛り上がるところの、コーラスの声が悪いや。
荒っぽいというか、投げやりな感じがしちゃうんだけど。とほほ。

3曲目 「過去の追憶」
低弦の「みふぁ〜みどぉ〜 しらっそふぁみれ〜 ふぁら〜そ ふぁっれっふぁみっどっしら〜みし〜れふぁ〜」
という暗いフレーズが鳴ってくるのだが、深刻さとかが感じられない。
底力のないソロの歌と、コーラスが暗いところから、じわじわ〜と湧き起ってくるのだが、トゥッティだけが、とってつけたみたいに、シャン〜と鳴っている。
「みふぁそぉ〜 みそふぁみれど そぉ ららし〜し〜ら そ〜ふぁみみ ふぁ〜」
ティンパニーが遠いなあ。録音が悪いのか、オケのパワー不足なのか、なーんか緩いなあ。
後半、ヴァイオリンの擦れた音が、キシキシと刻んで軋んだ音が出てくるところは良いが〜

4曲目 「ピオネールたちは木を植えている」〜 5曲目 「スターリングラード市民は前進する」
「みみっど みみれし みみどっ」・・・この楽章は、児童合唱である。
思わせぶりな木管のフレーズが、木霊のように鳴っている。「どこにっ どこにっいるの?」と言っているような囁きだ。
「みみど みみれし みみどっ」
ワタシ的には、白雪姫と7人のこびとちゃんみたいな楽章だと、イメージしているのだが〜
この楽章は、まずまずだな〜と思っていたら、あれっ 縦が合ってない。オケと子供の声が、ずれている。
木管、フルートが速いんじゃーないのかな。
また、フルートが鳴って、「れみふぁ〜 れみふぁ〜 れみふぁっそら らっふぁみふぁ そら〜」と、鳴ってくるところも、速いんだなあ。で、低音の響きが、ほとんど入ってこないというか、響きが悪い。

一応、このCDについていたブックレットの和訳を引用しておくと・・・
「立てよ祖国のために われら若者よ 喜びは、われらのこの手作る 幸みつる国の土地を 緑深き色に飾らん 今こそ私たちも住みよい世界をば この手で作りだそうよ 栄えある時は今・・・(略)」とある。
植林は、カムイシからスターリングラード、チェルッカスまで。ヴォルガの岸辺まで〜っと、地名入りで歌われている。ロシアの地理には疎いし調べてもいないので解らないが、相当に広い面積を、緑でイッパイにしようと歌っているのだと思う。
でも、この歌詞のわりには、シンバルが、シャンシャン、フルートが、ぴい〜ひゃらら〜 まっ、底抜けに明るい楽曲なのだが、う〜ん。音の分離が悪く、ノー天気そのもの。

6曲目 「未来への逍遙」
1曲目の冒頭のフレーズが再度登場し、女性の「あ〜ああ あ〜」というハミングに乗っかって、テノールが歌う。 神秘的に歌って欲しい楽章なんだけど、なーんか、こんなモノかなあ。

7曲目 「讃歌」
「ふぁ〜しら〜ふぁ ふぁ〜しふぁみふぁ〜」というファンファーレ風なフレーズから、コーラスが「祖国の土を守るがごとく 白樺茂るわれらの大地 森は深く 林は緑・・・」と、歌われる。
讃歌というわりには、う〜っ。なんじゃこれ。というテンポの遅さで、どひゃ〜ん。テンポ遅すぎ、遅いっ。
なんやこれ? (思わず、のけぞって絶句っ)
アシュケナージ盤は、スターリン・バンザイ型の初版歌詞であるテミルカーノフ盤と異なり、1962年に改訂した歌詞で歌われている。
だから、スターリンバンザイではないのだ。あくまでも、「森は深く 林は緑・・・ 森は深く茂り ロシアに歌満ちる 永遠にはえあれ われらの祖国・・・」と歌っている。歌っている筈なのだ。

しかし・・・のだめカンタービレ風に言うと、腐ったミルクを飲んで、楽団員のみなさん、お腹の調子が悪いんでしょうか。って感じだ。はやく終わらしてしまいたい〜と、急いで演奏しているワケじゃないのだ。
お腹がユルユルなのである。
ホント、この楽章の冒頭から、このゆったりしたテンポで、どうやって最後まで持たすつもりだったんでしょうねえ。ちなみに、最後7曲目 アシュケナージ盤は11分22秒、スヴェトラーノフ盤は9分40秒である。

深読みしてみようかとも思ったんですが、あまりにも、お粗末な感じがして〜 
う〜ん。唸ってしまいました。きっと、アシュケナージさんは、堂々と、恰幅良く、終始演奏しているつもりなのだろう。恰幅良く、格好良く讃歌を歌おうと思ったら、このテンポで歌わせようって思ったんでしょうねえ。そう、ワタシ的には思います。
テミルカーノフ サンクトペテルブルク・フィル 1997年
Yuri Temirkanov    St Petersburg Philharmonic Orchestra
テノール:セルゲイ・キセリコフ Sergei Kisseliev
バリトン:ゲンナジ・ベズベンコ Gennadi Bezzubenko



