工藤新一氏のとある1日。







米花市内に佇む洋館建ての代豪邸、工藤邸。
ココの主である工藤優作・有希子夫妻は数年前からロスを拠点にしている為、殆ど不在だ。
そして、二年程前までは一人、ココに住んでいた彼らの息子・新一も、
高校卒業後はアメリカの大学に進学しており、今現在は妻の蘭と2人の娘と共に海外生活をしている。

そんな風に、空き家状態が続いていたこの家に、久々に活気が戻っていた。
新一・蘭夫妻と子ども達が、新一の長期休暇を利用して帰国していたのだ。

久し振りの我が家。
新一が、ソファの定位置でのんびりと推理小説を読んでいると、横から蘭が顔を覗かせた。
「ねぇ、今日の夜、何が食べたい?」
普段の新一ならば一発でノックアウトされるであろう上目使いで聞いてくる蘭。
「何でも………」
しかし、既に小説の世界にのめり込んでしまっている新一は、気づいていないようで…気のない返事しか返さなかった。
「お肉とお魚どっちがいい?」
そんな新一の態度にも、蘭はめげすに違う質問で問いかけてみる。
「何でも…」
新一はまたしても同じ台詞を返した。

「ちょっと、ちゃんと聞いてるの?」
蘭は、少し頬を膨らませてみるが…
「あぁ。」
相変わらずの新一。
「本当に?」
「あぁ。」
「本当に本当??」
「あぁ。」

変なやり取りか続いていると、蘭の顔が膨れっ面から、何やら悪戯っ子の笑みに変わった。
「じゃあ、今日はフランス料理のフルコースにしよっか♪」
蘭の表情の変化に気づかない新一は、また同じ台詞で返す。
「あぁ。」
蘭の顔がますます楽しそうな笑みになっていく。
「ねぇ、今日は新一に作ってもらってもいい?」
「あぁ。」
「本当?」
蘭は、ニコニコと満面の笑みを浮かべて、確認をとる。
「あぁ……っ、え?!」
またしても、気のない返事をした後、新一は慌てて顔を上げたが……。


時既に遅し。
目の前には嬉しそうにエプロンを外す蘭の姿があった。
「やった。じゃあ、私は子ども達と園子の家に行って来るから夕飯、フランス料理のフルコースでお願いねvv」
可愛らしくウィンクをしながら言ってきた蘭の台詞に、新一の顔から一気に血の気が引いた。

「え、ちょっ…らっ…」
新一は、嬉しそうにリビングを出て行こうとする愛妻を慌てて引きとめようとする。
「なぁ〜に?」
さっきまでと同じ満面の笑みを浮かべて振り返った蘭。
その背後に何が見えたのか、さらに新一の顔色が悪くなって行った。
「いえ、なんでもないです。」
新一が首を左右に大きく振りながら言うと、蘭は楽しそうに2階へと階段を登って行った。



身支度を済ませて降りてきた蘭と娘2人を玄関で見送る新一。
「じゃあ、行って来るね。」
「いってらっしゃい…ませ…」


こうして、夕方からではあるが、工藤新一氏の有意義な1日が幕を開けるのだった…


















FIN.








  蓮見優梨亜さんからの頂き物ですvv

   優梨亜さんから暑中見舞い代わりにお好きな小説ひとつどうぞvvと言っていただき、
   迷うことなくこれに決めましたvv


   小説読んでてへまをする新一が愛しいですvv
   料理下手な新一の作るフランス料理にも・・・ちょっと興味ありますvv
   続きが・・・気になる・・・・。


     (おねだり含みつつも・・・)優梨亜さん、ありがとうございました!!