「ふあああ〜・・・ねむ・・・。」
結局はほとんど眠れないまま朝を迎えた和葉は大きなあくびを零した。
平次が同じベッドに寝ていると思うとなかなか眠れず、漸くうとうとしはじめ、
少しでも眠りについたと思った時に目覚ましが鳴り、和葉を薄い眠りから呼び戻した。
トントントン・・・・。
よく眠れなかったにも関わらず、和葉の軽やかな足取りが広い廊下に響いていた。
トントントン・・・・・。
和葉が階段をおり切ったところで別の場所から軽やかな何かの音が和葉の居る廊下にまで響いていた。
その音に導かれるようにリビングを通り抜け、キッチンを覗くと、其処に居たのは
この家の主である工藤新一、その人だったのである。
・・・工藤君が朝食の用意・・・・???
一瞬、和葉の頭の中でどうしてもイコールで結びつかない図式が駆け巡った。
それは、料理というものを一切したことの無い彼女の幼馴染を思い浮かべたせいかも知れなかった。
じっとその背中を見つめていた彼女に気付いて今まで止めることなく動いていてた手を止め、その人物は振り返った。
「おはよう!和葉ちゃん!!」
さわやかな笑顔と共に放たれたその言葉を耳にして漸く和葉は事実に思い当たった。
「おはよう。・・・まだ、蘭ちゃんなんやね、中身・・・・。」
新一の姿でさわやかに挨拶をされ、まだ少しの違和感を覚えながら、それでも少しは慣れてきていた和葉は
「ふうっ・・・。」ため息をつきながらダイニングのイスに座った。
「うん・・・。解毒薬は2.3日掛かるって志保、言ってたから・・・ね。」
蘭は苦笑いを浮かべながらしょうがないよ。とばかりの表情をしていた。
その姿は間違いなく中身が毛利蘭その人であることを認識させるしぐさだった。
「志保ちゃんも相変わらずやなあ・・・。
会って行きたかったけど・・その状態やったら無理やなあ・・・。」
「そうね・・・。志保も没頭したら周り見えなくなっちゃうしね・・・・。」
「そういう意味では志保ちゃんって、平次や工藤君によう似とるなあ・・・。」
「ホントね。一点集中で周りのことなあんにも見なくなるんだから・・・・!!」
「やろ!?いっくらアタシが話ててもうわの空。なんやもん!」
「新一もそうだよ〜・・・。周りのことほんっとに見えないもの!」
恋する似たもの同士の語らい。
もちろん文句も出るけれど。
結局行き着く会話はいつも同じ。
「でも・・・。」
「うん・・・でも。」
「「それでもそんなとこも、結局好きなんだよね〜・・・!!」」
そんな風に2人が確認しあっているところへ大あくびをしながらリビングへとやってきたのは平次だった。
「ふああ〜・・・・。」
まだかなり眠そうだ。
「目ぇ覚ましいや!平次!!」
「ん〜・・・・。」
「おはよう、服部君。よく眠れた?」
「は・・・?工藤・・・??」
しばし目を丸くして目の前の人物を見つめていたが漸くするとああ・・・。とその場を離れた。
「入れ替わっとったな、そういえば・・・・」
そう言いながら平次はリビングボードの上に置かれていた新聞をとると近くにあったソファにドサッと腰を下ろた。
手にした新聞に目を通しながら話しかけてきた。
「んで?中身工藤は?」
「まだ寝てるわ。新一、朝弱いのよ。」
「ふう・・ん。」
「もう少ししたら朝ごはん出来上がるからそうしたら起こすわ。服部君ももう少し待っててね!」
そう言いながら蘭は朝食の準備を再会させるためにキッチンへと消えた。
「あ、蘭ちゃん、アタシも手伝うわ!!」
その蘭の後姿を追って、和葉もキッチンへと消えた。
まだ夢の中だった中身新一を起こしたのは携帯電話の着信音だった。
・・・・もちろん、工藤新一の携帯電話。
「ふぁい・・・・工藤・・・・。」
「工藤君かね!!目暮だが・・!!」
電話の向こうからきこえてきたのは毎度おなじみの警視庁捜査一課の目暮警部だった。