録音状態は97年というわりには、かなりイマイチ。マイクが遠めで籠もりがちだ。 テンポの速いところは速くで良いのだが、いささか淡泊さを感じ、最後盛り上げ方は、超ヤスモノ臭いがする。
カップリング:ショスタコーヴィチ「森の歌」、プロコフィエフ「平和の守り」 珍しい2つのオラトリオがカップリングされている。

この盤は、珍しいショスタコーヴィチのオラトリオである。
実は、昔に78年録音のスヴェトラーノフさんの振った「森の歌」のCDをジャケ買いして聴いていた。
スヴェトラさんのCDは、綺麗な北欧風の湖と、森を組み合わせた写真である。

で、このテミルカーノフ盤は、対抗馬として買ったCDで、なにやら、こっちの盤は、社会主義、共○党バリバリ風の色彩で怪しげなジャケである。植林するおじちゃんたち、プロレタリアート風ジャケだ。
まー なんと正反対なジャケなんだろう。と思っていたのだが・・・。
実は、こっちの方が正解かもしれない。
作曲された時代背景や政体、ショスタコーヴィチさんの置かれていた立場等を考え合わせると、ノー天気には聴いていられない感じがするが、、、実のところ、ワタシ的には、あまり実感として湧いてこない。
テミルカーノフ盤は、歌詞が原典版を使っているとのことだが、ロシア語は、さっぱりわからない。
所有盤は輸入盤なので、英訳はついているのだが〜 

このオラトリオ「森の歌」は、作曲された当時(1948年)、ショスタコーヴィチは、西洋かぶれだとして冷遇された時期(ジダーノフ批判)だったため、なんとか名誉を回復し、保身のためにも、あえてスターリン賛美的に作った曲だと言われている。
だから歌詞が、スターリンの行った植林事業を賛美した歌詞になっている筈である。
っていうのも、後に歌詞を改訂しているから・・・。後に〜というのは、1962年のことである。
ただ、テミルカーノフ盤は、こだわって原典版を使っている。

自由に作曲できないってことは、とっても屈辱的なことだっただろう。
まっ そんなことで、歌詞ぐらい知ってて聴けよぉ〜と怒られると思うし、この点、ワタシ的にも致命的だとは思う。もちろん、この曲だけでなく、全ての楽曲に対しても、必要な知識は得てから聞くべき、そうあるべきなんだろうな〜と思うが、ちょっとムズカシイ。
この点、自分のことを棚にあげてしまうが、改めて調べてみると、なんでも、日本でも合唱曲として歌われていた時期があるらしい。
もちろん、スターリン・バンザイとは歌えない筈だから、歌詞は変えておられたのだと思う。

あれこれ紆余曲折のあった楽曲ではあるが、この曲を実際に聴いてみると、曲想としては、のびやかで聞きやすく、親しみやすい。庶民的というか大衆受け入れやすいフレーズ、解りやすい心地よさがある。
(ワタシも、大衆のひとりってワケである・・・苦笑)

さて、このテミルカーノフ盤、あまり録音が褒められた状態ではない。どことなく、くぐもっておりヌケが悪い。少しボリュームをあげて聴いたのだが、さっぱり系で、テンポアップされて歌われている。
スヴェトラーノフ盤が、かなり感情を移入して、こってりと歌いあげていくのだが、その点は、恰幅の良さが少なく、どこか淡泊である。

1曲目 「戦争が終わって」
静かな穏やかなクラリネットとティンパニーの印象的なフレーズから始まる。
「みそ〜 みっそぉ〜 どれみふぁそらそ〜み ふぁふぁみれそぉ〜」
「みふぁ〜みれそ〜み〜そ そらし〜どし〜ど しそふぁみ れどれし〜らどれ そらし〜どれ〜」
これが繰り返された後に、声楽が始まる。
バリトンの声は、まあ良いとしても、器楽の部分が、ちょっと、するり〜っと吹かれて淡泊というか、ちょっと拍子抜けしてしまう。う〜ん。ちょっと息が浅い感じがする。
世界の広がり感が、薄いというか。
静かに、厳かに歌われているのだが〜 合唱部分がかぶさってくると、ちょっとテンポをあげてみたり、ゆったり歌ってみたり、う〜ん。スヴェトラーノフ盤を聴いてしまうと、ちょっとモノ足らないかも。

2曲目 「祖国を緑にかえよう」
「そっしらそ どっそ そしらそ どっそ・・・」中音域の弦の小刻みなフレーズで、軽やかに、喜びイッパイに歌われる楽章だ。
「どふぁ〜れ みれど ふぁ〜れど ふぁ〜れどしら そ〜らし〜 どふぁ〜れ みみれど ふぁ〜」
うわっ 速いっ。テンポが速い。
テンポの速いのは良いとして、腰が砕けているような、重量感が抜けているような気がする。
合唱が入ってきても、心豊かに、緑が深まってくるような感じがしない。
「どっ そぉ〜みふぁれ そぉ〜みれ どっそぉ〜みれどし らぁ〜どみ」「そ〜みふぁふぁみれ そぉ〜」
鐘の音色まで入ってきて、喜びイッパイ感なのになあ。ホント、とっても楽しい可愛いフレーズなのだ。
子供の声も入っていて、伸びやかに、未来は明るい〜という感じがする楽章なのだが、全体的に録音状態が悪いのか、くぐもってしまっている。
それに、弾む音と伸びる音のメリハリ感がないので、のっぺりしちゃってる感じだ。

