「あ〜・・・ヒマだなあ・・・。」
新一はリビングのソファに横たわり大あくびをひとつ落とした。
最近世の中は平和らしくて警視庁から呼び出されるほどの大事件は起っていない。
こんなことは珍しいのでこんな時くらい愛しい蘭との時間を大切に使いたいと思っていたのに。
そんな時に限って意中の人は多忙らしく、今日も来てくれるのか微妙なところなのだ。
「つまんねえ・・・・。」
新一はぽそりとつぶやいた。
普段、やれ事件だの何だのと蘭を放っているくせに!!
いざ自分がヒマになったときに蘭がいないとなるとこんな身勝手な態度を取るだなんて・・・!!
などと、園子や哀あたりから非難を思い切り浴びそうではあったが、コレが新一的な本音なのだからしょうがない。
もう一度新一が大あくびを零したと同時にドサッという大きな音が新一の耳に飛び込んできた。
「なんだあ?」
音のした方向へと首を回すと、そこには棚の中から落ちたと思われる重そうな本が床に横たわっていた。
「ったく・・・。ちゃんと入ってなかったんだな・・・。」
新一は面倒くさそうに立ち上がり、その本を拾い上げた。
と、その時、一枚の紙切れがその本の中からひらひらと落ちた。
「ん・・・??」
新一がソレを拾い上げる。
新一の拾い上げたソレは本ではなく一冊のアルバムだったのだ。
つまり、落ちた一枚の紙切れもただの紙切れではなく・・・一枚の写真だったのだ。
新一の手の中にある写真には、はにかんだ顔で笑う浴衣姿の蘭が写っていた。
そう遠い昔の蘭ではない。
つい、最近の彼女の顔だ。
写真にあった日付を見て、納得した。
コレは去年の夏祭りのときの蘭を映した写真だったのだ。
ぱらり・・とめくると案の定、最近の写真が新一の目に飛び込んできた。
最近の撮られた写真をアルバムに整理したあと、このアルバムが蘭の手によって棚に直されていたはずだったのだ。
それが上手く入りきっておらず、今日新一の居るこの時、棚から滑り落ちたのだ。
「ふう・・・ん。コレは・・杯戸町の夏祭りの時の写真・・・だな。」
新一はちょっと懐かしそうにそのアルバムに見入っていた。
ピンポーン!
「はあ〜い!!」
蘭はベルの音に反応して玄関のドアを開けた。
そのドアの前には蘭が思いもしなかった人物が立っていて蘭は大変驚いた。
「よっ!」
そんな呑気な声とともに片手を挙げて見せたその人物は間違いなく今日、蘭と出かける約束をしていた。
だから本来ならば、そう驚くようなことでもないのだ。
だが現実蘭は、大きな目をさらに大きく見開き、その顔をじいっと見つめてしまった。
「おい、蘭?」
その人物は自分の登場に驚き、その場から動かない蘭に怪訝な顔を返した。
「え・・・、新一・・・・???」
ようやく蘭はその一言だけ、応えた。
「んだよ、そんなびっくりしたような顔して。今日杯戸町の夏祭りに行く約束してただろ?」
「そう・・・だけど。・・・・えええ〜!?新一が約束の10分前に来たの!?ありえない!!」
「おめーなあ・・・。」
蘭が驚愕した理由は新一が約束の時間より前にやってきたからだった。
約束の時間に遅れてくることは日常茶飯事で、約束の5分前にドタキャンなんてことも多い。
そんな日常生活を送っていると人間、それが当たり前だと思い込んでしまうのだ。
事実、蘭もそう思っていたからこそ、少しのんびりと用意していたのだ。
だが、新一はそんな蘭の反応が面白くない。
日ごろの自分の態度が原因だと分かってはいるが、ここまで大げさに驚かれるとちょっと悔しい。
「俺だってなあ、やるときはやるんだよ!」
「やだあ・・・。せっかくの夏祭りなのに雨降らないかなあ?」
