7/21
被験者Kは夏休み最初のこの日、近しい友人たちと連れ立って海水浴へと行く予定だった。
待ち合わせの時刻は午前9時に「被験者の家の前」。
ーにも関わらず、被験者の恋人Rによってたたき起こされ、現れた。
15分の遅刻。
かなり時間にはルーズと見える。
運転するには未だ早い年齢のため、15分遅刻したにも関わらず、寝不足の様子を見せており、
早々にRの膝枕によって寝入ってしまった。
海に到着後、Rの水着姿を存分に楽しんでいる様子が見受けられる。
だが、他人が見るのはかなりイヤらしく、はっきりと回りに威嚇を行っている。
Rへの執着心は人一倍のようで、周りにはばればれの様子なのが丸わかりだ。
威嚇だけでは足らなかったのか、被験者KはRを連れて何処かへといなくなってしまった。
その後、1時間程、姿が見えなかった2人だったが、戻ってきた時には被験者Kは随分と満足な顔を。
Rは何処か疲れたような顔をしていた。
姿が見えなかった1時間の間に何があったのか非常に興味深くはあるが、あえて追求しないことにしておく。
帰りの車の中では、Rと共に、肩を寄せ合い、眠りについていた。
8/2
Rとのデートの予定を約束5分前にドタキャンする。
このようなことは初めてではなく、何度となく繰り返されていて、一向に反省及び改善が行われていない模様だ。
K自身はドタキャンしてどこへ行ったのか?
T総合体育館で起きた殺人事件の捜査へと向かっているようだ。
事件が起きると周りは一切省みず、それにのめりこむ傾向があり、寝食すらも忘れてしまうらしい。
同じように寝食を忘れやすいものに「推理小説」なるアイテムもある。
本の読み方はかなり偏っており、一冊の本を何度も何度も読み返して、K自身の好みに合った本などはセリフ・情景から
全暗記済みのようである。
彼にとっての推理小説(特にコナンドイル著・シャーロックホームズシリーズ)の説明ショーは彼にとっての最大のイベントであり
これを聞くことが出来る人間も実は限られているのである。
一番聞かされているのはもちろんの如くRであり、彼女以外には説明ショーを行っていないようである。
事実、わたし自身も聞いたことはない。
このことから、推理小説の話は彼にとってとっておきの話題であるということがわかる。
もっとも聞かされる側はかなりの苦痛を伴うだろうが、ごくまれにそれが役立つこともある。
8/5
親しくしている小学生たちの勉強を見ている。
振り回されながらもなかなか楽しそうである。このあたりは意外な一面といえるだろう。
ただ、小学生よりも料理は下手な様子である。
高さをもって、小麦粉を一気にいれるとどうなるか。ちょっと考えればわかることだとは思うのだが、
その辺の知識は欠落しているようである。
8/10
被験者Kの機嫌がすこぶる悪い。
ただし、原因は不明ではない。
被験者Kの知らぬところでK以外の人物とRが不可抗力的に関わりを持ってしまったことが原因だ。
関わりを持ってしまったのが女性であったならばここまでKの機嫌が悪くなることは少ない。
Rと関わりを持ってしまったのが男性だったため、ここまで爆発的に機嫌が悪くなったようだ。
ただし、前述したとおり、R側に落ち度は何もなく、「不可抗力」だった。
そのあたりはK自身も理解はしているようだ。
ただし、「理解は出来ても全く納得していない」らしい。
結果。
先ほどからK及び、Rとの連絡が一切取れなくなってしまっている。
特別行方不明・・・というわけでもない。
2人の居場所は把握できている。
K本人の自宅だ。
ただし、他人が近寄ることを一切許さない自宅内で何が行われているかは・・・不明である。
8/11
K及び、Rとの連絡が取れるようになった。
時刻は午前11時。
Kは、昨日の不機嫌さはまるでなく、非常に明るく、しかも元気一杯である。
連絡の取れなかった間にまたもや事件が発生していたらしく、いそいそと現場へと向かって行った。
一方のRはすべての精気を吸い取られ多様に非常に疲れ、だるそうにしていた。ということのみしるし、
前日までの追記とする。
8/27
珍しく、友人たちがK宅に集まっている様子である。
同業者のHにその幼馴染の少女。
双子とも思えるほど似た容姿をもつKとその幼馴染の少女。
類は友を呼ぶのか、みな、どこかエキセントリックな人間たちばかりである。
それでも一時の「普通の高校生」を楽しんでいる様子ではあった。
帝丹小学校2年A組 灰原 哀
夏期生活科宿題 「動植物の観察」より 抜粋
「灰原さん、この観察って・・・人間・・・よね?」
帝丹小学校2年A組の担任・小林教諭は哀が珍しく遅れて提出した宿題にざっと目を通してそうつぶやいた。
「はい、人間も動物ですから?」
哀はこともなげにしれっと告げた。
「何か問題でも?」といいたげな表情を見せた。
「まあ・・・そう・・・なんだけどね。・・・それにしても灰原さんが宿題の提出が遅れるなんて珍しいわね?」
「私も科学者の端くれですから。リポートはきちんとした形で仕上げたかったんです。」
「あ・・・ははは、そう。うん、りっぱなものよ。」
「ありがとうございます。」
ぺこりと頭を下げて職員室から出て行った哀をボーっと見ていた教師・小林はほうっ・・・とため息を零した。
「灰原さん・・・ってやっぱり他の子供とは・・・違うのよねえ?」
教師にとってみれば、理解したいと思いながらも理解が到底出来ないような域に達して居るのかもしれない。
と密かに思うのであった。
一週間後、哀の元にリポートは戻って来た。
手の中にあるリポートを眺めて彼女は一番いいと思われる人物へと手渡すことに決めた。
「哀ちゃん!今、学校から帰ってきたの?」
蘭はニコニコとランドセルを背負って阿笠邸へと足を踏み入れようとしていた哀に話しかけた。
「蘭お姉ちゃん。」
そういうと哀はすっと蘭の前にリポートを差し出した。
「はい、これ、蘭お姉ちゃんにあげる。」
「?・・哀ちゃんこれ・・・なあに?」
蘭は目の前に差し出されたリポート用紙を不思議そうに眺めていた。
「宿題よ、夏休みの。・・・蘭お姉ちゃんが持つのが一番いいと思って。」
「・・・・???」
「じゃあ。」
哀は蘭の手の中へ押し込むように渡すとそのまま、家の中へと入ってしまった。
蘭は頭の中から疑問符が消えないまま、哀から手渡されたリポート用紙をまじまじ見つめていた。
「帝丹小学校2年A組 灰原 哀 動植物の観察日記」
・・・夏休みの宿題を・・・どうして私に・・・・??
不思議に思いながらも工藤邸へと足を運び、リビングで観察日記のノートを開き、ページを読み進めて行った。
読み進むにつれ・・・彼女の顔は真っ赤になっていった。
その夜。
被験者である工藤新一の叫び声が米花町2丁目一帯に響き渡り、哀に対し、仕返しを試みたが失敗に終わったとかは・・・
また別のお話。
910の日にアップするには大変不向きな小説かと・・・。
ま、まあ、新一が主体だからいっかあ(笑)
せっかくの彼の日をぼこぼこにして終るあたり・・・もはや私だな、と。
思いついたのは一年前、だったりします。
でも、新一の生態には・・・間違いはないはず、多分。
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