*微糖な関係10題*
BYビッグバード

1:「おはよう」 ただそれだけの朝 2005/04/10up
2:手を握っても何も変わらない 2005/04/10up
3:その視線に意味はあるのか 2005/04/10up
4:背中合わせで話して 2005/04/10up
5:いつもの君と違う何か 2005/04/10up
6:気になるっていうのはどういうことだ 2005/04/10up
7:告白されたって本当ですか 2005/04/10up
8:…調子が狂う 2005/04/10up
9:「また明日」 嬉しいなんて思ってない 2005/04/10up
10:そして近づく君との距離 2005/04/10up


















1:「おはよう」 ただそれだけの朝




「おっはよー!」

大きな声で肩を叩けば不機嫌そうな顔で私を睨む。
眠そうな表情を隠そうともしないのが彼らしい。

「…朝からうるさい女だな…」

いつも通りアロマパイプをくわえたまま器用に喋る。
少し高い位置から見下ろされながら、私はそれでも笑った。


返事を返される。
ただそれだけのことがこんなにも嬉しい。

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2:手を握っても何も変わらない




痛いくらい握り締められた手に、他意なんてない。
それくらいわかってる。だから余計に気になる。

九龍の邪魔をするわけにはいかないのはわかる。
だがなんでよりにもよって俺なんだ。

いつか訪れる結末を想像して、心が冷えた。

暗がりの中、すがるように掴まれた手を握り返す。
ギブアンドテイクだ畜生。


つながれた手は見えない。
それで、よかった。

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3:その視線に意味はあるのか




大きな目に俺を映し、じっと見つめてくる。

そのことの意味を知りたいと思った。
だけどきっと本当は知りたくないんだろうとも思った。

そうすれば勝手に想像していられる。


たとえ、そこに意味などなくても。

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4:背中合わせで話して




「…行っちゃったね」
「あぁ」
「九チャンらしいって言ったら、らしいよね」
「あぁ」
「卒業式、一緒に出たかったね」
「…別に」
「…寂しいね」
「…別に」
「寂しいよね」
「だから、別」

「泣いてもいい、よね」

「………あぁ」


背中合わせのまま泣いてみる。
泣けないあなたの分まで、私が。

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5:いつもの君と違う何か




カレーが好きな君。
いつもアロマを吸ってる君。
だるいって言いながらも付き合いのいい君。
本当によく寝る君。
友達思いの君。
実は運動神経のいい君。
ちょっと心配性なところのある君。
照れ屋な君。
本当はすごく優しい君。


だけど。

何かを耐えるような、そんな真剣な顔をする君のことは

私は、知らない。

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6:気になるっていうのはどういうことだ




くるくるとよく変わる表情だとか
俺みたいなのにも普通に声をかけてくるお節介なところだとか
あり余る元気を力いっぱい発散させていることだとか
誰にでも優しいところだとか
結構デカい胸だとか
その割に意外と細い足だとか
笑った顔がそれなりに可愛いだとか
怒った顔も見慣れてしまったことだとか

他のヤツを追う視線 だとか

気になるっていうのはどういうことだ


「そういうことだろ」とは親友の談。

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7:告白されたって本当ですか




私が聞くと、とても嫌そうな顔をした。
まずかったかなと思って取り繕うと、さらに不機嫌さが増した。
焦って言葉を重ねても墓穴を掘り続けるだけで。
仕方がないから、帰りにカレーを奢ってあげた。
これできっと仲直りは出来たと思う。

「告白されたって本当?」
「意外とモテるんだね!」
「え、でも、嬉しくないの?」

「私だったら嬉しいけどなぁ」


なんで不機嫌になったのかは、よくわからないけれど。

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8:…調子が狂う




「心配かけてごめんね」

そう言ったこいつの顔は青白く、いつもの健康さは影を潜めている
病気の時は人間弱気になるもので、口調にも覇気がなかった。
普段と違う姿にイラついたのか動揺したのか。
とにかく言葉がついて出た。

「いいからさっさと治せ。んでいつもみたいに笑ってろ」

調子が狂う、と続けた台詞に一瞬目を見張る。
そのあと、笑った。

本当に、嬉しそうな顔で。


…やっぱり調子が狂う。

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9:「また明日」 嬉しいなんて思ってない




「じゃあまた明日ね!」

別になんの変哲もない挨拶。
あいつが誰に対しても口にする言葉。

嬉しいなんて思ってない。

明日はあるのだと言ってくれること
そのことに安堵しただけ。


ただそれだけだと、言い聞かせている。

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10:そして近づく君との距離




例えばそれは、声をかけても嫌そうな顔をされなくなったこと。
例えばそれは、隣にいても気にならなくなったこと。
例えばそれは、君の香りにすぐに気づけるようになったこと。
例えばそれは、騒がしくない日が少し物足りないと思うようになったこと。
例えばそれは、どこで授業をサボってるか予測できるようになったこと。
例えばそれは、睡眠を邪魔されてもそれほど腹が立たなくなったこと。

例えばそれは、一緒にいることが多くなったこと。


それが、きっともうちょっとだけ近づく君との距離。


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