「おい・・・。」
「あはは、冗談よ!でもごめん、新一。ちょっと待ってて!すぐ用意するから!」
蘭は憎まれ口をたたきながらもうれしそうに笑うと、謝罪の言葉を告げて部屋の奥へと入っていった。
ぼーっと新一が待っていると、小五郎がじいっと新一を面白くなさそうにに睨み付けてさっさとその場を離れた。
・・・おっちゃん・・・蘭に聞こえるから面と向かっては言ってこなかったけど。
・・・呪い殺すように睨み付けてきたな・・・・。
大事な大事な一人娘をかどわかす憎き男でしかも商売敵。
蘭との付き合いを快く思ってないのも当たり前か・・・。
蘭は「お父さん、新一との事、ちゃんと認めてくれてるよ?」とは言ってるがなあ・・・。
とてもその言葉通りとは思えない・・・と新一はため息をついた。
毛利家の玄関で新一が待つこと10分。
漸く待ち焦がれた人物の声が聞こえてきた。
「ごめんね、新一!」
ぱたぱたと駆けてくる音と声が聞こえ、新一がぐるりと首を回した。
「おっせーな、準備にどれくらいかかってんだよ、おめー・・・・は・・・・。」
普段、自分がどれくらい待たせているのかも考えずに新一は蘭に向かって文句を言いかけた。
だが、それは最後まで蘭の耳に入ったのか自分でもはなはだ疑問だった。
・・・・それくらい新一の声はフェードアウトしていったからだ。
新一は、目の前に現れた蘭の姿に見とれた。
本当に、声も出ないくらい大きく目を見開いて。
「・・・・?新一、どうしたの?」
いきなり自分を凝視する新一を不思議に思って蘭は首をかしげた。
「おめー・・・その格好。」
「あ、へへへ〜・・・いいでしょ?ほら!帯もね、お母さんに結んでもらっていつもの蝶々じゃないのよ!」
蘭は自身の格好に新一が驚いていると知ると、気分よさそうにくるんと半回転した。
確かに蘭の言うとおり、帯は一般的な蝶々ではなく、凝った結び方だった。
「・・・・・。」
「ちょっと・・新一?」
先ほどから何の発言もない新一をいぶかしがって、蘭は新一を覗き込んだ。
「ああ・・・いや、まあ。」
覗き込まれてやっと新一は蘭からの視線をはずしつつ、顔をそらし自分を取り繕った。
「どう・・・かな・・・?」
蘭はやっと我に返った新一にお伺いをたてた。
ここはやっぱり恋する乙女。
好きな人の評価が誰よりも大切だった。
もっとも、周りの人間からしてみたら分かりやすい新一の態度など一目瞭然だったのだが。
自分自身はともかく、他人様みなが認める鈍い蘭がそんなこと一切気づくこともなかった。
「ああ・・まあ、馬子にも衣装ってとこか・・??」
思ったことを素直に表現出来ないのは恋人になっても変わらなかった。
「新一ぃ〜・・・?」
憎まれ口をたたく新一をジト目で見る蘭だったが、新一がテレもなく「似合ってる」などと言い出したら真っ赤になる。
なのでまあ、フィフティフィフティなのだから、この二人にはこれくらいが丁度いいのかもしれない。
実際、このやり取りも周りの人間からみたら、「いちゃついてる」くらいにしか思われてないのだから。
「でも・・まあ、珍しい結び方だよな・・ホントに。」
「うん!お母さんが浴衣着るって言ったら結んでくれたの。」
「へえ・・・。」
新一はその言葉を聴いてもその時はさほど何も思わなかった。
まさかこんなところにトラップが仕掛けられているとはこの時には思いもよらなかったからである。
「じゃあ・・・行くか。」
「うん!じゃあ、いってきまーす!」
予定より、やっぱり10分遅れで二人の夏祭りデートは開始した。
杯戸町の夏祭りは毎年、8月の中旬過ぎに行われるこのあたりでは一番規模の大きな祭りだ。
