「っつ・・・・!!」

朝の台所で朝食の用意をしていた蘭は不意に伸ばした時、肩に痛みを感じて声をあげてしまった。


やばいなあ・・・。
やっぱり昨日の練習中に痛めたかなあ・・・・?


そう思いながら痛みを感じた肩をさする。

昨日の部活動中、組み手の最中に転倒してしまったのだ。
さすがに運動神経には優れている蘭なのでとっさに受身を取ったのだがそのとき、肩に痛みを感じたのだ。
そのときにはさほど気にするほどのものではないと楽観し、放っておいたのだ。

実際、痛みで眠れない。とかもなかったし、生活するのに支障もなかった。
なので蘭自身、あまり気にも留めていなかった。


少し痛みはあるものの、病院にいくほどでもないし、すぐに収まるだろうと感じてそのまま調理を続行させた。



「蘭、おはよー!」
「おはよ、園子。」
「ねえねえ、数学の宿題やってきた?」
「うーん・・・まあ、一応。」
「もー、何なのよ、あのややこしいの!!」

園子が昨日出された宿題に対して、怒り心頭で蘭に同意を求める。
蘭はあはは・・と苦笑いをこぼすだけだったが「ねえっ!」と園子が自分を揺さぶったとき、痛みが生じた。
重いかばんを持っており、痛みを持っている肩に直接触れたので痛みが増したらしかった。

だが、それに気づかせる蘭ではなかった。
もともと我慢してしまうタイプだし、そういう件に関してはポーカーフェイスを装えるのだ。


教室に着くと蘭は自分の席にかばんを置くと、ちらり。と斜め後ろを振り返った。

やっぱり来てない・・・か。


「あらん。旦那が来てないかのチェック〜?」
「!!」

ぼおっと新一の机を見ていた蘭に気づいた園子がからかい全開で蘭をちゃかす。

「工藤君、昨日の放課後すぐに警察に呼び出されたんでしょ?」
「あ、昨日は『ただいま』のスウィートコールがなかったのね?」
「ち、違うわよ!!そんなんじゃ・・・・!!」

蘭をここぞとばかりに親友たちはからかう。
漸く、長いながーい幼なじみ期間を終了させ、恋人同士になったのだが、こういうからかいになれるものでもない。
蘭は、相変わらず今までと同じように否定の言葉を口にした。


でも・・・心配だな・・・。
ちゃんと寝てる・・・?新一・・・・・。


夢中になりすぎて無茶をしてしまう恋人を蘭は気遣った。


結局、一日の授業が終了しても新一は学校に出てこなかった。
蘭は、気になりつつも、帰宅することにした。

今日が顧問の先生の用事で部活はなしになっていたため、一人で通学路を歩いていた。


よかった・・・。

さすがにこの肩で空手なんてすると余計に悪化しそうで蘭は顧問の先生に感謝した。





「蘭!」

学校からの帰宅途中、蘭は不意に呼ばれた聞きなれた声に反応した。

「新一。」
「よお!」

手を軽く上げた新一に気づき、蘭は駆け寄った。

「事件、解決したの?」
「まあな。」
「お疲れ様。」

にこりと笑い、蘭は新一を気遣う言葉をかける。

「ま、たいしたことねーよ。」

新一のちょっと強気な言葉に蘭はくすりと笑う。
だが、すぐに蘭の表情は怪訝なものに変わる。

「?なんだよ、いきなり怖い顔して・・・・。」

新一はその蘭の一瞬の変化に気づき、不思議そうにそう声をかけた。

「新一・・・ちゃんと寝てる?」

ぎくり。と新一の体が揺れた。

「え?いや、まあ・・・。」

ごまかそうとするが蘭は新一の行動を一瞬たりとも逃さないといった風にじっと見つめてくる。

「大丈夫だって!ちゃんと寝てるよ。」

新一はそれを気づかれないようにポーカーフェイスを装った。
しかしそれに気づかない蘭ではない。
厳しい表情を崩すことはなかった。

「まあ・・・30分くらい?」
「んもう!ちゃんと寝なきゃだめじゃない!それに。」
「んだよ?」
「それに・・・無理しすぎたら倒れちゃうじゃない・・・・。」
「だーいじょうぶだって!そんなに何日もってわけじゃねーから。」