「ああ・・・目暮警部・・・。」
「あ、蘭君かね?あの・・・工藤君は・・・いるかね?」
「はあ・・・??何言ってるんですか?警部・・・どうしたんです?」
「え・・・?ら、蘭君・・・?」
「あ、事件ですか?」
「あ・・・ああ、そうなんだよ。だからあの、工藤君を・・・・。」
事件という一言を耳にして新一は目を覚ました。
だが、自分の置かれている状況を把握するのを忘れていた。
よって、目暮警部との電話のやり取りは大変奇妙なものとなっていた。
「ですから、警部、事件の概要を教えてください!」
「い、いや、だから工藤君をね・・・。」
「何を訳の解からないことをいってるんですか!」
「いや、訳の解からないのは・・・蘭君の・・・」
「警部!」
結局、目暮警部は訳がわからないなりにもとりあえず新一がこちらへ向かってくれるということだけ理解した。
新一は早速出かけるための用意を始めた。
だが。
彼はいつもと違う違和感を感じながら制服を着て、部屋を出た。
「何だってこう、いつも着てる制服に違和感を感じるんだ?オレ・・・??」
どうやら彼はきちんとは目を覚ましては居なかったらしい。
ドタドタという音が聞こえ、蘭がとたとたとキッチンから出て、リビングを通り過ぎていった。
「新一、起きたみたいね。」
「工藤、なにをあないに暴れとるようなんや?」
「ホンマ、慌てとるみたいやねえ?」
3人が首をかしげていると新一がリビングに顔を出した。
「蘭!目暮警部から要請受けたから出てくる!飯、残しといてくれ!」
現れた新一の格好を見て。
3人は動きをぴたりと止めた。
「し、新一・・・・その格好・・・。」
「工藤、お前・・・。」
「工藤・・君。」
3人の絶句したような姿を不思議に思った新一が問いかける。
「?何かたまってるんだよ?オメーら・・・。」
気付いてないのか・・・とふうっ・・とため息をついた蘭が新一を姿見の鏡まで引っ張っていった。
「新一、コッチ。」
「お、おい!蘭!何するんだよ!オレ、急いでるんだぜ!?」
「いいから!」
引っ張られながら新一は違和感があった。
それが何なのかまだ完全に頭が動いていない新一には理解不能だったけれども。
姿見の鏡まで引っ張られた新一はその姿を鏡越しに見つめ、固まった。
漸く目が完全に覚めたようだった。
「なん・・・だ!?コレは・・・・!!」
かくして其処に写っていたのは帝丹高校・男子の制服。工藤新一の制服をだぼだぼにきた毛利蘭。だったのである。
「目暮警部と話してるとき、声とかでおかしいとか思わなかったの・・・?新一。」
「ああ・・・。事件の概要聞くので集中してたから・・・。ああ・・・だから目暮警部がおかしかったのか・・・。」
ようやく思い至った新一は納得した。
「全く・・・新一は事件になると全てがどうでも良くなるんだから・・・。」
「わりイ。・・・しょうがねえ・・・。こんな事情だし、目暮警部には断るよ。無理だって・・・。」
「え?」
新一は制服のポケットに入れていた携帯を手にして、電話をかけようとした。
「わりいけど、蘭。オメー断りの電話かけてくれねーか?「新一」の声の方がいいだろうし。」
「え?そんな事しなくてもいいわよ。」
「は?何言ってんだ?おめー・・・。」
「工藤新一が現場に必要な難解な事件なんでしょ?行けばいいじゃない。工藤新一が。」
蘭の言った言葉が理解できなくて新一は固まったままだった。
平次と和葉も・・・蘭の意外な言葉に目を丸くしたままだった。
さて、一体何ヶ月ぶりの更新なのでしょうか?
答えは謎のままに・・・・(って、更新履歴見ればすぐわかるっての!)
相変わらず新一をお馬鹿にすることしか頭に無いのか、わたし。
そんなことは無いと思いたい・・・。
ビジュアル的に見たいのはだぼだぼの新一制服着た蘭ちゃんvv
可愛いだろうなあ〜・・・・vv