出店が数多く立ち並び、杯戸小学校の校庭を開放しての盆踊り大会が行われ、最後には花火まで上がる。
なのでメインストリートに近づくにつれやはり混雑は増していく。
「やっぱり人多いね〜・・・。」
「ああ・・・。」
人の多さに辟易していた二人だが、新一は蘭の浴衣姿に見とれる周りの男どもの視線に目ざとく気づいた。
当然むかむかした新一は蘭の手をとり、自分のほうへ引き寄せた。
「え?新一・・・?」
いきなり手を引かれ、蘭は驚いた。
「・・・人多いしはぐれっと・・・困るからな。」
ぼそり・・・と照れくさそうにそう言う新一の顔がわずかに赤いのに気づいて蘭ははにかんだ。
「ありがと・・・。」
ちょっと赤い顔をして蘭は素直に新一に手を引かれた。
もちろん、新一が余計な嫉妬をしたせいだなんて微塵も思っては居ない。
二人は手をつないだまま、出店を見て歩く。
不意に蘭がくすくすと笑い出したので新一が不思議に思った。
「・・いきなりなんだよ?」
「あ・・・ごめん。あれ見てたら思い出しちゃって・・・。」
「あれって・・・金魚すくい・・??」
「うん、昔のこと。新一モナカで出来たポイ食べちゃったことがあったなあ・・って。」
「・・・やな事思い出すなよ・・・・。」
くすくすと笑う蘭が言い出したのが新一にとってバツの悪い・・・というか子供のころのマヌケな出来事だった。
それはまだ二人が5・6歳くらいの出来事だ。
親たちに連れられてやってきていた夏祭りで金魚すくいをやることになった新一と蘭。
そのとき渡されたのがモナカのポイだったのだ。
「これですくうの?」
今まで紙のポイしか使ったことのない新一と蘭は初めて見るモナカで出来たポイを不思議そうに眺めていた。
「これ・・なに?」
好奇心の塊の新一が有希子に問いかけた。
「モナカよ。これで紙と同じように金魚をすくうの。」
「これで〜・・・?」
新一は渡されたモナカを手に持ってじろじろと観察していた。
「あ〜・・・だめだったよ。」
新一と違ってモナカのポイにさほど興味を抱くこともなく金魚すくいをしていた蘭の声が新一の耳に飛び込んできた。
「蘭!」
「あ、新一。金魚さんすくえなかったよ。」
「こんな食べられるやつですくうなんて卑怯だよ!」
「?これ、食べられるの?」
蘭は新一の一言を受け取って、不思議そうに新一の手の中にあるポイを見つめた。
「うん!モナカってお菓子にあるだろ?アイスモナカとか!」
「あ、ほんとだー!じゃあ、これもたべらるんだ?」
蘭は新一に尊敬のまなざしを送りながらも楽しそうに笑った。
新一はそれがうれしくて、もっと驚かせよう・・とそのモナカで出来たポイを食べた。
「新ちゃん!!」
「わあ〜・・ホントに食べられるんだ!」
蘭はぱちぱちと手をたたきながら目の前で繰り広げられる光景を見ていた。
有希子と英理はもちろん慌てた。
確かに食べても害のないもので作られているのだろうと思う。
だが、こんな場所でてんこ盛りに乗せられている状態のものが体にいいとは思えないからだ。
「いい加減、笑うのやめろよな〜・・・。」
新一は昔の自分の馬鹿げた行動を思い出されて苦々しい表情をしていた。
その隣ではくすくすと蘭が昔を思い出して笑っていた。
あの時、新一は金魚がすくえなくてしょんぼりしていた蘭を励まそうとした行動だったのだ。
あのときから自分は蘭に夢中だったんだなあ・・とちらりと横目で蘭を見つめた。
そのとき、急に蘭が振り返り新一は慌てた。
「おわっ・・・!!」
「?どうかした。新一?」
「い、いや、別に・・・。」
照れくさくて気まずくて新一は蘭から顔をそらした。