蘭を安心させるように新一はおどけて元気な姿を装ってみせる。
だが、蘭は不意にうつむいてしまった。

「蘭?」
「私にくらい・・・弱さ見せてくれてもいいじゃない・・・・。」
「バーロ!オメーだから見せたくねーんじゃねーか。」
「意地っ張り・・・・。」

ぷん!っとちょっと頬を膨らませて蘭はすねる。
そんな蘭を見て新一も蘭の肩をすっと指差した。

「?なに?」
「オメー・・・俺が気づいてないとでも思ってるわけ?」
「な、なんのこと・・・?」

新一の少し怒ったような声にひるみ、蘭の声が震える。

「オメーの肩!昨日痛めたんだろ?」
「あ・・・・。」

誰にも気づかれていなかった肩の負傷を新一には一瞬で気づかれた。

「あ、あの・・・ね。」
「昨日放課後に別れる前までは平気だったからな。部活中に痛めたんだろ?」
「あ・・・えっと・・・。」
「さっきの言葉、そっくり返すぜ?」

新一はいつになく真剣な表情をして蘭に詰め寄る。

「新一?」
「俺にくらい、弱さ、見せてくれてもいいんじゃねーの?」
「・・・だって、新一忙しいし、迷惑かけたくないんだもん・・・。」
「意地っ張り!それにそんなのは迷惑とかじゃねーの!逆に黙ってられた方が迷惑だ!」

ぴんっと新一が蘭のおでこをはじく。


「でも悔しいな。」
「何が?」
「誰にも気づかれてなかったのに新一には一瞬で気づかれるなんて・・・・。」
「オメーだって俺の睡眠時間見抜いたじゃねーか。」
「だって・・・・新一だから・・・。」

かあっと蘭は顔を赤らめる。

「だろ?おれも一緒。蘭だから分かるの!」
「ん・・・。」
「今日おっちゃん、いねーだろ?」
「・・・なんで新一が知ってるのよ?」

おもむろに切り出された『毛利家』の事情を知っている新一をじろりと蘭は睨み付けた。

「探偵としての能力。」
「あのね!」
「明日は休みだし、今日はうちに泊まりにこいよ。」
「新一!!」

勝手に話を進めていく新一に蘭は真っ赤な顔をして怒鳴る。
だが新一は、それに気にも留めず、勝手に話を進めていく。

「んな肩で料理すんのしんどいだろ?俺が作ってやっからさ!」
「え・・・・。」
「まあ・・・まだオメーが買った食糧も残ってるしな。」
「あ・・・。で、でも平気よ、これくらい・・・。」
「まあま。こんなときくらい俺の好意に甘えろって。」
「新一・・・・。」

蘭が嬉しそうに笑みを浮かべた。

「ほら、早く帰るぞ、蘭!!」
「うん・・・・。」

蘭は新一の背中を追いかけた。

「新一は・・・寝てないのに大丈夫なの?」
「ああ!今日、蘭が居ればぐっすり眠れるからな。」
「ふうん・・??」

いまいち訳が分からないながらも、とりあえず眠れるというのならいいや。と蘭はのほほんと考えた。
新一の真意には気づかないままに二人は並んで歩き出した。





昔から今まで意地を張りあう二人だったがお互いにだけはすぐに真実が分かってしまう。

昔も。今も。これからも。
お互い、意地を張り合い、見抜きあう二人で居られたらいいなと新一も蘭も考えていた。



「新蘭夏祭り」で参加特典として出展していたものです。

え〜とこれ、言われるまでアップしてなかったことに気付いてなかったです。
ごめんなさい。

新蘭にとっての「意地」が何なのか結構考えてしまって。
結局「お互いしか気付かないこと」を隠そうとする二人にしました。

・・・怪我した蘭ちゃんをお持ち帰りしてるし。
やっぱりゴーイングマイウェイな新一さんでした。

が。怪我のせいで「ダメ」といわれてヘコむ新一さんを思いつく私なのでありました(笑)。

主催者様、楽しい企画を有り難うございました。

最後に。
これお題の一つなのですが、一つしかアップ出来ないので記載は控えさせていただきます。
ご了承ください。