3曲目 「過去の追憶」
この楽章は、ちょっぴり暗め。低弦の揺れるフレーズ。
「みふぁ〜みどぉ〜 しらっそふぁみれ〜 ふぁら〜 そふぁっれっふぁみっどっしら〜しみ れふぁ〜」
男女混声の歌が、暗いところから、じわじわ〜と力強く湧き起こって〜頂点を極める。

4曲目 「ピオネールたちは木を植えている」〜 5曲目 「スターリングラード市民は前進する」
この楽章は、児童合唱である。まるで白雪姫と7人の可愛いこびとちゃんたちのようで、木々の間を、木こりと、子供達が遊んでいるかのような、可愛いフレーズで、飛び跳ねている。
が、テミルカーノフ盤は、テンポ速い速いっ。
「どっどっ どぉ〜しら そっどれ みど〜  らっら れっれど し〜どれ そ〜 どっど ど〜しら・・・」
トランペット、鉄琴で、「み〜どれ み〜どれ みっふぁっそっら〜 れっれれ みふぁそら そぉ〜」と底抜け的に陽気に歌う。
シンプルすぎるほどで、あれれ〜 これ、ホントにショスタコさんの曲かぁ?
まるで、メリーゴーランドのようにカラフルで、ディズニーランドで遊んでいるかのような、西海岸風気候のように、からり〜っと陽気に歌われちゃって〜 まるで、これでは、アメリカ的なのである。

6曲目 「未来への逍遙」
1曲目の冒頭のフレーズが再度登場し、女性のハミングに乗っかってテノールが歌う。

7曲目 「讃歌」
「ら〜しら ふぁ ら〜しらみふぁ〜」と、ファンファーレが吹かれたあと、児童合唱が始まる。
「どぉ〜れ みふぁそら そぉ〜らそぉ」というシンプルなフレーズが、大人たちの合唱に繋がっていく。
最後の盛り上げは、ちょっとやりすぎじゃーないかしらん。というほど、ド派手っ。
熱いというより、異様な感じで盛り上がり、金管の乾いた音が、これでもか〜っと鳴っておりまして、おっそろしい〜状態になる。
ワタシ的には、まるで、安物のハリウッド映画を見ているようで、興ざめしちゃいました。

シニカルに、皮肉っぽい楽曲が、どこかに隠れているのかな〜と、深読みしたい気持ちもあるのだが、ここまで伸びやかに、晴れやかに音楽を綴られていくと、う〜ん。解りません。
どこかお隣の国の、○○さまバンザイ風に、化粧を施した子供達が笑みを浮かべて踊っているようにも感じられて、はぁ〜。
ニッポンの軍歌のように、強制的に書かされた曲なのかな〜と思いつつ、はぁ〜。
なんしか、冒頭と、最後の6曲目の「みそ〜 みっそぉ〜 どれみふぁそらそ〜み ふぁふぁみれそぉ〜」
このシンプルなフレーズが、繰り返し、繰り返し〜 盛り上げてくる。曲自体の親しみやすさと美しさが際立っているだけに、モッタイかな〜とも思いつつ、聴いてみたんですけどねえ。
でも、なんだか、白々しいほどに、ショスタコさんらしくないフレーズで、スターリン・バンザイ的に歌われる。
伸びやかに歌われすぎて〜 気持ち悪いほどでもあり。
狂信的・熱狂的に歌われるわけでもないし、耳触りが良すぎるほどの叙情的とも、歌謡的とも言えるフレーズで、テミルカーノフ盤は、一瞬、アメリカか〜と思うような陽気な歌が連なって出てくる。
この楽曲が、政治体制関係なく聴けるのであれば、すんなり親しめるのだが〜
それでは、ノー天気過ぎるのかもしれないし、ちょっとムズカシイ楽曲である。

まっ テミルカーノフは、こだわって原典版 つまり、スターリン・バンザイ風歌詞を、そのまま使っている。
ロシア語が解る方、賛同される方は、お聞きになったら良いとは思う。

余談だが、2006年、サントリー・ホールで、テミルカーノフさんがCDと同じサンクトペテルブルグ・フィルを振って演奏している。生を聴かれた方も、その場で歌われた方も多いかもしれないですね。
たまたま動画サイトにUPされているのを見つけたので〜 興味のある方はご覧下さい。
http://www.youtube.com/watch?v=KmZJeImdz0g&feature=related
1978年 スヴェトラーノフ ソビエト国立交響楽団  
1991年 アシュケナージ ロイヤル・フィル Dec ★★
1997年 テミルカーノフ ウィーン・フィル SC ★★★
所有盤を整理中です。

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