「・・・??ね、新一、あれ、する?」
「あん・・・?」
蘭がどこかおどけたように指差した方向をみて、新一は苦虫をつぶしたような顔をした。
蘭が指差したのはさっきまで彼らの話題に上っていた「金魚すくい」だったからだ。
「ポイが紙だからやらね〜・・・。」
くすくすと笑う蘭の意図が分かり、新一はそういって蘭の手を引いた。
新一と蘭は杯戸小学校にやってきていた。
ここではグラウンドの中央にやぐらが組まれ、周りを盆踊りの輪で囲まれていた。
「うわあ・・・やっぱり凄いね〜!」
「まあ、本格的だよな。」
「新一、踊ろう?」
蘭はつないだ新一の手を引いて盆踊りの輪に加わった。
蘭が上手に踊る有志のおば様がたを見ながらではあったが、体を動かす。
そして時たまうれしそうにすぐ後ろの新一に振り返り楽しそうに笑う。
新一はそんな蘭の姿を穏やかな気持ちで見ていた。
普段、殺伐とした現場にばかりいるから、こういう穏やかな時間が新一にはとても大切だった。
そしてその時間を作り出してくれるのはいつでも蘭なのだ。
楽しそうに踊る蘭に向かって心の中で感謝していた。
蘭、ありがとな・・・。
「うわっ・・・!!」
「!?新一、どうかしたの?」
今の今まで穏やかだった新一がいきなり悲鳴のような声を出したので蘭がびっくりして振り返る。
楽しそうに踊っていたのも忘れるくらい、しっかりと振り返った。
「な、なんでもね〜・・。」
「だって、今・・・。」
「ちょっと躓いただけだって!」
「も〜・・・気をつけてよ?」
あきれたような声をだして、蘭はまた盆踊りを再開させた。
言えるかよ・・・ホントは踊っていた蘭の浴衣の袖がまくれて見えた腕に欲情したなんて・・・。
新一はその光景に気づいたために思わず声を出してしまった。
浴衣の袖から見えた蘭の細い腕に目を奪われ、そこから目が離せなくなった。
その後、新一がまともに踊れていたかどうかなんて自分では分からない。
それくらい蘭の腕から目が離せなくなった・・・・・。
「楽しかったね!」
30分以上踊り続けていたせいで疲れてはいたが、蘭は本当に楽しそうにそういった。
「まあ・・久しぶりだったよな〜・・・こんなに踊るなんて。ほらよ。」
新一はそういいながら蘭にスポーツドリンクを手渡した。
踊り終わり、花火を見るための場所へ移動している最中に、新一が屋台で買ったものだ。
「え?」
「水分補給。」
「ありがと。」
蘭は新一が自分を気にかけてくれてるととてもうれしくなった。
ひんやりと冷たいスポーツドリンクを手に、新一と蘭は人通りの多い大通りを抜けて路地へと入っていく。
「いつになったらここが穴場じゃなくなるんだろうね〜・・・?」
「結構面倒な場所にあるし離れてるからな・・ここ。」
新一と蘭がやってきたのは人気のない高台の丘だった。
祭りの会場からは随分と離れていたが、高く上がる花火はここからも良く見えるのだ。
新一と蘭がここを見つけたのは小さいころ。
冒険と称していろんなところへと出かけていたときに偶然見つけたのだ。
それ以来、二人は杯戸町のこのお祭りの時には決まってここへとやってきていたのだ。
もちろん、去年も。「コナン」として新一は蘭に連れられて此処へ来ていた。
「・・・なあ、蘭。」
「ん〜・・・?」
「・・・お前・・・知ってて此処へ来たのか?去年・・・。」
「もちろん。毎年の約束だったでしょ?此処で花火見るの。」
「まあ・・な。」
それ以上蘭は何も話さなかった。
そして新一も何も聞こうとはしなかった。
たまにこんな風に「コナン」であったころのことを話すことがある。
