「コナン君、ばいばーい!」
「コナン、またなー!」
「コナン君、また明日。」
元太、光彦、歩美。
少年探偵団の3人と別れて歩き出す。
異常な日々の中の日常の生活。
「工藤新一」が「江戸川コナン」になって随分とたった。
黒の組織の全貌はまだまだ見えてこない。
苛立ちだけが先にたってしまう。
それでもめて今日、灰原は学校を休んでいる。
灰原も灰原なりに日々を生きてる。
解毒剤を作るために連日、連夜研究室にこもりっきりという話も博士に聞いている。
・・・いつも眠そうにしている彼女を見るからあながち嘘でもないのだろう。
灰原は俺よりも知っているからこそ慎重になってるのだろう。
昨日の言い争いの最後に叫ぶように言った彼女の言葉を思い出す。
「もう、誰も失いたくないのよ!!」
彼女の中でお姉さん・・・宮野明美さんの死が色濃く残っているからだろう。
焦ってもいい結果なんて招かないのは分かってる。
それでも焦りは消えない。
公園のいつもは気にも留めないベンチに腰を下ろす。
「早く帰ってきなさいよ!!新一!!」
いつもそういってくれる蘭が・・・いつか消えてしまうかもしれない危機感を持ってる。
・・・いつまで待っててくれる?蘭・・・・お前は・・・・。
小さなころから勝手に行ってしまう俺を・・いつでも追いかけてきてくれたお前は・・・いつまで居る?
いつか、お前は立ち止まってしまうかもしれない。
その恐怖がいつも頭をもたげてる。
「コナン君?」
不意に呼ばれて前を向くと蘭が居た。
「蘭・・・姉ちゃん。」
フワリを微笑み、公園の中へと・・・俺へと近づいてくる蘭。
「こんなところでどうしたの?みんなと一緒じゃないの?」
「う・・・ん。ちょっとね。」
「どこか具合でも悪いの?」
「ううん、ぜんぜんそんな事ないよ。」
「なら・・・いいけど。寒いでしょ?早く帰ろう?」
蘭が買い物袋をひとつにまとめて空けた手を俺へと差し出す。
その手を素直に繋ぐ。
蘭の暖かな手に包まれて・・・俺たちは歩き出した。
俺の手をやっと伸ばして届く蘭の手。
新一だったとき、近くてでも届かなかった蘭の手が今は簡単に届く。
今までのもやもやが全部消えていく。
繋がれた蘭の手のぬくもりで悩みも不安も全て・・・・。
新一として蘭には会えないけど・・・こうして手のぬくもりは消えないことを確かめられる。
そうだ。
蘭にいつでも追いかけてもらおうなんて、なんて贅沢な。
いつでもどんなときでも・・・俺が蘭を追いかけてるんだから。
いつかこんな異常だった日々を笑えるような日が・・・確実に来ることを願ってやまない。
そのために俺は今を生きているのだから。
「蘭姉ちゃん、帰ったらボク、ココアがいいな!」
「ちょうどマシュマロがあるから浮かべて一緒に飲もうね!」