魔法使いって会った事ある?

みんな無いよって言う?
そんなの架空だって思う?

え?身近に居るって?
じゃあ青子と一緒だ!!

青子もね、昔々、魔法使いに会った事あるんだよ!


  私の魔法使い



ちょっと前の話題のファンタジー映画。
魔法使いの男の子が主役。
魔法使いの学校があったり列車が走っていたり。

クラスの皆とそんな話で盛り上がっていたときに一人の子が言い出したの。

「やっぱり架空よね〜・・・。」
「何が?」
「魔法使いとかって!」
「そうなのかな?居たら面白そうだけどね。」
「青子昔、魔法使いに会った事あるよ〜!」

張り切ってそう言った途端、みんなびっくり眼で青子を見てる。
何よりも青子にとってはそれがびっくりで、きょろきょろと周りを見回す。


「え?どしたの、みんな?」
「も〜!青子は相変わらず純粋だね〜!」
「だから黒羽くんも大変なんじゃない?」
「そうよね〜・・・。」
「お子様相手だと大変だもの。」

みんな口々に言いながら青子をぽんぽんと叩く。
みんなうなづいて、理由まで解ってるみたい。

青子一人わかんないよ。
何よりもわかんないのが。

「どーしてそこに快斗が出てくるのよ〜!」

ぷうっと膨れるとみんなが一斉にため息をついた。
恵子なんて頭まで抱えてる。



「お子ちゃま青子の自覚は遅そうだよね〜・・・。」
「黒羽くんなんてワンステップもツーステップも先へ進みたいと思っていると思うのに・・・。」
「ああ、可哀相。」

みんなが泣きまねまでして、演技する。
なんで快斗が可哀相なのよっ!
青子いーっつもからかわれてばかりじゃないっ!

・・・そりゃマジックとかやってる快斗はちょーっとかっこいいけど・・・。
でもでもっ!
なによりも青子をお子様扱いばっかりするんだもんっ!
自分のほうがよーっぽどお子様の癖にっ!



・・・でもね?

青子だけの秘密あるの。


快斗が魔法使いだってこと。
皆には内緒の素敵な秘密。


それは青子と快斗がまだ小さかった頃の出来事。





二人の大好きだった秘密の遊び場。
季節の花が咲き、緑いっぱいの草原。
この都会でそんなもの珍しかったほど。


とても大切でとても素敵な場所。


そんな場所がマンション建設のために取り潰されると知ったのは小学2年生の春だった。



「それ本当なの!?お父さんっ!」
「ん?・・・ああ、立地条件のよさに業者が目をつけたんだ。
 青子たまにあの空き地へ行ってるだろう?危なくなるから行くのやめておけよ。」

警察官のお父さんが青子に注意したのが始まり。
とても悲しかった。

だから何よりも早く、否定の言葉が出たの。



「そんなのやだっ!!」
「やたっていってもなあ・・・。」

お父さんはぽりぽりと頭をかいている。
ちょっと困った顔もしてる。

今なら青子がやだって言ったからってどうにかなるものじゃないのは解るけど。
・・・あの頃の青子にはそんなの解らなくて。

泣いて泣いて、お父さんを困らせたまま、泣きつかれて寝てしまった。


次の日、あの空き地へ行ってみたけど、もうたて看板がでんっと立っていて。
また悲しくなって涙があふれて来そうに鳴ってたけど、ぐっとこらえていたときに、快斗がやってきた。


「青子っ!!」

息を切らして、ハアハア言って。

快斗の顔を見たら安心して、引っ込みかけていた涙があふれてきてしまった。


「快斗ぉ〜・・・。」
「泣くなよ、青子っ!おうぼうだよなっ!いきなりっ!」

「おうぼうって・・・なに?」

青子以上に怒っている快斗に見当違いの質問を投げかけて快斗をがくりとさせたみたいだけど。
快斗は体制を立て直して青子に説明してくれた。


「つまり俺たちに何も言わずに此処をなくしてしまうっていけないって事だよ!」
「そうだよねっ!・・・みんなみんな、此処が大好きなのに・・・!!ひどいよ。」
「俺、こうぎしてやるっ!」
「こうぎって?」