きっとわだかまりも何もなくなったからこそ、普通にしていられるのだ、蘭は。
と、新一は思う。
彼自身にもわだかまりがあるわけではない。
だが、あのころのことを一生忘れることはしないと強く誓っている。
あのころの蘭への贖罪の気持ちを忘れないことが同じ過ちを犯さない切り札になるから。
あのころのような気持ちはもう二度とさせない。
強い決意を秘めた瞳で蘭を見つめた。
そのとき。
ドドド〜ン!!パリパリパリ・・・・。
始まりの合図が派手な音と、七色の光とともに鳴り響いた。
「始まったよ!新一・・・・!!」
蘭はうれしそうにそう声を上げて、花火をまっすぐに見た。
大きな音とともに閃光が周りを照らしす様を蘭は楽しそうに見つめている。
大きな音にいちいち反応を返している。
新一はその蘭のうれしそうな顔を主に見ていた。
約1000発の花火がやがて終わりを告げた。
ドンッ・・・・!!とひときわ大きな音のする大きな花火とともに。
「あ〜・・・あ。終わっちゃったね・・・。」
「そ、だな。」
「帰ろう、新一。」
ふりかえり、そういいながら新一の手をとり、蘭が帰ろうとする。
新一はその引かれた手を逆に引き返した。
「きゃ・・・!!」
当然蘭は急に引かれた手に驚き、その重力にしたがって新一の胸に収まった。
「もう、何するのよ急に!!」
いきなりの新一の行動をとがめようとした蘭はまんまと新一の策略に陥った。
顔を上げた蘭は、あまりにも近いところに新一の顔があって心臓がはねた。
「し・・・。」
何を言うつもりだったのかは蘭自身にも分からなかった。
だが、その言葉が蘭の口からこぼれ出ることはなかった。
蘭が言葉を発する前に新一が蘭の口をふさいだから。
静寂の闇に溶け込むように二人はお互いの気配だけを感じていた。
どれ位の時間が過ぎただろうか?長い二人のキスは終わりを告げた。
だが、離れがたいのか新一は蘭をそっと抱きしめたままだった。
「なあ・・・ウチ、こねえ?」
蘭を離したくなくなった新一は蘭の耳にそっとささやいた。
いつもなら、こんな雰囲気になった時、蘭は耳まで真っ赤にしてそれでも恥らうようにうなづいてくれる。
だから、今日もそうだと思っていた。
「・・・だめ。」
「・・・んでだよ!」
予想外の言葉に新一は心底ふてくされたような声を出した。
「帯、一人で結べないもの。」
「は・・・??」
「いつもの蝶々なら一人でも出来るんだけど、今日の帯は無理です。」
「帯・・・・。」
そういって新一は蘭の浴衣の帯の結び目を見た。
そこには、新一が蘭を迎えに行ったときに蘭がうれしそうに見せてくれた英理特製の「蘭の結べない結び方」。
此処に来て漸く新一は自分に仕掛けられた英理からのトラップに気づいた。
おばさん、俺防止のために・・・・!?
有能な法廷のクイーンの高笑いが聞こえてくるようだ。
新一と蘭の関係を英理も知ってはいるのだろう。
だが、「たまには清いお付き合いを!」という戒めも込めた英理からの警告に見えた。
「だからごめんね。今日は・・・帰る。」
「ああ・・・じゃ、帰るか・・・・。」
新一はがっくりと肩を落として、その場を離れた。
・・・・ああ、あん時はほんっとにやられたぜ・・・!!
一枚の写真から去年の忌まわしい出来事を思い出し、新一はうなった。
蘭を毛利家まで送り届けたとき、出てきた英理はニコニコといやみなくらい満面の笑みで二人を出迎えた。
日本警察の救世主が法廷のクイーンに負けた瞬間だった。
だけど二度も同じ手を食わないのが名探偵ってやつなんだぜ・・・!
新一は去年のリベンジを固く心に誓い、写真をアルバムにはさみ、ぱんっと音を立てて勢いよく閉じた。