二回目の青子の質問には答えてくれなかったけど・・・。
快斗がそれからすっごく頑張ってたのはちゃんと知ってる。

工事の人に話して。・・・駄目だったけど。
やってきた業者の人に話して。・・・駄目だったけど。

だけど、此処を大好きな人はいっぱいいて。
そんな人たちがみんな、仲間になってくれて。
青子たちくらいの子供が多かったけど、そのお父さんやお母さんが味方してくれて。

「嘆願書」って言うのを作ってくれて。
計画している人たちのところへ届けてくれたの!!



「青子の大好きな場所、守ってやったぜっ!」
「快斗ぉ〜・・・!!」


得意満面でそう言ってのけた快斗にしっかりとしがみついて泣いちゃったのは此処だけの話。


「あ、青子ぉぉぉぉ!?」
「うわあ〜〜ん!ありがとう〜。快斗ぉ〜!」

快斗はびっくりしてたみたいだけど・・・青子嬉しくて。
本当に嬉しくて。



その時に思ったの。
快斗が本当に魔法使いみたいに見えたの。



ね?
だからホントに小さい頃に青子魔法使いに会ってるの!!




「青子〜??」
「どしたの、青子?」


はっとした。
そうだった、ここは放課後の教室。
皆が青子を不思議そうに見てる。

「魔法使い見たことある?」な〜んて聞くから昔の懐かしい思い出にトリップしちゃってたよ。

「なんでもな〜い!」


青子はそう機嫌よく答えたの。
だって、秘密だもん!
青子だけの秘密。
こんなとっておきの秘密、人に教えたら勿体無いじゃない!





学校帰り、思い出した懐かしさから、久しぶりにあの大切な場所へ行ってみた。


小さな公園。
街のみんなの憩いの場所になってる。

隣には大きなマンションがあって。



結局、全てを残すことは出来なくて、小さな公園として憩いの場として残すことで同意したらしい。
昔に比べたら小さいけれど。

此処は今でもみどりたっぷりで、今でも大好きな場所。


「青子っ!」


青子を呼ぶ快斗の声が聞こえた。


「快斗、どうしたの〜??」
「オメーこそ、こんなところでなにボーッとしてんだよ?」
「懐かしいでしょ?」
「まあな。」


快斗がポーカーフェイスを保ってるってちゃんと解ってる。
伊達に長年幼なじみやってないよ?
でも、黙ってる。気づかない振りしててあげてる。


「ありがとね、快斗。」
「何だよ、急に?」

ふと口に出た言葉に快斗は首をかしげる。

「な〜んでも!」
「変な奴。」


青子の中ではつながってるんだけど、そんなこと快斗には解らないわけで。
でもこんなことしょっちゅうだから、快斗も何も言わない。

ずーっと一緒に居るからこそ出来る業なのかもしれないね。
そして思うの。




青子にとって、快斗はずーっと魔法使いなんだよって。


口には出さないけど・・・ね。




祝日企画、第5弾です。

いちおう、「みどりの日」のはず。
え?どこが?とかいう言葉は禁句です(きぱっ!)
ええ、緑あふれる大切な場所がキーワードです(かなり苦しい)。

青子ちゃんの一人称です。
青子ちゃんがか〜な〜りお子様過ぎたとか。
快斗ほとんど出てないとか。

挙句快斗が頑張る姿は何処行った?とかは無しです。
青子ちゃん一人称ですから。
青子ちゃんの知らないところで頑張ったんです!
・・・そういうことにしておいてください。

それと、「まじ快」世界なら紅子ちゃんは?といわれそうですが。
紅子ちゃんが魔女だと知っているのは学校では快斗だけだと思うのです、ヨ。

この青子ちゃん、どーやらまだ恋愛を意識してない様子?
・・・快斗、頑張れ(爆)。